魔王討伐からの無双人生 ―日本も案外ファンタジー―

bakauke16mai

文字の大きさ
6 / 8
日本をイチャイチャとチートで無双する――!

互いに来た場所は同じだけど

しおりを挟む
(さてさて……)

 気分よく魔物退治に来たところだけれど、その前に未確認生物(仮)を見つけた方が良いな。
 そう判断した俺は、気配察知を広げてみる。

(うん、人間だわ)

 明らかに人型の反応を見つけて、それと同時にネミの言っていた不思議なエネルギーというのも感じる。
 確かに魔力とは違い、不思議な感じがする。

(まぁ、会えば分かる……っておいおいおい?)

 反応の方に行こうとした直後、予想外の事態。
 反応のすぐ近くに、魔物の気配が出現したのだ。それもオーク。

 対極の場所に別のオークの反応があるから、新しくやってきた奴だろう。

(タイミングが最悪過ぎるだろ)

 少なくとも、感じる不思議パワーで倒せると良いんだが。

 そんな事を考えつつ、俺は家々の屋根の上を移動し始めた。




――――――――――――――――――



「くッ! ≪式符≫!」

 飛来する巨腕に対して、小さな白い紙を投げ付けた。
 本来何の役にも立たない紙切れが、ひとりでに動き出す。

 人型に変形して、腕を前に体いっぱいを広げた。

 ブオンッ!

 空気を穿つ音とともに、紙切れへと強襲する。しかし、その力で以てしても防がれた。
 と同時に、紙切れも効果を失ったように地に落ちる。

(忌々シイッ!)

 オークは、その小さな頭脳でしかし的確に紙切れの厄介さを身に染みていた。
 目前に倒れる少女は、先ほどまで様々な色の紙切れを投げてきたが、そのどれもが弱かった。

 燃える紙切れも、ちょっとだけ力の強い紙切れもどうということもない。
 だがしかし、いざ攻撃するとなると白い紙きれが邪魔だった。

「ブフッ!」

 再び拳を振り下ろす――。

 が、やはり紙切れは再びはなたれ、妨害された。

(アアアアッ!)

 オークの怒りは頂点に達していた。その視線は、目前の少女へと鋭く向けられる。
 その肢体は成熟しきらないながらも、悦を放ち色欲をそそる。発展途中の胸が苦しそうに服で歪められていた。

 布の隙間から覗くふとももは月光に妖しく照らされ、色香を放っていた。

 本能が、欲望が目の前の少女を犯し尽くせと大声を挙げていた。
 メスにさせろと、孕ませろと叫んでいた。


 異世界の未発展な技術では現代日本並みの清潔感は無い。オークにとっては、ただの女子高生であっても、一国の姫よりも美しく欲情する相手となるのだ。


「ブルフウゥッ!」

 もう興奮は抑えられなかった。
 今まで全力の一撃を何度かの渡って打ってきたが、どうでもよかった。少しずつ削ると言わず、紙切れが無くなるまで殴れば良い。

「くぅッ!」

 少女の苦し気な声が、さらにオークの興奮を高めた。


 連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打―――――――



















 やがて、少女の紙切れは消え……その先に無防備な肢体が。























「お疲れブタ野郎。そして消えろ」


 その言葉を最後に、オークは消え去った。






――――――――――――――――――――――



 

「え……?」
「あ……」

 戸惑うような声に振り向くと、そこには見覚えのある少女が。
 腰が抜けているのか、座り込んでいるが、昼間、助けた少女と同じだった。

(変な縁があるもんだな)

 とは思うものの、どうということはない。
 しっかりと洗脳魔法を掛けて、記憶を消しているのだから、逆に声を挙げて不審がられるかもしれない。

 そう考えて、思わず苦笑を浮かべた。
 
「あ、あの、昼間の……?」
「……」

(あれー……?)

 若干フラグ建てた気はするけど、マジですか。

「ひ、昼間? 何のことだ?」
「横断歩道の時、助けてくれましたよね……?」

(あー……)

 かんっぜんにバレてる。っていうか変だな、絶対洗脳魔法は成功したはずだ。

 っと、その時視界に小さな鈴が映り込んだ。何の変哲もない、ただの鈴。

「あ、え、えっと……この鈴、変ですか?」
「ん? ああごめん、何でもない」

 見つめていたせいか、少し不安そうに問い掛けてきた。
 いやにしても、不思議な事は立て続けにあるものだ。

「それ、どうした?」
「え、えっと、鈴……ですか?」
「ああ」
「い、一か月くらい前に、偶然拾いました」

 その返答に、思わず顔を覆いたくなる。
 洗脳魔法が効かなかった意味がよーく分かった。魔法関連のものは異世界にしかなく、一か月前とはちょうど俺が戻って来たくらいだ。

 つまるところ、

(異世界からの、漂流物か……?)

 そんな感じな気がする。どことなく魔力を弾くような感覚があるので聞いてみたが……。

(どうすんだ、これ?)

 流石に無力な日本人から物を強奪して洗脳するというのは犯罪臭がヤバい。
 というか、既に暗い時間帯に座り込む少女と男子とか補導の一歩手前だと思う。

(それに……)

 チラリと視線を下に向けると、少女の腰辺りと地面が見える。
 その付近には、月光で照らされて小さな水溜まりが――。

「ぁ……うぅ……」
「ッ! ……すまん! わざとじゃない」

 目元に涙を浮かべる少女を見て、咄嗟に視線を逸らす。そりゃそうだ。
 感じる不思議パワーは未だ不明だが、それ以外では明らかに普通の女子高生。

 平穏な日常でオークみたいな変態ブタクソ野郎に襲われれば――まぁしょうがないことだと思う。

(……だからせめて泣かないでほしいだけど!)

 勇者にだって慰め方は知らない。

(どうすんだ、これ?)

 さっきと同じ事を考えつつ、問題は別。つい数分前までの陽気な気分がすっかり消えてしまっていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生先はご近所さん?

フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが… そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。 でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...