最弱勇者の無敗譚

bakauke16mai

文字の大きさ
2 / 4

お姫様

しおりを挟む
シュンの育ったアルディア帝国の隣に位置する、レーニア王国。
山岳が多く存在する所為か統治が厳しく、その国土は狭い。
しかし、その中でも野心強く暮らす人々の根気か、全12カ国の中でも4位という発言権を持っている。

屈強な戦士達と、卓越した知力。

そして、”勇者”の存在がその地位まで上り詰めさせている。
そんな王国が戦争をしている国こそが、アルディア帝国。
シュンが王国へ渡ってから2年の間は隠すことが出来たが、ついに3年目にして発見された。

それから4年。帝国と王国は、互いに領土を取り合いながら小さな戦いを多く起こしていた。

「これで17戦。私が前線で戦い始めてから数ヶ月なのに、もうそこまで増えていたのか」

およそ姫とは遠い喋り方をする少女。
赤い髪が特徴の少女は、名をレイアという。
レーニア王国の第4王女が公の名だが、最近は違う名で多く呼ばれる。

<契約の赤姫騎士>

その赤い髪と、戦う最中の覇気、最前線で戦う強さ、そして何よりも、勇者と契約していることから、そう呼ばれている。
何でも、色々な呼び名を繋げていったうちにそうなったとか。

本人は表向きは否定しているが、まあ嫌いでは無い様子である。
何よりも、帰国してからは1つのことに集中する。






「シュン。ほら、出掛けよう?」

「分かりました。今日も可憐な服装ですね。とてもお似合いです」

「む。違うだろう。私と2人だけの時は――」

「こうやって喋れば良いんだよね?」

ニコッ、と擬音の付きそうな笑みで言われ、レイアは頬を朱に染め、次いで膨らませる。

「最初からそうしていれば良いのだ!」

そんなレイアの言葉にも、シュンは笑みを崩さない。
さらに嬉しそうな笑顔を浮かべる。

「ごめんごめん。レイアはやっぱり可愛いな、って思ってさ」

「な、なにを言ってっ・・・・・//」

誰が見ても、思わず2度見をすることは必須な2人組み。
レーニア王国王都<レーニア>において、この2人を知らない者はいない。

「さ、レイア。今日は何処に行く?」

俯いたままのレイアの手を優しく包み、シュンは問いかけた。

「っ・・・・・//・・・・・あ、ああ。そうだな。今日は、貧民街スラムに行こうと思う」

幾分かマシになった声音で、真っ赤な顔を隠すようにレイアは答える。

シュンの顔に、小さな陰が浮かんだ。

が、それも一瞬のことで、次の瞬間には優しい笑みを浮かべている。
そして、何事も無かったかのように頷いた。

「分かった。それじゃあ、出発だね」

太陽がレイアの顔を照らして、シュンの顔が隠れた。
一瞬、レイアが手を額に掲げると同時に、シュンは”動いた”。

まず、誰も見ないようなくらい小さく揺れて、次いで何かを呟いた。
およそ超音波の類にも成るほどの小ささで呟かれた言葉で、レイアとシュンの姿が薄い膜で覆われる。

「ありがとう、シュン」

「僕は、何もしてないよ」

この膜は、誰にも見えない。
シュンですら見えないのであれば、見える者など居ても魔王くらいだ。
それでも、レイアは知っている・・・・・

彼が自分のために何かをしてくれる少年だと知っている。

彼がそれを隠すことも知っている。

だから、何も言わない。
何も言わないから、シュンも何も答えない。
聞かれれば答えるだろうが、聞かれないから答えない。

聞けば答えてくれるはずだけど、聞いてはいけない気がするから、聞かない。

互いに互いで、微妙に擦れ違っている。
それでもー―

「さあ、行こうか?」

「そうだね」

「今日は良い天気だな」

「うん。一日中暖かくて、気持ち良いね」

「ああ」

――これで良いと、互いが互いに思っている。










レーニア王国王都<レーニア>
初代国王が700年前に造ったこの国の最初の都は、山岳の中心に位置している。
周囲を山々に囲まれた位置にある王都は、他国との交通が盛んとは言えないが、自給率は100%を維持している。

山の中の自然や、流れる川。
湖や広大な平原もある地帯であり、食料には困らないのだ。

それと同時に、支出額も最も少ない国を維持している。
なんと、年間の収入の10分の1しか使っていないといえば、その凄さは分かるだろう。

国民が、贅沢をしない性格なのと、お金をあまり使わない生活をしているのが主な要因である。
それでも、貧民街が出来てしまうのには訳があった。


――<急化性能力欠乏印>


シュンも患っている、何かの能力が0の値になってしまうという凶悪なモノ。
これによって、何らかの能力でも0になれば、それだけで社会的な生活が窮地に陥る。

攻撃力の発症は歴史上でもほとんど観測されていないため、あまり心配はされていない。

問題は、防御力と俊敏力、魔力、の三つだ。
防御力が0の場合、風でもすり傷が出来る可能性がある程貧弱になってしまう。
俊敏力が0の場合、自力で移動することが出来ない。
魔力が0の場合は、少し特殊である。

この世界での魔力は、それすなわち個性と気配、感情にまで作用する。
「魔力には色がある」なんて言う学者が居るらしいが、まったくその通りである。
攻撃的な色をする魔力なら、気性が荒い人が多く、他人に恐怖を与えやすくなる。

それと同じで、魔力によって人は無意識のうちに他人を判断するのだ。

それが無い場合。
つまり、判断する方法が無い場合は恐ろしい。
無意識のうちに、対象を”人間と思えない”場合が増えてしまうのだ。

咄嗟の場合、例え家族であってしても「人間の方が大事!」という意味不明な理屈で捨て置く場合もある。
さらに酷いことに、この魔力が0の場合が、最も多い。

このように、社会的に自力で生きるのが難しい人々が住む街、それが貧民街だ。
元は、<欠乏介護街>という名で存在したのだが、時代ともに変わってきた。
他国から来て生活に馴染めない者や、仕事に失敗した者も集まるようになり、それが次第に広がっていった。

今となっては、欠乏症の人間の方が少なくなっている。











貧民街にやってきた2人。
貧民街と呼ばれる境界線は無く、自然と建物が古くなってくると住民がそう呼んでいる。

「何時も通りだね」

「ええ。何時も通りね」

2人の声には、少なくない落胆が含まれている。
互いに教えたことは無いが、互いに抱えているモノはある。

似た境遇の、似た2人だからこそ、なのかもしれない。

無言のまま進むにつれて、2人の間に陰は落ちてくる。
この場所には良く来るが、その度にこうなってるな、とシュンは思った。
暗い空気の中でも、それを何処か懐かしむ自分にも気付く。

そう思うと、不思議と苦笑が浮かんできた。

「どうした?」

「なんでもないよ」

――そう、なんでもない。

たった1人の、消したい記憶が浮かんできただけ。

「これからどうする?」

「そうだな。なら、一度戻ってキルヤ兵長に会いに行かないか?」

無愛想な顔が、自然と脳裏に浮かんでくる。
喋らないし、愛想も良くないのに、何故か周囲からの評判は良い。
不思議な兵長だな、とレイアは良く思っている。

少し考えてから、シュンは頷いた。

「そうか、なら行こう」

「うん」

そうして、2人はまた歩き出す。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
~後書き~

シュン「そういえば、レイアのキャラはあれで固定?」

作者「多分そうなるかな」

レイア「だが、本当は違うキャラの予定だったのだろう?」

作者「そうだね。プロットの時点ではお淑やかな”お姫様”って感じのキャラにするつもりだったからね」

レイア「そうなると、やはり私のキャラを保つのは難しく・・・・・・?」

作者「うん。だから、一話に掛ける時間も増えてしまうかもね」

レイア「なるほど。読者の皆様には、それについては大変申し訳なく思います。で、私とシュンの関係はどんな感じなのだ?」

作者「それについては、自分よりもシュン君からかな」

シュン「さて、やっと回ってきた出番だね。まあ、あんまり説明が長くなるとネタバレになるから少しだけだね」

レイア「分かった」

シュン「まず、僕達の関係としては既に言った通りに主従関係だね。僕がしもべで、レイアが主人。そこで問題なのは、作者が描写力と語彙力が無くて上手く書けていない”恋愛関係”についてだね」

レイア「そうだな。原作、というより今話では私がシュンに好意を抱いているような表現があったのだが・・・・・?」

シュン「それについても解説するよ。まあ、簡単に一言で表すなら『レイアはシュンに淡い恋心を抱いている』になるかな。それを僕自身薄々と気付いている、って感じかな。けど、作中で語られた通りに僕もレイアも何かしらを抱えているから、”それ以上”の関係に成ることは無い。って感じ。」

レイア「シュンの抱えてるモノは大きそうだな」

シュン「そうだね。でも、レイアも抱えてるモノなんてあるんだね?」

レイア「そりゃあ、私だって抱えているものだってある。さて、今回は長く語り過ぎてしまったな。この当たりで終わりにしようか」

作者「そうですね。それでは、読者の皆様へ。今回はこのような長い文章を後書きという括りに入れて投稿させて頂きまして、真に申し訳御座いませんでした。このような場所に書かせて頂くことが出来ましたのも、読者の皆様が広い心を持ってくださるお陰です。ありがとうございました」

シュン「ありがとうございました」

レイア「ありがとうございました」


此処まで読んでくださりありがとうございます。
宜しければ、ブックマーク登録、感想をお待ちしております。
それでは、また次回の後書きでお会いしましょう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

完結 貴方が忘れたと言うのなら私も全て忘却しましょう

音爽(ネソウ)
恋愛
商談に出立した恋人で婚約者、だが出向いた地で事故が発生。 幸い大怪我は負わなかったが頭を強打したせいで記憶を失ったという。 事故前はあれほど愛しいと言っていた容姿までバカにしてくる恋人に深く傷つく。 しかし、それはすべて大嘘だった。商談の失敗を隠蔽し、愛人を侍らせる為に偽りを語ったのだ。 己の事も婚約者の事も忘れ去った振りをして彼は甲斐甲斐しく世話をする愛人に愛を囁く。 修復不可能と判断した恋人は別れを決断した。

【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない 

堀 和三盆
恋愛
 一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。  信じられなかった。  母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。  そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。  日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

処理中です...