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しおりを挟む目の前にとても触り心地の良さそうな人形がある。それを前にしてやる事はひとつしかないとおもうのだが、皆はどうだろうか。…ん?このご時世だから触るのはちょっと?そんなの身を綺麗にしてから触れば良かろうが。勿論触れてからの除菌・消毒を忘れずにな。例え素手でジュエルベアの剛腕に勝てても、砂糖一粒以下の菌に容易く負けるのが人間だと料理長も言っていた。
と、いうわけなので我は遠慮なく撫で回す。
「かわいい。かわいい…」
「メェ。メェ」
ふわっふわだ。良い。実に良い。毛並み最高!!モコモコとしつつも剛毛ではなく柔らかい。人形としてはかなり上質だ。毛の流れに沿って撫でればさらさらとしつつもしっとり滑らかなこの何とも言えぬ触り心地!素晴らしい!
流石、毛質に拘りの強い男だっただけある。
「あ、あのぅ…」
「私たち、もう帰っても…?」
我としてはどうでもいいのだが、モコモコ羊が動き出したので、足止めしよう。なに、
「元の姿への戻り方も知らんのに?」
…と、言えば良いだけの話だ。人の姿では地中で暮らせぬだろう。5人娘は大人しくその場に正座した。そこへちょうどやって来たのはラギアだった。
「アリス様!…………この羊、破いて捨てても?」
我を認識し、人形を回収し、人形の頭を両側から掴み、歪むくらい引っ張りながら言うまで一呼吸も無かった。せめて我に聞いてからその体制に入ってほしいものだ。可愛い羊が顔面呪われた何かに変貌しているではないか。寧ろよく裂けないものだ。
「羊の皮に罪はなかろう。離してやれ」
「……………仰せのままに…」
ラギアは渋々と手を離した。身長の高いラギアが手を離せば当然人形は地面に落ちる。しかも何がそんなに気に食わなかったのか、逆さにしてから手を離しおった。人形は空を見る状態になり、うごうごと手足を動かしていたが、暫くころころと横に転がり、少し離れたところで立ち上がった。頭は大きいのに手足が短い為、仰向け状態から立つ事が出来なかったらしい。なんだそれかわいいな!
「ひどいメェ。いじめられたメェ」
「外見を変えた程度で貴様を可愛がると思うな」
ラギアが非常に淡々とした声でいう。
外見かなり変わったの、我もだけども。と思ったが、アリス様はアリス様だから良いのですと、よく分からない回答をされた。…じゃあいっか!
「…ドヴィアデズ」
「はい。我が主」
名前を呼べば懐かしい声がした。黒い霧が羊の人形を包み、霧散するとそこには人が片膝をついて我に礼をとっていた。赤みを帯びた濃い茶の髪は艶やかで、先程の羊の感触を思い出して触りたくなるがこらえる。
「…言っておくが、我はアリス。かつて魔王だった記憶を持っているだけの別人だ。お前の主人ではない。その我に、何の用だ?」
主人ではない。それを聞いても尚体制を変える事はなく、ただ顔を上げてその両目が我を写した。
「私にとって、主人は唯一あなただけ。姿形が変わろうと、あなたという存在自体が私の主。ですから私はあなたに仕える。あなたを探して、彷徨い続けた。漸く、お会いできた。…その私を、貴女は見捨てるのですか…?」
…立派な成人男性なのだが、どことなく童顔でな?哀しそうな顔をされるとな?…可愛らしくて…我、ちょっとこの顔に弱いのだ。くぅ…!
「アリス様騙されないでください。コイツのこの顔は計算です。そう見せてるだけです」
ラギアが感情のない目でドヴィアデズを見ている。そのドヴィアデズは素知らぬ顔で、我だけを見ている。
「魔王とかそういうのはさておき、アリス様にお仕えしたいのですが、お許しくださいますか…?」
「…我に?」
ラギアが視線だけで却下しているのがわかる。そんなに念を送らんでも。
正直魔王様に再度仕えたいとか言われたら我、魔王じゃないから!と断れたのだが、アリスに仕えたいと言われてはな…。我は自分の自由を止めぬ代わりに他人の自由も縛らぬ主義。いつもなら二つ返事で了承する所を、ラギアの手前我慢しているので、そんなに断れという圧をかけないでもらいたい。
「……実は、私が住処としているこの迷宮が、そろそろ崩れそうなのです」
「ほう?」
あくまでも故意に造られた迷宮は、込められた魔力が空になれば崩れる。この迷宮は尽き掛けているのだろう。……ん?しかし、他者の迷宮であっても、新たに自分が魔力を供給し、供給量が作られた際の量を越えていれば、乗っ取りが可能なはずだ。何故そうしなかったのかは疑問だが。続きを促せば、
「聞いたところによると、アリス様はお住まいの一部に迷宮を有しておられるとのこと。是非ともそちらに私の住処を移させていただけないでしょうか?」
「新しくつくれば良かろう?」
ドヴィアデズは困り顔で、出来ないのですと答えた。
「この身体と私の魔力の相性が悪く、魔力は全て肉体強化に勝手に回ってしまって、放出する余力がありません…」
この身体って、どっちのこと?と、首を傾げた我に、ドヴィアデズは苦笑しながらことのあらましを説明し始めた。
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129.
羊の人形、スカートの中を覗いてるのか
ちょっと代わって欲しいw
ありがとうございます。
この度のアリスちゃんのスカートは、フワッフワのパニエ仕様です。下から見ても重ねたチュールしか見えませんのでご安心を。
っていうか、「ヴァレイン」って料理長の知り合いの商人とかで、子孫いましたね!
そういえば、(^-^;)
いつもありがとうございます!
その通りで、商人のヴァレインは一応、アリスちゃんの元配下のヴァレインの(使っていた身体の)遠い子孫です。
120、
これは悪魔=ヴァレインで当たり🎯ですね!( ´艸`)
お返事遅くなりまして申し訳ございません!
いつもありがとうございます!
そうです。ヴァレインです!