「ベガ」とも呼ばれる織姫星

アイザッカ

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「ベガ」とも呼ばれる織姫星

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 七夕だった昨夜、初めて知ったことがある。
「天の川は夏の大三角形の中心を通るように、南東の空に流れている」と言うこと。

 そもそも昨日、生まれて初めて天の川なんてものを見た。 ——そのわけ、ほとんどの人は知っている。私が生まれる前からの問題だから、今さらどうにも出来ないのかもしれない——。
 ここは街中だし、ここ数年は雨だった。「恋人もいない非リア充が、恋人同士である彦星と織姫に嫉妬したから雨続き」だなんて馬鹿げた説が生まれるくらい。

 夏の大三角形は「織姫星」と呼ばれるベガ、彦星、デネブの3つで構成されている。 ——私だったらデネブの立場になりたくなんてない、恋人同士と一緒だなんて気まずい——。
「アルタイル」とも呼ばれる彦星に関しては七夕伝説でしか知らない。デネブはカタカナだから、ギリシャかどこかの神話由来。
 でもベガは知っている。琴座のパーツの一つとして。名前しか知らなかったから、この時期だってことすら知らなかったけど。琴座はオルフェウス伝説の星でしょ?
 織姫星がオルフェウス伝説と関係あるのだと知っていたら、昨日もっと真剣に見たのに。


 パンデミック真っ只中だったころ、あまりに暇でギリシャ神話や日本神話の本を読んでいたことがあった。「すぐに終息する」と思っていたから、休校をチャンスとして学校で習わないようなことを知りたかった。
 日本神話の本を読み終わったころ、緊急事態宣言が延長されて、私はすぐに終息しないと知った。それでギリシャ神話の本は埃を被ってしまった、ゲーム機の手垢は濃くなっていった。
 年が明け、視力が下がったためゲームを従兄弟に譲った。本棚の埃を払い、片っ端から読み始めた。内容なんて気にも留めず、膨大に有り余った時間を潰すためだけに本を読み終えていった。
 そして、エヴリディケを想うあまり振り返ってしまったオルフェウスの行動に、ページを捲り続けつつ手が止まった。そしてオルフェウスの最期まで読み終えると、また手は動き続けた、視力は下がり続けた。
 そんな埃を被った青春時代の1ページだった。
 私がオルフェウス伝説に惹かれたのはあの時期だったからかもしれない。人と接することに飢え、青春が不要不急という灰色のペンキに塗り潰されることに対する焦燥感があったから。

 対して妹が高校生になったのは去年の春だった。妹は一丁前に彼氏がいる上に、修学旅行も楽しんだ。これからも何もなければ、青春を謳歌し続けるのだろう。二度と帰らない16歳を謳歌するのだろう。

 今、空を見たって星なんか見えやしない。この時間でも茜色でもない青くて、夕暮れ特有の雲が流れる空。今年は彦星も織姫も逢瀬を楽しんだのだろう。
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