文学家志望と哲学的彼

Mr.恐山

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文学家志望の私

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 転校生がやってきた。
本能で感じた彼は哲学的な人物なのだと。
赤場 流羽、彼の名前。
転校してから数日間の彼はとても静かだった。
最初に話しかけていたクラスのみんなも彼の哲学的な物言いに理解ができなかったのかどんどん離れていった。
でも彼は離れていくたびに哀しそうに笑うのだった。
 「話しかけに行かないの?」
亜美が私に言う。それに私も答える。
「そうね……」
私は彼の元に歩き出した。
「えっ!?行くの!?」
「えっ?行くよ?」
私のこの前進は小さな一歩であったが大きな一歩だった。と言いたいのだがこれは本当に小さな一歩だった。
「赤場くん!」
「帰れ。」
私は自分の席へと帰った。
「なんなのあの態度!?さすがに失礼すぎない!?」
亜美が自分の事のように怒る。だが、私はあまり怒りを感じなかった。逆に特別な感情を抱いてしまったのだ。
これは思春期特有のあれ……と言うべきなのだろうか…
「……亜美、怒らないで。考えてみて。他の人には哲学的な話をしてよくわからんみたいな顔にさせて追い返してたけど、赤場くんは私にだけ帰れって言ったんだよ?」
「……そうだけど……」
「それってある一種のあれなんじゃないかな?」
「あれって何よ…」
「流羽くん……もしかして私の事が好きなんじゃない!?」
そう、この時から動き始めていたのだ。
私の文学的な恋は、始まっていた。
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