【本編完結】異世界の結界術師はたいせつな人を守りたい

鳴海カイリ

文字の大きさ
194 / 202
終章 その湖畔のコテージで僕らは熱を分け合う

183 きもちよくして ※

しおりを挟む
 


「――っは! あ……」

 守りの魔法石の無い白い首がのけ反り、ゆっくりと僕の胸の上に落ちた。
 背骨にそって動く僕の指先に合わせて、もぞり、と揺れる腰。鼻にかかる吐息が甘く、僕の喉元をくすぐる。
 柔らかな黒髪に隠れる、熱をもった耳元に囁く。

「リクの誘惑に負けまいとするのは、辛かったよ」
「はぁ……ふ、ん、んんっ……」

 些細ささいな指の動きにも感じているのだろう。
 切なげに細めた瞳と抑えられない声に、僕は何度となく下から上へ、そしてまた下へと滑らかな背中を愛撫していく。
 その指先の動きに合わせて溢れる声は、否応なしに僕の欲望を駆り立てていった。

「……んん、う……ヴァン……」
「うん」
「指……やら、し……」
「ん?」

 僕に着いた火が、リクの身体も燃え上がらせているのか。
 だとしたら嬉しい。
 もっと、もっと気持ちよくなって欲しい。辛いこと悲しいこと、嬉しいことすら飲み込んで、僕でいっぱいになって欲しい。
 今は、僕だけを感じてくれないか……。

「いやらしい?」

 囁く声で、息を継ぐようにリクが白い喉を反らす。
 そのまま逃げてしまいそうで、僕はことさら肩を抱く腕に力をめる。首筋に唇を添わせ、笑みを殺しながらたずねる。

「いやらしいっていうのは、こういうことかな……」
「……っあ!」

 背骨をなぞる指を、するりと更に下の尻の割れ目の方まで伸ばした。
 腰が跳ねる。じわりと汗ばむ身体。
 尾骨をなぞり、ぎりぎりまで下りながら肝心の場所には触らない。期待にひくついているだろう蕾には触れず、押し撫でる指の腹は腰に戻る。
 リクが切ない声を上げる。

「ぁあ……あ、はっ……ヴァン……」

 耐えられないとでも言うように、僕の指の動きを追って腰が、揺れた。
 そして下腹部に押し当てられている場所に、確かに芯を持ち始めているもの。これは……リクの、男の部分が反応……し始めている?

 ストルアンにさらわれ僕の腕に戻って以降、何度欲情に喘いでも反応を示さなかった。
 快感に喘ぎながらも、恐怖で畏縮いしゅくしてしまう。もうリクは男としては達することができないのでは……そう、思い始めていたのだけれど。

 リクも、少しずつ回復している。
 前に向こうすとる精神こころにつられ、身体の機能も取り戻し始めているのだとしたら……。

「リクは……本当に感じやすい、よね」

 嬉しい。

「はっ、あ……ヴァンが……そう、した……」
「うん……」

 恥ずかしそうに言うリクの声に頷く。
 たくさん、たくさん、僕で感じて欲しくて、リクくの背中も唇も中も、全部気持ちよくなるように触れて来た。リクくの幸せな顔が見たくて、喘がせたくて、僕をもっと欲しがるように。
 ずっと側にいたいと……思ってくれるように。

 やっぱり僕は、ずるい大人だね。

 持て余した快楽にリクの体温は上がりっぱなしだ。
 息も上がって、暴れる熱を一人では逃がせなくなっている。
 まだ、明るい時間のコテージのテラスで……このまま、ここで抱いてしまってもいいのだけれど……。でもやっぱり、ゆっくりじっくり、とろとろになるまでリクをとろかしたい。
 いっそ朝まで。
 意識を失うまで……。

 抱きつぶしてみたい。

「ヴァン……して……」

 耳に触れるほど近く唇を寄せて、精一杯、甘い声で囁く。
 
「リク?」
「もっと……きもちよく……して……」

 肩を抱く腕を緩めた。
 ゆっくりと頭を持ち上げ僕を見下ろす。見つめ合う。綺麗な、綺麗な、宝石みたいな黒い瞳に、嬉しくてたまらないという顔の僕がいる。

 そのままどちらともなく唇を重ねた。
 最初は小鳥がついばむように。
 次第に深く、舌先を絡め、互いの咥内をなぞり、味わっていく。僕らを隔てる粘膜すら、邪魔だと思うぐらいに。

「んんっ……ん……」

 鼻にかかる濡れた声。
 背中を引き込み寝長椅子カウチに横たわらせ、僕は腕の中にリクを囲う。
 深く、長く漏れた呼吸と共に、飲み込めなかった唾液がリクの口角を伝う。それを舐めとり、僕は囁く。

「もちろんだ……」

 とろりとした瞳で見上げる姿は、何度見ても愛おしい。

「もう無理だと、言って泣いても離さない」
「うれし……」

 瞳を細める。
 その唇にもう一度軽くキスをして、僕は身体を起こした。リクもつられて上半身を起こす。その腰とひざ裏に腕を入れ、そのまま軽々と肩に抱え上げた。

「ひぇえ! ヴ、ヴァン!」
「やっぱりリクは軽いね」
「もう身体は――」
「大丈夫だよ。リクよりも元気なぐらいだ」

 肩に抱え上げたまま、コテージの中に入る。
 キッチンの側から側仕えのマークが顔を出した。

「わぁ、アーヴァイン様のリク様担ぎ、久々ですね!」
「しばらく奥の部屋にこもる。今夜の準備はしなくていい」
「ヴァン!?」

 僕の気合いの入れように驚いたのか、目を見開くリク。マークはにやりと笑って返した。

「かしこまりました。では、こちらの部屋にお飲み物と軽い食事を用意してから、麓の街まで食材や日用品を仕入れに行ってまいります。護衛をお借りしていいでしょうか?」
「構わない。結界術でこの家には誰も入れないようにしておく」
「御入用のものがありましたら魔法か何かで報せを送ってください。帰りは明日の昼過ぎとしますので、それまで……ごゆっくり」

 ひらひらと手を振るマークに見送られ、僕はリクを抱いたまま奥の部屋へと向かう。
 大きな窓のある寝室だ。けれど東向きなことと、窓のすぐ外は大きく枝を広げた大木があって、昼間でも少し薄暗い。
 僕はリクを抱えたまま部屋のあちこちに配置した魔法石に明かりを灯してから、ベッドに優しく下ろした。
 顔を上げるリクの前で、シャツを脱ぎ捨てる。

「ヴァン……」
「……ここが、リクの感じる場所」

 ベッドに仰向けで見上げるリクの上に覆いかぶさるようにして、服の上から、軽く芯を持っていたリクの根元近くを手のひらでおおう。
 この裏側を中から擦り上げるとリクはよがり狂う。一番、感じる場所だ。けれど……。

「このもっと奥に――」

 へそのあたりまで手のひらを移して囁く。
 これからリクは、この最奥で、未知の感覚を味わうだろう。


「もう一つの扉があるんだ……そこを、こじ開ける。いいね?」





しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

溺愛の加速が尋常じゃない!?~味方作りに全振りしたら執着兄上たちの愛が重すぎました~

液体猫(299)
BL
毎日AM2時10分投稿 【《血の繋がりは"絶対"ではない。》この言葉を胸に、末っ子クリスは過保護な兄たちに溺愛されながら、大好きな四男と幸せに暮らす】  アルバディア王国の第五皇子クリスが目を覚ましたとき、九年前へと戻っていた。  巻き戻す前の世界とは異なるけれど同じ場所で、クリスは生き残るために知恵を振り絞る。  かわいい末っ子が過剰なまでにかわいがられて溺愛されていく──  やり直しもほどほどに。罪を着せた者への復讐はついで。そんな軽い気持ちで始まった新たな人生はコミカル&シリアス。だけどほのぼのとしたハッピーエンド確定物語。  主人公は後に18歳へと成長します(*・ω・)*_ _)ペコリ ⚠️濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭のみ重い展開あり。それ以降はコミカルでほのぼの✌ ⚠️本格的な塗れ場シーンは三章(18歳になって)からとなります。 ⚠️若干の謎解き要素を含んでいますが、オマケ程度です!

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年

愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる

彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。 国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。 王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。 (誤字脱字報告は不要)

異世界で高級男娼になりました

BL
ある日突然異世界に落ちてしまった高野暁斗が、その容姿と豪運(?)を活かして高級男娼として生きる毎日の記録です。 露骨な性描写ばかりなのでご注意ください。

あなたの隣で初めての恋を知る

彩矢
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

処理中です...