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しおりを挟む帰宅早々部屋の中が賑やかだった。掃除してるだろうからルシアがいて、恐らく我の留守を守ると言う名目で入り浸っているであろうラギアがいるのは良いとして、見覚えありまくりの招かれざる客…とある精霊が増えていた。
名前はたしかルーだったか?本名もっと長かったが、我の配下の眷属になる際に色々といじっていたはずだ。
そんな精霊は今、ラギアからの分かりやすい解説を受け素直に実践したルシアによって綺麗に畳まれている。
『アリス様~!綺麗に巻けましたわ!』
ついでに、縄で縛ってある。うちの者達の縄使いが日に日に向上しているのは、こういう侵入者やら変質者達のお陰だな。平和になるし良いことだ。
「よし、よくやったルシア。そいつを速やかに刻んで樹の養分に返還し『助けてぇーー!マリぐえっ』その名前を呼ぶなど阿呆ッ!」
精霊の口を塞ぐ。ついでに顔も。全く!なんて恐ろしい名前を叫ぼうとしてくれとるんだ。のど潰してやろうか!?
大人しくするからせめて話を聞いてくださいと念話を飛ばして、縛られたまま器用に土下座してきたので、心の広い我は話だけ先ず聞いてやる事にした。
「で?何でお前がここにいるのだ」
『えっとー、何と言いますかー』
「無駄口きりおとすか?」
『魔族の方達が消える際にマ…えっと、あのヒトが、ルシア達の眠った樹にボクもぶち込んでったんですー。で、死にかけてたんですけど、ルシア同様にボクも魔王様の魔力を貰ったおかげで目が覚めました!ぶっちゃけ今の状態、ボクはあのヒトの支配と契約から外れてるんで、魔王様の僕ですー!あのヒトの名前呼んでも出てこないから助けてくださいーー!』
なんとまあ。
よくよく奴の身体を見れば、奴の魔力量の丁度半分くらいが我の魔力で補われている。ルシアと同じだな。
「ルシア、外してやっていいぞ」
『しかし…』
「問題ない。確かに、ルシア達と同様の"つながり"ができている。妙な事は出来ぬように行動を縛ればそれで良かろう」
『かしこまりましたわ…』
渋々と言った感じではあるがルシアが動いてくれた。今から真面目な話をするからな。流石に見事に吊るされた精霊をオブジェにしてする会話ではない。だって我が笑ってしまうだろう。さて。
「ラギア。アノクが倒れた」
「では私がアノクの代わりを務めましょう!」
「嬉々として言うでない。心配してやれ」
我の事が最優先なのは嬉しいけれども。
「倒れた理由がな、どうやら身体の内側から"喰われて腐って"きているかららしい」
「…内側から…?」
「それから我…アリステラのおばとやらが来たのだ。初対面でかなりベタベタ触られた。あそこまで遠慮が無いと不快だな」
「殺しますか?」
「いやそれはいいのだ。どうでも。問題はそこではない。
問題は、"不快だと思ったのに拒絶行動をとれなかった"、…とることが頭に浮かばなかったという点だ」
「!」
ラギアも何度か魔導国の王子からのスカウトを素気無く断った件で思い当たりがあるだろう。殺してやろうかと思ったが、手を出さなかった筈だ。
2人して不思議に思った。いや、ラギアだからな。不快と思えば他国の王だろうが何だろうが、容易く暗殺くらいやる。魔導国の要人警護の格が違くて手が出せないと言うわけでは無く、やらなかった。
それは今考えれば、やらなかったのではなく、"やれなかった"のだ。
恐らく、魔導国の要人には、漏れなく"奴"の加護が与えられているせいで。
…これまで、我が頑なに名前を呼ばなかったその配下。名をマルシュヴェリアルと言い、通称…いや、自称をマリアンという。
此奴の最たる能力は、気に入った相手を守る加護なのだ。どう守るのかといえば、保護対象がどんなに悪意や殺意を持たれたとしても、その相手は故意に保護対象を害する事は出来ない。というものだ。…つまりは、一種の魅力効果だな。例えば我の事をどんなにラギアが殺したくても、実際目の前にすると意識が削がれ殺すほどでも無いと錯覚させられて、手を出せなくなるのだ。
…ともかく、ラギアにしつこく声をかけて来た王子やら、我に喧嘩売った王子やら、我にベタベタしたあのおばやらには、その加護が与えられているとみて間違いない。
確証は、アノクだ。アノクは先日おばを剥がそうと奮闘した後から体調が目に見えて悪くなった。おばを負傷させたわけではないが、おばは我と離されそうになった時にかなり嫌がった。そのせいで加護が働いた可能性が高い。全く厄介な。
加護による呪いを受けた状態のアノクを助けられるのは、加護を与えた魔族、…マルシュヴェリアルを除いて他にいない。…我の魔法でちょちょいと?出来なくは無いが、直したそばから多分また腐るぞ。呪いだから。呪い解けるだろって?ヤダ。解いたら奴が飛んでくる。解くのは大前提としても、今の姿で会いたくは無いのだ……だって、奴はショタコンでもありロリコンでもあるから。…それと、
「なあラギア。我は以前魔導国に攻撃を仕掛けた事があった筈だ」
「…はい」
「我はアレの顛末からの記憶が混濁している」
ラギアやルシア達は驚きつつも何か納得した様子だった。
「何があったのか、知る限り話してもらえるとたすかる」
「仰せのままに」
そして、多少ラギアの私怨及び過剰表現の混じった昔語りが始まった。さて、これで思い出せると良いのだが。
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