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第四章 未来へのみちしるべ
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「我が国の事に大切なお嬢様を巻き込んでしまい多大なご迷惑をおかけしました。大変申し訳ありませんでした」
シモンからの長い説明が終わる。
ゲートラン公爵家とショーズ侯爵家の婚約は、周りをも巻き込んだ大きな事件としてアトルス王国では今後扱われて行くのだと彼はそう言って、ロッサルト公爵家への謝罪で締め括った。
シモンの婚約にユリアーナを絡めたのは、ダイナスの策略だった。だからゲートラン公爵家がどうであれ、シモンはこの事実を最近まで知らなかったのはカインがユリアーナに教えてくれた。
だからロッサルト公爵家の総意は、喩えシモンの婚約が原因だったとしても、彼に責任はないと考えていた。
真摯な謝罪にロッサルト公爵夫人のエリーヌが彼に温情を向けた。
「リーア、シモン様と二人でお話してきたら如何かしら?」
ユリアーナにはまだ知らされていなかったが、今日登城したのはダイナスの話やレストル病の薬に関してだけではなかった。
アトルス王国王家とゲートラン公爵家の連盟で、ライレーン王国を通してユリアーナとシモンとの婚約の打診が、正式にロッサルト公爵家に齎されていたのだった。
「⋯⋯お母様?」
ユリアーナは男性と二人になる事を薦める母に面食らったが、正直に云えばそれはとても嬉しい提案だった。思わず目の前に座るシモンの方を見ると彼もこちらを見つめていた。
反対側のとなりに座る父が「ん、ん、」と咳払いする音は耳に入っている。(どうしようかしら?)ユリアーナが迷っていると再度母が背中を押してくれた。
「貴方、商会に頼みたい事があると言ってらしたでしょう?丁度カインがいるわよ」
真ん中に座るユリアーナ越しに父に話しかける母。ユリアーナは恥ずかしかったけれど勇気を出した。
思えばいつもいつも自分は受け身ばっかりで、直ぐに相手のせいにしてしまっていた。オスカーとの事を反省したのだ、同じ事は繰り返しては駄目とそう思った。
「シモン様、領地の植物の事も相談したいです。資料が執務室にあるんです、アドバイス頂けますか?」
「⋯⋯⋯⋯はい、よろこんで」
シモンはそう言うと、ユリアーナより先に立ち上がりこちらのソファの方へと来てくれて、背凭れの後ろから手を差し伸べてくれた。
ユリアーナはその手を取って立ち上がる。母が気を利かせて通路の方へと避けてくれたので、手を重ねたまま部屋を後にした。
ちゃんとマールも後ろを着いてきてくれる。
ホワホワと体が舞い上がったようにユリアーナは逆上せていたから、本当はマールが後ろにいたのは気付かなかった。
応接室の扉が閉まる寸前に「マール頼んだぞ!」という父の声が聞こえたから、マールが着いてきてくれていることに気付けたのだ。
(お父様ったら恥ずかしい)
過保護な父にユリアーナは居た堪れないほど恥ずかしくて、顔を真っ赤に染めながらシモンを執務室へと案内した。
部屋に着く前には器用に二人の前に出たマールが扉を開いて中へと進んだ。
部屋の窓を見ると、まだ雨は止んではいなかった。
何から話せばいいかしら?
ユリアーナは薬草のアドバイスを求めてこの部屋に連れてきた事を、緊張からすっかり忘れてしまって話の取っ掛かりを探していた。
だがユリアーナの脳内の焦りは杞憂に終わる。
シモンの方から話を始めたからだ。
「ユリアーナ嬢。私は君の手紙を読んでいないから、おかしな事を言うかもしれないけれど許してほしい」
「⋯⋯⋯はい」
「君へ告白してから随分と時間が経過してしまって⋯返事を根気よく待つつもりだったのだけど、申し訳ない、私はもう待てなくて王家に頼み込んでしまった。君の気持ちを無視する形になってすまない」
「⋯⋯⋯えっ?」
「⋯⋯⋯⋯知らない⋯のか?」
ゲートラン公爵家からの打診を知らないユリアーナにはシモンの言葉が理解できなかった。だから思わず疑問の言葉で返事をしたのだが、それにはシモンの方が少し慌てた。
だがいい機会を貰ったのだと直ぐに切り替えた。
「そうか知らなかったのか。では」
そう言って唐突にシモンはユリアーナの前に跪いて彼女を見上げた。
その間もずっと彼女の手は離さなかった。
「ユリアーナ・ロッサルト嬢。貴方のこれからの人生を支えていく権利を私に与えてください」
そう言ってシモンはユリアーナのその手に小さな袋を握らせた。
ユリアーナが開くとそこには“みちしるべ”の種が入っていた。
それを見てユリアーナの目には涙が溢れた。
「指輪を用意できなくて申し訳ない。でも貴方と共にこれからも在りたいと云う私の今の気持ちに偽りはないから。貴方にずっと惹かれています」
「シモン様ありがとうございます。私もこれからの人生を貴方と共に在りたいです。一緒にこの種をずっと育てていって下さい」
ユリアーナは長く待たせたシモンの告白の返事をする事が出来た。
涙の溢れるユリアーナを立ち上がったシモンは優しく抱きしめてくれた。
シモンからの長い説明が終わる。
ゲートラン公爵家とショーズ侯爵家の婚約は、周りをも巻き込んだ大きな事件としてアトルス王国では今後扱われて行くのだと彼はそう言って、ロッサルト公爵家への謝罪で締め括った。
シモンの婚約にユリアーナを絡めたのは、ダイナスの策略だった。だからゲートラン公爵家がどうであれ、シモンはこの事実を最近まで知らなかったのはカインがユリアーナに教えてくれた。
だからロッサルト公爵家の総意は、喩えシモンの婚約が原因だったとしても、彼に責任はないと考えていた。
真摯な謝罪にロッサルト公爵夫人のエリーヌが彼に温情を向けた。
「リーア、シモン様と二人でお話してきたら如何かしら?」
ユリアーナにはまだ知らされていなかったが、今日登城したのはダイナスの話やレストル病の薬に関してだけではなかった。
アトルス王国王家とゲートラン公爵家の連盟で、ライレーン王国を通してユリアーナとシモンとの婚約の打診が、正式にロッサルト公爵家に齎されていたのだった。
「⋯⋯お母様?」
ユリアーナは男性と二人になる事を薦める母に面食らったが、正直に云えばそれはとても嬉しい提案だった。思わず目の前に座るシモンの方を見ると彼もこちらを見つめていた。
反対側のとなりに座る父が「ん、ん、」と咳払いする音は耳に入っている。(どうしようかしら?)ユリアーナが迷っていると再度母が背中を押してくれた。
「貴方、商会に頼みたい事があると言ってらしたでしょう?丁度カインがいるわよ」
真ん中に座るユリアーナ越しに父に話しかける母。ユリアーナは恥ずかしかったけれど勇気を出した。
思えばいつもいつも自分は受け身ばっかりで、直ぐに相手のせいにしてしまっていた。オスカーとの事を反省したのだ、同じ事は繰り返しては駄目とそう思った。
「シモン様、領地の植物の事も相談したいです。資料が執務室にあるんです、アドバイス頂けますか?」
「⋯⋯⋯⋯はい、よろこんで」
シモンはそう言うと、ユリアーナより先に立ち上がりこちらのソファの方へと来てくれて、背凭れの後ろから手を差し伸べてくれた。
ユリアーナはその手を取って立ち上がる。母が気を利かせて通路の方へと避けてくれたので、手を重ねたまま部屋を後にした。
ちゃんとマールも後ろを着いてきてくれる。
ホワホワと体が舞い上がったようにユリアーナは逆上せていたから、本当はマールが後ろにいたのは気付かなかった。
応接室の扉が閉まる寸前に「マール頼んだぞ!」という父の声が聞こえたから、マールが着いてきてくれていることに気付けたのだ。
(お父様ったら恥ずかしい)
過保護な父にユリアーナは居た堪れないほど恥ずかしくて、顔を真っ赤に染めながらシモンを執務室へと案内した。
部屋に着く前には器用に二人の前に出たマールが扉を開いて中へと進んだ。
部屋の窓を見ると、まだ雨は止んではいなかった。
何から話せばいいかしら?
ユリアーナは薬草のアドバイスを求めてこの部屋に連れてきた事を、緊張からすっかり忘れてしまって話の取っ掛かりを探していた。
だがユリアーナの脳内の焦りは杞憂に終わる。
シモンの方から話を始めたからだ。
「ユリアーナ嬢。私は君の手紙を読んでいないから、おかしな事を言うかもしれないけれど許してほしい」
「⋯⋯⋯はい」
「君へ告白してから随分と時間が経過してしまって⋯返事を根気よく待つつもりだったのだけど、申し訳ない、私はもう待てなくて王家に頼み込んでしまった。君の気持ちを無視する形になってすまない」
「⋯⋯⋯えっ?」
「⋯⋯⋯⋯知らない⋯のか?」
ゲートラン公爵家からの打診を知らないユリアーナにはシモンの言葉が理解できなかった。だから思わず疑問の言葉で返事をしたのだが、それにはシモンの方が少し慌てた。
だがいい機会を貰ったのだと直ぐに切り替えた。
「そうか知らなかったのか。では」
そう言って唐突にシモンはユリアーナの前に跪いて彼女を見上げた。
その間もずっと彼女の手は離さなかった。
「ユリアーナ・ロッサルト嬢。貴方のこれからの人生を支えていく権利を私に与えてください」
そう言ってシモンはユリアーナのその手に小さな袋を握らせた。
ユリアーナが開くとそこには“みちしるべ”の種が入っていた。
それを見てユリアーナの目には涙が溢れた。
「指輪を用意できなくて申し訳ない。でも貴方と共にこれからも在りたいと云う私の今の気持ちに偽りはないから。貴方にずっと惹かれています」
「シモン様ありがとうございます。私もこれからの人生を貴方と共に在りたいです。一緒にこの種をずっと育てていって下さい」
ユリアーナは長く待たせたシモンの告白の返事をする事が出来た。
涙の溢れるユリアーナを立ち上がったシモンは優しく抱きしめてくれた。
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