魔王討伐からの無双人生 ―日本も案外ファンタジー―

bakauke16mai

文字の大きさ
5 / 8
日本をイチャイチャとチートで無双する――!

ある日のデキゴト

しおりを挟む

 日本に帰還してから1か月が経った。
 ある程度身辺の整理は片付き、無知なネミを放置も出来ないので、家族に洗脳魔法を掛けて許嫁にしておいた。ネミの家族は居ないが、ネミ自身の戸籍もしっかりと作り、アパートを借りて2人で生活している。

 現状、俺の必死なバイトと家族からの仕送りで何とか維持しているが、厳しいものがある。
 早急に何かしらの手を打たなければ、と思い始めるこの頃。

 ふと、視線の先に高校生らしき少女の姿が入った。黒髪のロングヘアーが風に揺られている。
 その隙間から覗いた顔は、随分と綺麗だった。こんな、都会でも田舎でもないような辺鄙な場所には似つかわしくない容姿。

(……?)

 視線が、合った気がした。

 途端、少女の渡りかけていた横断歩道へトラックが滑り込んできた。信号を見れば、黄色が点滅している。
 少女の瞳は――未だ俺を凝視していた。

(おいおいベタ過ぎる展開じゃないかなぁ、それは!)

 そう愚痴るものの、既に俺の姿は消えていた。風を追い越し僅か数舜で少女の目前へと移動する。
 人並みからは大きく外れた力だが、しのごの言ってる暇もない。

「ごめんな」
「え、ひゃぁっ!?」

 一言謝りを入れてから、抱きかかえる。お姫様抱っこが最も手軽なのでそうして、そのまま跳躍する。
 
――トラックのサイドミラーが、俺の服を掠めた。

(っぶなッ!)

 本当にぎりぎりだったということだ。
 振り返れば、急停止したトラックから男性が降りてきた。幸い、目撃者は少女とあの男性だけだ。

(洗脳で良いか)

 任せられる相手ならともかく、知りもしない相手を放置とか怖すぎる。
 朝起きたら家の周りに国家軍隊が包囲してるとか悪夢みたいなことは嫌なので、迷わず魔法は使っていく。

(んー、まぁ俺の存在自体を消して危なかったって感じでいっか)

 そうと決まれば話は早い。
 少女と男性を対象にして、魔法を発動させる。

「《洗脳ブレイン》」

 と同時に、少女を降ろして俺も姿を消す。

「《不可視インビジブル》」

 数分後、改変された記憶で2人は日常に戻るはずだ。これで一件落着。

(さ、帰るか)

 思わぬ寄り道をしたなぁ、とか思いつつ、俺は家へと足を向けた。








「魔物が数体、こっちに来た」
「え?」

 夕方頃。アパートでのんびりしてたら、突然ネミがそう言いだした。
 魔物が来る。異世界から、地球に。鉄なんて効かないような奴らが。

(地獄じゃん)

「私が居ることで、向こうとのゲートが閉じれないみたい。で、魔物が迷い込んできてる」
「お前のせいか……」
「心外」
「ん、ああごめ――」
「私がそう企てた」
「オイ」

 流石に全ての責任を押し付けるのは良くないなぁと反省してたところでのカミングアウト。
 俺の方こそ心外だわ。

「で、何でそんなことしたんだ?」
「ん、フェ……ヒロトが活躍できるように」
「いや平穏が一番なんだが……」
「来ちゃったものはしょうがない」
「えー」

(まーそうなんだが。)

 こちらに来てしまったからにはどうしようもない。
 対抗魔法に対抗する術はないし、次元を超える魔法も同様だからだ。

「それで? どこに何が居る?」

 弱い魔物なら秒殺できる。流石に上級からは若干時間が掛かるだろうが、焦る程でもない。
 魔王よりも強い魔物なんて存在しないだろうし、居たなら世界は滅亡してたと思う。

 つまるところ、多分楽勝。

「ん、北の駅を超えた広場付近にゴブリンが2体。そのまま西に進んだ所にオークが1体居る」
「まぁ普通だな」
「オークを普通って言えるのはこの世界から見て異常」
「何を言う」

(異世界で勇者やってた時点で異常だろ)

 という言葉は飲み込んで、さっさと準備する。といってもそう必要なものはない。
 全部、”異空間”に収納できるからだ。いやー、テンプレだけど王道って便利。

「付近に人は?」
「……ヒトは居ない」
「ん? じゃあ他に何かいるのか?」
「ん、初めての反応。魔物でもヒトでも無い……魔力じゃないエネルギーを持ってる」
「……」

 少し考えて、何か答えが出た気がする。日本に古くから存在するとされる化身、〝妖怪〟。
 それを退治するための役割を背負った人物たちを、陰陽師。

 何か昔テレビか何かでやってて見た記憶がある。
 それが合ってる自信も無いのでネミには言わないでおく。

「っし。じゃあ行ってくる」
「ん、気を付けて」
「……!」
「どうした……?」
「お前、そんな気遣いできたんだな」

 俺が意外そうな声で言うと、軽く頬を膨らませてネミが睨んできた。
 身長と姿から怖さなんてまったく無いけれど、とりあえず軽く謝ってから笑った。

 異世界オリキアで、彼女はほとんど無口の賢者だった。扱う魔法の才能は俺をも凌駕し、戦いにおいて大きく貢献してくれた。
 そんな彼女は、ほとんど無感情で無情だった。のだが。

(やっぱ変わるもんだな)

 彼女もまた、親友の1人として心を置いた仲間だ。
 そんな親友の変化に、少しだけ嬉しくなる俺を感じる。

(なんか気分が良いな)

 魔物退治、頑張るかぁ。と柄にもないこと考えながら、俺は出発した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

異世界配信〜幼馴染みに捨てられた俺を導く神々の声(視聴者)

葉月
ファンタジー
コルネ村で、幼なじみであり恋人でもあったユリアナと、ささやかな幸福を分かち合って生きていたロイド。 だがある日、ユリアナは女神の愛子として目覚め、国王の命により王都へと連れ去られる。 突然、日常を奪われ、運命に引き裂かれたロイドは、抗う術も持たぬまま、否応なく大きな流れへと呑み込まれていく。 これは、奪われたものを取り戻すため、そして理不尽な運命に抗おうとする、一人の少年の物語である。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...