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帰国編
【62】sideアントリック
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ユメが帝国を去って早くも一週間が過ぎた。
あの日の事は悪夢のようだ。
幼い頃からずっと彼女の事を好きだった、恋をしていた。
心の底から欲したのは彼女が初めてだった。
それなのに⋯⋯。
私は自分で手放したのか?
あの日のユメの声が、言葉が、脳裏に蘇る
「ご存知ですか?恋情というのは流れるのです、ずっと思わなければなくなるのです。其れを貴方は私へ向けてくださいました。けれども空気というのはなくてはならないものなのです生きていく上で。お解りですか?貴方はマルデリータ様が居ないと生きて行けないと私へトドメを刺したのですわ」
「あの時貴方は笑って燥いでいました、幼い子供のように。私には今まで一度たりとも見せない笑顔です。マルデリータ様はナリッサに似ているのでしょう?姿ではなく雰囲気や仕草が。だから貴方は追放してしまった空気を今取り戻して二度と離すまいとしているのです。そして何れあの時の笑顔をマルデリータ様へ向けるのです。其れを私にも一緒に見ろと言っているのですよ」
「いえ既に消えかかっていますわ、だって御見舞にも来ずその日に、私が居ない日にマルデリータ様と昼食を共にし学園帰りに寄り道していたのですから。そして帰ってきてからも訪ねて下さいませんでした」
「貴方が勉強会をすると言ったあの日で私への気持ちが終わったのですわ」
マルデリータを空気と表現した事がこんな事になるなんて思わなかった。
ユメが言っていた空気とは無いと困るものだと、そう言ったがこの一週間私は学園に通ってもいないし彼女が訪ねてきても会っていない。
其れでも胸は痛まない。
辛くもない。
今はユメの事しか考えられない。
私は思い違いをしていたのではないか?
ユメの言った事が本当なら空気の様な存在とはユメの方ではないのか?
彼女はナリッサの事も言っていた。
私は断じてナリッサに恋などしていないし、強いて言うなら侍従達と同じだった。
それなのに彼女といた時の笑顔をユメには見せたことが無いとはどう言うことだろう。
ナリッサと話している様をユメはモンマルトルで見たと言っていた。
その時の様子とは何だ?
解らない、私にはユメの言った言葉が解らないのだ。
悩んだ私は皇妃に会いに行った。
「あら、ポンコツ皇子。何の用?」
「酷い物言いですね」
「ポンコツにポンコツと言っただけよ」
「⋯母上に相談が⋯あります」
「自分で悩めと言いたいのだけど⋯一週間悩んで出ない答えが今後出るとも思えないわね」
「ユメが言った言葉の意味が解らないのです」
「呆れた、そこからなの?まぁでもユメちゃんが言った言葉を私は知らないから」
私は母上にあの日のやり取りを話した。
恥ずかしかったがその前後の私の気持ちも伝えた。
「貴方そんな事思っていたの?勉強会が無くなるのが寂しいだなんて!それだけでも裏切りよ。もう振られちゃったんだから諦めたら?」
「私は振られたのですか?」
「そうでしょう、だって国に帰ったのだもの」
「でも婚約解消にはなってないと聞きました」
「其れは何れ貴方が解消するだろうと思ったからでしょう」
「何故私が!そんな事を思うはずないでしょう」
「だ・か・ら」
母上は人差し指を立てて私の顔の前に振りかざした。
「思うはずがないと思っているのは貴方だけって事よ!ユメちゃんは貴方に対して信頼が無くなったのでしょう。そういう事をしかねないと思ったから帰ったのでしょう」
「信頼」
「えぇリック、人と人が出会って知り合って仲良くなって其れは育む物なの。ユメちゃんは貴方を信頼したから国を出て貴方に付いてきたのよ、其れを貴方の軽率な行動が反故にしちゃったの」
「そんな」
「ユメちゃんは王女よ、其れを到底王女らしからぬ女に貴方の気持ちが動いたのだから我慢できなかったでしょうね」
「どういう事ですか?」
「自分に置き換えてみたらどう?畏れ多い皇子にはそんな事はできないかしら?」
「自分にですか?」
「えぇ貴方もサイラムもそんな事はする必要が無い程の権力を持っているから解らないのよ。どうせ悋気だ何だと言ったのでしょう」
「⋯⋯はい」
「貴方がユメちゃんを疎んじていたのは事実でしょう」
「其れはユメが勉強会の事で私を避けるから文句を言ったら、護衛達と仲睦まじく宛付けをするから」
「ほら自分でも解ってるじゃない、嫌だったのでしょう。ならば何故貴方も嫌がった事をユメちゃんが嫌がるとは思わなかったのかしら?」
私は漸くユメの気持ちが解った。
あの時点で勉強会を辞めるべきだった、いやそもそも勉強会をしなければよかったのだ。
「貴方がナリッサを好きだとは思わなかったけれど⋯⋯本当に好きなの?」
「好きではありません!」
「でもナリッサの面影が垣間見えて勉強会をしたんでしょう?」
「そうなのですが⋯⋯懐かしい気持ちになって」
「最低ね貴方、今ユメちゃんが居なくなったから、だからユメちゃんを求めているのではないの?無い物ねだりをしているだけじゃないの?ナリッサの事もそうなんじゃない?あの変な王女の事も。完全に居なくなってしまったら其方を追い求める、質の悪い男ね!」
「⋯⋯そんな」
あの日の事は悪夢のようだ。
幼い頃からずっと彼女の事を好きだった、恋をしていた。
心の底から欲したのは彼女が初めてだった。
それなのに⋯⋯。
私は自分で手放したのか?
あの日のユメの声が、言葉が、脳裏に蘇る
「ご存知ですか?恋情というのは流れるのです、ずっと思わなければなくなるのです。其れを貴方は私へ向けてくださいました。けれども空気というのはなくてはならないものなのです生きていく上で。お解りですか?貴方はマルデリータ様が居ないと生きて行けないと私へトドメを刺したのですわ」
「あの時貴方は笑って燥いでいました、幼い子供のように。私には今まで一度たりとも見せない笑顔です。マルデリータ様はナリッサに似ているのでしょう?姿ではなく雰囲気や仕草が。だから貴方は追放してしまった空気を今取り戻して二度と離すまいとしているのです。そして何れあの時の笑顔をマルデリータ様へ向けるのです。其れを私にも一緒に見ろと言っているのですよ」
「いえ既に消えかかっていますわ、だって御見舞にも来ずその日に、私が居ない日にマルデリータ様と昼食を共にし学園帰りに寄り道していたのですから。そして帰ってきてからも訪ねて下さいませんでした」
「貴方が勉強会をすると言ったあの日で私への気持ちが終わったのですわ」
マルデリータを空気と表現した事がこんな事になるなんて思わなかった。
ユメが言っていた空気とは無いと困るものだと、そう言ったがこの一週間私は学園に通ってもいないし彼女が訪ねてきても会っていない。
其れでも胸は痛まない。
辛くもない。
今はユメの事しか考えられない。
私は思い違いをしていたのではないか?
ユメの言った事が本当なら空気の様な存在とはユメの方ではないのか?
彼女はナリッサの事も言っていた。
私は断じてナリッサに恋などしていないし、強いて言うなら侍従達と同じだった。
それなのに彼女といた時の笑顔をユメには見せたことが無いとはどう言うことだろう。
ナリッサと話している様をユメはモンマルトルで見たと言っていた。
その時の様子とは何だ?
解らない、私にはユメの言った言葉が解らないのだ。
悩んだ私は皇妃に会いに行った。
「あら、ポンコツ皇子。何の用?」
「酷い物言いですね」
「ポンコツにポンコツと言っただけよ」
「⋯母上に相談が⋯あります」
「自分で悩めと言いたいのだけど⋯一週間悩んで出ない答えが今後出るとも思えないわね」
「ユメが言った言葉の意味が解らないのです」
「呆れた、そこからなの?まぁでもユメちゃんが言った言葉を私は知らないから」
私は母上にあの日のやり取りを話した。
恥ずかしかったがその前後の私の気持ちも伝えた。
「貴方そんな事思っていたの?勉強会が無くなるのが寂しいだなんて!それだけでも裏切りよ。もう振られちゃったんだから諦めたら?」
「私は振られたのですか?」
「そうでしょう、だって国に帰ったのだもの」
「でも婚約解消にはなってないと聞きました」
「其れは何れ貴方が解消するだろうと思ったからでしょう」
「何故私が!そんな事を思うはずないでしょう」
「だ・か・ら」
母上は人差し指を立てて私の顔の前に振りかざした。
「思うはずがないと思っているのは貴方だけって事よ!ユメちゃんは貴方に対して信頼が無くなったのでしょう。そういう事をしかねないと思ったから帰ったのでしょう」
「信頼」
「えぇリック、人と人が出会って知り合って仲良くなって其れは育む物なの。ユメちゃんは貴方を信頼したから国を出て貴方に付いてきたのよ、其れを貴方の軽率な行動が反故にしちゃったの」
「そんな」
「ユメちゃんは王女よ、其れを到底王女らしからぬ女に貴方の気持ちが動いたのだから我慢できなかったでしょうね」
「どういう事ですか?」
「自分に置き換えてみたらどう?畏れ多い皇子にはそんな事はできないかしら?」
「自分にですか?」
「えぇ貴方もサイラムもそんな事はする必要が無い程の権力を持っているから解らないのよ。どうせ悋気だ何だと言ったのでしょう」
「⋯⋯はい」
「貴方がユメちゃんを疎んじていたのは事実でしょう」
「其れはユメが勉強会の事で私を避けるから文句を言ったら、護衛達と仲睦まじく宛付けをするから」
「ほら自分でも解ってるじゃない、嫌だったのでしょう。ならば何故貴方も嫌がった事をユメちゃんが嫌がるとは思わなかったのかしら?」
私は漸くユメの気持ちが解った。
あの時点で勉強会を辞めるべきだった、いやそもそも勉強会をしなければよかったのだ。
「貴方がナリッサを好きだとは思わなかったけれど⋯⋯本当に好きなの?」
「好きではありません!」
「でもナリッサの面影が垣間見えて勉強会をしたんでしょう?」
「そうなのですが⋯⋯懐かしい気持ちになって」
「最低ね貴方、今ユメちゃんが居なくなったから、だからユメちゃんを求めているのではないの?無い物ねだりをしているだけじゃないの?ナリッサの事もそうなんじゃない?あの変な王女の事も。完全に居なくなってしまったら其方を追い求める、質の悪い男ね!」
「⋯⋯そんな」
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