ブラッドゲート〜月は鎖と荊に絡め取られる〜 《軍最強の女軍人は皇帝の偏愛と部下の愛に絡め縛られる》

和刀 蓮葵

文字の大きさ
3 / 325

2

しおりを挟む
げんなりしながら部屋に戻ってくると、机で事務処理中の女性・式部京子しきぶきょうこが肩まである髪を揺らし、切れ長な目で帰ってきた二人の姿を見て、
「お帰りなさい」 
と一言、声をかけてまた事務処理を開始した。会議で何かあったのだろう?と一目で分かった。何故ならあの虎次郎がニヤニヤして、室長がゲンナリな顔をしているからだ。

虎次郎が何かをすれば二人の顔は対象的な顔になる。とてもわかりやすいが、他の隊員達は室長の無表情を読み取る事が難しいそうだ。すべて同じ無表情の顔に見えるらしい。

最初の頃は自分も分からなかったが、月日が経つと変化が分かっていくのだから人間すごいと思った事もあったりする。

室長に渡す書類を作成するためパソコン作業をしていると、まるで口笛を吹いているような軽い感じで虎次郎が部屋の中を見ながら式部に確認をしてきた
「あれー?あの二人は何処にいんの。たしか二人共今日は任務地から帰って来るはずだよな?まだ、帰ってきてないの。式部知らない?」
相澤あいざわ少佐は二人が会議中に帰ってきて「お昼まだ」とか言って食堂に行ったわ。そろそろ帰って来ると思う。夜神やがみ中佐はまだ帰って来てないみたいね。道が混んでるんじゃないの?」
「ふーん・・・じゃ~、皆が揃ってから一週間後の学生受け入れの事とか説明したほうがいいっすよね。室長!今年は今までと違う受け入れ体勢になったからなぁー」

・・・・・・今までと違う受け入れ体制?何それ?あーだからかー。この対象的な顔になったのか。納得だわ。大方、虎あたりが無精ひげを撫でながら変な案を提案してきたんだ。うん、納得。だてに高校からの付き合いではないからねー私達。

式部が「うわ~」な顔をしながら室長を見ると室長も「はーっ」とため息をして自分の席に戻っていく。ご愁訴さまです室長。と目線を送ると、扉から軽いノック音が聞こえてきたと思ったら二人の男女が部屋に入ってきた。

男の方は眼鏡をかけて少し神経質そうな顔をしているが、顔に似合わずしっかりとした体つきで黒い軍服を隙なく着て、そこから見えるネクタイもしっかりと締めている。ベルトにはデザートイーグルを二丁、肩にはライフル銃を下げている。相澤千明あいざわちあきは虎次郎と私と同期で階級は少佐

そして女の方が背中まである髪をポニーテールにして、特徴的な瞳を持っている。白い目をしているのだ。遺伝子の問題だそうだか視力は普通に良く、将来的に何らかの障害があるのかといえばそれもないそうだ。色素が薄いだけらしいと本人は言っている。そんな特徴を持っている彼女は夜神凪やがみなぎ中佐で、軍の中ではトップクラスの実力を持っている。特徴的な瞳は大きく、美女の部類に入る顔立ちで華奢だか意外と胸が大きいというアンバランスな体付きで軍の中では隠れファン(男女とも)が多いという。
なんとも不思議な存在の彼女だ。相澤と同じく軍服もネクタイも隙なく着ていて、ベルトからは二本の日本刀を下げている。

そんな彼らが室長のいる机まで行き、敬礼をしてそれぞれ帰還の挨拶をしていた
「夜神中佐、只今任務地より帰還しました。こちら報告書です」
「相澤少佐、同じく任務地より帰還しました。報告書のお目通しお願いします」

二人はそれぞれ自分達の任務していた報告書を室長の机に置き、もう一度敬礼をして自分の机に向かおうとしていたが、長谷部が一言
「すまんが、二人共話を聞いて欲しい事がある。式部中尉も七海少佐も来てくれ」
無表情で隊長クラスの四人を呼び、今朝の会議の事を報告したのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

つかまえた 〜ヤンデレからは逃げられない〜

りん
恋愛
狩谷和兎には、三年前に別れた恋人がいる。

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...