前世魔王の伯爵令嬢はお暇させていただきました。

猫側縁

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まさかこんな所で腕を振るえるとは思っていなかったが、やはり、やっててよかった!料理長!我はきちんとご飯たべるぞ!こんな砂しかない異郷の地でも!

『いいからさっさと作りなさいよ…』
「む。先ずは食材の命と、料理を教えてくれた師たちへ感謝をしてから取り掛かるのがマナーだろう」
『ま、まあそうネ…。そう、なんだけど』

リィがなんとも言えない感じでいるのだが、これが非常識なら、常識とはとんでもなく命と教えに対して非礼的だと思わないか?

では早速。先ず卵を人数分用意して、ボウルに溶いて、その間に酒とハーブで自前のとり肉の臭みを取って柔らかくする為に置いておく、干しボグ肉は細かく切って、野菜を刻んで、あとはフライパンに野菜、ボグ肉、卵を一纏めにして焼く!
中が半熟になるように形を整えつつもう片方のフライパンで焼き上げたハーブチキンを皿に盛り、その上にオムレツを盛り付け、手早くフライにした芋を添えれば完成。

スープを作りたい所だが、残念ながら器をまだ仕入れていないからな…。致し方のない事だ。

「完成!」

コリー達は目の前に並んだ朝食に目を輝かせている。うむうむ。美味しそうだろうそうだろう。

「簡単なものだが、状態異常回復と体力回復、ついでに基礎体力向上の効果もある。しっかり食べてくれ…特にルナ」
「り、料理でそんなポーションみたいなことができるの…!?」

2人は驚き、1人は興奮。勿論後者はルナだ。我の手料理と騒いでいる。
料理での身体強化…。寧ろ出来ないのか?と思わなくもないのだが、とりあえず料理は温かいうちに食べてこそだ。リィにも野菜の盛り合わせを用意して、我も自分のものに手をつける。

うむ。うむ!卵ふわふわ、肉も硬すぎず、ハーブのおかげで後味もよし!

我が食べている為安心したのか、ルナ達もおずおずと手をつけ始め、完食するまで束の間だった。非常に喜んでくれた。作った甲斐があったものだ。

「料理で回復だなんて…。アリスちゃんが加えた材料に秘密があるの?」
「けどさ、コリー。入ってたのは全部一般的な食料だっただろ?」

……ミエラが一般的と言うが、それは大元の動物を見ていないから言えるセリフなのやもしれん。コカトリスの卵は、その栄養価を濃縮ささる為に通常の食用卵同様の大きさまで魔法で小さくしたし、肉については既に捌いて使いやすい大きさにしたものを取り出しているからな。
生前はどんな化け物だろうが、捌いて部位にしてしまえばただの肉。普通の鶏肉に見えただろうな。
この料理の肝は、その卵と、もう一つあるとするならばハーブだろうな。コリー達が持ってきたもの以外に、我が独自に足したものだ。
数種類を混ぜる事で、それが持つ効果を倍増させるよう我が魔法を使ったし。
お陰でコリー達の体調も完璧に回復。しかもバフをかけてやらんでも全身強化された状態。今なら多少の毒では倒れるはずもない。…今日の晩までくらいは保つだろうな。

……ただ1つ、残念な事があるとするのなら。

「アリスちゃぁあん♡」

……ルナのこれが、状態異常ではないと言う事を様々見せつけられる結果になった事だろうか。時間にすればほんの数日と数時間しか関わっていないのだが、既にうざい。我、帰りたい。
仕方がないので我とリィを囲むように結界を張って、半径1メートル以内には入れないようにした。それ以上近づこうとすると弾かれる。ついでに電気ショック付き。既に何度かビリビリになっているルナだが、それにすら恍惚としている。
…いや、待てよ?……いたな。こういうやつ。
魔王の時、こういう…我に心酔しきって飴をやろうが鞭をやろうが戦場に放り投げようが、狂喜乱舞してた輩が。狂気の沙汰としか思えない。しかし我に不利になる事だけはしなかったので、放置してもあまり問題なかった記憶がある。……それと同類なら、放置でいいか。別に怖くないや。
それにこの手のやつは…。

「我、構われすぎるの嫌い」
「アリスちゃん、私、いつでも力になるから、気軽に声をかけてね!」

ルナが即座に我から離れ、我から1番遠いコリーの隣に収まり、歩き始めた。我の方には視線も寄越さない。うん。

この手の奴は、我に嫌われるのが1番嫌でどんなに不利益を被ろうが、こう言えば静かに控えるという、扱いやすいやつでもあった。
何度かに一度は箍が外れて色んな感情で我に飛びついて来たものの、その度戦場にぶち込んだり、井戸の底に落としたりしてやった後はまた暫く大人しくなっていた。コリー達とはこの件を終えたら暫く会う予定も無いので、この対処法で問題無いだろう。

先程までとの行動の差に暫く信じられないものを見る目でルナを見ていたが、コリーとミエラも落ち着いたらしい。
申し訳無さと驚愕、そして感謝を込めたような目で、コリーは我に手を差し出した。

「アリスちゃん、改めてよろしくね」
「こちらこそ」

我もそれを握り返した。鍛錬を積んだいい手だった。
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