覇王樹

アイザッカ

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これはハズレくじを引いてしまった僕らの物語

閑話 大一からの手紙

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「菊璃、ダイから手紙来たよ」

 椿芽《つばめ》の言葉に私は階段に座り込んだ。私に黙って勝手に相伝隊へ行った大一からの手紙。
 
「手紙は?」
「はい」と椿芽は手紙を渡した。

 私は手紙の封を開いた。筆跡は大一じゃない。

「椿芽が写したの? あなたの筆跡のようだけど」

 私の質問に椿芽は答えず、私の脇を通って2階へ行ってしまった。小さくため息をついた私は椿芽の背を見た。

「さっき、お母さんが一瞬だけ目を覚ましたから、2階に行くなら久々に顔を出してあげて」

 椿芽の足音はピクッと止まったが再び鳴り始めた。椿芽は15歳だし、もう反抗期なのかな? 大一を勝手に相伝隊へ送り出したことはまだ許していないけど、それも反抗期だったのかも。少しだけ腰を上げてから一段下に座った。階段に座るとしても足はちゃんと床に着いているほうが安心するのだ。
 急いで写したような椿芽の字をそっとなぞった。昨日から継父さんは1人で実家に行っている。大一から送られてきた手紙に、私はゆったりとした気持ちで目を通した。

 







 つばめ姉さんへ。
 元気? 僕はすごく元気です。少し寒いけどね。寒いってことだけは菊璃姉さんに隠して、元気だと伝えて菊璃姉さんを安心させてあげてください。
 ここで僕はすごく元気にやっています。和伝人だからって嫌な思いすることもありません(だってみんな和伝人だから)。それから未成年は前線に出ることもないって。僕はここで伸び伸びやっています。誰も僕の体に触りません。
 それからここには従兄弟の愛恵人もいます。お母さんの妹さんの息子です。僕と同い年なんだよ。菊璃姉さんのように少し赤み掛かった金髪です。そして空のような青い目です。更にすごく美少年です。僕に絵心があればとっくに描いています。この間、一緒にお祭りに行きました。ちなみにお母さんの妹さんの芙雪さんは可愛らしい人です。彼女の長女の美実さんはモテモテです。あちらこちらから縁談が来ています。良いことなのかは分からないけど……。幸せな結婚ができるといいなぁ。
 敢太はやかましいです。僕はよく愛恵人と行動するから、敢太と話す機会はそんなにないけど。声は大きいし、やかましい声質です。面倒見が良くて、小さな子たちの面倒をよく見ています。いい奴です。
 佳月はすごく賢い女の子です。百合と同じ年の5歳です。よく愛恵人と組手をしてます。女性は相伝隊の戦士にはなれないけど、佳月は例外らしいです。
 先生はよく不在にしていますが、緊張感漂う人です。佳月の父親の腹違いの弟だそうです(要するに叔父です)。
 あとは蓮医隊の人たちもいます。さっき書いた美実さんはこっちに所属しています。戦士の娘や姉妹が入るらしいです。

 姉さんたちは元気? お仕事とかで辛くないですか?

 大一より。

 追伸:佳月は今まで見た誰よりも綺麗な女の子です。本当に。冗談抜きで。あんなに綺麗な黒髪は見たことがありません。青みが掛かっている黒髪を顎の辺りで揃えています。目も綺麗です。瑠璃を少しだけ濃ゆくしたような美しい目を持っています。顔立ちは言うまでもないです。あの年であんなに配置や形が完璧だと将来が少し気になります。

 追伸2:もうすぐ菊璃姉さんの誕生日ですね。18歳になるんだっけ? 18日には「おめでとう」と伝えてね。








 菊璃はふぅと息をついた。
 大一からの手紙はそこまで長くなかった。大一で平穏に暮らせているようで何より安心だ。私は祈るように目を瞑った。ジリリリリと電話が鳴った。ドクン。受話器を取った。言葉短だった。すぐに宴会に来いという内容だった。私は承諾した。新年休みなんて関係ない。今後とも仕事を続けるために。
 ゆっくりと目を瞑ったあと、2階の自室へ向かった。胸元の開いた赤い衣装に着替え、上着を来た。手紙は机の引き出しに入れて、鍵を掛けておいた。電話で配車した。車が来ると心を決めるように呼吸して乗り込んだ。
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