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防具を身に着けた庵は、ラインの真ん中で素振りをしている夜神を見つけると、曲がれ右をしたくなってきた。
素振りが早い、空気を斬る音がする。いろんな意味で逃げだしたい
けど、直ぐに庵の姿を確認した夜神は「こっち~」と、おいでおいでしながら待っている。
覚悟を決めよう!!大丈夫死ぬことはない。ただ、死ぬほど痛いだけだ。うん、痛いだけだ
防具をしっかりと着て、面をしているから、顔の表情は分からないが気配で分かる。凄く恐怖に満ちている。
私は鬼ヶ島の鬼かしら?それともなに?ちょっと、傷つくなぁー。
けど、剣を交えばその恐怖もなくなると思うのよね。負けん気があれば、次のステップに行くための糧となる。
どっちに転ぶかは私の対応しだい。ここで間違った対応をすれば、今後の全てが無駄になる。間違いは出来ない
「いらっしゃい。では、庵君の実力を見せてね。どこでも好きな所を狙って打ち込んできて頂戴。私も実戦形式で対応させてもらうね」
「はい(実戦形式!!?まさしく生きた心地がしたない)宜しくお願いします」
距離を十分に確保して構える。夜神も同じように構え、庵の動きを見ている。
覚悟を決めた庵は竹刀をギュッと握り、夜神の正面から面を狙いに踏み込んで、竹刀を振り下ろす。
だが、夜神は竹刀を頭上で横に構えて、その攻撃を受け止めると、そのまま上に振り上げて庵のバランスを崩させる。そして迷いなく庵の銅に竹刀を振り下ろす。すると庵は思いっ切り吹っ飛んで行ったのだ。
「クッ!!えっ!?ガッ!」
庵は、まさか飛ばされることはないよなぁ~。と思っていたことが現実に起きてしまったのだ。壁に激突はしなかったもののラインを越えて、板張りの道場に叩きつけられた
周りで指導を受けていた者も、していた者も、その一連の動きに手を止めてあ然と見ていた。
「力を込め過ぎていて、そのせいか肩にも力がこもっているから動きが鈍い。もう少し力を緩めて。あと踏み込んでからの足に力がない。だから飛ばされるの。下半身強化しないと同じことがずっと続くよ」
倒れている庵にダメ出しをする夜神の目は、いつもの微笑みはなかった。凍てつく目で庵を見る。夜神の周りだけ二・三度温度が下がったような雰囲気がある
面狙いか。相手を見るにはいい判断だろう。競技剣道ならこれは通用できる。だがここは軍だ。軍は実践重視。
生きるか死ぬかのどちらかだ。さて、次の攻撃はどんな型で攻めてくるか。競技でなく、実践的な攻撃を求めるが庵君はどう出るのか。
「いつまでも倒れてないで、早く起き上がらないと。ここに吸血鬼がいれば間違いなく殺されているよ。それでいいの?庵海斗学生」
「すっすみません!もう一度お願いします」
明らかに射撃場の夜神と剣道場の夜神は違う。なんの意図があるのかは不明だか、周りの温度が下がった。面をしていても分かる。常に微笑んでいたが、今は全く微笑みがない。あるのは無表情。その白い瞳は何かとても凍てついていた。
もう一度構えて、今度は喉元を狙って突きを繰り出す。
夜神は竹刀の鍔で受け止めて右に払う。庵の竹刀は払われた方角に流されると、夜神は通り抜けざまに、銅に下からの袈裟斬りで庵に打ち込むと、またもや庵を飛ばしたのであった。
「この先、打ち合いが出来ないと次に進めないよ。最低で五分以上の打ち合いが出来るまでは、何度でもぶっ飛ばすからね」
あえての突きか・・・形振り構わずか、それとも確実に仕留めるためか。どちらにせよ何かの固定概念を振り払っての、攻撃なら上々だ。
型も大切な基本だが、私達の相手は基本などあってなきにしもあらず。実戦重視、私達の型は生きていくための型だ。だから悪いけど、今まで学習したことは一度忘れて、新たに覚えていってほしい。
「早く立ち上がる。まだまだこれで息が上がるようなら鍛錬が足りないよ」
「はい・・・っ。もう一度お願いします」
「何度でもいらっしゃい。次はどんな構えをするの?」
そう、何度でも打ち込んで、そして飛ばされて、そのうちに長い時間の打ち合いが出来てくる。私が先生に教えてもらったやり方だ。多分他の人から見たら「鬼」と言われるだろうけど、私はこのやり方しか知らないからこのままで通させてもらう。
そして、庵は夜神に打ち込んでは、飛ばされるのを繰り返していった
素振りが早い、空気を斬る音がする。いろんな意味で逃げだしたい
けど、直ぐに庵の姿を確認した夜神は「こっち~」と、おいでおいでしながら待っている。
覚悟を決めよう!!大丈夫死ぬことはない。ただ、死ぬほど痛いだけだ。うん、痛いだけだ
防具をしっかりと着て、面をしているから、顔の表情は分からないが気配で分かる。凄く恐怖に満ちている。
私は鬼ヶ島の鬼かしら?それともなに?ちょっと、傷つくなぁー。
けど、剣を交えばその恐怖もなくなると思うのよね。負けん気があれば、次のステップに行くための糧となる。
どっちに転ぶかは私の対応しだい。ここで間違った対応をすれば、今後の全てが無駄になる。間違いは出来ない
「いらっしゃい。では、庵君の実力を見せてね。どこでも好きな所を狙って打ち込んできて頂戴。私も実戦形式で対応させてもらうね」
「はい(実戦形式!!?まさしく生きた心地がしたない)宜しくお願いします」
距離を十分に確保して構える。夜神も同じように構え、庵の動きを見ている。
覚悟を決めた庵は竹刀をギュッと握り、夜神の正面から面を狙いに踏み込んで、竹刀を振り下ろす。
だが、夜神は竹刀を頭上で横に構えて、その攻撃を受け止めると、そのまま上に振り上げて庵のバランスを崩させる。そして迷いなく庵の銅に竹刀を振り下ろす。すると庵は思いっ切り吹っ飛んで行ったのだ。
「クッ!!えっ!?ガッ!」
庵は、まさか飛ばされることはないよなぁ~。と思っていたことが現実に起きてしまったのだ。壁に激突はしなかったもののラインを越えて、板張りの道場に叩きつけられた
周りで指導を受けていた者も、していた者も、その一連の動きに手を止めてあ然と見ていた。
「力を込め過ぎていて、そのせいか肩にも力がこもっているから動きが鈍い。もう少し力を緩めて。あと踏み込んでからの足に力がない。だから飛ばされるの。下半身強化しないと同じことがずっと続くよ」
倒れている庵にダメ出しをする夜神の目は、いつもの微笑みはなかった。凍てつく目で庵を見る。夜神の周りだけ二・三度温度が下がったような雰囲気がある
面狙いか。相手を見るにはいい判断だろう。競技剣道ならこれは通用できる。だがここは軍だ。軍は実践重視。
生きるか死ぬかのどちらかだ。さて、次の攻撃はどんな型で攻めてくるか。競技でなく、実践的な攻撃を求めるが庵君はどう出るのか。
「いつまでも倒れてないで、早く起き上がらないと。ここに吸血鬼がいれば間違いなく殺されているよ。それでいいの?庵海斗学生」
「すっすみません!もう一度お願いします」
明らかに射撃場の夜神と剣道場の夜神は違う。なんの意図があるのかは不明だか、周りの温度が下がった。面をしていても分かる。常に微笑んでいたが、今は全く微笑みがない。あるのは無表情。その白い瞳は何かとても凍てついていた。
もう一度構えて、今度は喉元を狙って突きを繰り出す。
夜神は竹刀の鍔で受け止めて右に払う。庵の竹刀は払われた方角に流されると、夜神は通り抜けざまに、銅に下からの袈裟斬りで庵に打ち込むと、またもや庵を飛ばしたのであった。
「この先、打ち合いが出来ないと次に進めないよ。最低で五分以上の打ち合いが出来るまでは、何度でもぶっ飛ばすからね」
あえての突きか・・・形振り構わずか、それとも確実に仕留めるためか。どちらにせよ何かの固定概念を振り払っての、攻撃なら上々だ。
型も大切な基本だが、私達の相手は基本などあってなきにしもあらず。実戦重視、私達の型は生きていくための型だ。だから悪いけど、今まで学習したことは一度忘れて、新たに覚えていってほしい。
「早く立ち上がる。まだまだこれで息が上がるようなら鍛錬が足りないよ」
「はい・・・っ。もう一度お願いします」
「何度でもいらっしゃい。次はどんな構えをするの?」
そう、何度でも打ち込んで、そして飛ばされて、そのうちに長い時間の打ち合いが出来てくる。私が先生に教えてもらったやり方だ。多分他の人から見たら「鬼」と言われるだろうけど、私はこのやり方しか知らないからこのままで通させてもらう。
そして、庵は夜神に打ち込んでは、飛ばされるのを繰り返していった
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