前世魔王の伯爵令嬢はお暇させていただきました。

猫側縁

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皆さんこんにちは!私、面白い事と誰もしたことがない事を始めるのが大好きな冒険者アリス様!自尊心と好奇心と悪戯心が強めな10歳。……前世合わせたらうん千うん十歳。


まあ、それはさておき。

「そういう訳で、採石場に行こうと思う」
「かしこまりました!」
「御心のままに」

『いや、どう言う訳ヨ』

リィが冷静にツッコんだ。ナイス相棒。危うくこのまま話がトントン進んでしまうところだった。

「…私まだ理由を言ってないけど…?」
「アリス様は行きたいんですよね?」
「うん」
「であれば理由など極論どうでもいいです」
「その通り」

はい。こういう人たちなので、今から説明に入る。よく聞け。

「拠点を作るっていう点については私も賛成。でも、一定の場所に長く居付く気のない私が、土地も家も持っているのは無駄」

ここまではご存知の通りだ。リィたちも理解しているらしく頷いて応えた。

「そこで、私が移動するのと同時に移動する住処があれば万事解決」

それを聞いた料理長が、組み立て式の住居を作らせ、それを我が収納して持ち運ぶということかと質問する。うむ。違う。

「アリス様なら組み立て式なんて簡素なものではなく、私の屋敷くらいの大きさ余裕で運べる。つまり、私の屋敷のひとつを丸々収納し「もっと違う」……」

……今度は尻尾まで見えてきた。

まったく、我の予想を当てられもしないとは…困った部下達だ。別に困ってないけどな。言ってみただけだ。我が考えてる事言い当てられたらそれはそれで不満。誰でも想像つく事なのだと分かってしまったら我のモチベはマイナスを極めてもう拠点探しどころではない。働くことすら放棄する!
料理長は毎日毎日我の為に料理を作っては届け仕事して作って届けして、ラギアは貴族としての権利を周囲への影響考えず使いまくって我の快適なニート生活をより充実したものにすることになるぞ!!?

…あ、だめだ。頼まれずとも嬉々として我を養うぞあの2人。

『ではどうなさるのですか?』
「空の旅は快適だったな?」
「アリス様の魔法があってこそでしたが、そうですね。……まさか…飛空艇を作ってそれを拠点に?」
「今すぐ造船所に発注をかけます!」
「ラギアは待て。…飛空艇、ではない。そこから着想を得たのは間違いないが。
空は空でも船ではない。島だ」

船は旅の乗り物だからいいのだ。移動手段に欲しくはあるが、居住地としてはイマイチである。ならば、我の家を乗せたいわゆる空島を作ってしまえばいいと思わないか?

『いや、いいも何もそんな発想して実現するのご主人ダケな時点で名案だろうが普通じゃナイわ』

リィが冷静にツッコんだ。いいんだこれは。最先端を行くのが我ぞ!

「だから採掘場なのですね!ゴロゴロとした岩を空島の土台にしようと!」
「うん、まあ」

流石ですアリス様とラギアが我を讃える。……うむ、すまんラギア。前世はもっとクールな仕事のできる隙のない男だったのに、我を(というか前世の我を)思うばかりになんかもう…尻尾振らせてばかりだな。

『アリス様以外には"以前の"ままですから、気にしなくてもよろしいのでは?』

ルシアが何でもないことのように言う。
……それもそっか。我もこの可愛らしい容姿を手に入れる前はかなりミステリアスなクール系魔王様(自称)だったもんな!今とは真逆!

『………………アリス様はほぼ変わられておりませんが…』
「ん?すまんルシア、聞こえなかった。何か言ったか?」

ルシアは綺麗に笑って何もと答えた。そうかそうか。ならよし!

料理長は少し考える素振りを見せた。

「アリス様、空島の土台ですが、必ず岩でなくてはいけませんか?それから、どの程度の大きさが望ましいのでしょうか。ラギアの屋敷が収まるくらいですか?」
「必ずしも岩でなくてもいい。土魔法でいじれる材質で、ある程度量があれば巨大な石の台くらい容易く作れるからな。大きさは…うん、ラギアの屋敷を含む周辺が収まるくらいでいいかな。野菜とか作りたいし」
「…では、例えばそれは…、瓦礫でも構わないということでよろしいでしょうか?」
「うん。量さえあれば」

土台は岩の材質に変質させて、上の方には土を敷く予定だからな。ああ!土台の岩を船のような形にしてもいいな。つくるのたのしみ。わくわく。

料理長は何かアテがあるのか、少し待って欲しいと言った。ギルマスに何やら用事があるらしい。


そして、翌日。

我々は王都から離れ、地道に目的地へと向かっていた。


『ご主人、……太った?』
「オブラートに包むって言葉を知っているか?リィ」

我、レディーぞ?その言い方はあんまりだ。我だって以前リィが肥えたと伝えるときは気を遣ってやったのに。……というか太ってない!我の体調管理および体型管理は完璧だ!

「料理長の料理によって、一定に保たれている」
『…それもそうネ』

じゃあ何故かしらとリィが疑問に思いながら走る。かなりの速さで進む馬車と並走する。

……重いのは、多分猫たちがリィの上に乗って昼寝してるからだと思うが、言ったら振り落としそうだしやめておこう。最悪我が落ちる。

ちなみに馬車には料理長とルシアとラギアが乗ってる。狐は……馬車引いてる。人型メイド服姿なので、さながらあれは人力車。人型でリィと並走できるのは単に魔法の力ではあるが、周囲から見ると2度見どころか3度見したい光景だと思う。

「シャッカ。大丈夫か?」
『問題ございません。主様!』

寧ろここ最近走り回れなかったので、楽しいと本人が言うから、大丈夫か。馬車の中も、…まあ、ルシアがいるし、乗っているのは料理長とラギアだからな。いくら馬車が壊れる勢いで揺れようが問題ないだろう。

シャッカというのはこの狐の名前だ。"灼華"と書くらしい。丁寧に書いてくれた。料理長とラギアがこれをみた際に、めちゃくちゃ顔を顰めて、

「「……極東の国を火の海にした化け物の名前がこんなだったような」」

…と、言っていたが、気のせいだろう。だって灼華かわいいし。知らないって言ってたし!笑顔で!!!

まあこの話は置いておこう。目的地、魔獣の暴走の被災地が見えてきた。
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