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帝国編
【38】
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編入日、意図したように以前の国境警備隊とは反対側の警備隊に問題が起こり、已む無くアントリックは其方へ旅立った。
「はぁ小賢しいことをしてくれるわね」
朝食の時、皇妃はあからさまな怒りをベーコンエッグにぶつけていた。
ユメールも負けじとソーセージを切り刻む。
「ユメちゃん大丈夫よ、いざとなったら私が学園に乗り込むから!」
皇妃の力強い言葉にユメールは頷き深く感謝するが、これ位でへこたれてはアントリックの婚約者に相応しくない。
なんて言ったって私達には“愛”がある!
そう思いユメールは皇妃へ微笑み言葉を発す。
「お義母様、私は大丈夫です。学園にはミリナも護衛達も帯同しますし、それにこれくらいでお義母様の力をお借りしては帝国の次期皇太子妃の名が廃りますわ」
「よく言ったユメ!私もバックアップは惜しまないからな」
皇帝の力強さに頼もしさを感じ微笑みかけるユメールに横からも援護の声がかかる。
「お姉様、隣の敷地には僕もいますからね!」
可愛い義弟の声に目が細くなる。
そんなほんわかモードのまま学園に到着したユメールへ始めの仕掛けは、馬車の門で起こった。
「此処から入れられては困るのだが⋯」
学園の門番がユメールの乗る馬車を止める。
一緒に乗ってきていた新人護衛のスパルディンが外に出て、状況をユメールに説明する。
この馬車は皇帝からユメールへ下賜された馬車なのだが皇太子時代皇帝が使用していた物だ。
おそらく其れがこの門番には通じていないのか、通じていても何処かの上位貴族の思惑で止めているのかはユメールには解らない。
だがこの騒動は想定内だった。
ユメールは馬車から降りて門番へと顔を向ける。
その美しさに門番は怯むが自分の主人からの依頼だからと腹に力を込める。
その様を見てユメールは上位貴族の方だったかと門番を憐れんだ。
「職を無くしたいの?」
思わず呟いてしまったユメールの言葉に朗らかに動揺する門番。
「この馬車は皇帝より下賜された物、なぜ貴方に通じてないのかは解らないのだけど其れでも駄目かしら?」
「か、確認して来ます」
そう言って何処かへ行こうとした門番を止める声があった、別の馬車で既に学園内に入っていたノルティだ、横には前日挨拶された学園長を連れて来ていた。
「君、もうこのまま退職の手続きをして帰りなさい、君に頼んだ人が雇ってくれるといいね」
「なっ!学園長そんな⋯」
「私は皆に本日モンマルトルより王女が編入してくると伝えた、そして皇子の婚約者だともね。その人を皇族専用門から締め出そうとするなんて、はぁ君死にたいの?」
そう言ってユメールの危惧した通りその門番達は解雇になった、予め想定していたのだから代わりの門番もちゃんと雇っている。
学園長の用意周到さにも笑えてしまう。
そしてノルティの迅速な行動。
「学園長お騒がせして申し訳ありません」
「王女様が謝ることではないです、寧ろ此方の手綱がゆるゆるで申し訳ない思いです」
「まだ続きそうですね」
「えぇ軍隊派は執拗いですからね、矢面に立たせてしまって王女様にはどれだけ侘びても足りません」
「気にしないで、其のつもりでいるのだから」
ユメールの言葉に安堵した学園長は一先ず園内に戻った。
モンマルトルには王家一家の数だけ派閥が存在する。
多い分だけ分散されるので一つ一つは、そこまで大きくはない。
アントリックに聞いた帝国の派閥は完全に二分化していた。
中立派はほんのちょっぴり、皇族派と軍隊派だ。
本来は軍隊は皇帝がトップなのに何故に軍隊派等が出来るのか、ユメールは本気で疑問だったが軍隊でも帝国の為に已む無く軍人になった家と出世の為に軍人になった家との差だという。
要はもっと戦って武勲を上げたい。
出世の為に戦いたいと思っている人達が軍隊派なのだという。
皇帝は国が大きくなりすぎるとそれに伴う歪が生まれるのは国の安寧の為には良くないというお考え、周辺諸国の小さい国たちを保護する形で取り込んで十分に大きくなったからこれ以上は態々戦う必要性がないと、軍隊は国を守る為に存在していてその為に戦うのは止む無しだが、此方から仕掛ける必要はないとユメールに話してくれた。
そして軍隊派は少しずつ減ってきているので、これに危機感を覚えた軍隊派はアントリックと軍隊派の娘と婚姻を結ばせたかったそうだ。
アントリックの強固な反対で実現せずに今回の婚約が結ばれたので、今軍隊派はユメールを精神的にどうにかしようと躍起になっている。
何故精神的にかというと物理的にするとモンマルトルと戦争に発展するが、おそらく皇帝はユメールに危害を加えた者をモンマルトルに渡して手打ちにするのみだから、それだと意味がないので精神的に追い詰めて国に逃げ帰らせようと試みていると思われる。
帝国に来てから皇帝とテルネール公爵に矢面に立たせることになるが絶対に守るからと頭を下げられたので、ユメールはそれを了承している。
(精神攻撃って軍隊は結構得意よね)
今朝の行いが先制パンチなら門番を犠牲にして仕掛けたことになる。
(この作戦考えた人、頭悪いのかしら?)
ユメールの素朴な疑問だった。
「はぁ小賢しいことをしてくれるわね」
朝食の時、皇妃はあからさまな怒りをベーコンエッグにぶつけていた。
ユメールも負けじとソーセージを切り刻む。
「ユメちゃん大丈夫よ、いざとなったら私が学園に乗り込むから!」
皇妃の力強い言葉にユメールは頷き深く感謝するが、これ位でへこたれてはアントリックの婚約者に相応しくない。
なんて言ったって私達には“愛”がある!
そう思いユメールは皇妃へ微笑み言葉を発す。
「お義母様、私は大丈夫です。学園にはミリナも護衛達も帯同しますし、それにこれくらいでお義母様の力をお借りしては帝国の次期皇太子妃の名が廃りますわ」
「よく言ったユメ!私もバックアップは惜しまないからな」
皇帝の力強さに頼もしさを感じ微笑みかけるユメールに横からも援護の声がかかる。
「お姉様、隣の敷地には僕もいますからね!」
可愛い義弟の声に目が細くなる。
そんなほんわかモードのまま学園に到着したユメールへ始めの仕掛けは、馬車の門で起こった。
「此処から入れられては困るのだが⋯」
学園の門番がユメールの乗る馬車を止める。
一緒に乗ってきていた新人護衛のスパルディンが外に出て、状況をユメールに説明する。
この馬車は皇帝からユメールへ下賜された馬車なのだが皇太子時代皇帝が使用していた物だ。
おそらく其れがこの門番には通じていないのか、通じていても何処かの上位貴族の思惑で止めているのかはユメールには解らない。
だがこの騒動は想定内だった。
ユメールは馬車から降りて門番へと顔を向ける。
その美しさに門番は怯むが自分の主人からの依頼だからと腹に力を込める。
その様を見てユメールは上位貴族の方だったかと門番を憐れんだ。
「職を無くしたいの?」
思わず呟いてしまったユメールの言葉に朗らかに動揺する門番。
「この馬車は皇帝より下賜された物、なぜ貴方に通じてないのかは解らないのだけど其れでも駄目かしら?」
「か、確認して来ます」
そう言って何処かへ行こうとした門番を止める声があった、別の馬車で既に学園内に入っていたノルティだ、横には前日挨拶された学園長を連れて来ていた。
「君、もうこのまま退職の手続きをして帰りなさい、君に頼んだ人が雇ってくれるといいね」
「なっ!学園長そんな⋯」
「私は皆に本日モンマルトルより王女が編入してくると伝えた、そして皇子の婚約者だともね。その人を皇族専用門から締め出そうとするなんて、はぁ君死にたいの?」
そう言ってユメールの危惧した通りその門番達は解雇になった、予め想定していたのだから代わりの門番もちゃんと雇っている。
学園長の用意周到さにも笑えてしまう。
そしてノルティの迅速な行動。
「学園長お騒がせして申し訳ありません」
「王女様が謝ることではないです、寧ろ此方の手綱がゆるゆるで申し訳ない思いです」
「まだ続きそうですね」
「えぇ軍隊派は執拗いですからね、矢面に立たせてしまって王女様にはどれだけ侘びても足りません」
「気にしないで、其のつもりでいるのだから」
ユメールの言葉に安堵した学園長は一先ず園内に戻った。
モンマルトルには王家一家の数だけ派閥が存在する。
多い分だけ分散されるので一つ一つは、そこまで大きくはない。
アントリックに聞いた帝国の派閥は完全に二分化していた。
中立派はほんのちょっぴり、皇族派と軍隊派だ。
本来は軍隊は皇帝がトップなのに何故に軍隊派等が出来るのか、ユメールは本気で疑問だったが軍隊でも帝国の為に已む無く軍人になった家と出世の為に軍人になった家との差だという。
要はもっと戦って武勲を上げたい。
出世の為に戦いたいと思っている人達が軍隊派なのだという。
皇帝は国が大きくなりすぎるとそれに伴う歪が生まれるのは国の安寧の為には良くないというお考え、周辺諸国の小さい国たちを保護する形で取り込んで十分に大きくなったからこれ以上は態々戦う必要性がないと、軍隊は国を守る為に存在していてその為に戦うのは止む無しだが、此方から仕掛ける必要はないとユメールに話してくれた。
そして軍隊派は少しずつ減ってきているので、これに危機感を覚えた軍隊派はアントリックと軍隊派の娘と婚姻を結ばせたかったそうだ。
アントリックの強固な反対で実現せずに今回の婚約が結ばれたので、今軍隊派はユメールを精神的にどうにかしようと躍起になっている。
何故精神的にかというと物理的にするとモンマルトルと戦争に発展するが、おそらく皇帝はユメールに危害を加えた者をモンマルトルに渡して手打ちにするのみだから、それだと意味がないので精神的に追い詰めて国に逃げ帰らせようと試みていると思われる。
帝国に来てから皇帝とテルネール公爵に矢面に立たせることになるが絶対に守るからと頭を下げられたので、ユメールはそれを了承している。
(精神攻撃って軍隊は結構得意よね)
今朝の行いが先制パンチなら門番を犠牲にして仕掛けたことになる。
(この作戦考えた人、頭悪いのかしら?)
ユメールの素朴な疑問だった。
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