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決意
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真っ赤な炎が飛鳥の前に集まる。
猛々しく燃え上がる炎は飛鳥の意志に従う。
「この世の不浄を焼き払う炎よ。破邪顕正の名の下に、悪を滅せよ!」
飛鳥が腕を一振りするだけで、炎が妖魔に襲い掛かり、存在そのものを焼き尽くす。
「クエエエエエエエエエ!!!!!」
妖魔は断末魔を上げながら、存在を焼き尽くし消滅した。
「やれやれ、まだ終わりそうにないわね」
息つく間もなく続々と妖魔が現れる。
最下級とは言え、数の多さには辟易してしまい、思わず愚痴が漏れた。
空から飛来するは一羽の妖魔のカラス。だけど、少し他のより幾分か大きかった。おそらく妖力が高いため、他の妖魔よりも大型化していた。
「消えなさい!!」
最下級の枠組みを脱していない妖魔であれば、飛鳥の炎なら容易く焼き尽くせる。
妖魔のいる空に向かって炎を放った。炎が妖魔に直撃し、遂には燃え尽きた。
「ふん、どんなもんよ!」
飛鳥は得意げな表情を浮かべていた。だが‥‥
「グエエエエエ!!!」
二体目がすぐそばに迫ってきていた。妖魔の背後にもう一体の妖魔が潜んでいた。
「っ!? はあっ!」
飛鳥は咄嗟に炎を放った、だが‥‥焼き尽くせなかった。
「しまった!」
飛鳥の表情に焦りが浮かんだ。
周囲の炎では妖魔を焼き尽くすには足りなかった。妖魔の力は先に焼き尽くした妖魔より上だった。故に焼き尽くすにはもっと多くの炎が必要だった。
今の状況で炎を生み出しても、妖魔の攻撃が飛鳥に届く方が早い。
妖魔の鋭い嘴は人など容易く貫くだろうことは簡単に予想が付いた。
咄嗟に躱せるか、それとも防御に徹するか、二択に迫られた。
飛鳥は‥‥防御に徹することを選んだ。
理由は二つ、一つは妖魔の攻撃を躱そうとしても自身の脚力と妖魔の運動性能では妖魔に軍配が上がること。そしてもう一つは躱し損ねた場合‥‥死に至ること。
だから飛鳥は防御に徹し、確実に自身の命を拾うことを選んだ。怪我をするだろうことは確実だが、それでも死ぬよりはマシだと考えた。
頭部や胸といった致命傷を守るために腕を十字に組み身構えた。更に残り少ない炎を集中させ、威力を弱めることを選んだ。
だが、全く別の答えに至った。
防御を固めた飛鳥の目の前で妖魔が細切れになった。
何が起こったのか、即座には理解できなかった。だが、空からくる気配に気づき、理解出来た。
「‥‥遅くなった、大丈夫か?」
空から虎太郎が降りてきた。
「‥‥遅い!」
飛鳥は虎太郎を咎めた。
「悪かったな‥‥」
虎太郎も単独戦闘を任せた手前、悪いと感じているようで謝った。
「はぁ‥‥もういいから。で、何か取ってきたみたいだけど?」
「ああ、秘密兵器だ。‥‥出来れば秘密のまま終わってくれればいいんだけどな」
飛鳥は虎太郎の腰にある小太刀に目を向けた。
その視線に気づき、そっと小太刀に手を添え、苦笑いを浮かべた。
「グアアア!!」
二人の前から鬼の妖魔が姿を現した。大きな呻き声をあげ周囲を威圧し、大きな体から溢れる妖気はこれまでの妖魔より大きい。
「喰らいなさい!!」
飛鳥は瞬時に周囲の炎全てを操作し、鬼にぶつけた。だが‥‥‥‥
「っ‥‥アレは、ヤバいな」
鬼は飛鳥の炎に耐えきった。
体の表面に焼き目はついているし、ダメージは受けている。
だが、鬼の体表の硬さと体力が想像以上だった。あと何度か炎をぶつければ倒しきることは出来るだろう。だが、
「ウガァァァァッ!!!」
鬼は勢いよく駆け、虎太郎たちに迫ってくる。そして、拳を振る上げ、叩き落とす。
「っ!? 跳べ!!」
虎太郎達は咄嗟に後ろに跳んだことで、直撃は避けられた。
鬼の拳が叩きつけられた道路は陥没し、クレーターが出来ていた。
「‥‥チィ、とんでもないバカ力だ。‥‥その傷、どうした?」
「っ‥‥破片が当たったみたいね‥‥」
虎太郎が飛鳥の方を見た時、飛鳥は膝から血が流れていた。
どうやら、鬼が粉々に砕いたアスファルトの破片が飛び、飛鳥の皮膚を斬り裂いたようだ。
「動けるか‥‥」
「うん‥‥だけど、ちょっと鈍いかもね」
「そうか‥‥」
飛鳥は顔をしかめ、少し足を庇う仕草があった。
「‥‥俺が前で動きを止める。炎城は後ろに下がっていろ」
虎太郎は飛鳥を庇うように前に出ると、両手に手裏剣を構える。
「ちょっと、アタシだってまだ戦えるわよ!」
ムッ、とした表情で飛鳥は訴える。未だ戦意は萎えていなかった。
「分かっているさ。別に”俺一人で戦う”とは言っていない。”後ろに下がっていろ”と言っている。俺が前でアレの気を引く。だから、トドメは任せる」
「ふーん‥‥そう、じゃあ、任せるわ‥‥」
「ああ、用意はしておいてくれ」
飛鳥は虎太郎の言葉に従い、後ろに下がると炎を集めだした。その様子を背後から感じる気配で察しつつ、鬼の方に意識を集中させた。
「さて‥‥やるか!」
虎太郎は片手に3枚、両手に合計6枚の手裏剣を挟み、口を開く。
「『風よ、我が意志と力を糧に、汝の力を借り受ける』」
すると虎太郎の周囲に風が巻き起こる。
「行け、『六華!』」
虎太郎が六枚の手裏剣を投げつけると、手裏剣は風を纏う。手裏剣の回転速度が速くなり、更に風の勢いが増していく。
そして、六枚の手裏剣はそれぞれ別々の軌道を描きながらも、鬼へと迫り、一斉に鬼の体を斬り裂きにかかる。
「アアアアアアアアアアッ!?」
鬼の体表を斬り裂き、そのまま別々の軌道で飛んで行く手裏剣を見ながら、虎太郎は更に詠唱を加える。
「舞い戻れ、『六華・二幕』開演」
虎太郎の言葉に従い、四方八方に飛んで行った6枚の手裏剣が弧を描きながら、戻ってくる。そして、四肢と首と胴体を再び斬り裂く。だが、今度は動くことなかった。
手裏剣は鬼の硬い体表に突き刺さり、止まってしまった。
「‥‥やれやれ、随分と硬い体だ」
虎太郎は呆れ顔を浮かべていた。
虎太郎の扱う手裏剣は風の魔法を纏った影響で切れ味が非常に鋭い。だが、鬼の体表は虎太郎の想像を超える硬さを持っていた。
「この感じだと、最下級じゃないな‥‥下級か」
虎太郎は下級の妖魔を見たことはあるし、戦ったこともあった。その虎太郎の手ごたえからして最下級の域を超えていることを感じた。
「分かりやすく妖力が高いタイプじゃないな。耐久よりの下級妖魔か。ちょっと‥‥相性が悪いか」
虎太郎は風を扱う魔法使いであり、攻撃手段は武器に風を纏わせ切断力を上げた鋭い一撃で斬り裂く手段を取っている。大出力の風で押し飛ばすことが出来る魔法使いもいるが、それはほんの一握りであり、虎太郎はその一握りには属していない。
そもそも力は一点に集中させた方が威力を増す。接触面を可能な限り小さくする―――すなわち刃の様に鋭く尖らせる方が得策だ。
虎太郎の手裏剣は投げつけることで風を纏い、更に虎太郎の詠唱で上乗せすることで切れ味を上げている。その攻撃で斬れない以上、違う手を使わざるを得ない。
「なら‥‥こっちかな」
虎太郎は自身が部屋から取ってきた小太刀に手を掛ける。だが‥‥
「‥‥チィ、やっぱり抜けねえか‥‥」
小太刀は抜かれる事を拒否するように、鞘から抜けなかった。
「仕方がないか‥‥」
虎太郎は小太刀を抜くことを諦め、制服の上着を脱ぐ。
虎太郎は左手に制服の上着を持ち、パンッ、勢いよく払った後、上着を裏返した。
そこには手裏剣、苦無、そして大きな4枚の刃が縫い付けられていた。そこから苦無を3本抜き、右手に握ると、サイドスロー気味に一気に投げつける。
「加速しろ『三星』」
虎太郎の詠唱を受けて、投げつけた苦無が一気に加速し、瞬時に鬼の胴体に突き刺さる。
「アアアアアアアアアアッ!?」
鬼の悲鳴が響く。鬼の腹に深々と突き刺さった三本の苦無はドリルの様に回転していて、鬼の腹を食い破らんばかりだった。だが、それもすぐに動きが止まった。
「チィッ、コレも無理か‥‥ならば!」
一際大きな4枚の刃の内、一つを引き抜くと、他の刃もスルスルと抜け出た。どうやら、4枚の刃は一つに繋がったシロモノだった。
「起動せよ『四葉』」
虎太郎の言葉を告げると、4枚の刃は互いに引き合い、持ち手部分が連結し、一つの大きな手裏剣へと姿を変えた。
連結された持ち手部分を虎太郎が持ちつつ、頭の上に掲げ、言霊を紡ぐ。
「『風よ、我が意志と力を糧に、汝の力を借り受ける』、さあ行くぞ『四葉』」
風が再び虎太郎を包むと、虎太郎はその場で回転を始める。
グルグルと回転を始め、ドンドンと加速していくその手には大きな手裏剣を持っている。
「ぶっ飛べ!」
虎太郎はその手から勢いよく、手裏剣を投げ放った。
回転に次ぐ回転で勢いが増していた手裏剣は先程までの手裏剣や苦無とは圧倒的に速度が違った。
ハンマー投げの要領で体を回転させ、遠心力を加え、更に大きな手裏剣が持つ質量も加わった、その一投は紛れもなく、虎太郎が放てる中で、最高の破壊力を持った一撃だった。
「!?」
鬼の体が一瞬で真っ二つに斬り裂かれた。
鬼は驚愕の表情を浮かべていた。何が起きたのか、理解出来ていないようだった。だが、理解出来ていようがいまいが結果は変わらない。
鬼は真っ二つに両断され、その体が崩壊し、消滅した。
「まあ、所詮は下級か‥‥ああ、目が回る‥‥」
鬼が消滅したことを確認し、虎太郎はその場でクビを回し、身体を労わった。
猛々しく燃え上がる炎は飛鳥の意志に従う。
「この世の不浄を焼き払う炎よ。破邪顕正の名の下に、悪を滅せよ!」
飛鳥が腕を一振りするだけで、炎が妖魔に襲い掛かり、存在そのものを焼き尽くす。
「クエエエエエエエエエ!!!!!」
妖魔は断末魔を上げながら、存在を焼き尽くし消滅した。
「やれやれ、まだ終わりそうにないわね」
息つく間もなく続々と妖魔が現れる。
最下級とは言え、数の多さには辟易してしまい、思わず愚痴が漏れた。
空から飛来するは一羽の妖魔のカラス。だけど、少し他のより幾分か大きかった。おそらく妖力が高いため、他の妖魔よりも大型化していた。
「消えなさい!!」
最下級の枠組みを脱していない妖魔であれば、飛鳥の炎なら容易く焼き尽くせる。
妖魔のいる空に向かって炎を放った。炎が妖魔に直撃し、遂には燃え尽きた。
「ふん、どんなもんよ!」
飛鳥は得意げな表情を浮かべていた。だが‥‥
「グエエエエエ!!!」
二体目がすぐそばに迫ってきていた。妖魔の背後にもう一体の妖魔が潜んでいた。
「っ!? はあっ!」
飛鳥は咄嗟に炎を放った、だが‥‥焼き尽くせなかった。
「しまった!」
飛鳥の表情に焦りが浮かんだ。
周囲の炎では妖魔を焼き尽くすには足りなかった。妖魔の力は先に焼き尽くした妖魔より上だった。故に焼き尽くすにはもっと多くの炎が必要だった。
今の状況で炎を生み出しても、妖魔の攻撃が飛鳥に届く方が早い。
妖魔の鋭い嘴は人など容易く貫くだろうことは簡単に予想が付いた。
咄嗟に躱せるか、それとも防御に徹するか、二択に迫られた。
飛鳥は‥‥防御に徹することを選んだ。
理由は二つ、一つは妖魔の攻撃を躱そうとしても自身の脚力と妖魔の運動性能では妖魔に軍配が上がること。そしてもう一つは躱し損ねた場合‥‥死に至ること。
だから飛鳥は防御に徹し、確実に自身の命を拾うことを選んだ。怪我をするだろうことは確実だが、それでも死ぬよりはマシだと考えた。
頭部や胸といった致命傷を守るために腕を十字に組み身構えた。更に残り少ない炎を集中させ、威力を弱めることを選んだ。
だが、全く別の答えに至った。
防御を固めた飛鳥の目の前で妖魔が細切れになった。
何が起こったのか、即座には理解できなかった。だが、空からくる気配に気づき、理解出来た。
「‥‥遅くなった、大丈夫か?」
空から虎太郎が降りてきた。
「‥‥遅い!」
飛鳥は虎太郎を咎めた。
「悪かったな‥‥」
虎太郎も単独戦闘を任せた手前、悪いと感じているようで謝った。
「はぁ‥‥もういいから。で、何か取ってきたみたいだけど?」
「ああ、秘密兵器だ。‥‥出来れば秘密のまま終わってくれればいいんだけどな」
飛鳥は虎太郎の腰にある小太刀に目を向けた。
その視線に気づき、そっと小太刀に手を添え、苦笑いを浮かべた。
「グアアア!!」
二人の前から鬼の妖魔が姿を現した。大きな呻き声をあげ周囲を威圧し、大きな体から溢れる妖気はこれまでの妖魔より大きい。
「喰らいなさい!!」
飛鳥は瞬時に周囲の炎全てを操作し、鬼にぶつけた。だが‥‥‥‥
「っ‥‥アレは、ヤバいな」
鬼は飛鳥の炎に耐えきった。
体の表面に焼き目はついているし、ダメージは受けている。
だが、鬼の体表の硬さと体力が想像以上だった。あと何度か炎をぶつければ倒しきることは出来るだろう。だが、
「ウガァァァァッ!!!」
鬼は勢いよく駆け、虎太郎たちに迫ってくる。そして、拳を振る上げ、叩き落とす。
「っ!? 跳べ!!」
虎太郎達は咄嗟に後ろに跳んだことで、直撃は避けられた。
鬼の拳が叩きつけられた道路は陥没し、クレーターが出来ていた。
「‥‥チィ、とんでもないバカ力だ。‥‥その傷、どうした?」
「っ‥‥破片が当たったみたいね‥‥」
虎太郎が飛鳥の方を見た時、飛鳥は膝から血が流れていた。
どうやら、鬼が粉々に砕いたアスファルトの破片が飛び、飛鳥の皮膚を斬り裂いたようだ。
「動けるか‥‥」
「うん‥‥だけど、ちょっと鈍いかもね」
「そうか‥‥」
飛鳥は顔をしかめ、少し足を庇う仕草があった。
「‥‥俺が前で動きを止める。炎城は後ろに下がっていろ」
虎太郎は飛鳥を庇うように前に出ると、両手に手裏剣を構える。
「ちょっと、アタシだってまだ戦えるわよ!」
ムッ、とした表情で飛鳥は訴える。未だ戦意は萎えていなかった。
「分かっているさ。別に”俺一人で戦う”とは言っていない。”後ろに下がっていろ”と言っている。俺が前でアレの気を引く。だから、トドメは任せる」
「ふーん‥‥そう、じゃあ、任せるわ‥‥」
「ああ、用意はしておいてくれ」
飛鳥は虎太郎の言葉に従い、後ろに下がると炎を集めだした。その様子を背後から感じる気配で察しつつ、鬼の方に意識を集中させた。
「さて‥‥やるか!」
虎太郎は片手に3枚、両手に合計6枚の手裏剣を挟み、口を開く。
「『風よ、我が意志と力を糧に、汝の力を借り受ける』」
すると虎太郎の周囲に風が巻き起こる。
「行け、『六華!』」
虎太郎が六枚の手裏剣を投げつけると、手裏剣は風を纏う。手裏剣の回転速度が速くなり、更に風の勢いが増していく。
そして、六枚の手裏剣はそれぞれ別々の軌道を描きながらも、鬼へと迫り、一斉に鬼の体を斬り裂きにかかる。
「アアアアアアアアアアッ!?」
鬼の体表を斬り裂き、そのまま別々の軌道で飛んで行く手裏剣を見ながら、虎太郎は更に詠唱を加える。
「舞い戻れ、『六華・二幕』開演」
虎太郎の言葉に従い、四方八方に飛んで行った6枚の手裏剣が弧を描きながら、戻ってくる。そして、四肢と首と胴体を再び斬り裂く。だが、今度は動くことなかった。
手裏剣は鬼の硬い体表に突き刺さり、止まってしまった。
「‥‥やれやれ、随分と硬い体だ」
虎太郎は呆れ顔を浮かべていた。
虎太郎の扱う手裏剣は風の魔法を纏った影響で切れ味が非常に鋭い。だが、鬼の体表は虎太郎の想像を超える硬さを持っていた。
「この感じだと、最下級じゃないな‥‥下級か」
虎太郎は下級の妖魔を見たことはあるし、戦ったこともあった。その虎太郎の手ごたえからして最下級の域を超えていることを感じた。
「分かりやすく妖力が高いタイプじゃないな。耐久よりの下級妖魔か。ちょっと‥‥相性が悪いか」
虎太郎は風を扱う魔法使いであり、攻撃手段は武器に風を纏わせ切断力を上げた鋭い一撃で斬り裂く手段を取っている。大出力の風で押し飛ばすことが出来る魔法使いもいるが、それはほんの一握りであり、虎太郎はその一握りには属していない。
そもそも力は一点に集中させた方が威力を増す。接触面を可能な限り小さくする―――すなわち刃の様に鋭く尖らせる方が得策だ。
虎太郎の手裏剣は投げつけることで風を纏い、更に虎太郎の詠唱で上乗せすることで切れ味を上げている。その攻撃で斬れない以上、違う手を使わざるを得ない。
「なら‥‥こっちかな」
虎太郎は自身が部屋から取ってきた小太刀に手を掛ける。だが‥‥
「‥‥チィ、やっぱり抜けねえか‥‥」
小太刀は抜かれる事を拒否するように、鞘から抜けなかった。
「仕方がないか‥‥」
虎太郎は小太刀を抜くことを諦め、制服の上着を脱ぐ。
虎太郎は左手に制服の上着を持ち、パンッ、勢いよく払った後、上着を裏返した。
そこには手裏剣、苦無、そして大きな4枚の刃が縫い付けられていた。そこから苦無を3本抜き、右手に握ると、サイドスロー気味に一気に投げつける。
「加速しろ『三星』」
虎太郎の詠唱を受けて、投げつけた苦無が一気に加速し、瞬時に鬼の胴体に突き刺さる。
「アアアアアアアアアアッ!?」
鬼の悲鳴が響く。鬼の腹に深々と突き刺さった三本の苦無はドリルの様に回転していて、鬼の腹を食い破らんばかりだった。だが、それもすぐに動きが止まった。
「チィッ、コレも無理か‥‥ならば!」
一際大きな4枚の刃の内、一つを引き抜くと、他の刃もスルスルと抜け出た。どうやら、4枚の刃は一つに繋がったシロモノだった。
「起動せよ『四葉』」
虎太郎の言葉を告げると、4枚の刃は互いに引き合い、持ち手部分が連結し、一つの大きな手裏剣へと姿を変えた。
連結された持ち手部分を虎太郎が持ちつつ、頭の上に掲げ、言霊を紡ぐ。
「『風よ、我が意志と力を糧に、汝の力を借り受ける』、さあ行くぞ『四葉』」
風が再び虎太郎を包むと、虎太郎はその場で回転を始める。
グルグルと回転を始め、ドンドンと加速していくその手には大きな手裏剣を持っている。
「ぶっ飛べ!」
虎太郎はその手から勢いよく、手裏剣を投げ放った。
回転に次ぐ回転で勢いが増していた手裏剣は先程までの手裏剣や苦無とは圧倒的に速度が違った。
ハンマー投げの要領で体を回転させ、遠心力を加え、更に大きな手裏剣が持つ質量も加わった、その一投は紛れもなく、虎太郎が放てる中で、最高の破壊力を持った一撃だった。
「!?」
鬼の体が一瞬で真っ二つに斬り裂かれた。
鬼は驚愕の表情を浮かべていた。何が起きたのか、理解出来ていないようだった。だが、理解出来ていようがいまいが結果は変わらない。
鬼は真っ二つに両断され、その体が崩壊し、消滅した。
「まあ、所詮は下級か‥‥ああ、目が回る‥‥」
鬼が消滅したことを確認し、虎太郎はその場でクビを回し、身体を労わった。
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