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第3章 成人の儀
75 今日はゆっくりおやすみ ※
しおりを挟む「ひっ……あぁああっ!!」
ずくん、と下肢に甘い痺れが走った。
と同時に熱いものが溢れて、じわりと広がっていく感覚。あぁ……俺、まさか……。
「ヴァン……ぁあ、ま、まって!」
「んん?」
「待って俺、や、ばい……」
「……なに?」
やばい。泣きそう。
「俺……や……っちゃっ……た」
「どうしたの?」
耳のそばで囁くようにたずねられる。
ヴァンの身体で広げられていた膝を、もぞもぞと合わせようとする。それに気づいて胸を弄っていた手が、俺の下肢の方に伸びていった。
今更隠せるわけじゃないのに、恥ずかしくて思わず首を横に振ってしまう。
「……そこ、だめ……だ」
「ここ? あぁ……」
薄手の部屋着のズボンの上からなぞった手が、俺の変化に気づいてしまった。
「うん……ここ、イって、濡らしちゃった?」
「……ひぅ!」
ちらり、と視線を落として見てから、耳に触れるほど唇を寄せて言う。
「染みになり始めている」
「脱いで……着替え、ない……と」
「もぅ、終わりでいいの?」
「……え?」
意味が分からずヴァンを見上げた。
汚してしまったなら取り替えて洗わないと……という意味、だったのに。そのまま俺の口はヴァンの唇で塞がれてしまう。
「……んんっ……ん!」
再び舌で舌を絡ませながら片手は俺の手首を捉えたまま、もう片手は濡れたズボン越しに、まだ硬さを残す下肢の俺を撫で上げる。
大きな指が、俺の状態を確かめるように、根元から包みあげるように。
そんなの……たまらない。
「……んんっ! ん……ぁあ、ふ……」
「全部……出し切ったわけじゃない、みたいだ。まだこんなに元気だよ」
「ヴァン……んん、ぁ……」
「いつも自分ではどうやっていたの?」
甘い痺れで、また放ちそうになる。
濡れた布地がこすれて、恥ずかしくて、腰の疼きがたまらない。
「……どぅ……って……」
「自分で慰めたり……は?」
「しらな……い」
ヴァンが首を傾げた。
「知らない?」
「だ、だって……そこ、あまり触ったらなんか、白い、アレ、出てくるし……こわくて……」
「自分で慰めたりもしていなかったの?」
少し驚いた顔でヴァンが俺を見下ろす。
それって、ダメなことだったのか?
知らないよ。誰にも聞かなかったからだけど、誰も何も教えてもらわなかったし。学校の授業でソレが何かは知っていても、どう扱えばいいかなんて知らない。
ヴァンが大きく息を吐く。
「まったく……どこまで可愛いんだ……」
「……ヴァ、ン?」
「いいんだよ。感じて、きもち良くなったら、反応してしまうものだから」
「……ぁあ! あ!」
ズボン越しの手が動き出す。今度はハッキリと俺を駆り立て、根元からしごきあげるような動きで、俺はたまらず首をのけぞらせる。
「ヤバい……ぃぃい、あ、そんな……ぁあ、あ」
「イっていいんだ」
「……ぁあ、あ、ダメ……だめだって……ぇ」
気持ち良すぎて腰が動く。足が悶えるようにシーツを蹴る。
ヴァンの手でこんなふうに駆り立てられて、今度こそ本当に、全部放ってしまう。身をよじっても無駄な抵抗だって分かっているのに、クロスして押さえつけられている手に力がはいる。
「や、ぁああ、あ、出るっ、出ちゃうぅぅ……!」
唇を胸に移し、ずっと舐められていた方の乳首を甘く噛む。
瞬間、ビクンッと大きく身体が痙攣した。
じわぁあ……と生暖かいものが、下着の中に広がっていく。
止まらない。たまらない。肩に入った力が、全部……出し切ると同時に……身体が弛緩していく。涙がにじんで、俺は力なく声を漏らす。
「……あぁあ……あ……ぁ……」
俺の手首を掴んでいた、ヴァンの手が離れた。
力が抜けてしまった俺は、腕を動かす気力も無い。
ヴァンは下着ごと俺のズボンを脱がすと、軽く拭いてベッドの下の方へと放った。汗のにじんだ腰や濡れたまたの間や脚が、空気にさらされてひやりとする。
ヴァンのあたたかな手のひらが、腰から太ももを撫でさすった。
「……やだよ……もぅ……」
「どうして?」
「恥ずかしい……」
「……ふふっ」
ヴァンが笑いをこぼした。
「リク……」
優しく俺の名前を呼ぶ。
恥ずかしさと、ここまでの急展開に心と身体がついて行けない。望んでいたことだったのに、現実は俺の想像を軽く越えていく。
「……大丈夫かい?」
「もぅ、ちから……はいんない……はずかしい」
「このぐらいで恥ずかしがっていては、先には進めないね」
軽く笑うように言う、その言葉に俺はヴァンを見上げた。
俺の頭を優しく撫で、髪を梳いて囁く。
「身体を拭いておいてあげるから、今日は、ゆっくりおやすみ」
そう言って、軽く唇にキスをした。
俺は……訳が分からなくて、ぽかんとしたまま見上げる。「おやすみ」って、終わりってことか?
「まって……」
「ん?」
俺から身体を離そうとする、ヴァンの手を掴む。
「待って、もぅ……終わりなの? だって、ヴァンはまだ」
「いいんだ」
優しい手のひらで俺の頬を撫でる。
「リクの可愛い姿がたくさん見られた。だから、いい」
「何を言ってるんだ」
「あまり性急にならず、ゆっくりでいい」
「そんな……だって、もう止められないって言っただろ!」
ヴァンはまだ、シャツすら脱いでいない。
これで終わりだなんて、絶対、違う。
「俺だけが気持ちよくなって終わるなんて、嫌だ」
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