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「はじめまして。庵海斗四年生。私は式部京子です。階級は中尉一年間宜しくね」
肩までまであるストレートの髪を少し傾けながら、切れ長な目をニッコリとして挨拶をする。膝丈までのタイトスカートにベルトには沢山の小ぶりな鞄が付いている。そして赤いラインの腕章をしている。
「よっ!!庵青年俺は七海虎次郎だ。階級は少佐だ宜しく!一緒に楽しもうぜ」
短く刈り上げた茶髪に無精ひげ、軍服は着ているが、ネクタイを緩めて全体的に着崩している。背中に槍を背負っていて、それを止める為のベルトが、肩から斜めに軍服の前身頃を横切っている。腕章には金のラインがある。
「一年間宜しく。私は相澤千明で少佐だ。気になることがあれば色々質問してくれ」
眼鏡をしていて、少し神経質そうな感じだが、体はガッチリしている。七海少佐と同じく金ラインの腕章で、軍服はネクタイまでしっかりと締めている。ベルトには大きな銃ホルダーを二つと肩からライフル銃を下げている。
「こんにちは。私は夜神凪です。階級は中佐、一年間宜しくね。気になることとかあればドンドン質問してね」
ポニーテールの髪を揺らし、白い瞳で真っ直ぐ見てくる女性が、この軍隊で最強と言われる夜神中佐だ。実力も顔も軍トップクラスで、腕章は金と赤のラインの二つだ。
どちらかのラインの腕章は多いが二種類のラインを持っているのは稀な存在である。
そして印象的な瞳の色。存在している人なのか?それとも幻?と言いたくなるぐらいの美人なのだ。だか、しっかりと軍服を着こなし、ベルトには二本の日本刀を付けている。
自分が先輩達から聞いていた『生きる最強』だの『双剣の舞姫』だの様々なあざなを付けられた人がいま、目の前にいるのだ。本当に実在する人なんだと、夢物語が現実味をおびてくる。
隊長クラスの簡単な挨拶を終わらし、次の「教育係」を誰が担当するかの話になったとき、まさかそんな事になろうとは誰もが思わなった事態が起きたのだった。
夜神凪は庵海斗四年生がビクビクしているのを、気にしながらも挨拶をした。
何かに圧倒されなが、本当に自分が居てもいいんだろうか?と顔に書いてある。しかし、現実を受け止めて己の足で踏みとどまるその姿に、もっと自信を持ってもらいたいとも思ってしまった。
(あの頃の自分も自信がなくてよく先生に怒られたなー)
昔の儚い記憶を思い出す。懐かしい記憶の一つだ。
成績が十位で本来なら第十室に配属されるのに、どっかの誰かが面白半分で言った事により第一室に配属されたのだ。戸惑うな、と言う方が可哀想である。
学生達も何も聞かされないまま、順番通りの挨拶でなく、きっと行ったり来たりして戸惑っていただろう。
(申し訳ないけど、今年の学生達は被害者よね。あいつの)
きっと、ここに居る皆(一人除く)が思っていることだろう。
室長と自分達の挨拶が終わり、いつの間にか庵君の隣に引率で来ている軍大学の先生がいた。
自分の学生のときお世話になった先生だったので、軽く挨拶をした。すると気付いて同じく挨拶をしてくれる。
室長は庵君の「教育係」を誰にするか?の話をし始めた。
私は基本一人で行動をする。教育係をすることはない。
けど、庵君を見ていると何故だろう、自信をもっと持って欲しい。きっと凄い力を持っていると、自分の直感が告げている。その力を引き出して思う存分戦って欲しいと思う。
「人を育てるのは大変だか、そのぶん自分も成長できる。たが、育て方を間違えるととんでもないことになる。それぐらい人を育てるのは難しいんだよ」懐かしい先生の言葉だ。
今日はよく先生の思い出がよみがえる。目の前にいる学生が、いつものように自信を持った学生でなく、自分がここに居ることが場違いだと思っているのだ。
そんなことはない。場違いだと思わないで欲しい。今は力がなくとも今から力をつければいい。それを引き出す役目を自分がしたい。
この配属が毎年と違うなら、教育係も違っていいよね?
「今年の教育係は誰がする?まー相澤か式部辺りが一番妥当だとは思うが」
長谷部室長の抑々のない声で教育係を決めようとしている中、一人が挙手をした。
「今年の教育係は私がします」
その一言に、部屋にいる全員が驚いたのであった。
肩までまであるストレートの髪を少し傾けながら、切れ長な目をニッコリとして挨拶をする。膝丈までのタイトスカートにベルトには沢山の小ぶりな鞄が付いている。そして赤いラインの腕章をしている。
「よっ!!庵青年俺は七海虎次郎だ。階級は少佐だ宜しく!一緒に楽しもうぜ」
短く刈り上げた茶髪に無精ひげ、軍服は着ているが、ネクタイを緩めて全体的に着崩している。背中に槍を背負っていて、それを止める為のベルトが、肩から斜めに軍服の前身頃を横切っている。腕章には金のラインがある。
「一年間宜しく。私は相澤千明で少佐だ。気になることがあれば色々質問してくれ」
眼鏡をしていて、少し神経質そうな感じだが、体はガッチリしている。七海少佐と同じく金ラインの腕章で、軍服はネクタイまでしっかりと締めている。ベルトには大きな銃ホルダーを二つと肩からライフル銃を下げている。
「こんにちは。私は夜神凪です。階級は中佐、一年間宜しくね。気になることとかあればドンドン質問してね」
ポニーテールの髪を揺らし、白い瞳で真っ直ぐ見てくる女性が、この軍隊で最強と言われる夜神中佐だ。実力も顔も軍トップクラスで、腕章は金と赤のラインの二つだ。
どちらかのラインの腕章は多いが二種類のラインを持っているのは稀な存在である。
そして印象的な瞳の色。存在している人なのか?それとも幻?と言いたくなるぐらいの美人なのだ。だか、しっかりと軍服を着こなし、ベルトには二本の日本刀を付けている。
自分が先輩達から聞いていた『生きる最強』だの『双剣の舞姫』だの様々なあざなを付けられた人がいま、目の前にいるのだ。本当に実在する人なんだと、夢物語が現実味をおびてくる。
隊長クラスの簡単な挨拶を終わらし、次の「教育係」を誰が担当するかの話になったとき、まさかそんな事になろうとは誰もが思わなった事態が起きたのだった。
夜神凪は庵海斗四年生がビクビクしているのを、気にしながらも挨拶をした。
何かに圧倒されなが、本当に自分が居てもいいんだろうか?と顔に書いてある。しかし、現実を受け止めて己の足で踏みとどまるその姿に、もっと自信を持ってもらいたいとも思ってしまった。
(あの頃の自分も自信がなくてよく先生に怒られたなー)
昔の儚い記憶を思い出す。懐かしい記憶の一つだ。
成績が十位で本来なら第十室に配属されるのに、どっかの誰かが面白半分で言った事により第一室に配属されたのだ。戸惑うな、と言う方が可哀想である。
学生達も何も聞かされないまま、順番通りの挨拶でなく、きっと行ったり来たりして戸惑っていただろう。
(申し訳ないけど、今年の学生達は被害者よね。あいつの)
きっと、ここに居る皆(一人除く)が思っていることだろう。
室長と自分達の挨拶が終わり、いつの間にか庵君の隣に引率で来ている軍大学の先生がいた。
自分の学生のときお世話になった先生だったので、軽く挨拶をした。すると気付いて同じく挨拶をしてくれる。
室長は庵君の「教育係」を誰にするか?の話をし始めた。
私は基本一人で行動をする。教育係をすることはない。
けど、庵君を見ていると何故だろう、自信をもっと持って欲しい。きっと凄い力を持っていると、自分の直感が告げている。その力を引き出して思う存分戦って欲しいと思う。
「人を育てるのは大変だか、そのぶん自分も成長できる。たが、育て方を間違えるととんでもないことになる。それぐらい人を育てるのは難しいんだよ」懐かしい先生の言葉だ。
今日はよく先生の思い出がよみがえる。目の前にいる学生が、いつものように自信を持った学生でなく、自分がここに居ることが場違いだと思っているのだ。
そんなことはない。場違いだと思わないで欲しい。今は力がなくとも今から力をつければいい。それを引き出す役目を自分がしたい。
この配属が毎年と違うなら、教育係も違っていいよね?
「今年の教育係は誰がする?まー相澤か式部辺りが一番妥当だとは思うが」
長谷部室長の抑々のない声で教育係を決めようとしている中、一人が挙手をした。
「今年の教育係は私がします」
その一言に、部屋にいる全員が驚いたのであった。
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