枯れない花

南都

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第四章 「戦闘」と「曼殊沙華」

第六話

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 モノクロームは俺の能力をアクセサリー化しているのだろうか?

 未だに俺は、モノクロームが強制開花のアクセサリーを持っている姿を見たことがない。
 そもそもアクセサリーにしてさえいない可能性すらあった。

 気にかかる。しかし問おうにも、先にモノクロームが話の続きを進めた。

「とにもかくにも、私たちの開花はまとめてアスピレーションを相手にできるほどのものかもしれない。例えばそう、シオンの開花が『即時の能力の消滅』ならばと想定しましょう。そうしたのならば、あなたが機械生成で作った機械を身にまとい、アスピレーションに突入するだけでもほとんど組織は壊滅する」

 ありえない話ではない。俺の能力は「強制開花」と「消滅」が混在して不可分であることがネックなのだ。
 それが可分なものとなれば、それだけでも扱いやすい能力になる。味方を開花させ、相手の能力を消滅させる。少しばかりの変化でここまで差が出てくる。

 モノクロームの能力もそうだ、開花の伸びしろが大きい能力をしている。

「あなたも同様ですね。開花後が『遠距離の能力者からアクセサリーを生成する』だったのならば、運命操作でも未来視でも取り放題。一人で組織を相手に取れる、そういうわけですね」

 頷く。

 聞いてみれば突飛な意見でもない。
 もとより俺たちの能力は特殊なのだ、開花への期待もできる。

 問題は、いつ開花するかという点だ。都合よく開花すればいいのだが、おそらく俺たちはそうもいくまい。

「開花のタイミングはランダムなんですか?」

「ええ、ランダムですよ。時には異常に早く開花する人もいる。逆に全く開花しない人もいる。甫突さんもあなたが開花させない限り開花していなかったでしょう? 彼は最初期の能力者ですから、時間経過で開花するわけではないのは立証できます」

 ともなれば、偶然に愛されている存在ならばもう開花していてもおかしくないわけだ。
 鼓も開花を済ませているかもしれない。次に出会う時は覚悟しておくべきか。

「衝動と同じですね」

「はい。突然あなたが今『追憶』にかられて事故を起こすかもしれないように、突如あなたの能力が開花するかもしれない」

「ははっ、急にこの場で開花したらお笑い草ですよ。車を運転していたら、世界を覆す力を手に入れたなんて、面白い話です」

「でも現実ってそういうものでしょう? 身構えている時に地震が来るわけでもないし、期待している時に宝くじが当たるわけでもない」

「そうですね。もしかしたのなら、モノクロームの衝動で俺が襲われるかもしれない」

 するとモノクロームは小さくむくれる。そうして何を言ってくるかと思えば、「襲いますよ」と抗議するように訴えかけるばかり。
 迫力の一つもない、こんな可愛らしい小動物になら襲われたいものだ。

 それでも、モノクロームがすっと視線を落とせば、どこか嬉しそうに溢すのだ。

「……『約束』、絶対って言いましたよね」

 ああ、確かに言っていた。俺たちが出会った時だ。もう何年も前のことのように感じる。

 思い返せば、全ての始まりはそこだった。
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