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第三章 葛藤
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マールに背中を押され、お茶を飲み心を落ち着かせる。
突然現れたシモンを目の前にして、ユリアーナはそれだけできっと心が昂ぶってしまっていたのだ。
落ち着いた気持ちで“みちしるべ”の話を始めた。
執務室に案内して花壇を見せる。
外はまだ雨が降っているから散歩がてら見せたかったのだがそれは無理だった。明日にでも期待しよう、もう花は終わってしまったけれど。
マールに命じて庭師も呼んだ。
説明書のようなメモ書きのみで未知の植物を、種から育て花まで咲かせてくれた勤勉な庭師をシモンに労ってもらいたかった。
「ありがとう、この花の見頃に間に合わなくて残念だった。来年も頼みます」
シモンの言葉に庭師は平伏せんばかりに恐縮したが、メモどおりに花を乾燥させていると言って、シモンを驚かせていた。
二人の会話をユリアーナは落ち着いて聞いていた。やはり彼は勤勉な庭師でロッサルト公爵家の宝だと鼻が高かった。
勤勉で優秀な使用人というのは貴族家の宝だと幼い頃に、そう教えてくれた教師を思い出す。
先生、きっとそれは貴方の事もそうだったのかもしれません、ユリアーナは彼女を思いだし懐かしんだ。
花に“みちしるべ”と名付けた事を話すと、シモンはユリアーナに囁いた。
「この種が君を導く事になったのかな?」
耳元で聞こえた声は擽ったかった。
「それはまだ分かりません。導かれている途中かもしれません」
ユリアーナはそうシモンに囁いた。
◇◇◇
両親が揃ってからシモンは挨拶の後、カインが暴走せずに済んだことで二人に感謝の言葉を述べていた。
ユリアーナにはその辺りがよく分からなかったが彼等に何があったのかを説明を受けた。
隣国カルスト王国のレスト子爵家には昔から極偶に紫の髪の娘が生まれていた。
どの娘も容姿端麗で賢い娘だった、だが一つだけ大きな欠点が見受けられた。
それが一つの事に限りなく執着を示すという事だった。
その執着は異常とも言えるほどで周りはそれに只管振り回されることになる。だが突然その執着が切れることもあった。それは次に執着を見つけた時だった。
ただ執着するだけなら相手が許容すれば問題ない、この執着を向ける相手が愛玩動物だったり物だった時は問題さえ起こらないときもあった。
だが一番注意しなければならないのが紫の髪の娘が同じく紫の髪の娘を産んだ時だった。
これは滅多に起こらない事象でもあるけれど起きた時は家門存続も危ぶまれるような問題が起きたりしていたらしい。
カルスト王国では一部の高位貴族は子爵家の紫の髪の娘の秘密を把握している家門もあった。長い歴史の子爵家であるからその歴史上で問題になった事もあったらしい。
だからファライナの母が生まれた時、ファライナの曽祖父は髪色を染める事を決めた。
幼い頃からずっとひた隠しにしていたが、ファライナの母は幼い頃からペットの猫に執着していた。だから安心してある伯爵家の子息と婚約を結ばせた。
それがある日突然ファライナの母はその子息に執着を始めたのだ。それがあまりにも異常だったため婚約を解消されてしまった。解消されても執着は治まらず如何したものかと思案していたその時にショーズ侯爵が現れた。
製紙業に伴いその機械の製造に興味を示して、取引して欲しいと懇願する彼に娘を押し付ける事を思い付いた子爵は婚約を条件にした。序に伯爵子息を追い回して、国内では既に醜聞を撒いている瑕疵者の娘を国外に出せると一石二鳥のその案を条件にしたのだ。
まんまと引っ掛かったショーズ侯爵にレスト子爵令息は気の毒に思い、滅多に起こらないとはいえ注意をせずにはいられなくてあの言葉を伝えた。
『紫の髪の娘が生まれたら気をつけろ』
まさか子息も本当に生まれるとは思わなかったし、その報告の手紙には子息の言葉を懸念したりどういう事かと訊ねる内容でもなかったから、もう他国の事だと知らぬふりをしたのだという。
それが悲劇の始まりでここで対応していたらそれ以降の問題は起きなかったかもしれない。
この対処法は母娘を引き離すのが一番の解決策だったのだ。
それをレスト子爵家は娘もファライナも引き取る気がなかった為、関わりになることを避けた。
自分達の家門の事なのに無責任にも程があると、シモンの話を聞いたユリシーズは憤った。
✎ ------------------------
拙作を読んでくださる皆様へ
本年も大変お世話になりありがとうございました🙇♀
今年は途中、心が折れたり体調を崩したりアイデアを言葉に出来ない未熟な自分に絶望したりと、何度も何度もへこたれちゃいましたが、何とか1年作品作りを続けていく事が出来ました。
それも偏に海よりも広い優しい心を持った読者様のおかげだと感謝しています。
来年も引き続きmarukoを愛でて頂けますと幸いにございます(⑉˙ᗜ˙⑉)
優しい読者の皆様
良いお年をお迎えくださいませ🎍
突然現れたシモンを目の前にして、ユリアーナはそれだけできっと心が昂ぶってしまっていたのだ。
落ち着いた気持ちで“みちしるべ”の話を始めた。
執務室に案内して花壇を見せる。
外はまだ雨が降っているから散歩がてら見せたかったのだがそれは無理だった。明日にでも期待しよう、もう花は終わってしまったけれど。
マールに命じて庭師も呼んだ。
説明書のようなメモ書きのみで未知の植物を、種から育て花まで咲かせてくれた勤勉な庭師をシモンに労ってもらいたかった。
「ありがとう、この花の見頃に間に合わなくて残念だった。来年も頼みます」
シモンの言葉に庭師は平伏せんばかりに恐縮したが、メモどおりに花を乾燥させていると言って、シモンを驚かせていた。
二人の会話をユリアーナは落ち着いて聞いていた。やはり彼は勤勉な庭師でロッサルト公爵家の宝だと鼻が高かった。
勤勉で優秀な使用人というのは貴族家の宝だと幼い頃に、そう教えてくれた教師を思い出す。
先生、きっとそれは貴方の事もそうだったのかもしれません、ユリアーナは彼女を思いだし懐かしんだ。
花に“みちしるべ”と名付けた事を話すと、シモンはユリアーナに囁いた。
「この種が君を導く事になったのかな?」
耳元で聞こえた声は擽ったかった。
「それはまだ分かりません。導かれている途中かもしれません」
ユリアーナはそうシモンに囁いた。
◇◇◇
両親が揃ってからシモンは挨拶の後、カインが暴走せずに済んだことで二人に感謝の言葉を述べていた。
ユリアーナにはその辺りがよく分からなかったが彼等に何があったのかを説明を受けた。
隣国カルスト王国のレスト子爵家には昔から極偶に紫の髪の娘が生まれていた。
どの娘も容姿端麗で賢い娘だった、だが一つだけ大きな欠点が見受けられた。
それが一つの事に限りなく執着を示すという事だった。
その執着は異常とも言えるほどで周りはそれに只管振り回されることになる。だが突然その執着が切れることもあった。それは次に執着を見つけた時だった。
ただ執着するだけなら相手が許容すれば問題ない、この執着を向ける相手が愛玩動物だったり物だった時は問題さえ起こらないときもあった。
だが一番注意しなければならないのが紫の髪の娘が同じく紫の髪の娘を産んだ時だった。
これは滅多に起こらない事象でもあるけれど起きた時は家門存続も危ぶまれるような問題が起きたりしていたらしい。
カルスト王国では一部の高位貴族は子爵家の紫の髪の娘の秘密を把握している家門もあった。長い歴史の子爵家であるからその歴史上で問題になった事もあったらしい。
だからファライナの母が生まれた時、ファライナの曽祖父は髪色を染める事を決めた。
幼い頃からずっとひた隠しにしていたが、ファライナの母は幼い頃からペットの猫に執着していた。だから安心してある伯爵家の子息と婚約を結ばせた。
それがある日突然ファライナの母はその子息に執着を始めたのだ。それがあまりにも異常だったため婚約を解消されてしまった。解消されても執着は治まらず如何したものかと思案していたその時にショーズ侯爵が現れた。
製紙業に伴いその機械の製造に興味を示して、取引して欲しいと懇願する彼に娘を押し付ける事を思い付いた子爵は婚約を条件にした。序に伯爵子息を追い回して、国内では既に醜聞を撒いている瑕疵者の娘を国外に出せると一石二鳥のその案を条件にしたのだ。
まんまと引っ掛かったショーズ侯爵にレスト子爵令息は気の毒に思い、滅多に起こらないとはいえ注意をせずにはいられなくてあの言葉を伝えた。
『紫の髪の娘が生まれたら気をつけろ』
まさか子息も本当に生まれるとは思わなかったし、その報告の手紙には子息の言葉を懸念したりどういう事かと訊ねる内容でもなかったから、もう他国の事だと知らぬふりをしたのだという。
それが悲劇の始まりでここで対応していたらそれ以降の問題は起きなかったかもしれない。
この対処法は母娘を引き離すのが一番の解決策だったのだ。
それをレスト子爵家は娘もファライナも引き取る気がなかった為、関わりになることを避けた。
自分達の家門の事なのに無責任にも程があると、シモンの話を聞いたユリシーズは憤った。
✎ ------------------------
拙作を読んでくださる皆様へ
本年も大変お世話になりありがとうございました🙇♀
今年は途中、心が折れたり体調を崩したりアイデアを言葉に出来ない未熟な自分に絶望したりと、何度も何度もへこたれちゃいましたが、何とか1年作品作りを続けていく事が出来ました。
それも偏に海よりも広い優しい心を持った読者様のおかげだと感謝しています。
来年も引き続きmarukoを愛でて頂けますと幸いにございます(⑉˙ᗜ˙⑉)
優しい読者の皆様
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