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体が重い、お腹周りが痛い。少しづつ体の痛みとともに意識が戻りつつある夜神は、少し身動いでみたが、途端に両腕に痛みが走った。
地面に座っていたといえ、気絶していたのだ。
それも両腕だけでその重みを支えていたのだから、腕に相当のダメージがある。
「ゔぅっ・・・・」
そして口の違和感。猿轡をされていてるので言葉を出すことも出来ず、くぐもった声しか出せない。
更には視界を遮られているので、目隠しをされているのも分かる。
少しずつ意識が戻る中で、自分の置かれている状況を確認していく。少し遠くの方で男達のやり取りがされている。
声の反響からして広い室内だと分かるが、場所が何処なのかは見当がつかない。
話し声のする方に顔を向けるが、視界が遮られているので状況把握が難しい。
だが気配を辿ると少なくとも十人以上この場にいることが分かる。
すると突然こちらに向かって歩いてくる気配と、靴音が聞こえてくる。
「ねぇ、侯爵殿、この籠を開けてくれるかい?」
「ただちに開けさせて頂きます」
自分は檻の中にでも拘束されているようだ。話の内容からして吸血鬼共に拉致されたかもしれない。
ならば自分の置かれている状況は最悪だ。ガチャガチャと金属音をさせながら檻を開けているであろう状況に、これから起こることに少し恐怖を覚えた。
きっと、早く殺しくれ!と、叫びたくなる状況になることは承知している。もとより覚悟して自分は討伐していた。
服毒したくとも、それすら叶わなかったのだ。ならば最期は悲惨な末路をたどる以外はないのかもしれない。
覚悟を決めるが、これから自分の辿る結末に不安もある。
そんな思いをしていると、檻の扉が開いて誰かが目の前にいる。
目隠しをしているので風貌は分からないが、気配から伝わってくる。
━━━━ものすごく強い。そして畏怖すら覚える雰囲気だと。
夜神は少しだけ後ずさった。だが腕の拘束が邪魔をして余り動くことはなかった。
そして目の前の男がしゃがみ込んで、夜神の顎に手をかけると、少し持ち上げる。
夜神は大人しくされるがままになる。そうして顎の手を放すと、視界の目隠しを外すため後ろに両腕が回る。
シュルとクラバットを外すと、光に慣れていないのか、周りが明るいのか分からないが眩しさに目を閉じる。
何度か目を瞬いていくうちに、ぼんやりだった、目の前の男の姿が見えてくる。
アイスシルバーの髪に金色の瞳、右目の縦に入った傷跡。
その姿を見たときに息が止まると思った。忘れたくとも忘れられない。殺したいほど憎い吸血鬼。
母を、集落の皆を、先生を、自分から奪った憎い吸血鬼。
薄ら笑いを浮かべる顔を見た途端、夜神は自分が拘束されているのも忘れて、憎い吸血鬼をこの手で始末しようと体を動かす。
ガシャンガシャンと檻が音をたてる。夜神の手首は拘束しているベルトで擦れて血が滲んでいる。だが、痛さなど怒りで感じなかった。
「ゔっー!ゔっー!」
猿轡が邪魔をして、言葉を発する事が出来ない。
きっと何にもされてない状況なら、ひたすらに「殺す」と言っていただろう。
「凪ちゃん。そんなに動いたら血が出るよ?会えて嬉しいのかい?私は嬉しいよ」
会えて嬉しい?ふざけるな!忘れるものか!貴様が手にかけた大切な人達を!奪われた!許さない!殺す!殺す!殺す!
目の前が怒りに染まる。拘束されて満足に動かせない手首からは、滲んでいた血が一筋の線となって腕を伝う。
ルードヴィッヒはその一筋の血を見て、唇を歪めた。
「凪ちゃん、いい子だから少し眠ろうか?大丈夫だよ。怖いことなんてしないから」
そう言って夜神の両方の目を、手のひらで覆い隠す。
すると夜神は突然の眠気に襲われる。
「んっん・・・・・」
抗おうとしたが、逆らえることなど出来なくて、夜神は深い眠りについた。ガシャンと音をたてて、両腕で体の重みを支えるように、全身の力が抜けた状態になってしまって。
するとルードヴィッヒは夜神の手首から流れる血を、舌を伝わせて舐めると「くっくっくっ」と乾いた笑いをして、猿轡と手首の拘束を外していく。
そして夜神を横抱きにして檻の中から出る。
「陛下・・・・・?」
侯爵達は目の前で起こったことに、何も分からずただ、呆然と見ているだけだった。
「侯爵殿の用事はもう終わったよね?なら私は部屋に戻るよ。ああっローレンツ、侍女長を私の部屋に呼んでおいてくれるかい?凪ちゃんはこのままだと可哀想だからね。綺麗にしないと」
夜神に見せた執着的な笑いではなく、万人に受ける笑いでローレンツを見て、返事など聞かずに扉に向かう。
「陛下、部屋に戻られるんですね。侍女長には湯浴みの準備をさせてから、部屋に向かうよ指示しておきます」
「ああっ、そうしておいてくれると助かるよ。流石だねローレンツ」
振り返ることもなく、自分の用は済んだと言わんばかりの雰囲気を出す。
そうして扉が開かれるとルードヴィッヒは大事そうに抱えている、夜神を見てニッコリと笑って自分の部屋に行く。
扉が再び閉まると、残された男達は無言になったが、ローレンツはため息をして、皇帝からの指示をこなす為動き出す
「宰相殿、我々はこのまま屋敷に戻ってもいいのでしょうか?」
「侯爵殿、ええっ大丈夫です。全く、お気に入りの玩具を見つけた、子供のようになってしまっているので、これ以上ここに居ても意味はないです。屋敷にお戻りください」
「はぁ・・・・・了解しました。ではこれで失礼します」
三人は顔を見合わせて、何とか納得して広間から出て行く。
残されたローレンツは先程よりも盛大なため息をして、独り言を呟く
「あ~あっ!全く陛下も自由人だから困る!あとのフォローは全部こっちなんだからな!あー侍女長にお願いして、服も用意しないと。いや、今日は視察があった!まずい!これはまずいぞ!急いで動かなければ」
この後の予定を思い出して、ローレンツは急いで侍女長を探すため、広間を出て行く。
用意するものを頭の中に箇条書きにしていく。今日は忙しいのだ。
いくら陛下でも時間は守ってもらわなければならない。
そのためにはこちらが急ぐ必要がある。
ローレンツは廊下を走らないが、競歩並みのスピードで歩いていった。
地面に座っていたといえ、気絶していたのだ。
それも両腕だけでその重みを支えていたのだから、腕に相当のダメージがある。
「ゔぅっ・・・・」
そして口の違和感。猿轡をされていてるので言葉を出すことも出来ず、くぐもった声しか出せない。
更には視界を遮られているので、目隠しをされているのも分かる。
少しずつ意識が戻る中で、自分の置かれている状況を確認していく。少し遠くの方で男達のやり取りがされている。
声の反響からして広い室内だと分かるが、場所が何処なのかは見当がつかない。
話し声のする方に顔を向けるが、視界が遮られているので状況把握が難しい。
だが気配を辿ると少なくとも十人以上この場にいることが分かる。
すると突然こちらに向かって歩いてくる気配と、靴音が聞こえてくる。
「ねぇ、侯爵殿、この籠を開けてくれるかい?」
「ただちに開けさせて頂きます」
自分は檻の中にでも拘束されているようだ。話の内容からして吸血鬼共に拉致されたかもしれない。
ならば自分の置かれている状況は最悪だ。ガチャガチャと金属音をさせながら檻を開けているであろう状況に、これから起こることに少し恐怖を覚えた。
きっと、早く殺しくれ!と、叫びたくなる状況になることは承知している。もとより覚悟して自分は討伐していた。
服毒したくとも、それすら叶わなかったのだ。ならば最期は悲惨な末路をたどる以外はないのかもしれない。
覚悟を決めるが、これから自分の辿る結末に不安もある。
そんな思いをしていると、檻の扉が開いて誰かが目の前にいる。
目隠しをしているので風貌は分からないが、気配から伝わってくる。
━━━━ものすごく強い。そして畏怖すら覚える雰囲気だと。
夜神は少しだけ後ずさった。だが腕の拘束が邪魔をして余り動くことはなかった。
そして目の前の男がしゃがみ込んで、夜神の顎に手をかけると、少し持ち上げる。
夜神は大人しくされるがままになる。そうして顎の手を放すと、視界の目隠しを外すため後ろに両腕が回る。
シュルとクラバットを外すと、光に慣れていないのか、周りが明るいのか分からないが眩しさに目を閉じる。
何度か目を瞬いていくうちに、ぼんやりだった、目の前の男の姿が見えてくる。
アイスシルバーの髪に金色の瞳、右目の縦に入った傷跡。
その姿を見たときに息が止まると思った。忘れたくとも忘れられない。殺したいほど憎い吸血鬼。
母を、集落の皆を、先生を、自分から奪った憎い吸血鬼。
薄ら笑いを浮かべる顔を見た途端、夜神は自分が拘束されているのも忘れて、憎い吸血鬼をこの手で始末しようと体を動かす。
ガシャンガシャンと檻が音をたてる。夜神の手首は拘束しているベルトで擦れて血が滲んでいる。だが、痛さなど怒りで感じなかった。
「ゔっー!ゔっー!」
猿轡が邪魔をして、言葉を発する事が出来ない。
きっと何にもされてない状況なら、ひたすらに「殺す」と言っていただろう。
「凪ちゃん。そんなに動いたら血が出るよ?会えて嬉しいのかい?私は嬉しいよ」
会えて嬉しい?ふざけるな!忘れるものか!貴様が手にかけた大切な人達を!奪われた!許さない!殺す!殺す!殺す!
目の前が怒りに染まる。拘束されて満足に動かせない手首からは、滲んでいた血が一筋の線となって腕を伝う。
ルードヴィッヒはその一筋の血を見て、唇を歪めた。
「凪ちゃん、いい子だから少し眠ろうか?大丈夫だよ。怖いことなんてしないから」
そう言って夜神の両方の目を、手のひらで覆い隠す。
すると夜神は突然の眠気に襲われる。
「んっん・・・・・」
抗おうとしたが、逆らえることなど出来なくて、夜神は深い眠りについた。ガシャンと音をたてて、両腕で体の重みを支えるように、全身の力が抜けた状態になってしまって。
するとルードヴィッヒは夜神の手首から流れる血を、舌を伝わせて舐めると「くっくっくっ」と乾いた笑いをして、猿轡と手首の拘束を外していく。
そして夜神を横抱きにして檻の中から出る。
「陛下・・・・・?」
侯爵達は目の前で起こったことに、何も分からずただ、呆然と見ているだけだった。
「侯爵殿の用事はもう終わったよね?なら私は部屋に戻るよ。ああっローレンツ、侍女長を私の部屋に呼んでおいてくれるかい?凪ちゃんはこのままだと可哀想だからね。綺麗にしないと」
夜神に見せた執着的な笑いではなく、万人に受ける笑いでローレンツを見て、返事など聞かずに扉に向かう。
「陛下、部屋に戻られるんですね。侍女長には湯浴みの準備をさせてから、部屋に向かうよ指示しておきます」
「ああっ、そうしておいてくれると助かるよ。流石だねローレンツ」
振り返ることもなく、自分の用は済んだと言わんばかりの雰囲気を出す。
そうして扉が開かれるとルードヴィッヒは大事そうに抱えている、夜神を見てニッコリと笑って自分の部屋に行く。
扉が再び閉まると、残された男達は無言になったが、ローレンツはため息をして、皇帝からの指示をこなす為動き出す
「宰相殿、我々はこのまま屋敷に戻ってもいいのでしょうか?」
「侯爵殿、ええっ大丈夫です。全く、お気に入りの玩具を見つけた、子供のようになってしまっているので、これ以上ここに居ても意味はないです。屋敷にお戻りください」
「はぁ・・・・・了解しました。ではこれで失礼します」
三人は顔を見合わせて、何とか納得して広間から出て行く。
残されたローレンツは先程よりも盛大なため息をして、独り言を呟く
「あ~あっ!全く陛下も自由人だから困る!あとのフォローは全部こっちなんだからな!あー侍女長にお願いして、服も用意しないと。いや、今日は視察があった!まずい!これはまずいぞ!急いで動かなければ」
この後の予定を思い出して、ローレンツは急いで侍女長を探すため、広間を出て行く。
用意するものを頭の中に箇条書きにしていく。今日は忙しいのだ。
いくら陛下でも時間は守ってもらわなければならない。
そのためにはこちらが急ぐ必要がある。
ローレンツは廊下を走らないが、競歩並みのスピードで歩いていった。
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