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第3章 成人の儀
112 飲んで ※
しおりを挟むもう、限界なんて言える状態じゃないぐらい、意識を保つギリギリ……なのにヴァンは俺が言うまで動いてくれない。
「……んん、ヴァン、ん……」
必死に声を押し殺しながら縫い付けられた手足で、ヴァンに視線を向ける。
「飲んで、って……言ってごらん」
「……そん、な……」
「どうしても言えない?」
こんな状態での駆け引き、俺が……我慢できるわけないって分かっている、くせに。ひどい。ずるい。……でも、好き……。
もう、訳が分からない。
「言えないと……朝まで、その恰好だよ。護衛や召使いたちも来てしまうね」
「……ぁ、そんな……」
「今ならまだ……僕しかいない、よ」
そう微笑みながら言ってから。
「いや、やっぱり、僕以外の誰にも見せたくないな」
困ったように眉根を寄せる。
そして、ゆっくり立ち上がったかと思うと、魔法で拘束されていなければ手が届くほどの距離で見下ろした。長い、綺麗なヴァンの指先が、近づいてくる。
仄かにお酒の匂いがする。
ヴァンも……もしかして、酔ってる?
「本当にリクは、一度嫌といったら……曲げないよね? 頑固だなぁ」
そこがまた可愛いと囁きながら、つ、とへその辺りから胸に向けて指先でそっとなぞりあげた。敏感になった肌は、触れた程度の刺激にすら耐えられない。
「っあああ……ぁ!」
キシ! と再びリボンが軋んだ。
感電したみたいに身体が跳ねる。達してしまったような快感が逃げ場もないまま、嵐のような身体の中を荒れ狂った。
傍観から攻めに転じたヴァンは、指先だけの物足りない刺激で、どこまでも俺を追い詰めていく。
「……イきたい、でしょう?」
「うぅ……ぁ、あ、ぅう……イ、きた、い……」
「じゃあ、僕にどうしてほしい?」
泣きそうな声になりながら、俺は声をしぼり出す。
「の……で……」
「ん? よく聞こえなかったな」
つ、と爪が、胸の尖りを弾き、弄った。
「ひぅ! のん、で……」
「何を?」
「お、おれ……せ……」
肩をよじり、悶えながら声をしぼり出す。
「……俺の……せ、精液……のんで……」
ふふ、とヴァンが微笑んだ。
「どのぐらい?」
「……ど……」
そんな……どのぐらい、だなんて。
ソファの背に手を添えながら、クッションの上で喘ぐ俺の口元に顔を寄せる。
「少し……でいいの?」
「や……」
「……じゃあ、どのぐらい?」
俺は濡れた瞳で、間近に寄せられたヴァンの欲に染まる瞳を見上げた。
「ぜんぶっ……俺の精液、全部っ……飲ん、で……!」
自分が口にした言葉で……神経が、焼き切れそうだ。
にっこりと、ヴァンが笑った。
「いいよ」
身体を寄せ、耳元で低く囁く。
「リクの濃くて……熱い、精液……全部飲んであげる」
すっ、と身体を起こして俺の股の間に顔を移動させる。
期待と、不安と、恥ずかしさと、嬉しさで……もぅ、わけが分からない。
ギラギラした視線は離さずに、形のいい唇を開いて舌を伸ばした。そのまま、びくびくと震えている俺の陰茎を包み込む。
「ひぁぁ! ぁ、あぁっ!」
熱い肉厚な舌が、俺のものを舐める。
舐め上げて、形を確かめるみたいに……くびれに沿って……。
「う、はぁあ……ぁ、ぁぁ」
「うん……可愛い、ね……」
笑いながら、先端の穴に舌先を押し付け、捻じ込もうとする。
片手で根元から優しくしごきあげながら、袋をもやわやわと揉んで……思わず腰が浮いてしまう。
「あっ、あ、ああぁあ……ぁ、もぅ……」
頭をクッションに押し付けて、喉を反らした。
「……んっ……」
ぐっ、と深く咥えこむ。
ヴァンの咥内に飲み込まれ、舌が、唾液にまみれた舌が、絡みついて……微かに歯が触れた。吸い上げられ、頬の内側で押しつぶされる。
目の前が、チカチカした光がはしるようで、神経が焦げていく。
腰が……腰が動いて、もっと奥へと行きたくなる。
そんなのダメなのに。
抑えきれない。
……もう、げん、かい……。
「んんっ……」
「うぅぅ! ぅ――!!」
びくんっ! と身体が震える、そのタイミングに合わせてヴァンがリボンを解いた。
限界まで抑え込まれた俺の欲望が、溢れ、吹き出す。溢れたそれは、そのまま……ヴァンの口の中に。飲み込まれて。
「――っあ、ぁ、あっ、……あぁっ! ぁ」
断続的に、びくんっ、びくんっと痙攣する身体に合わせて、吹き出している……のに、それを……ホントに、飲んで。
「んぅ……」
「……ふぁ、ぁ、ぁぁあ……ぁ」
身体の力が抜けていく。
快感と緊張と、堪えていた何もかもが溶けて、風船から空気が抜けていくように、俺はソファの、クッションの上で脱力していった。
ヴァンが顔を上げる。
まだ荒い息が収まりきらず、上下する俺の胸を見つめ、ずい……と乗り出してきた。
「ふふ……」
「たくさ、ん……出し、ちゃった……よぉ……」
泣きそうな声で呟くと、ヴァンか柔らかく微笑んだ。
本当に着ている物を汚さないようにって……全部、飲むなんて。
「出して……き、気持ち悪い……で、しょ……?」
「平気だよ」
親指の腹で俺の頬を優しく撫でる。
「だって、たくさん……」
「ふふ、そんなに大量……でもなかったよ。濃かったけど、ね。ちゃんと男の子だなぁ……って」
「うわぁああ……」
ふ、と両手首と足首の戒めが解けた。
ヴァンが拘束の魔法を解いたのだと気づいて、俺は両腕で顔を隠す。恥ずかしい。恥ずかしい。もう……恥ずかしすぎるよぉ。
でも、気持ち良すぎて……どうしたらいいのか分からない。
「そんなに恥ずかしかった?」
「う……」
「リクが……」
頷く俺を愛おしそうに撫でながら、ヴァンが微笑む。
「本気で嫌がっていたら止めようかと思っていたけれど……結構、感じていたよね?」
「う……ぅぅ、う……ん」
俺の動きでバレているのに、今更嘘はつけない。
「こういうのも、好き?」
「……わ、かんな、い……でも……」
「でも?」
「ヴァンが嬉しそう……なの、うれし……いから」
ヴァンのことが好きすぎて、嬉しくて喜んでくれるなら、どんなに恥ずかしくてもできてしまう。
「俺……変だ……おかしい――」
不意にヴァンが俺を抱きしめた。
突然のことで、息を止めて身体を小さくする。
「ヴァン?」
「本当にリクは、可愛い……可愛い、もう、可愛い」
「……ヴァン……」
じわり、とヴァンの熱が伝わってくる。
俺はさっきとは違う感覚で、体中に熱が広がるのを感じている。
温かくて、柔らかくて、魂までもが満たされるような……感覚。気持ちいい。
「大丈夫だから」
耳元で囁いてから顔を上げる。
「リクがおかしくなっちゃったのは、この悪い大人のせいだから心配しないで」
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