29 / 33
英雄と王女。学園まで1ヶ月
後片付けと第二王女
しおりを挟む
失敗した。
そう気付いた時には、既に遅かった。
「皇子様ッ!!」
「待tんッ!?」
瞳を潤した少女は、俺の腕の中から出て行くかと思いきや、その腕を首を後ろに回し、唇を重ねてきた。
その顔が火照っていることは、今だけは見逃したいと切実に願った。
熱く、心地よい唇の感触に、だんだんと意識が堕ちていくのを感じた。
_不味い!?
そう考えた俺は、すぐに少女を抱いていた腕を振りほどき、大きく跳躍した。
「きゃっ!?」
支えの無くなった少女は、そのまま床へと落下し、怪我をしたようだった。
それを見て、俺はホッ、と溜息を吐いた。
と、同時に、第三王女と、男性から凄まじい殺気が向けられていることに気付いた。
「どういうことですか!?」
「すまないが、斬られてくれないか?」
俺が悪いのを自覚している所為か、2人の威圧は俺を震え上がらせるのには充分だった。
_これは、逃げるしか無いな。
何度か悩んだし、考えたが、それしか案は浮かばなかった。
この状態でどう説得しても、水の泡だろうし、先ほどから第二王女がゆっくりと、しかし着実に近づいてきているのを察知している。
ほとんど、詰みだ。
「【転移】!!!」
「な!?」
「ああああ!!」
「きゃぁっ!?」
突如、光が俺の身体を包み、その記録を移動させた。
このまま、公爵家へと戻ろう。
――そう考えていた時だった。
「皇子様ッ!!」
「なっ!?」
第二王女がそう叫ぶと同時に、俺の身体はその方向に引き寄せられた。
魔法を発動している、記録体である俺は、抵抗することも出来ずに、第二王女の前へと転移したことになった。
目前に現れた俺を見て、第二王女は瞳を輝かせ、その腕を俺の身体へと回してきた。
「皇子様!」
まるで、何も知らない子供のように俺に抱きついている第二王女に、俺は何も抵抗出来なかった。
それどころか、動くことすら出来ない。
唯一、第二王女の背へと腕を回そうと考えた時だけ腕の自由が解放されている。
_一体、どうなっているんだ?
俺ですらまったく分からない事態に、ただ戸惑うことしか出来ない。
第三王女と男性も同じく身体が動かないのか、激しい殺気を俺に向けたまま固まっている。
「~~~!ん!」
ふと、第二王女である少女が顔を上げて第三王女と男性を見て、顔を膨らませた。
_もしかして、俺への感情を受け取った?
そう考えてしまうほどに、今の表情と動きは可笑しかった。
ふと、第三王女を見ると、声の出ない口で、必至に何かを伝えようとしている。
――そ れ が わ た し た ち の ち か ら
_それが、私達の力……力……種族技能か!!
結論に至った俺は、次いで絶望を知った。
種族技能とは、唯一抵抗出来ない技能だ。
その全てが強力な力を秘めており、厄介なモノである。
そして、この能力を持っている種族はたった1つ。
_魔族だ。
それも、高位の。
「皇子様は、私の事、嫌い?」
「嫌いじゃない」
少女の言葉には、何らかの強制力が働いているようで、まったく抵抗も出来ずに口が開いた。
「じゃあ、好き?」
「………………嫌いじゃない」
「む~~~!」
なんとか、理屈に合わせて答えた。
好き?と聞かれたから、嫌いではないと答えただけだ。
このまま、持ちこたえるしかないだろう。
恐らく、この力も永遠に使える訳では無いはずだ。
それまで、問題など無く終わらせられれば。
「好きになって」
_ふざけるな~!!!!
少女の言葉が俺の頭の中で響いた直後、身体が熱くなっていくのを感じた。
目前で微笑む少女が、上目で見てくる少女が、どうしようも無く愛おしく感じる。
_待てって!!【保存】【転写】【二重人格】!!
同時に三つの魔法を発動させたと同時に、俺の意識は堕ちた。
1つだけが。
そして、その堕ちた意識を切り捨て、自身の制御を取り戻す。
効果が無い俺を見て、少女はまたもや不満そうに頬を膨らませた。
だが、だんだんとその表情も変わってくる。
少女の額に、丸い円が刻まれ始めたのだ。
それにより、僅かだが身体の自由が戻った。
_これが、封印か。
そう思いながらも、決して油断はしない。
此処で負けたら、死ぬ。
下らないプライドの戦いが、火蓋を切ったのだった。
そうして、時間は過ぎていく。
とりあえず、隙を見て転移したとだけ、追記しておこう。
_____________________________
~後書き~
どうも!!作者のbakaukeです!!
この物語の第2章は此処で終了です!!
この次話から3章が始まりますので、続きを楽しみにしていてください!!
そう気付いた時には、既に遅かった。
「皇子様ッ!!」
「待tんッ!?」
瞳を潤した少女は、俺の腕の中から出て行くかと思いきや、その腕を首を後ろに回し、唇を重ねてきた。
その顔が火照っていることは、今だけは見逃したいと切実に願った。
熱く、心地よい唇の感触に、だんだんと意識が堕ちていくのを感じた。
_不味い!?
そう考えた俺は、すぐに少女を抱いていた腕を振りほどき、大きく跳躍した。
「きゃっ!?」
支えの無くなった少女は、そのまま床へと落下し、怪我をしたようだった。
それを見て、俺はホッ、と溜息を吐いた。
と、同時に、第三王女と、男性から凄まじい殺気が向けられていることに気付いた。
「どういうことですか!?」
「すまないが、斬られてくれないか?」
俺が悪いのを自覚している所為か、2人の威圧は俺を震え上がらせるのには充分だった。
_これは、逃げるしか無いな。
何度か悩んだし、考えたが、それしか案は浮かばなかった。
この状態でどう説得しても、水の泡だろうし、先ほどから第二王女がゆっくりと、しかし着実に近づいてきているのを察知している。
ほとんど、詰みだ。
「【転移】!!!」
「な!?」
「ああああ!!」
「きゃぁっ!?」
突如、光が俺の身体を包み、その記録を移動させた。
このまま、公爵家へと戻ろう。
――そう考えていた時だった。
「皇子様ッ!!」
「なっ!?」
第二王女がそう叫ぶと同時に、俺の身体はその方向に引き寄せられた。
魔法を発動している、記録体である俺は、抵抗することも出来ずに、第二王女の前へと転移したことになった。
目前に現れた俺を見て、第二王女は瞳を輝かせ、その腕を俺の身体へと回してきた。
「皇子様!」
まるで、何も知らない子供のように俺に抱きついている第二王女に、俺は何も抵抗出来なかった。
それどころか、動くことすら出来ない。
唯一、第二王女の背へと腕を回そうと考えた時だけ腕の自由が解放されている。
_一体、どうなっているんだ?
俺ですらまったく分からない事態に、ただ戸惑うことしか出来ない。
第三王女と男性も同じく身体が動かないのか、激しい殺気を俺に向けたまま固まっている。
「~~~!ん!」
ふと、第二王女である少女が顔を上げて第三王女と男性を見て、顔を膨らませた。
_もしかして、俺への感情を受け取った?
そう考えてしまうほどに、今の表情と動きは可笑しかった。
ふと、第三王女を見ると、声の出ない口で、必至に何かを伝えようとしている。
――そ れ が わ た し た ち の ち か ら
_それが、私達の力……力……種族技能か!!
結論に至った俺は、次いで絶望を知った。
種族技能とは、唯一抵抗出来ない技能だ。
その全てが強力な力を秘めており、厄介なモノである。
そして、この能力を持っている種族はたった1つ。
_魔族だ。
それも、高位の。
「皇子様は、私の事、嫌い?」
「嫌いじゃない」
少女の言葉には、何らかの強制力が働いているようで、まったく抵抗も出来ずに口が開いた。
「じゃあ、好き?」
「………………嫌いじゃない」
「む~~~!」
なんとか、理屈に合わせて答えた。
好き?と聞かれたから、嫌いではないと答えただけだ。
このまま、持ちこたえるしかないだろう。
恐らく、この力も永遠に使える訳では無いはずだ。
それまで、問題など無く終わらせられれば。
「好きになって」
_ふざけるな~!!!!
少女の言葉が俺の頭の中で響いた直後、身体が熱くなっていくのを感じた。
目前で微笑む少女が、上目で見てくる少女が、どうしようも無く愛おしく感じる。
_待てって!!【保存】【転写】【二重人格】!!
同時に三つの魔法を発動させたと同時に、俺の意識は堕ちた。
1つだけが。
そして、その堕ちた意識を切り捨て、自身の制御を取り戻す。
効果が無い俺を見て、少女はまたもや不満そうに頬を膨らませた。
だが、だんだんとその表情も変わってくる。
少女の額に、丸い円が刻まれ始めたのだ。
それにより、僅かだが身体の自由が戻った。
_これが、封印か。
そう思いながらも、決して油断はしない。
此処で負けたら、死ぬ。
下らないプライドの戦いが、火蓋を切ったのだった。
そうして、時間は過ぎていく。
とりあえず、隙を見て転移したとだけ、追記しておこう。
_____________________________
~後書き~
どうも!!作者のbakaukeです!!
この物語の第2章は此処で終了です!!
この次話から3章が始まりますので、続きを楽しみにしていてください!!
0
あなたにおすすめの小説
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】前世聖女のかけだし悪女
たちばな立花
ファンタジー
魔王を退治し世界を救った聖女が早世した。
しかし、彼女は聖女の能力と記憶を残したまま、実兄の末娘リリアナとして生まれ変わる。
妹や妻を失い優しい性格が冷酷に変わってしまった父、母を失い心を閉ざした兄。
前世、世界のために家族を守れなかったリリアナは、世間から悪と言われようとも、今世の力は家族のために使うと決意する。
まずは父と兄の心を開いて、普通の貴族令嬢ライフを送ろうと思ったけど、倒したはずの魔王が執事として現れて――!?
無表情な父とツンがすぎる兄と変人執事に囲まれたニューライフが始まる!
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる