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虎太郎の決意
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「はあ、はあ、はあ‥‥」
虎太郎は学生寮の自室の扉を勢いよく開け部屋になだれ込む。
靴を脱ぐ暇もないため、土足で上がる。
「‥‥後で掃除しなきゃな。まあ、後で、があればいいがな」
虎太郎は部屋のクローゼットの奥からある箱を取り出す。横幅は30cm、縦に1mくらいの木箱だ。
その木箱には四方に封印の札が張り付けられていた。
「やれやれ、機嫌悪いだろうな。だが、仕方ないか。‥‥『起きろ、白虎』」
虎太郎が魔力を帯びた言霊を紡ぐと、四方の封印の札に亀裂が入り、破れた。上の蓋をどけ、箱を開けると、中には一振りの刀が納められていた。
白を基調とした柄に黒い菱型模様が入っている。鞘は白樺の木で作られた白い鞘。全体の長さはおよそ80cmほどの短い刀。所謂小太刀と呼ばれるものだ。
虎太郎が小太刀に手を伸ばすと、風の刃が走り、手に薄く切り傷で出来た。
『グルルルル‥‥』
獣の低い唸り声が聞こえた。部屋で動物を飼っていない。だが、確かに獣の声が耳に響いた。
虎太郎はその発生源を既に知っている。目の前の小太刀こそ、唸り声の正体だ。
風魔一族に伝わる意思持つ魔具、それこそがこの小太刀。銘は『白虎』。
虎太郎に与えられたが、虎太郎の力が未熟故に使用できなかった。
一時は実家に置いておくべきか考えたが、虎太郎から離れると大風が巻き起こり周囲に被害を与えたため、仕方なく持ってきたシロモノだ。
代々の風魔一族次期当主が継承してきたが、当代に関しては虎太郎を選んだ。虎太郎は風魔一族の次期当主ではないため、『白虎』を持つことを拒否したが、『白虎』が虎太郎から放されることを拒み、大風を起こし、周囲に被害を与えた。
風魔一族全体は次期当主ではない虎太郎が持つことを忌避したが、現在の風魔一族当主である虎太郎の父も次期当主である虎太郎の姉も、虎太郎が『白虎』を持つことを認めた。
だが、虎太郎は『白虎』を鞘から抜くことが出来なかった。結局使う事が出来ないまま、魔法学園に入学することになり、以後自身で封印を施し、その力を抑え込んでいた。
だが、現在の状況を考えれば、とにかく力が必要だった。
「今はまだ抜けない。俺にはお前を制御する力はない。‥‥でも、お前の力がいる。力を貸してくれよ、『白虎』」
虎太郎は手に傷を作りながら『白虎』を掴むと、風が収まった。
「‥‥ありがとうな」
虎太郎は制服のベルトを緩め、その隙間に小太刀を指し、ベルトを締める。家を出る前に、手裏剣の予備と現状使える自身の追加武装も持って部屋を後にする。
虎太郎が学生寮を出て現場に向かって走っていると、空から嫌な感じを受けて空を見て思わず言葉が漏れ出た。
「なんだ、アレは‥‥」
空が黒い。曇っている訳ではない、雨が降りそうなわけでもない。所々日が差し込んでいる。
よくよく見れば、黒い何かが動いている。黒い雲、ではない。アレは‥‥
「‥‥カラスか?」
大量の、空を埋め尽くすカラスが大移動していた。異様な光景だった。
動物たちは敏感だ。危険を感じて大移動しているのかも知れない。もしくはあっちの方角に何かヤバイものがいるのかもしれない。想像するだけで嫌になるほどだ。
レべル4、学園長は言葉を選んでいたが中級で済む訳がない。間違いなく上級が出てくる。そして、それに引きずられ、大量の妖魔が発生する。
妖魔は妖魔を引き寄せる。そういう性質があるのか、それとも妖魔が好む状況、場所だから妖魔が連続して現れるのか、詳しくは分からない。
だが、一昨日、中級妖魔が現れたのは、偶発的な出現ではなく今日に至る前触れだった。今になってしまえば理解も出来るが、あの時に気づける訳がない。
中級妖魔の出現は地震で言えば初期微動であり、その後に来る本命の主要動こそ、上級妖魔だった。
「‥‥考えていても仕方がない」
虎太郎は自身の持ち場に急ぎ向かった。
飛鳥の力は見た。その力は最下級に負けるとは思えない。だが‥‥弱点も見た。
もし飛鳥が一時的にでも無防備となり、そのスキを突かれたら、飛鳥と言えど生死に関わる。
人の身である以上、死は避けられない。いつか、遠い未来に命が尽きる。それは生命体である以上当然の事だ。だが、その命を無為に散らしていいわけがない。人は抗う生き物、妖魔に、脅威に、運命に、抗う生き物だと、虎太郎は理解していた。
「俺は死ねない‥‥死ぬわけにはいかない」
虎太郎は小太刀を握っていた。コレに収まる者の力に縋ってでも生き残る、ただそれだけを考えていた。
虎太郎が走る最中、空に向かって放たれる炎が見えた。オレンジ色の鮮やかな炎が空に向かって飛んで行き、そして霧散する。
「あそこか! 『風よ、我に空駆ける足を与えよ』」
虎太郎は魔力を帯びた言葉を紡いだ。
すると、風が虎太郎の足に集まり、体を空に押し上げる。
空駆けるの言葉通り、虎太郎の足は大地ではなく空を捉え、走っている。
空に向かって走ることで、障害物を避け、目的地への最短ルートを進ませる。
そんな走る最中、飛鳥の姿を捕らえた。敵は鳥の妖魔、それも複数だ。
飛鳥は炎を放ち、敵を焼き尽くす。さして苦労している様子はなかった。
飛鳥は炎を纏っていて攻撃は届く前に焼き尽くし、炎を放ち飛び道具として攻撃をしている。
どれ程敵が襲い掛かってもの、その構図は変わらない。
「‥‥俺、要らないかな、コレ‥‥」
ちょっと自信を無くしてしまうが、万に一も避けなければならない。
失ったモノは帰ってこない、だから失わないためにも‥‥‥‥
虎太郎は学生寮の自室の扉を勢いよく開け部屋になだれ込む。
靴を脱ぐ暇もないため、土足で上がる。
「‥‥後で掃除しなきゃな。まあ、後で、があればいいがな」
虎太郎は部屋のクローゼットの奥からある箱を取り出す。横幅は30cm、縦に1mくらいの木箱だ。
その木箱には四方に封印の札が張り付けられていた。
「やれやれ、機嫌悪いだろうな。だが、仕方ないか。‥‥『起きろ、白虎』」
虎太郎が魔力を帯びた言霊を紡ぐと、四方の封印の札に亀裂が入り、破れた。上の蓋をどけ、箱を開けると、中には一振りの刀が納められていた。
白を基調とした柄に黒い菱型模様が入っている。鞘は白樺の木で作られた白い鞘。全体の長さはおよそ80cmほどの短い刀。所謂小太刀と呼ばれるものだ。
虎太郎が小太刀に手を伸ばすと、風の刃が走り、手に薄く切り傷で出来た。
『グルルルル‥‥』
獣の低い唸り声が聞こえた。部屋で動物を飼っていない。だが、確かに獣の声が耳に響いた。
虎太郎はその発生源を既に知っている。目の前の小太刀こそ、唸り声の正体だ。
風魔一族に伝わる意思持つ魔具、それこそがこの小太刀。銘は『白虎』。
虎太郎に与えられたが、虎太郎の力が未熟故に使用できなかった。
一時は実家に置いておくべきか考えたが、虎太郎から離れると大風が巻き起こり周囲に被害を与えたため、仕方なく持ってきたシロモノだ。
代々の風魔一族次期当主が継承してきたが、当代に関しては虎太郎を選んだ。虎太郎は風魔一族の次期当主ではないため、『白虎』を持つことを拒否したが、『白虎』が虎太郎から放されることを拒み、大風を起こし、周囲に被害を与えた。
風魔一族全体は次期当主ではない虎太郎が持つことを忌避したが、現在の風魔一族当主である虎太郎の父も次期当主である虎太郎の姉も、虎太郎が『白虎』を持つことを認めた。
だが、虎太郎は『白虎』を鞘から抜くことが出来なかった。結局使う事が出来ないまま、魔法学園に入学することになり、以後自身で封印を施し、その力を抑え込んでいた。
だが、現在の状況を考えれば、とにかく力が必要だった。
「今はまだ抜けない。俺にはお前を制御する力はない。‥‥でも、お前の力がいる。力を貸してくれよ、『白虎』」
虎太郎は手に傷を作りながら『白虎』を掴むと、風が収まった。
「‥‥ありがとうな」
虎太郎は制服のベルトを緩め、その隙間に小太刀を指し、ベルトを締める。家を出る前に、手裏剣の予備と現状使える自身の追加武装も持って部屋を後にする。
虎太郎が学生寮を出て現場に向かって走っていると、空から嫌な感じを受けて空を見て思わず言葉が漏れ出た。
「なんだ、アレは‥‥」
空が黒い。曇っている訳ではない、雨が降りそうなわけでもない。所々日が差し込んでいる。
よくよく見れば、黒い何かが動いている。黒い雲、ではない。アレは‥‥
「‥‥カラスか?」
大量の、空を埋め尽くすカラスが大移動していた。異様な光景だった。
動物たちは敏感だ。危険を感じて大移動しているのかも知れない。もしくはあっちの方角に何かヤバイものがいるのかもしれない。想像するだけで嫌になるほどだ。
レべル4、学園長は言葉を選んでいたが中級で済む訳がない。間違いなく上級が出てくる。そして、それに引きずられ、大量の妖魔が発生する。
妖魔は妖魔を引き寄せる。そういう性質があるのか、それとも妖魔が好む状況、場所だから妖魔が連続して現れるのか、詳しくは分からない。
だが、一昨日、中級妖魔が現れたのは、偶発的な出現ではなく今日に至る前触れだった。今になってしまえば理解も出来るが、あの時に気づける訳がない。
中級妖魔の出現は地震で言えば初期微動であり、その後に来る本命の主要動こそ、上級妖魔だった。
「‥‥考えていても仕方がない」
虎太郎は自身の持ち場に急ぎ向かった。
飛鳥の力は見た。その力は最下級に負けるとは思えない。だが‥‥弱点も見た。
もし飛鳥が一時的にでも無防備となり、そのスキを突かれたら、飛鳥と言えど生死に関わる。
人の身である以上、死は避けられない。いつか、遠い未来に命が尽きる。それは生命体である以上当然の事だ。だが、その命を無為に散らしていいわけがない。人は抗う生き物、妖魔に、脅威に、運命に、抗う生き物だと、虎太郎は理解していた。
「俺は死ねない‥‥死ぬわけにはいかない」
虎太郎は小太刀を握っていた。コレに収まる者の力に縋ってでも生き残る、ただそれだけを考えていた。
虎太郎が走る最中、空に向かって放たれる炎が見えた。オレンジ色の鮮やかな炎が空に向かって飛んで行き、そして霧散する。
「あそこか! 『風よ、我に空駆ける足を与えよ』」
虎太郎は魔力を帯びた言葉を紡いだ。
すると、風が虎太郎の足に集まり、体を空に押し上げる。
空駆けるの言葉通り、虎太郎の足は大地ではなく空を捉え、走っている。
空に向かって走ることで、障害物を避け、目的地への最短ルートを進ませる。
そんな走る最中、飛鳥の姿を捕らえた。敵は鳥の妖魔、それも複数だ。
飛鳥は炎を放ち、敵を焼き尽くす。さして苦労している様子はなかった。
飛鳥は炎を纏っていて攻撃は届く前に焼き尽くし、炎を放ち飛び道具として攻撃をしている。
どれ程敵が襲い掛かってもの、その構図は変わらない。
「‥‥俺、要らないかな、コレ‥‥」
ちょっと自信を無くしてしまうが、万に一も避けなければならない。
失ったモノは帰ってこない、だから失わないためにも‥‥‥‥
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