前世魔王の伯爵令嬢はお暇させていただきました。

猫側縁

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幾多の苦難(町復元して宴会になり結局瓦礫が回収できない。しかし肉の在庫はほぼはけた)を乗り越え、漸く回収できた。量はそこまで多くないが、まあ、倍化の魔法でちまちま増やしていけばよかろう。我、ちまちました工作結構好きだし。いい暇つぶしになる。

最後に立ち寄った町は瓦礫の撤去が終わって建て直しが始まっていた。一箇所にまとめて置いてあったから回収しやすくてたすかった。力仕事をした冒険者達が遠い目をして自分たちの労働の成果が一瞬にして消え去った地面を見ていたが、そんな景色は我の知ったことではない。

それよりも目を引くものが一つ。ひとつというか、ひとり、…一団?

「妙な一行がこの辺りに出没していると商人仲間から聞いておりましたが…まさか、"将軍"ガドフ殿に、あの宮廷魔術師ラギア様と史上最速でSランク冒険者に認定された…アリス様とは…!再びお目にかかれて光栄です。また新しく見目麗しいレディーをお連れですね」

笑顔キラッキラな見覚えのある優男率いるキャラバンがいる。間違えた。アレでも商人だった。
料理長がすぐさま我と商人の間に入った。

「…ヴァレイン」
「嫌ですねえ。ちゃんと慈善事業ですよ」
「アリス様を追いかけてこんな所まで来たのかストーカーめ」
「話聞いてますか?私はちゃんと、慈善事業だと「アリス様のストーカーだと!?今すぐに生まれてきたことを後悔させてやる!」聞いてください!!!」
「…お金の匂いってどうやったら消えるのだろうか」
『アリス様は厄介なものにばかり絡まれますわねぇ…』
「話を!聞いて!ください!!?」

我とルシアも楽しく悪ノリしてたのだが、リィにややこしくなるからやめなさいと言われた。それもそうだな。

「アリス様!この2人止めてくださいッ!このままだと私、物理的に縛られて三日三晩吊るされた上身動き取れない間に私財凍結されて社会的に殺されますッ!」

肉体、経済、社会的に死んだら何も残らんな!あっはっは。流石最強のセ○ム。
と、我は笑っていたのだけれども、この2人それが出来るんですよぉおお!と、我を忘れるほどイケメンが台無しな必死さに、流石に同情できた。

「……一応確認だが、本当に我らを追ってきたわけでは無いのだな?」
「はい!今回は本当に慈善事業です!王都の商業ギルドから既に工事に取り掛かり始めている町から順に、ギルドが用意した食料を提供がてら、規格外や傷付で値のつかない商品を格安でなら売っていいと言われて来ているんです!」

商売じゃん。めっちゃ金の匂い追って来てるじゃん。

「誓ってアリス様を追って来たわけではございません!なんなら、ギルドに確認をとっていただいても結構でございます!」
「…わかった」

料理長達に声をかけ、料理長には嬉々として用意し始めていた棘付きの縄を撚り終えそうなところを、ラギアには関係各所に文を出そうとしているのをギリギリ阻止した。

「私が何したって言うんでしょうか。私はこれでも見る目があります。喧嘩を売っていい相手とそうで無い相手くらい分かりますよ…!間違ってもアリス様を金儲けの一部に利用しようとしたことなんて…!」

安堵して怒りそうになっていたので、怒り出される前に我もひとつ聞いておきたい。

「以前我に貸した飛空艇モドキに実際に我が乗船して暫く過ごしたという話を付加して、一部の冒険者達に短時間レンタルしていると聞いたのだが、稼ぎはどのくらいになった?」

商人は、潔く黙った。




瓦礫撤去を終えた今、滞在する理由はない為さっさと王都へ戻ろうという話になったのだが、ラギアが何かに引っかかったのか、商人…ヴァレインと何か話し込んでいた。…引っ掛かるとすれば十中八九名前だろうが。

「ヴァレインという名は、元魔導国貴族の名残だそうです。とはいえ数代前に本家筋から枝分かれしているようですが」

うん。やはり。
ラギアが言外に我に伝えているのは、その本家筋の始祖は我とラギア…もとい魔王とその配下がよく知る相手の可能性が高いという事だ。簡単に言えば配下な。我、元魔王。元配下といっても、何人もいるからな?

その中に我の死後、魔導国の人間と過ごした奴がいたようだ。ルシアは魔族が消えたと言ったが、あのサソリ姉妹の事もあるし、もしかしたら一定数は存在し続けていたのかもしれんな。

にしても……そっかー。魔導国かー。気に入ってしまったかー。元々、人間好きでさわやかな奴だったからな。怖がられさえしなければ、人と交わることもあり得よう。

「……あの脳天気野郎」

ラギアはかなり怒っているが、まあ過ぎてしまったことは仕方あるまい。

『ご主人、そこのストーカーは何に怒ってるのかしラ?自分以外のご主人のストーカーが許せないってヤツかしら?同担拒否ってやつ?』

同担拒否ってどこから聞いたのだ?あ、灼華から。かつて東の国ではあいどるという集団がいて?その集団の中でも特に自分が好きな人間を推しと呼び?推しが被る事を非常に嫌がる人間がいた?そういう事を同担拒否というと、灼華は学んだ、らしい。…うむ。世界は広し!我が知らぬこともまだ多いな!
今回の事についてはまあ話は違うのだが、

「んー……まあそんなところだ」

我のストーカー潰して回っているようだし、同担拒否というやつで間違ってはいないだろう。本当に怒っている理由は我だけが知る。…ルシアも聞けばわかるかもしれん。

単純にラギアは我の配下の中でも我過激派のため、人は人でも魔導国の人間と交わったそいつが許せんのだろう。色々複雑な事情があるのだ。機会があれば振り返ろうと思う。とりあえず今は空島作る方が優先な。我の知的好奇心を満たす工作、何より大事。図画工作は子どもの独創性を育てるのだ。…………我、10歳児だが、何か?


「そういえば…ヴァレインが妙な噂を聞いたと言っていましたよ」

先程出発前にこっそりと、ヴァレインが何か耳打ちしていた。その話だろうか。
ラギアの言う能天気野郎をヴァレイン(商人)と解釈した料理長が話し始めたのは、確かに、妙な噂だった。

曰く、魔導国の王族が、分家の血筋を辿り他国に嫁いだ令嬢の娘を探しているらしい。と。


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