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日本をイチャイチャとチートで無双する――!
日本への帰還
しおりを挟む―――――なぁ、おい。
視界が滲んでいた。新手の魔法かもしれないと言い訳をしながら、頬を伝う雫を騙すことは出来なかった。
留まることを知らないそれを、俺は振り払うことが出来ない。
「……”な”ァ、ネミ……」
「ん?」
「……誰からだ?」
「ロシュー」
「……そう、か……」
言い知れぬ感情が今、はっきりと分かった気がした。
涙は止まらなかったが、前を向くことができた。
足元が輝く。既に起動した魔法を止めることは出来ない。
「《一言伝える》」
俺の口元に、淡い緑の輝きを放つ魔方陣が現れた。俺だけが使える、オリジナル魔法。
一方通行だが、通信機器の無いこの世界で、唯一遠くの相手に言葉を送れる魔法だ。
視界が光に染まる。溢れんばかりの輝きに、目を開けていられなくなった。
「――ありがとう」
その言葉を呟いた直後、一際強く魔方陣が輝いた。
(これで、本当に心置きなく帰れる)
今はもう、未練はあるけど後悔は無い。そう断言できる。
ロシュエフに、メリナとネミ。最高の仲間たちだった。
「さよなら」
届くことは無いだろうけど、そう零れた言葉が光の中に霧散した。
ボフっ!
柔らかな感触と、温かい温度が肌に当たる。
「私も、行く」
「え? ……ちょ、ま――――」
日本への帰還者、2名。
―――――――――――――――――――――――
~半年後 日本~
じりじりと日差しが照り付ける真夏の校舎。その1-Aと書かれた教室で、少し珍しい出来事があった。
担任の小林先生が朝のHRを終えた後に、話を始める。
「あー、それじゃあ転入生を紹介する」
「え、マジで?」
「だれだれ知り合い居る?」
「そんなの聞いてないよな?」
「可愛い子かなぁ? おっぱいデカいと良いなぁ」
「バカやろ! 小さくて愛らしい方が良いだろ!」
「男子サイテー。ねぇねぇ男子かな? かっこいいと良いなぁ~」
一瞬にして、クラス内は落ち着きを失った。
入学当初から半年が経った夏休み明けの今日、まさかこんなにもクラス中が騒がしくなるとはベテランの小林先生も思っていなかった。
小さく嘆息しながら、苦笑を浮かべて落ち着くのを待つ。
やがてその姿を目にした生徒たちは静かになり、先生の話の続きを今か今かと待ち望む。
後に小林先生は、その姿をハイエナのようだったと笑いダネにするのだが、それはまた別の話。
生徒たちの反応にニヤリと笑いかけながら、さらなる話題を持ちかけた。
「しかもなんと、男女2名だ」
「え、マジで?」
「だれだれ知り合い居る?」
「最高じゃんか!」
「男はどうでも良いけど女子かぁ!」
「可愛い子だと良いねー! 男子もカッコよかったら最高じゃない?」
「ね~!」
再び色めき立つ教室。1限目の教師が廊下で待機していた。当然お困りの様子。
小林先生は横目でそれを見ると、小さく頭を下げて口パクする。
て ん にゅ う せ い
それを確認すると、相手の教師も納得したように笑い、そして苦笑した。
廊下に居るであろう転入生の姿にも納得したように笑い掛けていた。優しい先生で助かった場面である。
っと、そんな教師陣の会話を知りもしない生徒たちは、未だ騒ぎの途中だった。
それも少しすれば、落ち着きを取り戻してくる。
「いいか?」
小林先生がそう問いかければ、全員が頷きを返す。
その瞳からは、早くしろと熱弁に語られていた。
後に小林先生は、その姿をサバンナのライオン一家のようだったと話すのだが、それはまた別の話。
「さぁそれじゃあ紹介しよう、中へ入って」
「失礼します」
「失礼します」
そう言いながら、男女が室内に入ってきた。
程よい身長の男子と違って、女子はかなり小さめだ。男子の胸あたりが頭の上になっていることから、その差がよくわかると思う。
女子は薄い紫の髪を短く後ろに垂れ下げている。長くも無く、短くも無い髪は、その何処を見ても反射するように煌めいていた。
特徴的なのは、瞳にもあった。輝く銀色の瞳、現代日本では見る機会が無い訳では無いが、それでも希少なその瞳は、魔性の美しさを放っている。
対して、男子の方も凄かった。鮮やかな漆黒の髪が短く、丁寧に手入れされ、もはや光沢を放つほどに輝いている。瞳は日本人特有の黒であるというのに、全てを見通すが如く底の見えない黒をしていた。
両者ともに揃って美男美女であり、この学校のトップレベルだと断言できるほどだった。
熱烈な視線を浴びながらも、2人は一切動じずに笑みを浮かべて頭を下げる。
先に口を開いたのは、男子の方だった。
「初めまして、それとおはよう。今日からこのクラスで一緒に学ばせてもらう、吉条大翔だ。宜しく」
男らしさのある低めの声が、しかし透き通って全員の耳を虜にした。
変わって、今度は女子が前に出た。
「初めまして。荘司ネミ。米国で生まれて2年過ごしてから、日本に来た。大翔の許嫁」
少しだけ眠そうにくぐもった声は、男女ともを魅了した。保護欲の掻き立てられるようなその姿と声音に、もはやマスコット決定だと思われる。
っと。流石に気付く者が現れた。
「い……いいなず、け?」
聞き慣れない、しかし意味の分かるその単語を、口にしたのは男子の誰かだった。
それをきっかけに、クラス中にそのことが広がり――
「これから宜しく」
愛らしいネミの姿が、印象的に映った。
勇者フェイトは大翔に。賢者ネミは外国人のネミに。
それぞれが偽りの姿で、しかし受け継いだ能力で再び無双する――かもしれない物語。
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