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しおりを挟む「ヌル、ツヴィア、ドライン、フィア、フィン」
我の呼びかけに対して元気に返事、もとい鳴き声をあげたのは黒いふさふさの毛に白の毛がまじっている可愛らしい猫たちである。
「アリス様、猫ではなくライガーです」
「どちらにしろ猫科だから猫でいいだろう」
ねー?と聞けばにゃーと答える。首を傾げる角度も我と一緒。……完璧だ!
今日…というか、瓦礫を回収してから即座に王都に戻って以降、我は日がな一日中ゴロゴロしている。宿では無くラギアの屋敷な。別に住む事にした訳ではない。この屋敷が物凄く静かだから間借りする事にしただけだ。
「料理長、今日はもう終わり?」
「はい。ここの料理人もだいぶマシになって来ました。もう少しすればアリス様にお出しできるレベルには至れるかと」
「それは素晴らしいな!流石料理長」
我の賛辞に料理長は光栄ですと頭を下げた。気にせんでいいのに。
我が自分の屋敷に滞在している事にテンションを上げそうなラギアは今上司に呼び出されて城に行ってる。
リィとルシアと灼華は今お使いに出てる。お使いというか、我の代行で依頼を片付けに。大丈夫!リィ達は我の配下。つまり配下の手柄は我のもの!……あれ?これどこのブラックな上司…?
そもそもこのお外大好きアリス様が何故部屋の中から出もせずにゴロゴロしているのか。きちんと理由があるのだ!それは!
「なんかやな予感がする…」
枕に顔を埋める我の頭の上やら肩に猫達が乗って来る。局部保温。凝りに効きそうだな。我まだまだ肩凝りしないけど。
「アリス様の嫌な予感は当たりますからね」
うむ。暗殺者を差し向けられた時は料理長の側から離れたくなかったし、毒殺されかけた時は朝から胸騒ぎが止まらなかった。今回はなんとなーく、外に出るのが嫌になっている。
「嫌な予感程度で、屋敷に居座られんの困るんですけど?」
「黙れ不審者。アリス様を誘拐しようとした事は忘れていないぞ」
部屋の片隅で手足をちょっとした組み方で畳まれて、身動き取れずに転がっているそれが喋った。
料理長は大変不機嫌そうに手持ちのパスタ(まだ茹でてないヤツ)を構えた。
「いやー。口ぐらいしか動かすとこ無いんで!」
解いてくれませんかねぇー!と騒ぐので、口に氷塊突っ込んでやった。以前モヒカン達にもやったやつだ。歯が弱いととてもとても痛いらしい。たまに痛痒いその刺激に快感を覚える危ない奴もいるので気をつけた方がいいと料理長は言っていた。
以前我を誘拐しようとした襲撃犯は、ラギアの部下だった。ラギアにこってり絞られて、それでも我の事を警戒している。こんなにかわいい童女なのに…。
…屋敷にいられない自分の代わりに、我の生活を快適に整える為、ラギアにより我の側に置いていかれたのがこの襲撃犯(イケニエ)。名前をアノクと言った。
置いていったというか、我が指名したんだけどな。ほら、だって一度我に危害を加えた輩なら、万一うっかり巻き込んだ末に首と身体がお別れしても心が痛まないで済むだろう?
……何に巻き込むか?うん、何かだ。
「では暇そうなアノクよ。ちょっとお使いを頼まれろ」
もがもが言ってるが知らん。聞こえんわ!
「今外で出回ってる噂を調べてこい。こそこそした動きは得意だろう?」
言い方と目で訴えられた。折角口塞いだのに。今度は目隠しまでしなければならないか。……面倒な。しかし不服そうだが仕事はきちんとしてもらうぞ。我の快適な怠惰の為に。何が何でも。
特殊な畳み方を解除して、ついでに氷塊も消してやった。なぜって?今から発破をかけるからだ。
「ラギアに役に立たなかったと伝え「行きまーす」よろしい」
うむ。いいスタートダッシュだ。瞬く間に消えた。
「アリス様、空島の事ですが…」
「空島!そうだ!料理長、もうすぐ土台は完成する!土魔法駆使して屋敷の外観とかの候補をミニチュアで作ったから見てほしい!」
「喜んで」
収納していたそれらを机に並べる。先ずは外観、各ギルドや各地の家の外観、ラギアの屋敷などを参考にしたものが殆どだが、一つだけ気合を入れたやつがある。
「…こちらの城は?」
「きれいでしょ?」
「ええ、とても」
そう。城だ。具体的には魔王城だ。我がかつて住んでたやつ。当時の外壁の色は黒灰色にしてあったが今回は変えた。何で灰色かというと、世間体だと配下達は言っていた。魔王城の入り口付近でガーデニングは許してくれたのに、壁の色とか諸々を好き勝手は許してくれなかった。別に魔王の城の城壁が白くたってよくないか?
ミニチュアの原寸比は完璧。屋根を開けたり、階ごとにとれるようにしてあり、中の家具まで完璧だ。ふふん。
料理長も素直に褒めてくれた。心からそのまま出たようなその言葉に我、満足。
「アリス様、このミニチュアは一体どのように作られたのですか?」
「土魔法で。重要なのは何よりイメージだから、具体的に考えただけだよ。キッチンもちゃんと作ってあるよ。食料庫とかも」
キッチンと食料庫と聞いて料理長がすぐさま確認に入る。何?簡単な洗浄室を勝手口からすぐの所に付けて欲しい?確かに。血を洗い流すのには必要だな!
…と、そんな感じで話は進み、料理長の理想のキッチンを含む新生魔王城の完成!いぇい!
「…ところでアリス様、聳え立つような大きな城はアリス様が住むに相応しいとは思いますが、こんなに部屋数を多くする必要はあるのですか?」
ん?………………あ。ついうっかり。
魔王城の時は政務官だとか配下の部屋とか部下鍛える部屋とか色々あったからつい。減らして各部屋の大きさを変えるか。外観変えるのは嫌だし。
この際だから何か意見があれば全て言ってみてほしいと告げれば、料理長はひとつ問題がと始めた。
「……ヴァレインが、飛空艇を商品の一部として売り出す際に、一つ苦労して手に入れたものがあります」
それは?
「この国の空の航行許可です」
何とびっくり、人間って空飛べないくせに、ちゃっかり空の権利を主張してたらしい。
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