【本編完結】異世界の結界術師はたいせつな人を守りたい

鳴海カイリ

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第3章 成人の儀

111 覚えておいてね ※

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 慌てて口を噤んでももう遅いかもしれない。
 でも、これ以上、俺の喘ぎ声を聞かせるわけにはいかない。

「うぅ……う」
「どれだけ感じやすいのか、分かったでしょう?」
「……う、ヴァン……んんっ」

 きゅっと、俺の陰茎の根元を指で締め付けたまま、ヴァンの舌がくびれをなぞり先端の穴に舌先を押し付ける。
 視線は……俺の目を見つめたまま。
 野獣が、獲物をもてあそびながらじっくりと追い詰めて、逃げ切れなくなりのを待っているような……視線だ。その視線までもが、気持ちいい。

「淫らな気持ちになったら、止められない……でしょう?」
「……く、ぅう、う」
「だからね、リクには……警戒心をもってもらわないと」

 手首は魔法の力でクッションに縫い付けられたまま。
 それどころか足首まで、ソファに縛り付けられたみたいに動かない。遠慮なく俺のものを舐めねぶるヴァンから逃れられない。

「ひぅう……ぅ。ヴァン……も、ぅ」
「イきたい、の?」

 イきたい。けど、服は汚したくない。
 脱がしても貰えなくて、逃げたくても手足は拘束されて逃げられない。
 ヴァンの、甘い責めは止まらない。

「どうしてもイきたい、なら……」

 低く、囁く吐息が敏感な場所に触れて、俺は荒い息で快感を逃がそうと悶える。
 ヴァンは微笑ながらもう片方の手を添えて、袋までもやわやわと揉んでいった。先端と根元を容赦なく責める。なのにイけない。
 おかしくなる。

「あ……ぁあ……ぁ……っあ、あ」

 声を抑えきれない。

「……だったらリク、飲んで……って、いってごらん?」
「え……?」

 舌を伸ばし、根元から舐め上げながら、笑う。
 俺は何を言われたのか分からず、目を見開いて股の間のヴァンを見つめ返した。

「なに、を……」
「リクのここから吐き出す、白く、濃い……の。衣装は汚したくないんでしょう? だったら僕に飲んでって言ったら、イかせてあげるよ?」
「や……そんな……」
「嫌なんだ」
「……ぁ、そう、じゃなく、て……」

 俺の精液をヴァンに飲ませるなんて、出来ない。

「き……きたない、し……」
「リクのものなら平気だよ」
「ダメ……」
「そう」

 ふ……と顔を起こした。そのまま何をするのかと思ったら、ジャケットの内ポケットから取り出したのは、赤いリボン、だ。
 テーブルに置いてあったお酒のボトルを飾っていたもの。
 それをヴァンは器用に俺の陰茎の根元に巻き付けて、優しく縛った。
 痛くは無い。けど、吐精できない、ぎりぎりの強さで。

「……なに、を」
「ゆっくり決めて」

 そう言ってヴァンは身体を起こし、俺から離れていく。
 俺の手足は、クッションやソファに縫い付けられたまま、なのに。そんな俺を置いて、ヴァンは飲み物を置いてあるテーブルの方までいってから、ボトルのお酒をグラスに継ぎ足した。

「夜は長いから。ゆっくり考えるといいよ」

 そばのイスにゆったりと座り、長い足を組む。
 舐め回すような視線で、肌がじりじりと焦げていきそだ。

「う……んんっ、ん……」

 ヴァンが笑みをこぼした。

「……これは、なかなか壮絶な眺め、だな」
「ヴァン……ん……」
「いっそ禁欲的なほどの色合いの礼服を淫らに着崩して……腰が、動く度に、リクの大切なところを縛っている赤いリボンが、揺れている。すごく……いやらしいね」

 ぞくん、と腰から背筋が甘く痺れた。
 下肢に視線を向けると、ヴァンが言う通り、悶える股の間でリボンが揺れる。くらくらしてくる。

「やだ、やめてよ……恥ずか、しい……」
「うん。でもこれはお仕置きみたいなものだから」
「……ヴァ、ン……」
「その身体で、ちゃんと覚えるように」

 身体の中が燃えるように熱い。
 さっき飲んだお酒の影響もあるのだろうけれど、何よりヴァンの視線が……絡みつく視線にぞくぞくして、たまらない。
 こんな恥ずかしい恰好、絶対嫌なのに……嫌なのに、気持ちいい。

 痛いことも、気持ちいこともされずに恥ずかしい恰好て放置されて、ただら見られているだけ……なんて。

「……ぅう、ぁ、んんっ……ふ……ぁ」

 やだ。なんだこれ、気持ちいい……怖いぐらい。どうして。
 俺、おかしいよ……。
 ヴァンにお仕置きされて、気持ちいいって感じている?

「っあ……ぁ」
「ちゃんと覚えていて。リクの、その……首の守りの魔法石は、リクを傷つけようとするものしか、排除できないと知っているよね?」
「う……」

 くらくらする頭で、頷く。

「し……ってる」

 何度か聞いた。
 俺を傷つけないもの……大人しい動物とか、子供とか……そういうものまで排除しないようにと、俺の為を思ってヴァンが石を調整していた。

「うん。そうじゃないと護衛できないし、怪我した時に治療もできない……でしょう?」

 だから、とヴァンは囁く。

「ちゃんと自衛……してくれないと」
「……んっ、ぅ、ぁ、あ」

 瞳が細まる。
 口元は笑っているけれど、瞳は有無を言わせない圧が……すごい。

「僕以外の人に、無防備に触らせないで欲しい……な」
「ヴァン……んんっ」
「僕は、リクが思う以上に嫉妬深い……からね」

 優しい……けれど、低く響く声。
 ぞく、とまた甘い痺れが走った。
 息が続かない。
 ソファに拘束されて放置されているだけ……なのに。

「……もし、また誰かにキスさせたり必要以上に触らせたら、次はもっとリクをいじめてしまうよ。わけが分からなくなるぐらい、甘く。一晩中。いや、何日でも……」
「あぁ……ぅ、ん……」
「もちろん、そういう責めが好きなら、いくらでも……」

 前屈みで顎に手を添え、ヴァンが楽しそうに微笑む。
 楽しいの?
 恥ずかしい俺の姿で、ヴァンも……感じている?
 そうなら、嬉しすぎる。

「……ヴァン、が、する……ならすき……」
「リク……」
「ヴァンの……ぜん、ぶ、気持ちいい……」

 嬉しすぎて。俺……こんな、恥ずかしくて辛い責めまで、相手がヴァンなら嬉しい……なんて、感じている。

「まったく……たまらないね。ここまでしてもいいの?」
「いい……」

 俺もそうとう、おかしい……よ。

 キシ……と根元を縛るリボンがきしんだ。
 あ、もぅ……ダメだ。
 もぞもぞと動く甘く疼く腰に合わせて、赤いリボンが誘うように揺れる。

「……んぁ、あ、ヴァン……」

 もう、イきたい。限界。
 だけど……服、汚したくない。
 吐き出したい。なのに……飲ませるなんて絶対に嫌で……泣きそうになる。首をのけぞらして懇願こんがんする。
 吐き出せないまま、びくびくと身体が痙攣けいれんし始める。

「ぁ……ヴァン……も、ゆるしてぇ……」
「怒ってはいないよ。覚えて欲しいだけ」

 優しい声で囁く。

「イきたいなら、ちゃんと僕に、お願いしてごらん」





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