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朝がくる。
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昨日は夢を見なかった。
久しぶりにぐっすり眠れたのは、沢山泣いたせいだろうか。
目は、腫れている。想定内だ。
そりゃ、あれだけ泣いたのだから当然だろう。
——小説を書いている。
始めたきっかけなんて、些細でどうしようもなく幼稚なことだったけれど、それでも、自分の世界を小説という形で表現するってことは私にとって楽しかったし、生きてるっていうキラキラを心に持てる大切なものだった。
最初のうちは、ただ書いていればいいと思っていた。私の中にある世界を文字にして、表現して、それだけでよかった。
……よかったはずなんだ。
だけど、書いてると、感想をもらったり、応援してもらったり、声を掛けてくれる仲間が出来たりして、そしたら段々、欲張りになって……。
コンテストに、応募しちゃった……!
自分で言うのもなんだけどさ、これ、凄くよく書けたと思うんだ。面白いと思うんだ。もらった感想も、ほとんどが誉め言葉でさ。もしかしたら、もしかするかも、って思ってるんだ。夢は見るだけじゃ叶わないっていうし、一歩、踏み出してみたんだ!
そろそろ一次の結果が出る、っていう時期。
毎日ソワソワして、ドキドキして。
一緒に頑張ってる仲間たちと、
「大丈夫かな?」
「きっと大丈夫だよ!」
「一緒に残れるといいね」
なんて話をしてさ。
でも、思ったの。
私以外の人だって、みんな真剣で、頑張ってて、作品を読めばどれもこれも素敵で面白くて。私は段々、わからなくなってくる。私が書いた世界は、私の書いたあの子たちは、ちゃんとそこに、いるのだろうか。面白いのだろうか、って。
そしていよいよ、一次の結果が出る――
私の作品は……、
私の名前は、そこにはなかった。
知っている名前がチラホラ並ぶその場所に、私は、いない。
……なんで?
あんなに頑張ったのに。
すごくよく書けてたのに。
なんで、ないのっ?
涙で視界が霞んで、だけど……、
『おめでとう! やっぱりね、って思ったよ。だってすごくいいお話だったもん!』
……悔しい。
『次は私も残れるように頑張るね!』
悔しいっ!
『最後まで残れるように応援してるから!』
悔しいよぉぉ!
悲しくて、悔しくて、本当の言葉すら嘘みたいに思えて、心の中がぐちゃぐちゃになる。
本当だよ? 応援してるし、通過してたあの作品はいいお話だと思ってるし、それは本当なの。本当なはずなの。だけどさ。
私がいない。
私のお話が、ない。
弾き飛ばされて最初からなかったかのようにされている気がして、心が痛くて苦しくなる。
頑張るだけじゃダメなんだってわかってる。わかってるけどさぁ。
私は携帯を放り投げて、泣いた。
泣きながら、色んなことを思う。
才能ないんじゃないか、とか、結局は自己満足なんじゃないか、とか、こんなこと続けても、辛いだけなんじゃないか、とか。
誰も私の世界なんか、見たくないんじゃないか、って。
そして、泣きながらまた携帯を手にする。私が書いたお話を、読み返す。
そこには物語がある。世界があり、私の書いた子たちが、ちゃんと、いる。
『いるよ!』
「ごめん……ごめんねぇ」
そうだよね。
泣いてる場合じゃないよね。
私の世界を、私が認めてあげなくてどうするんだ。
まずは、認めよう。
私のお話は、面白い。でもきっと、なにかが足りない。じゃ、その足りない『なにか』を探しに行こう!
物語の中で冒険するみんなのために、私はこっちの世界で冒険を始めよう。欠けたピースを探すんだ。
そして、コンテストを通過した友人の作品を、心の底から「おめでとう」が言えるくらい、強くなろう。
そうだ。腕を組んで深く頷きながら、
『私にはわかってたよ。彼女はとても素敵なお話を書いてるからね。残って当然だよ』
って言うんだ。
まるで自分の手柄みたいに、ドヤ顔でさ。
そして次は私の番だ。
あの場所に、私も行くんだ。
いつか、必ず。
朝がくる。
朝は誰にでもやってくる。
来なきゃいいのにって思ったって、朝は来るのだ。
しかもめちゃくちゃいい天気じゃんか。
すべてを乗り越えたわけではないけど、それでも私は立ち上がる。腫れてる瞼は勲章だ。流した涙は私の書いたお話への愛の証だ。誇っていい。誇れる自分であれ!
私はとりあえず冷たい水で顔を洗った。
冷蔵庫から保冷剤を取り出し、腫れた目にあてがう。
「晴れた朝 腫れた瞼に 保冷剤」
川柳も読んだ。
よし、大丈夫。
前を向け。
きっと私だけじゃない。
こうして、泣いて、立ち上がって、歩いている同志たちよ!
旗を掲げろ!
降参の白旗じゃない。大漁旗みたいなでっかいやつだ。
そして行こうじゃないか。
冒険の先、足りないピースをかき集めて、いつかあの場所へ。
そして、その、先へと!
久しぶりにぐっすり眠れたのは、沢山泣いたせいだろうか。
目は、腫れている。想定内だ。
そりゃ、あれだけ泣いたのだから当然だろう。
——小説を書いている。
始めたきっかけなんて、些細でどうしようもなく幼稚なことだったけれど、それでも、自分の世界を小説という形で表現するってことは私にとって楽しかったし、生きてるっていうキラキラを心に持てる大切なものだった。
最初のうちは、ただ書いていればいいと思っていた。私の中にある世界を文字にして、表現して、それだけでよかった。
……よかったはずなんだ。
だけど、書いてると、感想をもらったり、応援してもらったり、声を掛けてくれる仲間が出来たりして、そしたら段々、欲張りになって……。
コンテストに、応募しちゃった……!
自分で言うのもなんだけどさ、これ、凄くよく書けたと思うんだ。面白いと思うんだ。もらった感想も、ほとんどが誉め言葉でさ。もしかしたら、もしかするかも、って思ってるんだ。夢は見るだけじゃ叶わないっていうし、一歩、踏み出してみたんだ!
そろそろ一次の結果が出る、っていう時期。
毎日ソワソワして、ドキドキして。
一緒に頑張ってる仲間たちと、
「大丈夫かな?」
「きっと大丈夫だよ!」
「一緒に残れるといいね」
なんて話をしてさ。
でも、思ったの。
私以外の人だって、みんな真剣で、頑張ってて、作品を読めばどれもこれも素敵で面白くて。私は段々、わからなくなってくる。私が書いた世界は、私の書いたあの子たちは、ちゃんとそこに、いるのだろうか。面白いのだろうか、って。
そしていよいよ、一次の結果が出る――
私の作品は……、
私の名前は、そこにはなかった。
知っている名前がチラホラ並ぶその場所に、私は、いない。
……なんで?
あんなに頑張ったのに。
すごくよく書けてたのに。
なんで、ないのっ?
涙で視界が霞んで、だけど……、
『おめでとう! やっぱりね、って思ったよ。だってすごくいいお話だったもん!』
……悔しい。
『次は私も残れるように頑張るね!』
悔しいっ!
『最後まで残れるように応援してるから!』
悔しいよぉぉ!
悲しくて、悔しくて、本当の言葉すら嘘みたいに思えて、心の中がぐちゃぐちゃになる。
本当だよ? 応援してるし、通過してたあの作品はいいお話だと思ってるし、それは本当なの。本当なはずなの。だけどさ。
私がいない。
私のお話が、ない。
弾き飛ばされて最初からなかったかのようにされている気がして、心が痛くて苦しくなる。
頑張るだけじゃダメなんだってわかってる。わかってるけどさぁ。
私は携帯を放り投げて、泣いた。
泣きながら、色んなことを思う。
才能ないんじゃないか、とか、結局は自己満足なんじゃないか、とか、こんなこと続けても、辛いだけなんじゃないか、とか。
誰も私の世界なんか、見たくないんじゃないか、って。
そして、泣きながらまた携帯を手にする。私が書いたお話を、読み返す。
そこには物語がある。世界があり、私の書いた子たちが、ちゃんと、いる。
『いるよ!』
「ごめん……ごめんねぇ」
そうだよね。
泣いてる場合じゃないよね。
私の世界を、私が認めてあげなくてどうするんだ。
まずは、認めよう。
私のお話は、面白い。でもきっと、なにかが足りない。じゃ、その足りない『なにか』を探しに行こう!
物語の中で冒険するみんなのために、私はこっちの世界で冒険を始めよう。欠けたピースを探すんだ。
そして、コンテストを通過した友人の作品を、心の底から「おめでとう」が言えるくらい、強くなろう。
そうだ。腕を組んで深く頷きながら、
『私にはわかってたよ。彼女はとても素敵なお話を書いてるからね。残って当然だよ』
って言うんだ。
まるで自分の手柄みたいに、ドヤ顔でさ。
そして次は私の番だ。
あの場所に、私も行くんだ。
いつか、必ず。
朝がくる。
朝は誰にでもやってくる。
来なきゃいいのにって思ったって、朝は来るのだ。
しかもめちゃくちゃいい天気じゃんか。
すべてを乗り越えたわけではないけど、それでも私は立ち上がる。腫れてる瞼は勲章だ。流した涙は私の書いたお話への愛の証だ。誇っていい。誇れる自分であれ!
私はとりあえず冷たい水で顔を洗った。
冷蔵庫から保冷剤を取り出し、腫れた目にあてがう。
「晴れた朝 腫れた瞼に 保冷剤」
川柳も読んだ。
よし、大丈夫。
前を向け。
きっと私だけじゃない。
こうして、泣いて、立ち上がって、歩いている同志たちよ!
旗を掲げろ!
降参の白旗じゃない。大漁旗みたいなでっかいやつだ。
そして行こうじゃないか。
冒険の先、足りないピースをかき集めて、いつかあの場所へ。
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