魔王討伐からの無双人生 ―日本も案外ファンタジー―

bakauke16mai

文字の大きさ
4 / 8
日本をイチャイチャとチートで無双する――!

日本への帰還

しおりを挟む



―――――なぁ、おい。

 視界が滲んでいた。新手の魔法かもしれないと言い訳をしながら、頬を伝う雫を騙すことは出来なかった。
 留まることを知らないそれを、俺は振り払うことが出来ない。

「……”な”ァ、ネミ……」
「ん?」
「……誰からだ?」
「ロシュー」
「……そう、か……」

 言い知れぬ感情が今、はっきりと分かった気がした。

 涙は止まらなかったが、前を向くことができた。
 足元が輝く。既に起動した魔法を止めることは出来ない。

「《一言伝えるフレーズ・センド》」

 俺の口元に、淡い緑の輝きを放つ魔方陣が現れた。俺だけが使える、オリジナル魔法。
 一方通行だが、通信機器の無いこの世界で、唯一遠くの相手に言葉を送れる魔法だ。

 視界が光に染まる。溢れんばかりの輝きに、目を開けていられなくなった。

「――ありがとう」

 その言葉を呟いた直後、一際強く魔方陣が輝いた。

(これで、本当に心置きなく帰れる)

 今はもう、未練はあるけど後悔は無い。そう断言できる。
 ロシュエフに、メリナとネミ。最高の仲間たちだった。

「さよなら」

 届くことは無いだろうけど、そう零れた言葉が光の中に霧散した。









 ボフっ!
 柔らかな感触と、温かい温度が肌に当たる。

「私も、行く」
「え? ……ちょ、ま――――」





 日本への帰還者、2名。






―――――――――――――――――――――――



 ~半年後 日本~




 じりじりと日差しが照り付ける真夏の校舎。その1-Aと書かれた教室で、少し珍しい出来事があった。
 担任の小林先生が朝のHRを終えた後に、話を始める。

「あー、それじゃあ転入生を紹介する」

「え、マジで?」
「だれだれ知り合い居る?」
「そんなの聞いてないよな?」
「可愛い子かなぁ? おっぱいデカいと良いなぁ」
「バカやろ! 小さくて愛らしい方が良いだろ!」
「男子サイテー。ねぇねぇ男子かな? かっこいいと良いなぁ~」

 一瞬にして、クラス内は落ち着きを失った。
 入学当初から半年が経った夏休み明けの今日、まさかこんなにもクラス中が騒がしくなるとはベテランの小林先生も思っていなかった。

 小さく嘆息しながら、苦笑を浮かべて落ち着くのを待つ。
 やがてその姿を目にした生徒たちは静かになり、先生の話の続きを今か今かと待ち望む。

 後に小林先生は、その姿をハイエナのようだったと笑いダネにするのだが、それはまた別の話。

 生徒たちの反応にニヤリと笑いかけながら、さらなる話題を持ちかけた。

「しかもなんと、男女2名だ」

「え、マジで?」
「だれだれ知り合い居る?」
「最高じゃんか!」
「男はどうでも良いけど女子かぁ!」
「可愛い子だと良いねー! 男子もカッコよかったら最高じゃない?」
「ね~!」

 再び色めき立つ教室。1限目の教師が廊下で待機していた。当然お困りの様子。
 小林先生は横目でそれを見ると、小さく頭を下げて口パクする。

 て ん にゅ う せ い

 それを確認すると、相手の教師も納得したように笑い、そして苦笑した。
 廊下に居るであろう転入生の姿にも納得したように笑い掛けていた。優しい先生で助かった場面である。

 っと、そんな教師陣の会話を知りもしない生徒たちは、未だ騒ぎの途中だった。
 それも少しすれば、落ち着きを取り戻してくる。

「いいか?」

 小林先生がそう問いかければ、全員が頷きを返す。
 その瞳からは、早くしろと熱弁に語られていた。

 後に小林先生は、その姿をサバンナのライオン一家のようだったと話すのだが、それはまた別の話。

「さぁそれじゃあ紹介しよう、中へ入って」

「失礼します」
「失礼します」

 そう言いながら、男女が室内に入ってきた。
 程よい身長の男子と違って、女子はかなり小さめだ。男子の胸あたりが頭の上になっていることから、その差がよくわかると思う。

 女子は薄い紫の髪を短く後ろに垂れ下げている。長くも無く、短くも無い髪は、その何処を見ても反射するように煌めいていた。
 特徴的なのは、瞳にもあった。輝く銀色の瞳、現代日本では見る機会が無い訳では無いが、それでも希少なその瞳は、魔性の美しさを放っている。

 対して、男子の方も凄かった。鮮やかな漆黒の髪が短く、丁寧に手入れされ、もはや光沢を放つほどに輝いている。瞳は日本人特有の黒であるというのに、全てを見通すが如く底の見えない黒をしていた。
 
 両者ともに揃って美男美女であり、この学校のトップレベルだと断言できるほどだった。
 熱烈な視線を浴びながらも、2人は一切動じずに笑みを浮かべて頭を下げる。

 先に口を開いたのは、男子の方だった。

「初めまして、それとおはよう。今日からこのクラスで一緒に学ばせてもらう、吉条きちじょう大翔ひろとだ。宜しく」

 男らしさのある低めの声が、しかし透き通って全員の耳を虜にした。
 変わって、今度は女子が前に出た。

「初めまして。荘司しょうじネミ。米国で生まれて2年過ごしてから、日本に来た。大翔の許嫁」

 少しだけ眠そうにくぐもった声は、男女ともを魅了した。保護欲の掻き立てられるようなその姿と声音に、もはやマスコット決定だと思われる。
 っと。流石に気付く者が現れた。

「い……いいなず、け?」

 聞き慣れない、しかし意味の分かるその単語を、口にしたのは男子の誰かだった。
 それをきっかけに、クラス中にそのことが広がり――

「これから宜しく」

 愛らしいネミの姿が、印象的に映った。




 勇者フェイトは大翔に。賢者ネミは外国人のネミに。
 それぞれが偽りの姿で、しかし受け継いだ能力で再び無双する――かもしれない物語。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

異世界配信〜幼馴染みに捨てられた俺を導く神々の声(視聴者)

葉月
ファンタジー
コルネ村で、幼なじみであり恋人でもあったユリアナと、ささやかな幸福を分かち合って生きていたロイド。 だがある日、ユリアナは女神の愛子として目覚め、国王の命により王都へと連れ去られる。 突然、日常を奪われ、運命に引き裂かれたロイドは、抗う術も持たぬまま、否応なく大きな流れへと呑み込まれていく。 これは、奪われたものを取り戻すため、そして理不尽な運命に抗おうとする、一人の少年の物語である。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...