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序章 ゲームスタート
邪魔者討伐と序章完結
しおりを挟むリアナ達を呼び止めたのは、金色の鎧を身に纏った男だった。
その男は、装備は良く、顔も良いのだから、周囲の男性プレイヤーも手を出せない。
イケメンに誘われている女性に声を掛けられる勇気が無いのだ。
まあ、この男の目線が先ほどからリアナの胸ばかり向いているのに気付くのは簡単なのだが。
とりあえず、こういう輩の相手は俺だ。
リアナと視線を合わせて、俺は頷いた。
一瞬、リアナは戸惑ったように苦い顔をしたが、すぐに引き締めて頷いた。
そこまで柔じゃないことを証明してやる。
「悪いね。4人とも俺の連れなんで、邪魔しないでくれる?」
「なんだい君は?僕の装備が見えないのかな?君のような初心者装備の雑魚とは違うのだよ」
(神鎧を、雑魚って・・・・・・・ッ)
「ははははっ!!」
「何が可笑しい?」
いやいや、笑わないほうが変だって。
最も階級の高し装備を身につけているのに、その相手に向けて雑魚とか。
まあ、この鎧がそう見えるようになってるんだから仕方無いのだろうけど。
「なら、PVPしてみようぜ。俺は、お前みたいな雑魚とは違うんでね」
「な!?・・言わせておけば!!いいだろう。その勝負受けた!!ただし、間違えて殺してもしらないよ?」
「何言ってんだ?お前みたいな雑魚に時間を割く訳無いだろ」
「殺す!!貴様のような野蛮な男に時間を割くのも、僕には勿体無いな。早く後ろのお嬢さん達と話がしたいからね」
何時まで、その余裕が持つのかね。
まあ、俺も喧嘩はそこまで嫌いでは無い部類に入る人間だ。
挑発には、堂々と返してやる。
「すぐ近くで売ってる鎧に金粉塗っただけの鎧だろ?威張らなくても大丈夫だぜ?」
近くの露店に飾られている鉄製の鎧を指差しながら、嘲笑うように告げる。
すると、あら不思議。
驚くようにその顔がさらに真っ赤に染まっていく。
喧嘩の時と、こういう輩が言う言葉は大抵似ている。
男が息を短く吸って、口を開いた瞬間。
俺も同じように口を開く。
「「一撃で終わらせる!!」」
『両者同意の決闘を開始します。周囲にいるプレイヤーはただちに円の外に避難してください。決闘を開始します』
そんな文字が空中に現れ、回転を始めた。
同時に、俺と男の中心を基点として17メートルほどの円が現れた。
『勝負は、完全決着デュエル。片方のHPが全損すると、決着となります。賭けは互いの装備とアイテム、経験値全て。それでは、3・・・・・2・・・・・・1』
『決闘開始!!』
大きな文字でそう表示されたと同時に、俺の背中に重たい感触が乗った。
さらに、視界左上にHPとMPのゲージが表示され、男の真上にも表示されている。
片手剣と呼ばれる分類に入るデュランダルは、背中に、斜めに装備されるようだ。
その柄を握り、引き抜く。
ノームとの戦闘では意識していなかったが、この剣は刀身が白銀に輝いているらしい。
柄から剣先に向かって、金色の線が入っていて、かなりカッコいい。
さらに、薄く光を放っており、かなり幻想的だ。
対して、男も剣を引き抜いており、どうやら細剣だと分かる。
このプレイヤーも、かなり運が良かったのだろう。
まあ、その運も此処で尽きたようだが。
「疾ッ!!」
時間の惜しい俺は、最速で間合いを詰めた。
風が吹き抜け、ほぼ一瞬で男の目前に移動している。
右手に握ったデュランダルで、切り上げるように一閃した。
刹那、男の身体が淡く輝き、後方に吹き飛ばされた。
そのHPバーは満タンで、MPバーが全損している。
MPを犠牲にして、HPを守ったということなのだろう。
感心しながらも、一瞬で間合いを詰め、今度こそ決着だ。
「ハァッ!!」
短い息とともに突き出したデュランダルは、正確に男の胸を貫いた。
同時に、男のHPバーが急速に減少し、そして消えた。
途端に男の身体が輝き始め、その光が一瞬だけ物凄く眩しくなった。
思わず目を瞑ったのと、何かが砕け散る音がしたのは同時だった。
再び目を開くと、男の立っていた場所には光の粒子があるだけで、先ほどの姿は何処にも無かった。
その粒子も、次第に上空に浮遊していき、やがて消えた。
静かな静寂が包み、その場は冷め切っている。
『決着!!!』
そこへ、そんな大きな文字と、大音量のファンファーレが流れた。
そのお陰で、空気が変わり、大まかには歓声で満たされた。
ただ、その中にあった別物の視線も判断出来て、俺は溜息を吐いた。
このゲームは、その運営さえも運次第なのかもしれないな。
参加するプレイヤーが、どれだけ妬みや嫉みを爆発させずにプレイ出来るのか。
きっと、俺も面倒な目に合うのだろう。
既に幾つものMMOをプレイしている身としては、もう慣れてきている。
毎回毎回、面倒な事は向こうからやってくるものだ。
ふと、視線を横に向けると、一人の少女が俺を見ていた。
黒い髪に、黒いワンピースという、防具ですら無いような装備を身につけている少女だが、上部にあるカーソルからはプレイヤーだと表示されている。
その少女と目が合うと、少しだけ見つめあう時間が続いたが、やがて少女は去って行った。
「お疲れ様。数値で見るのと、実物を見るのはやっぱり違うわね」
「あ、ありがとう、ございます」
「お疲れ様でした。私達のために戦ってくれて、ありがとうございます」
「ん」
俺の下にやってきた4人は、そう口々に告げた。
それに対して、かなり良い気分になりつつ、先ほどの少女の事をもう一度考え、首を捻った。
結局、その少女に会うことは暫く無かったのですが、それはまた別のお話し。
これから紡がれるのは、奇妙な縁のもとに集まったこの4人のお話です。
手始めに、赤い髪の子との奇妙な縁を解決させましょう。
さあ、この子との決着は、いったい彼はどうするのか、それが、これからのお話。
貴方は、ゲームの世界に逃げ込んだ場合、どうしますか?
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