枯れない花

南都

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第四章 「戦闘」と「曼殊沙華」

第四話

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 ああ、狂っている。

 俺に無関係な話ではない、能力者の仕業なのだ。
 抗争の証、もう住民にまで被害が及んでいる。能力を持て余しているのだ、制御しきれない力で抗争が行われている。

 特にこの事件は耳につく。というのも、炎の能力者には心当たりがあったからだ。
 俺が鼓と戦闘した時に増援にきていた男、彼は開花していた。このような事象を容易に起こすことができる。彼で間違いがないだろう。

 国も望んでいないだろう、こんな事件など。しかし国が動こうにも、彼らには花の入れ墨が見えない。特定することは難しい。

「犠牲者も出ております。この事件での死者が八名、行方不明者が十名となっており、依然調査中。周辺住民には、『不可解な怪奇現象を目の当たりにした場合、直ちにその場を離れ警察に連絡を』との呼びかけが行われています」

 数人の警察では厳しいだろう、開花後の能力者は。現代兵器ならば太刀打ちできるかもしれないが、能力の類によっては犠牲者が増えるだけになり得る。

――それでも顔が特定できたのならば、例え能力者と言おうとも社会的地位を利用して脅かすことができるか。

「最近物騒なニュースが多いですね。犠牲者も増えている。開花後の能力者が増えているということなのでしょう」

「これで何人目ですか? 日本じゃないようですよ、本当に。物騒なものです」

「死者は百人に上っています、現時点でも。そのうちの何人が無能力者なのか」

 善良な市民が被害を受けている。制御しきれない限り、開花した能力の流れ弾はどこかに飛び火する。
 都合よく市民からそれてはくれないのだ。いや、むしろこれでも都合よくことが進んでいる方とさえいえる。

 俺がモノクロームの元へと向かった出来事も、一週間前には大々的に事件になっていた。
 機械生成で生成した機械は消すことができても、それによる被害はかき消せない。コンビニエンスストアの倒壊、その周辺にいた人の怪我、鼓と戦闘した路地のひび割れ、石塀の破損、俺たちの戦いによるものだ。

 うまく使えたのならば、能力はもっと便利なものだというのに。

「以前よりも熾烈しれつになっていますね。俺がアルバイトしている時には大規模なニュースは多くは続きませんでした。四日に一回程度でしたよ。しかし今は二日に一回は事件が起きている。能力は……本当に危険だ」

「それでも私たちのペースだって遅くない。一日三人なら一年以内には終わります、一週間に二人増えたとしてもです。能力者は大体五百人前後でしたから」

 その通りだ、俺たちならばこの世界を能力のない世界へと戻すことができる。

これが……俺だけの特権なのだ。こんなにも不便な能力に与えられた、唯一の可能性。

 ハンドルを握る左手を見る、そこの入れ墨は俺には未だに見えなかった。
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