護衛騎士が勝手に侍ります(泣)

maruko

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私のせいではありません

【14】

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皇子が帰国して1ヶ月が過ぎようとしていた。
ユメールは相変わらず叔父であるアーマリー公爵と宰相に派閥の事と帝国に付いての教育を施されていた。

「あ~もう何でこんな事になっちゃうのかしらね!」

今日何度めかの愚痴が始まりそうでナタリーは腹に力を入れてユメールを諭す。

「憤っても叫んでも詮無い事ゆえと、何度申し上げればよいですか?」

ユメールはマリーはまだまだ優しい方だったのだと己の侍女に(早く帰って来て!)と心の中で懇願する。

「まだもう少し休暇は残っておりますわよ」

お見通しのナタリーはユメールに容赦がない。
ナタリーの横でカリーナがニコニコしてユメールを見ている。
カリーナの父であるストーム公爵が先日ユメールの元へ叔父と一緒に連れ立ってきた。
平伏して感謝を述べるストーム公爵の親心に胸を打たれたのだが、ナタリーに教育されてるカリーナは流石侍女の仕事も卒なく熟すのでユメールの方が有難かったと思っている。

帰国したアントリックから手紙が来たが一読して腰が抜けた。

学友でもあるアントリックは約一年ちょっと机を並べた。
顔を見れば悪態か嫌味しか口にしなかった、そしてトドメがあの本だったから正直いい印象など皆無な男だ。
そんな彼がまだ頭も回らぬ朝イチに「婚約打診した、ほぼ決定事項!」と伝えて嵐のように帰国した時、無理やり覚悟を決めてなんならユメールは戦争に赴く気持ちの覚悟でもあった。

そして初めての手紙。
気持ちの悪いほど愛の言葉が並べられていて代筆か?と疑ってしまうほどだった。

最後の方には今度こちらに来たときには婚約誓約書にサインをして帝国に連れて帰ると認めてある。

もうわけがわからない。
アレが好きな相手にする態度だったのか?
そこから疑っていたのにこの紙切れ(不敬)にはその事の言い訳じみた事も書かれていて本当に気持ち悪いと思うユメール。

(こんな気持ちで帝国に行く覚悟なんて出来るわけないじゃない)

愚痴を声に出すとナタリーの苦言が飛ぶので心の中で愚痴る。

でも何か愚痴りたくて執拗いユメールはナタリーに話しかける。

「ねぇナタリーちょっと私のお喋りにつき合ってよ」

「ユメール様そんな時間はありませんよ、帝国の事を学ぶには時間が全く足りないのですから」

「何よ!それって私は被害者じゃない!こんな短時間で全部学ぶとかありえないわ、それなら十分学んでるお姉様が行けばいいのよ」

「本気で仰っていますか?」

「本気じゃないから此処で言ってるの!本気なら陛下の所に行くわ」

「ふぅ仕方有りませんわ、少しだけなら聞きます」

やっとナタリーが折れたのでユメールは嬉嬉として自分の疑問を話す。

「あの本のことなのだけど、みんなあの3人が私に懸想して婚約者と破綻させたなんて噂してたじゃない?」

「そうですね」

「でもよく聞いてみたら誰も懸想なんてしてなかったわよね」

「⋯⋯そうでしたか?」

「そうよ!ランディはセレナとの結婚の地盤の為に必死で鍛えたりしてたし、ファイゼンは私にミリナの面影を追ってたし、偽カイルに至ってはお姉様の策略だったじゃない!」

「⋯まぁ言われてみればそうですわね。まぁそれでは⋯⋯」

「そうよ!私知らずに勝手に流れ弾が当たって瀕死よ!」

「瀕死とまではいかないのでは?帝国の皇妃になるのですよ」

「望んでないわ、そして覚悟も足りないわ」

「そう言わずに国の為にお願いします」

「⋯⋯はっきり言うわね」

「そうでも言わなければユメール様は逃げ出しそうですし?」

この喰えない侍女は百戦錬磨のお婆だ!怖い!年嵩の女性を怖いと思ったのは王妃に次いで2人目で、女性の怖さにも色々あると学んだユメールだった。
因みに王妃の怖さは無邪気さと親切の怖さだ。

「ユメール様は何が怖いのですか?」

貴方よ!と言いかけて口に手を当てる。
おそらくナタリーの言ってることはユメールが今しがた心で思っていたのとは違うものだと思った。

「よく知らない国っていうのもだけどアントリックがよく解らないの」

「⋯⋯」

「ずっと悪態をつかれてたから私に気持ちがあるなんて思えないのよ」

「お疑いになってるのですか?」

「まぁはっきり言うとそうなのかも」

「⋯⋯少し失礼します」

ナタリーはユメールの言葉を聞き少し思案して侍女部屋に入っていった、そして出てきた時に2冊ほどの本らしきものを抱えていた。
それをテーブルの上に置いてユメールを見る。

「これはアントリック様の帝国での侍女様より旦那様に届けられたものです」

ユメールがそれを開くとノートになっていた。
半分から線が引いて有り左側にはびっしりと書いてあり反対側にはそれから線が伸びて別人の筆跡で書き直しがある。
ページをパラパラ捲ると途中までその状態が続いていた。

「これは?」

「あちらの侍女様が帝国での侍女の仕事を記載してくださっています。国ごとにやはりやり方も違いますので、私が目を通して今やってることが訂正しやすいように直しを入れている途中です」

「!」

「先日王妃様の女官長に聞きました所サリーナ様の侍女にはそういった物は届けられていません。それからもわかる通りこれは帝国の意志であると見受けられます」

「⋯⋯」

「ユメール様は望まれているのですよ、貴方様だからここまでしてくださっているのです」

「⋯⋯教えてくれてありがとう」

「どういたしましては不敬ですわね」

ナタリーの笑顔はクシャッと親しみのある顔だった。
ユメールはまた一層身の引き締まる思いとやはり帝国へ行くのは決定なのだという寂しさと⋯それでも覚悟を決めるには十分なそのノートに感謝するのであった。






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