護衛騎士が勝手に侍ります(泣)

maruko

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帝国編

【37】

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謁見室に案内されると思いきや、何故か庭に連れて行かれた。
アレ?アレレ?とユメールが困惑してるのを尻目に帝国のご立派な華美過ぎるほどの花達に囲まれた庭園の一画に、これまたご立派なガゼボが登場して、そこへ案内されたのだが⋯⋯。

ニコニコ顔で待っていたのは見目麗しい皇帝と皇后。

二人とも立ったまま歓迎してくれた。
その様にユメールは感激して自然と涙があふれる。己の失態に気付きこぼれないように必死に目に力を入れるのだけれどもユメールの意思をアントリックは尊重してくれなかった。
勝手にギュッと抱き締める。

(止めて~皇帝が、皇后が見てます~)

恥ずかしくて顔を上げられなくなったユメールを慮ってくれたのは皇后だった。
先程のテルネール公爵と同じ様に、ただ今回は皇后の扇子だったがアントリックの頭をポカッとはたきペリッと二人を引き離してユメールを抱き締めてくれる。

「リック!貴方はいつから阿呆あほうになったの?ユメちゃんが恥ずかしい気持ちになるのよ、こんな所で貴方の気持ちを優先するんじゃありません!」

(皇后ユメちゃんって何ですか?)
勝手に愛称を付けられて呼ばれたが、そう言えば今まで愛称なんて付けられたこともなかった。
気を張り詰めていたユメールの心をアントリックの次に溶かしてくれたのは皇后の温かさだった。

お互いに挨拶を交わし、何故かその間も皇帝まで立ったままで対応され恐縮するユメールは、もう彼らの中で“ユメちゃん”が確定して、何なら皇帝とアントリックは“ユメ”と呼び捨てになった。
二人は父母と呼ばれる事を切望したので今後、公の場以外では“お義父様”“お義母様”と呼ばないと拗ねると堂々と宣言された。

帝国の城ではユメールを大歓迎の様で、モンマルトルに色々遺恨があるはずなのに、その懐の深さにユメールは敬慕する。
そして皇后の後ろからひょっこり現れたアントリックのミニチュアが「お姉様」と登場して更にユメールに癒しを与えた。

アントリックの6つ違いの弟アーティールだ。
昔会ったアントリックよりは少し上なので、あの後の少し成長したアントリックを見ているようで何故か微笑ましい。
距離の近い皇帝一家なのだろうか?アーティールは歓迎の挨拶をしてユメールにギュッと抱きついて来て、アントリックに剥がされた。
何故か皇帝もそれに続こうとしてまたまたアントリックに睨まれている。

華美な庭園のその場所だけは威厳よりも、ただほっこりとした“家族”としてのふれあいが繰り広げられている。
そんな城でのスタートは、ユメールの今後を占う様で、後ろで控えていた彼女に付き従ってきた侍女と護衛騎士たちはホッと胸を撫で下ろすのであった。



3日後、婚約披露の為のパーティが催された。
皇帝の言葉に歓迎する者たちと、しない者達との顔色が交錯する。
ユメールはしっかりとその顔触れを目に刻む。
ご丁寧にアントリックは歓迎しない者達へユメールを紹介して回った。
おそらくはユメールに「この者たちには気を付けろ」と教えてくれているのだろう。
何故なら彼らの傍らには同じ位の娘がいたからだ。

その日のドレスはアントリックからではなく皇帝から贈られた。
それは皇帝がこの婚約を歓迎していると示す為だ。
だが浅はかな娘達はどう捉えるのだろうか?
そんな気持ちで袖を通したそのドレスはアントリックの目の色の鮮やかなオリオンブルー、その絹に刺繍されているのは帝国の象徴「鷹」と「薔薇」
鷹の羽を散らした様な図案に薔薇の花を胸と裾に散らしている。
その豪華なマーメイドラインのドレスを初めて見た時、ユメールは震えた。

帝国でその刺繍を纏えるのは皇帝一家だけなのだ。

そのドレスを纏ったユメールを見ても彼女たちの睨みは止まらない。

(これは先が思いやられるわ)
ユメールの心持ちを理解しているのか挨拶に赴く度にアントリックの繋いだ手に力が篭もる。

その度に見つめ合ってしまうのが彼女達の心の火に油を注いでいるのだが、アントリックはそれさえも見極めようと、精力的に挨拶に回る。

一通り終えるとユメールを席に座らせて飲み物を振る舞ってくれた。

一口喉を潤すとホッと何気に息を吐く。
会場を見渡すとまだまだ此方を睨む蝶や蛾がいるが、そんな者は見ても仕方がない。
ユメールの目に映るのは彼女の護衛達だ。

学園に同じく通う彼等には本日アントリックから指示が出ている。
皆がちゃんと働いているのか、つい心配で目が其方に向いてしまう。

「大丈夫だろう、皆心得ている」

「そうだと良いのですが」

「精鋭を選んだつもりだぞ、私の目を信じろ」

ユメールは頼もしい婚約者の目を眩しく見つめた。
この3日後にはいよいよ学園に編入する。
婚約する迄の騒動でユメールはモンマルトルでも半年は休学していた、久しぶりに通う学園は国まで違って緊張してしまう。
だがノルティに聞いた学園の校風は割と自由だった。
(まぁ何とかなるでしょう)
不安ではあるがアントリックもいる。
皆もいる。
あとは自分の“素”が出ませんようにと祈るユメールだった。



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