前世魔王の伯爵令嬢はお暇させていただきました。

猫側縁

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最終的に我が解決したことになっている先日の魔獣暴走は、エディンで食い止められる前に大小合わせて7つもの村や町を破壊した。

派遣された冒険者や、医療系によって住民達の殆どは酷い怪我人も含めて回復したが、それでも建物に押しつぶされた者もいたし、支援の手が届いたときには手遅れだった者もいた。

改修工事は進んでいないらしい。

そもそも瓦礫が邪魔なのだが、それを避けるのにはかなりの人手が必要。何か重要な拠点ではない限りは、王都から人員が派遣されるわけでもない。しかも今回潰されたのはかなり小さな村や町ばかり。

住人たちは移住するという選択肢も勿論ある。その為、破壊された町の中には再生を放棄して別の町や王都へと移り住むことを決めたところもあるという。


悲しい話だな。天災ではよくある事だが。
しかし、それで割り切れるものでもない。今まで住んでいた場所に愛着もあろう。その上今回は、天災ではなく、何者かが意図して起こしたこと。

…わざと逃した本人が言うのもアレだが、我なら捕まえて簀巻きにして三日三晩魔獣と同じ檻に入れ、這いつくばって逃げるミノムシと嬲るように遊ぶ魔獣を楽しんだ後、…そいつの大事なものを一つ残らず、潰すだろうな。
それこそ、町も、人も。…国すらも。

深い悲しみとやりきれない気持ちを抱えつ、瓦礫の山に涙を流し、心が折れて諦める人やヤケクソで瓦礫に手をかけ復旧を進めようと汗水流して働く住民達は今、

『アリス様~ぁ。そろそろお肉が無くなりそうですわぁ~』
「うむ。捌き終わるからちょっと待て」

住民、達は今…

「今日は飲んで騒ぐぞーーー!皆酒は持ったか!」

大宴会してる。いつの間に用意したのか大天幕には町の名前と復興祭の文字が踊っている。

いぇーい。……歓声がまた上がった。男衆の野太く何度目か分からない乾杯の音頭と歓声が響く。……コイツらテンション高っ!

「あ、あの……どうか私たちにやらせてください。皆様に助けていただいた上に無償でこのような食事まで提供していただくなんて…」

と、町の女性達が声をかけてきたが、断って食事に戻らせる。ここ数日食事もままならなかった身体は薄い。

すぐに健康体になれとは言わんが、満腹になるまで食べてから言って欲しい。男衆を見習え!早くも食い倒れ飲み倒れしてる奴がいるからな!

ここは重傷者は出たものの死者は出なかった町の跡地。…の筈が、何故か町は以前のように元通り建物が建ち並び、魔獣に襲われたとは思えない程ピッカピカである。なんならたった今完成しましたと言えそうなほど。

町の人たちは笑顔。よかったな!輝いているぞ!

……じゃなくて、

「なんでこうなった?」
『お祝いだとか言って肉まで嬉々として捌き出したご主人が言うにハ今更過ぎるワヨ…』

いや、だってラギアがその辺のガラクタで料理台とか鍋作って、料理長が食材さえあればご飯作れるって言ったんだもん。…調味料?我と料理長が常備していないわけがないだろう。

抜かりないとも。塩は予備も含めて以前の5倍持ち合わせている!

しんみりシリアスになる遠出の予定が早くも狂った。別に支障はないが。いや、あるか。初っ端からこの遠出の目的が達成できていない。

「流石ですアリス様。瓦礫の山を元の町へと復元するとは」
「アリス様でなくては出来ない芸当です!無償で大魔法を行使するとは何とお優しい!」

…うむ。まあ、確かにこんな事出来るの我だけだろうけども。
やっちまったなぁ。と此処に着いてすぐのことを思い出す。

町に着いた我らが瓦礫を回収しようと思ったところ、村長が慌てて出てきた。どうやら我らを復旧工事を頼まれた一団の先遣隊だと思ったらしい。で、話を聞いてみるとこの町の人々は移動はせずに此処で改めて暮らし始めるとのこと。よって、工事を始めて欲しいことと、早急に食料支援して欲しい。らしい。

面倒だったので、我の魔法で復元。瓦礫は綺麗に建物へと戻った。

知ってるだろう?跳ね橋亭を直した魔法と同じだ。範囲が広いって?これくらい出来なくてどうする。こちとら元魔王だぞ。現"魔王"を名乗る冒険者になりそうだがまだならない。どうやらラギア以外にもそれに難色示してる所があるらしい。呼び名ひとつで荒れるなら、いっそ我に別な呼び方付けるかそもそも付けなきゃいいのに。

…そんな訳で町が直ったので、復興祭。食料提供も勿論我。此処にくるまでに肥やしになってる肉があったからな。

村長には料理長から我らが王都から派遣された先遣隊ではない事を伝えた。言わなくてもどう考えても違うのはもう分かるでしょうにとラギアが呆れてた。

「事後報告依頼としてギルドに申請いたします!」

と、町長は深々頭を下げた。要らんと答えたら何と慈悲深い、と周辺の町民たちと揃って平伏した。
…うむ。人々の感謝は得られたものの、我の当初の目的はもうここでは果たせない。ちくせう。

とんだ一仕事だったぜ…。と思ったこの時の我は、報告から漏れていたこの周辺の被害のあった町を復元しては宴会の流れになる事をまだ知りもしなかった。


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