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第三章 葛藤
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ショーズ侯爵に連れられてファライナがゲートラン公爵家にやってきたのは、始めは公爵家のお茶会の時だった。
王家主催のお茶会よりも先に開催されたのは、主にセルシオの侍従と侍女候補を選別する為のものだった。
セルシオは王太子の側近候補でもあったからその前に侍従を決めておかなければならなかった、だから招待されたのは主に伯爵家以下の家門の嫡男嫡女以外の子女等で、そこにファライナが参加したのは単にご近所付き合いとゲートラン公爵の友人のよしみという、他の貴族達とは違う意味で招待されていた。
その頃のファライナは父親に執着していて、実母と取り合う関係だった。いつもは母を優先する父だったが、その日は自分を優先してくれた。その事によってゲートラン公爵家が絡むと父親は自分を優先するのだとファライナの脳内にインプットされた。
だからそれ以降も度々ゲートラン公爵家をファライナは訪うようになった。勿論そこには侍女見習いのルーシーも一緒に連れて行った。
暫くするとそこに侍従に選ばれたカインが加わる。
はじめの頃はファライナもシモンには興味を抱いていなかったと思う。その頃のシモンは別の問題を抱えていてそれがやっと解決に向かう時期だった。
ゲートラン公爵家の兄弟の乳母は従姉妹で、幼い頃からよく張り合っていたと言う、その延長なのか二人は乳母として使えた兄弟が仲良くなるのを良しとしなかった。常に競争の理由にしていた。
ゲートラン公爵と公爵夫人は二人の張り合いなど知らずに、乳母が従姉妹同士なら親戚だからいいのではないかと安易に採用していた。
シモンは優しい兄が好きなのに近付かせて貰えないことでそのうち心が塞ぎ込むようなる、その時に漸く公爵夫妻が乳母に問題があることに気付き、兄には侍従を弟のシモンには子守を付けた。
その子守が薬師のシャルロッテだった。
彼女は平民ながらもその賢さはゲートラン公爵領内でも有名だった。そこで公爵は彼女に支援を申し出て彼女は高難度の教育を受ける事ができ薬師になった。
学院生時代にその力を発揮し研究チームに入り学生ながらレストル病に効く特効薬を作った。
そんな彼女をシモンの子守にしたのは、彼女の縁談が持ち上がり、相手が下位とはいえ貴族だったから行儀見習いも兼ねての事だった。
シモンは彼女から薬草の話をいつも聞いているうちにその虜になった。
幼くても吸収力の高いシモンにシャルロッテは自身の知識を惜しみなく注いでいた。
段々と明るくなるシモンとセルシオは二人の乳母によって無理やり離されていた距離が、少しずつ縮まってきていた。
だからなのかシモンは、ファライナにもルーシーにもそれこそカインにも全く興味を示すことなく、一緒に遊んでいても直ぐに雑草を見つけては辞典を引くような子になっていた。
一緒にいるのはただ単に兄と居たかっただけで、兄がそこを離れればシモンにはその他は関係なかったのだ。
そんなシモンに突然ファライナは興味を持った。
だがどんなに話しかけても泣いても詰ってもシモンはファライナに関心を示さなかった。
そんなある日、ファライナは見てしまった、シモンの可愛らしい満面の笑顔、向けられているのはシャルロッテだった。
(あのひとだれ?こうしゃくふじんでもない、でもずーっとおとななひと⋯じゃまね)
まだ幼い子供達が誤って近付かないようにと公爵家の庭奥の倉庫の近くは立入禁止になっていた、初めて公爵家に連れてこられたときにもそっちの方には行ってはだめだとショーズ侯爵にも言われていた。
だがファライナはそこに薬が保管されていることを偶然にも知っていた。
そこに出入りする薬を回収に来る商人の話を聞いていたから。
いつも引っ付くルーシーを撒いて一人でファライナはその場所へとやって来た。
中に忍び込もうとしたけれど入り口には警備の騎士がいて入る事は出来なさそうだった。
それに騎士が怖かった。
ぐるりと近くを回っていたら廃棄処理の場所へとやってきていたのだが、そんなのはファライナには分からなかった。
そこで見つけたファライナの掌サイズの小瓶。
中には黄色い粉が入っていた。
それをファライナはポケットに入れた。かなり沢山あったけれどポケットは2つしかなかった。
ファライナが何故それを持ち出したのか、それは自分の母親が寝る前に飲む薬に似ていたから、眠り薬だと思ったからだった。
それは特効薬になる前段階の失敗した薬だった。
ファライナは神経を脅かす『毒』を9歳で手に入れてしまった。
✎ ------------------------
新年あけましておめでとうございます🙇♀
近況ボードでご挨拶申し上げましたが、こちらでもご挨拶させて頂きます(ᴗ͈ˬᴗ͈⸝⸝)
昨年は沢山の方にお読み頂き応援まで頂戴致しましてありがとうございました😊
引き続き本年もどうぞよろしくお願いします!
※この回は昨日更新する予定の回でした
新年早々予約をミスった事にたった今気づきました💦どうかうっかり八兵衛marukoと笑ってくださいませ
本日は21時までにもう一話更新させて頂きます
王家主催のお茶会よりも先に開催されたのは、主にセルシオの侍従と侍女候補を選別する為のものだった。
セルシオは王太子の側近候補でもあったからその前に侍従を決めておかなければならなかった、だから招待されたのは主に伯爵家以下の家門の嫡男嫡女以外の子女等で、そこにファライナが参加したのは単にご近所付き合いとゲートラン公爵の友人のよしみという、他の貴族達とは違う意味で招待されていた。
その頃のファライナは父親に執着していて、実母と取り合う関係だった。いつもは母を優先する父だったが、その日は自分を優先してくれた。その事によってゲートラン公爵家が絡むと父親は自分を優先するのだとファライナの脳内にインプットされた。
だからそれ以降も度々ゲートラン公爵家をファライナは訪うようになった。勿論そこには侍女見習いのルーシーも一緒に連れて行った。
暫くするとそこに侍従に選ばれたカインが加わる。
はじめの頃はファライナもシモンには興味を抱いていなかったと思う。その頃のシモンは別の問題を抱えていてそれがやっと解決に向かう時期だった。
ゲートラン公爵家の兄弟の乳母は従姉妹で、幼い頃からよく張り合っていたと言う、その延長なのか二人は乳母として使えた兄弟が仲良くなるのを良しとしなかった。常に競争の理由にしていた。
ゲートラン公爵と公爵夫人は二人の張り合いなど知らずに、乳母が従姉妹同士なら親戚だからいいのではないかと安易に採用していた。
シモンは優しい兄が好きなのに近付かせて貰えないことでそのうち心が塞ぎ込むようなる、その時に漸く公爵夫妻が乳母に問題があることに気付き、兄には侍従を弟のシモンには子守を付けた。
その子守が薬師のシャルロッテだった。
彼女は平民ながらもその賢さはゲートラン公爵領内でも有名だった。そこで公爵は彼女に支援を申し出て彼女は高難度の教育を受ける事ができ薬師になった。
学院生時代にその力を発揮し研究チームに入り学生ながらレストル病に効く特効薬を作った。
そんな彼女をシモンの子守にしたのは、彼女の縁談が持ち上がり、相手が下位とはいえ貴族だったから行儀見習いも兼ねての事だった。
シモンは彼女から薬草の話をいつも聞いているうちにその虜になった。
幼くても吸収力の高いシモンにシャルロッテは自身の知識を惜しみなく注いでいた。
段々と明るくなるシモンとセルシオは二人の乳母によって無理やり離されていた距離が、少しずつ縮まってきていた。
だからなのかシモンは、ファライナにもルーシーにもそれこそカインにも全く興味を示すことなく、一緒に遊んでいても直ぐに雑草を見つけては辞典を引くような子になっていた。
一緒にいるのはただ単に兄と居たかっただけで、兄がそこを離れればシモンにはその他は関係なかったのだ。
そんなシモンに突然ファライナは興味を持った。
だがどんなに話しかけても泣いても詰ってもシモンはファライナに関心を示さなかった。
そんなある日、ファライナは見てしまった、シモンの可愛らしい満面の笑顔、向けられているのはシャルロッテだった。
(あのひとだれ?こうしゃくふじんでもない、でもずーっとおとななひと⋯じゃまね)
まだ幼い子供達が誤って近付かないようにと公爵家の庭奥の倉庫の近くは立入禁止になっていた、初めて公爵家に連れてこられたときにもそっちの方には行ってはだめだとショーズ侯爵にも言われていた。
だがファライナはそこに薬が保管されていることを偶然にも知っていた。
そこに出入りする薬を回収に来る商人の話を聞いていたから。
いつも引っ付くルーシーを撒いて一人でファライナはその場所へとやって来た。
中に忍び込もうとしたけれど入り口には警備の騎士がいて入る事は出来なさそうだった。
それに騎士が怖かった。
ぐるりと近くを回っていたら廃棄処理の場所へとやってきていたのだが、そんなのはファライナには分からなかった。
そこで見つけたファライナの掌サイズの小瓶。
中には黄色い粉が入っていた。
それをファライナはポケットに入れた。かなり沢山あったけれどポケットは2つしかなかった。
ファライナが何故それを持ち出したのか、それは自分の母親が寝る前に飲む薬に似ていたから、眠り薬だと思ったからだった。
それは特効薬になる前段階の失敗した薬だった。
ファライナは神経を脅かす『毒』を9歳で手に入れてしまった。
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