ブラッドゲート〜月は鎖と荊に絡め取られる〜 《軍最強の女軍人は皇帝の偏愛と部下の愛に絡め縛られる》

和刀 蓮葵

文字の大きさ
6 / 325

5

しおりを挟む
「?!?今、何と言った??!」
長谷部室長は思いっきり眉間にシワを寄せていた。この顔を見た人は「怒っている!!」と思うかもしれないが、この部屋にいる人間(学生と先生を除く)は皆知っている。物凄く驚いているのだ。心の底から驚いて戸惑っている。

「夜神?お前熱でもあるのか?それとも何か変なものでも食べたか?いや、えー雪でも降る?今は四月だぞ。いや、槍か?」虎次郎も思いっきり驚いている。

相澤と式部は驚いた顔をして、固まっていた。

それもそうだろう。夜神は今まで教育係をしていない。それどころか自分の部下さえいないのだ。一人で吸血鬼と対峙している。
本来なら五~六人で部隊を形成していく。そのほうが確実に吸血鬼と互角に戦えるからだ。人間の数倍の圧倒的身体能力を持つ吸血鬼を一人で対応するのは本来「死」を意味している。
だか、夜神は違う。一人でも対応できる力を持っている。それ故に殲滅部隊最強と言われるのだ

基本一人行動の夜神が教育係に挙手したのだ。それは異例中の異例である。だからだろう部屋に居る人間が驚くのは。
それは庵海斗と引率の先生も驚いていた。教育係もしないし、部下も居ない。一人吸血鬼と戦う軍最強の軍人━━━それが夜神凪中佐なのだ。

大学でも有名人で、あの人の部下になれたら凄いよね。けど、無理だろう。などと言われるぐらい有名な話でもあるのだから。
その夜神が教育係に挙手するなど異例なのだ。虎次郎が「雪か槍が降る」と言うぐらい、今までにないぐらいの、ありえない事なのだ。

「だめでしょうか?私としては庵海斗学生に力をつけてもらい、立派になって大学を卒業してもらいたいのですが?確かに今まで教育係はしてませんが、資格はあります。私が対応していて、もし室長が教育係に相応しくないと判断した場合は速やかに辞退して別の人に任せます。ぜひ、ご配慮頂ければと思います」
迷いない声で室長に告げた。白い瞳は真っ直ぐに室長を真剣に見ている。

━━━━━本気の目だ。

長谷部は夜神が本気で庵海斗学生に力をつけさせようとしているのが分かった。
きっとやり方は他の教育係からしたら「殺す気か!!」と言われるやり方をするだろう。なぜなら夜神の先生も似たような教育で夜神を育てた。それは我々の世代は知っている。夜神は同じことをするだろう。間違いないと断言出来る。

だが、万が一があるとしたら?きっと目の前でおどおどしながら、自分がどうなるのか分からず不安で仕方がないと思っている学生が、実は秘めた実力を持っていたら?

最悪、これ以上は危険と思えば教育係を変えることは出来る。万が一にかけるのも悪くない。学生には悪いが。我々のいる軍は限られた人間しか入隊出来ない。その為、人は少ない。人手不足だ。強い戦力はありがたい。

長谷部はいつもの無表情を取り戻し、夜神と庵を見て、軽くため息をすると
「分かった。今年の教育係は夜神凪中佐に任せる。但し危険と判断したら、すぐに人を変える。それで問題ないな」
「全て了解しました」

庵学生の隣に立ち、敬礼をする。その姿を見て庵も敬礼をした

こうして、今年の前代未聞の配属と教育係で、大注目をし、一波乱あることを全員が知る由もないのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

つかまえた 〜ヤンデレからは逃げられない〜

りん
恋愛
狩谷和兎には、三年前に別れた恋人がいる。

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...