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終章 その湖畔のコテージで僕らは熱を分け合う
183 きもちよくして ※
しおりを挟む「――っは! あ……」
守りの魔法石の無い白い首がのけ反り、ゆっくりと僕の胸の上に落ちた。
背骨にそって動く僕の指先に合わせて、もぞり、と揺れる腰。鼻にかかる吐息が甘く、僕の喉元をくすぐる。
柔らかな黒髪に隠れる、熱をもった耳元に囁く。
「リクの誘惑に負けまいとするのは、辛かったよ」
「はぁ……ふ、ん、んんっ……」
些細な指の動きにも感じているのだろう。
切なげに細めた瞳と抑えられない声に、僕は何度となく下から上へ、そしてまた下へと滑らかな背中を愛撫していく。
その指先の動きに合わせて溢れる声は、否応なしに僕の欲望を駆り立てていった。
「……んん、う……ヴァン……」
「うん」
「指……やら、し……」
「ん?」
僕に着いた火が、リクの身体も燃え上がらせているのか。
だとしたら嬉しい。
もっと、もっと気持ちよくなって欲しい。辛いこと悲しいこと、嬉しいことすら飲み込んで、僕でいっぱいになって欲しい。
今は、僕だけを感じてくれないか……。
「いやらしい?」
囁く声で、息を継ぐようにリクが白い喉を反らす。
そのまま逃げてしまいそうで、僕はことさら肩を抱く腕に力を籠める。首筋に唇を添わせ、笑みを殺しながらたずねる。
「いやらしいっていうのは、こういうことかな……」
「……っあ!」
背骨をなぞる指を、するりと更に下の尻の割れ目の方まで伸ばした。
腰が跳ねる。じわりと汗ばむ身体。
尾骨をなぞり、ぎりぎりまで下りながら肝心の場所には触らない。期待にひくついているだろう蕾には触れず、押し撫でる指の腹は腰に戻る。
リクが切ない声を上げる。
「ぁあ……あ、はっ……ヴァン……」
耐えられないとでも言うように、僕の指の動きを追って腰が、揺れた。
そして下腹部に押し当てられている場所に、確かに芯を持ち始めているもの。これは……リクの、男の部分が反応……し始めている?
ストルアンにさらわれ僕の腕に戻って以降、何度欲情に喘いでも反応を示さなかった。
快感に喘ぎながらも、恐怖で畏縮してしまう。もうリクは男としては達することができないのでは……そう、思い始めていたのだけれど。
リクも、少しずつ回復している。
前に向こうすとる精神につられ、身体の機能も取り戻し始めているのだとしたら……。
「リクは……本当に感じやすい、よね」
嬉しい。
「はっ、あ……ヴァンが……そう、した……」
「うん……」
恥ずかしそうに言うリクの声に頷く。
たくさん、たくさん、僕で感じて欲しくて、リクくの背中も唇も中も、全部気持ちよくなるように触れて来た。リクくの幸せな顔が見たくて、喘がせたくて、僕をもっと欲しがるように。
ずっと側にいたいと……思ってくれるように。
やっぱり僕は、ずるい大人だね。
持て余した快楽にリクの体温は上がりっぱなしだ。
息も上がって、暴れる熱を一人では逃がせなくなっている。
まだ、明るい時間のコテージのテラスで……このまま、ここで抱いてしまってもいいのだけれど……。でもやっぱり、ゆっくりじっくり、とろとろになるまでリクを蕩かしたい。
いっそ朝まで。
意識を失うまで……。
抱きつぶしてみたい。
「ヴァン……して……」
耳に触れるほど近く唇を寄せて、精一杯、甘い声で囁く。
「リク?」
「もっと……きもちよく……して……」
肩を抱く腕を緩めた。
ゆっくりと頭を持ち上げ僕を見下ろす。見つめ合う。綺麗な、綺麗な、宝石みたいな黒い瞳に、嬉しくてたまらないという顔の僕がいる。
そのままどちらともなく唇を重ねた。
最初は小鳥が啄ばむように。
次第に深く、舌先を絡め、互いの咥内をなぞり、味わっていく。僕らを隔てる粘膜すら、邪魔だと思うぐらいに。
「んんっ……ん……」
鼻にかかる濡れた声。
背中を引き込み寝長椅子に横たわらせ、僕は腕の中にリクを囲う。
深く、長く漏れた呼吸と共に、飲み込めなかった唾液がリクの口角を伝う。それを舐めとり、僕は囁く。
「もちろんだ……」
とろりとした瞳で見上げる姿は、何度見ても愛おしい。
「もう無理だと、言って泣いても離さない」
「うれし……」
瞳を細める。
その唇にもう一度軽くキスをして、僕は身体を起こした。リクもつられて上半身を起こす。その腰とひざ裏に腕を入れ、そのまま軽々と肩に抱え上げた。
「ひぇえ! ヴ、ヴァン!」
「やっぱりリクは軽いね」
「もう身体は――」
「大丈夫だよ。リクよりも元気なぐらいだ」
肩に抱え上げたまま、コテージの中に入る。
キッチンの側から側仕えのマークが顔を出した。
「わぁ、アーヴァイン様のリク様担ぎ、久々ですね!」
「しばらく奥の部屋にこもる。今夜の準備はしなくていい」
「ヴァン!?」
僕の気合いの入れように驚いたのか、目を見開くリク。マークはにやりと笑って返した。
「かしこまりました。では、こちらの部屋にお飲み物と軽い食事を用意してから、麓の街まで食材や日用品を仕入れに行ってまいります。護衛をお借りしていいでしょうか?」
「構わない。結界術でこの家には誰も入れないようにしておく」
「御入用のものがありましたら魔法か何かで報せを送ってください。帰りは明日の昼過ぎとしますので、それまで……ごゆっくり」
ひらひらと手を振るマークに見送られ、僕はリクを抱いたまま奥の部屋へと向かう。
大きな窓のある寝室だ。けれど東向きなことと、窓のすぐ外は大きく枝を広げた大木があって、昼間でも少し薄暗い。
僕はリクを抱えたまま部屋のあちこちに配置した魔法石に明かりを灯してから、ベッドに優しく下ろした。
顔を上げるリクの前で、シャツを脱ぎ捨てる。
「ヴァン……」
「……ここが、リクの感じる場所」
ベッドに仰向けで見上げるリクの上に覆いかぶさるようにして、服の上から、軽く芯を持っていたリクの根元近くを手のひらでおおう。
この裏側を中から擦り上げるとリクはよがり狂う。一番、感じる場所だ。けれど……。
「このもっと奥に――」
臍のあたりまで手のひらを移して囁く。
これからリクは、この最奥で、未知の感覚を味わうだろう。
「もう一つの扉があるんだ……そこを、こじ開ける。いいね?」
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