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序章 異人、異界に降り立つ
第二話
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「おやおや、こんなところに人とは珍しい」
「……」
いきなり声をかけられ、力が入らない身体で無理矢理動かし、なんとか声が聞こえたテントの入り口に顔を向ける。そこには立派な髭を蓄えた老人が入り口から覗き込むように立っていた。
「ふむ……だいぶ衰弱しておるな、命にも関わりそうじゃ。しかも見た事ない服装をしておる。お主は漂流者かな?」
「ひょ……りゅう、しゃ?」
「あぁ、今は喋らんで良い。とりあえず儂の家で養生するといい」
歳に似合わぬ鍛えられた身体でテントから健一を軽く抱き抱えると、そのままスタスタと歩き出す。
「着いたぞ。ここが儂の家じゃ」
1時間程歩いて着いた場所は、ログハウス調の家だった。
「っ! お帰りなさ……」
老人が扉を開けるとリビングから幼い少女が、パァッと満面の笑みを浮かべて近づいてくる。だが、抱き抱えられている健一を見ると、ビクッと肩を震わせ、そそくさと離れ、柱の影に隠れ、顔だけ出して、こちらを伺っていた。
「あぁ、ただいまシャロ」
「お帰りなさい。……お爺ちゃん、その人、誰?」
「こやつが行き倒れていたのでな、連れて帰ってきた。すまないが、空き部屋を寝れるように整えてくれんか?」
「う、うん……」
老人にお願いされると、軽く頷き、パタパタと足音を立てて部屋に向かっていく。
「部屋を片付け終わるまで、ここで横になるといい」
健一をソファの上に寝かせると、老人はそそくさと何処かに立ち去ってしまう。
「ほれ、麦粥じゃ。ゆっくりとお食べなさい」
暫くすると老人がソッと差し出した麦粥はよく煮込まれており、弱った健一が食べても大丈夫なように配慮されたものだった。
差し出された器を受け取ろうにも力が入らず、器を落としかけるが、老人が落ちる間際にキャッチしてこと無きを得る。
「そこまで弱っておったか。どれ口を開けれるか?」
健一がコクリと頷き、小さいながらも懸命に口を開ける。老人が木匙で麦粥をすくうと、健一の口元まで木匙を運ぶ。
数日ぶりに口にする食べ物に涙を流しながら、ゆっくりと飲み込んでいく。
「あり、がと……ありが、とう……」
「よいよい。さ、食べるといい」
老人は優しい目を健一に向けながら木匙を動かしていく。
「お爺ちゃん。用意、できた……」
「おぉ、ありがとうな。さ、ゆっくり寝て養生するんじゃな。運んでやろう」
ちょうど麦粥を食べ終えた辺りで、少女がヒョッコリと顔を出す。老人が少女の頭を優しく撫でてから、健一を抱き上げて部屋に運んでいく。
運ばれた部屋には藁が敷き詰められた木製のベットが置かれていた。そのベットの上に健一をゆっくりと横たわらせる。
「今はゆっくり休むとよい」
「ありが……とう、ござい…ます…………」
老人がシワだらけ手で優しく健一の頭を撫でる。久方ぶりに感じる人の温もりと飢餓が満たされた事により、健一の身体が睡眠を欲しているのか激しい睡魔に襲われる。
「あ、の……」
「無理せず、今は眠れ。話は後でゆっくり出来るからのう」
「……は、い……」
老人の言葉を受けて、そのまま睡魔に身を委ねて眠りへと落ちていった。
「ありがとうございます。あなたは私の命の恩人です」
老人と対面して座った状態で、健一は深々と頭を下げて感謝を示す。
健一が老人に拾われてから数日が経過した。適切な食事と甲斐甲斐しい世話のお陰で、健一の若い身体はすぐに元気を取り戻し、今では普通に行動できるようになっていた。
「うむ、礼の言葉は受け取ろう。それよりもお主は聞きたいことがあるんじゃないのか?」
「はい、ここは日本の何処ですか? それと家族と連絡を取りたいので、出来れば電話を貸していただきたいのです。私のスマホは圏外でして」
健一はスマホを取り出して電源をつけてみせる。変わらずスマホは圏外を示していた。
老人は取り出されたスマホを見ると、聞いたことがない事を当然のように聞かされた、といった困惑気味な表情を浮かべていた。
「ふむ、どこから話そうかのう」
老人は顎髭を扱きながら困り顔で呟き、考えていた。程なくして、考えが纏まったのか髭を扱く手を止め、真剣な眼差しを健一に向ける。
「……」
いきなり声をかけられ、力が入らない身体で無理矢理動かし、なんとか声が聞こえたテントの入り口に顔を向ける。そこには立派な髭を蓄えた老人が入り口から覗き込むように立っていた。
「ふむ……だいぶ衰弱しておるな、命にも関わりそうじゃ。しかも見た事ない服装をしておる。お主は漂流者かな?」
「ひょ……りゅう、しゃ?」
「あぁ、今は喋らんで良い。とりあえず儂の家で養生するといい」
歳に似合わぬ鍛えられた身体でテントから健一を軽く抱き抱えると、そのままスタスタと歩き出す。
「着いたぞ。ここが儂の家じゃ」
1時間程歩いて着いた場所は、ログハウス調の家だった。
「っ! お帰りなさ……」
老人が扉を開けるとリビングから幼い少女が、パァッと満面の笑みを浮かべて近づいてくる。だが、抱き抱えられている健一を見ると、ビクッと肩を震わせ、そそくさと離れ、柱の影に隠れ、顔だけ出して、こちらを伺っていた。
「あぁ、ただいまシャロ」
「お帰りなさい。……お爺ちゃん、その人、誰?」
「こやつが行き倒れていたのでな、連れて帰ってきた。すまないが、空き部屋を寝れるように整えてくれんか?」
「う、うん……」
老人にお願いされると、軽く頷き、パタパタと足音を立てて部屋に向かっていく。
「部屋を片付け終わるまで、ここで横になるといい」
健一をソファの上に寝かせると、老人はそそくさと何処かに立ち去ってしまう。
「ほれ、麦粥じゃ。ゆっくりとお食べなさい」
暫くすると老人がソッと差し出した麦粥はよく煮込まれており、弱った健一が食べても大丈夫なように配慮されたものだった。
差し出された器を受け取ろうにも力が入らず、器を落としかけるが、老人が落ちる間際にキャッチしてこと無きを得る。
「そこまで弱っておったか。どれ口を開けれるか?」
健一がコクリと頷き、小さいながらも懸命に口を開ける。老人が木匙で麦粥をすくうと、健一の口元まで木匙を運ぶ。
数日ぶりに口にする食べ物に涙を流しながら、ゆっくりと飲み込んでいく。
「あり、がと……ありが、とう……」
「よいよい。さ、食べるといい」
老人は優しい目を健一に向けながら木匙を動かしていく。
「お爺ちゃん。用意、できた……」
「おぉ、ありがとうな。さ、ゆっくり寝て養生するんじゃな。運んでやろう」
ちょうど麦粥を食べ終えた辺りで、少女がヒョッコリと顔を出す。老人が少女の頭を優しく撫でてから、健一を抱き上げて部屋に運んでいく。
運ばれた部屋には藁が敷き詰められた木製のベットが置かれていた。そのベットの上に健一をゆっくりと横たわらせる。
「今はゆっくり休むとよい」
「ありが……とう、ござい…ます…………」
老人がシワだらけ手で優しく健一の頭を撫でる。久方ぶりに感じる人の温もりと飢餓が満たされた事により、健一の身体が睡眠を欲しているのか激しい睡魔に襲われる。
「あ、の……」
「無理せず、今は眠れ。話は後でゆっくり出来るからのう」
「……は、い……」
老人の言葉を受けて、そのまま睡魔に身を委ねて眠りへと落ちていった。
「ありがとうございます。あなたは私の命の恩人です」
老人と対面して座った状態で、健一は深々と頭を下げて感謝を示す。
健一が老人に拾われてから数日が経過した。適切な食事と甲斐甲斐しい世話のお陰で、健一の若い身体はすぐに元気を取り戻し、今では普通に行動できるようになっていた。
「うむ、礼の言葉は受け取ろう。それよりもお主は聞きたいことがあるんじゃないのか?」
「はい、ここは日本の何処ですか? それと家族と連絡を取りたいので、出来れば電話を貸していただきたいのです。私のスマホは圏外でして」
健一はスマホを取り出して電源をつけてみせる。変わらずスマホは圏外を示していた。
老人は取り出されたスマホを見ると、聞いたことがない事を当然のように聞かされた、といった困惑気味な表情を浮かべていた。
「ふむ、どこから話そうかのう」
老人は顎髭を扱きながら困り顔で呟き、考えていた。程なくして、考えが纏まったのか髭を扱く手を止め、真剣な眼差しを健一に向ける。
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