113 / 202
第3章 成人の儀
110 脱がさない ※
しおりを挟む広げた首の根元から胸に、ヴァンの唇や舌が……ゆっくりと下りていく。
思わず俺は肩を掴んで離そうとして、腕が、動かないことに気が付いた。
袖に縫い付けられた魔法石が重くクッションに沈み込む。まるでそれぞれの手首を両耳のそばで拘束されたみたいだ。
「ヴァン!」
「うん……兄上ばかりじゃない、他にも肩や髪を触らせた人たちがいたね。ギネス卿とハンソン卿。サムウェル卿はリクの頬にまで触っていた」
「……あっ……ぁあ」
乳首に舌を這わせ、軽く噛む。
えっ、誰? って言うぐらい、言われた名前の人は、思い出せない。
きっと何人も挨拶した人たちの中の人たちだ。けど……この世界の人たちってスキンシップが親密というか、それぐらい……普通の挨拶だと。
「魔法院のストルアンからは、何か貰っていたね。危ないな……」
「それは! っあ……」
「リクにはもっと、警戒心を学んでほしい」
ねっとりと……舐め回すように見つめる瞳が、乱れた前髪の隙間から覗く。
その欲情した視線だけで軽く達してしまいそうになる。下肢に、づくん、と熱が集まって俺は身悶えた。
「ま……って……」
「待てないよ」
「……ぁあ、は!」
片手で右の乳首をいじり、舌で左の乳首をなぶる。もう片方の手は俺の衣装の前を広く開けながら、指の腹で臍の辺りを撫でまわし、スラックスの留め金を外して前を開こうとしている。
「リクは……ここ、こんなふうに触られたら、すぐに気持ちよくなっちゃうでしょう?」
「まっ、て……ヴァン、だめだっ、って……っあ!」
「何がダメ、なのかな?」
熱い舌で胸の突起を尖らせながら、軽くコリコリと歯を立てる。その動きや快感が、俺の下半身へと急激に熱を集めていた。
こんな調子で責められ続けたら、あっという間に達してしまいそうだ。
「やめて……ヴァン!」
「僕の舌や指では、は気持ちよくない?」
「ちがっ!」
「なら……もっと、違うところを責めて欲しいのかな?」
スラックスの前を広げ、下着ごしに芯を持ち始めた俺のものを指先でなぞる。
ぞぞぞ……と、腰に甘い痺れがにじんで、達してしまいそうになる快感を必死に堪えた。
「ちがうっ! ヴァン、やめて……ぇっ!」
「今夜は、やけに嫌がるね? どうしたの?」
涙目になりながら俺はヴァンを見上げた。
「ふ……服、脱がし、て……」
「そんなに……裸に、なりたい?」
「ちが、汚したく……な、い」
今着ているのはお披露目で来た礼服だ。最高の生地と魔法石とで仕立てた、俺にとって宝物みたいな衣装だ。
たくさんの人たちが俺の為にと作って、用意してくれた。
ヴァンからプレゼントされた大切なもの。それを――。
「俺の……せ、せぇーえき、で……汚すの、や……だ」
痛いぐらいに硬くなって、もう、いつ達してしまうか分からない。
初めてヴァンと繋がった夜も、火の魔法石の練習をした時も、こらえ性の無い俺はいつもあっけなく吐精してしまった。
どろどろのぐちゃぐちゃにして……。
意識を飛ばした俺に代わって、服やシーツは、いつもヴァンが片づけてくれていた……と思うのだけれど。
「早くっ、もう……気持ちよくて、イっちゃいそ……脱がさせ、て」
「リク」
「脱ぎたい。はや……く」
大切な衣装を汚してしまう前に。
もう、どのぐらい我慢できるか……わからない。
見つめるヴァンは舌での責めは止まっているけれど、さわさわと撫でる、身体を愛撫する指先の動きは止まっていない。
感じやすい身体を、じっと観察するみたいに。
むしろ半泣きの俺を見て唇の端を上げている。
「ヴァ、ン……んんっ」
「脱がさない」
「……え?」
「脱がさない、って言ったんだよ」
下着をずらすと、勢いよく俺のものが飛び出した。
もう先っぽは、感じ始めている証しをにじませている。頭を位置をずらしたヴァンは、はくはく言い始めている俺の先端に舌を伸ばした。
「あぁっ!」
「ん……」
くっ、と片手の指で根元を絞める。
あっけなく吐精しそうになった瞬間を押し止められて、俺は快感を逃がせずに肩を捩った。そのまま……厚い舌が、ゆっくりと俺の先端や傘を、ねっとりと舐め回していく。
「ひっ……あっ、あ、だ、だめぇぇ……ぇっ!」
信じられないほど、煽情的な動きと視線……で。
「リクは、本当に……感じやすい、よね?」
「やめ、やめて、ヴァン、イっちゃう、ほんとにイっちゃうからっ!」
「ここを押さえていたら、イけないよ」
ふふふ、と意地悪く笑う。
ヴァンの言う通り、もうガチガチでいつ吐き出してもおかしくないのにイけないでいる。その分、こもる熱が苦しいぐらいに、腰や下腹に溜まっていく。
「……ひぃ、あ……ぁあ」
「ね、こんなに感じやす身体なのに、他の人に触らせて、もし淫らな気分になったらどうするの?」
無い。そんなことない。
触られて、こんなにおかしくなるのはヴァン以外にいない。なのに……。
「あっ、ぁあ、あっ……ぅ」
「若いから堪えられないっていうのは、分かっているよ」
裏筋を、根元から舐め上げる。
舐め上げヴァンの形のいい綺麗な唇が、俺のを、そのまま咥えこんだ。
「ひっ……」
舌が、歯が、頬の内側が俺のを包み込んで撫で、擦る。
生き物みたいに、ねっとりと、熱い粘膜がまとわりつく。
ヴァンの口を穢してしまうという背徳感と、雄としての快感がせめぎあう。
「くっ……あ、ぁあ」
イく。イきそう。でもイけない。
腰を浮かせて喉をのけぞらせる。頭の芯が焼ける。心臓が、心臓がバクバクいって呼吸が続かない。気持ちいい。おかしくなる。
根元を絞めつづける指が……辛い。
「あぁっ! あ、や、やぁ……ぁあ!」
「んっ……」
「……やめ、て、ヴぁ……ぁあ」
会場から戻ってそのまま、水浴びも何もしていないのに。汚いのに。
ぬるんっ、と口から取り出した俺の陰茎はヴァンの唾液でぬらぬらと輝いて、なんかもぅ、とんでもない物を見たような気持ちで眩暈がしてくる。
「リク……あまり大きな声を出すと、隣の部屋で控えている人たちに届いてしまうかも知れないよ」
ハッとした。そうだここはいつもの俺たちの家じゃない。
ヴァンの実家で……隣の部屋には、ザックたちが控えているはずだ。
20
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
溺愛の加速が尋常じゃない!?~味方作りに全振りしたら執着兄上たちの愛が重すぎました~
液体猫(299)
BL
毎日AM2時10分投稿
【《血の繋がりは"絶対"ではない。》この言葉を胸に、末っ子クリスは過保護な兄たちに溺愛されながら、大好きな四男と幸せに暮らす】
アルバディア王国の第五皇子クリスが目を覚ましたとき、九年前へと戻っていた。
巻き戻す前の世界とは異なるけれど同じ場所で、クリスは生き残るために知恵を振り絞る。
かわいい末っ子が過剰なまでにかわいがられて溺愛されていく──
やり直しもほどほどに。罪を着せた者への復讐はついで。そんな軽い気持ちで始まった新たな人生はコミカル&シリアス。だけどほのぼのとしたハッピーエンド確定物語。
主人公は後に18歳へと成長します(*・ω・)*_ _)ペコリ
⚠️濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭のみ重い展開あり。それ以降はコミカルでほのぼの✌
⚠️本格的な塗れ場シーンは三章(18歳になって)からとなります。
⚠️若干の謎解き要素を含んでいますが、オマケ程度です!
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる
彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。
国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。
王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。
(誤字脱字報告は不要)
《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。
かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
あなたの隣で初めての恋を知る
彩矢
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる