推し活ぐー!

明日葉

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「文月さん、外、凄く暑くて歩いて帰るのは危ないから、先輩が車に乗ってかないかって!私も一緒に乗るから、どう、一緒に帰らないかしら?」
 学校の説明をしてくれた事務の方と別れて、中等部のロビーに私たちは立っていた。
 夕方前だというのに、ちっとも気温は下がらず、むしろぐんぐん温度も湿度もあがっているんじゃないかな?というくらい、今日は暑い。
家まで歩く30分で茹で上がりそうなほどだ。
「あっ、ありがとうございます。お言葉に甘えてもいいですか?」
「おうおう、こどもは遠慮なんかいらねえよ!」
「あっ、帰る前にトイレにいきたいですーー!!」
「ちょ、李衣菜ちゃん!!ーーー私も行ってきます!!」
李衣菜ちゃんを追いかけて、トイレに入る。

「明日のライブ楽しみだねーー!!あっ!ライブにいくならいつもの団扇作らない!?」
「いいねー!実は新作、考えたんだ!」
ハンドメイドは好きだから、ライブにあったらいいなと思うグッズもどんどん考えつく。
今日も動画を撮ろうと思っていたから丁度いい。
もともと撮影するものだった予定を変更して、今日はライブ応援グッズを作ろう。

「穂香ってホントにすごいよねーー!!本当は樹林君のファンじゃないのに、すっごいファンみたいなあんな可愛いグッズ作っちゃうんだから!!今回の団扇の新作も楽しみっ!!」
タオルハンカチで手を拭きつつ、スキップしながらトイレを出る李衣菜ちゃんを追いかける。
李衣菜ちゃんっ、声が大きい!!
こんな所でそんな話をして、誰かに聞かれたらっ!!!!
「「あっ・・・」」
李衣菜ちゃんに追いつくとちょうど男子トイレから出てきた東園寺さんとばったりと行き会った。
「おう、嬢ちゃんたち、声ちょっとでけえぞ。男子トイレまで丸聞こえ」
「えーー、そんなの聞かないでくださいよーー。東園寺さんのバカーー!!」
李衣菜ちゃん……そうじゃない、そうじゃないんだよーーーー!!!!
私はがっくりとうなだれた。
それが、ちょうど、深くお辞儀するような形になって……
「まあ、明日は楽しみ……だな??」
「はいーー!これから穂香と団扇つくるんですっ!」
「おう、聞こえてたわ。頑張れよー」
私の頭にポンと手が置かれた。
それは思ったより全然優しくて、全然力を入れられたものじゃなかったんだけど。
私の心情的には床にめり込む位のダメージだった。
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