ブラッドゲート〜月は鎖と荊に絡め取られる〜 《軍最強の女軍人は皇帝の偏愛と部下の愛に絡め縛られる》

和刀 蓮葵

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団長の案内で第二、第三格納庫や訓練をしている団員を見ていく。その度に夜神は見せられていく物の数や規模を記憶していく。
役に立つかは今のところ不明だが、自分の存在意義を確かめる手段だと自分に言い聞かせる。

訓練をする団員の所では、憎しみのこもった目線を一身に浴びたが、怯む事はなかった。相手の気持ちも分かるが、こちらも人を守るために戦っている。たとえ大事な人を失ったとなじられようと構わないからだ。

視察のため、時間は限られているが最後に団長室に連れて行かれてソファに座らされる。
何故か横に隙間なく皇帝が座り腰に手を回す。それが嫌で身動ぐが、ビクともしなくてどうしょうもなくなっていると、皇帝は団長に向かって口を開く。
「団長殿、世界地図を見せてほしいな。あの基地が載っている地図を」
「陛下!?」
「あの地図は中規模・大規模の施設だけだよね?この施設のような小規模は載ってないよね?」
「いや、まぁ━━そうですが、何故、今・・・・・」
団長は夜神を見て、しどろもどろになりながら言葉をつむぐ。団長の言いたいことは重々分かる。
部外者のそれも人間の世界の軍人で、同胞を幾人も殺した人間に、少しでも有益になりそうな情報は与えたくないのが心情だろう。夜神が逆の立場でも同じようなことをする。

「私が見たいのだよ。あと、団長殿の意見を聞きたいと思っていてね。いいだろう?」
ルードヴィッヒはニッコリして団長に笑顔を向ける。その顔にはこれ以上の否定的発言を赦さないと顔に書いてあるようだ。
団長はその笑顔を見たときに小さな声で「ヒッ!」と言ってしまっが、慌て口を閉じた。これ以上は命に関わると頭で理解したからだ。
「承知しました・・・・・」
「良かった~これで話が進むよ」
ルードヴィッヒは嬉しそうな声をする。

団長は渋々としながら普段から座っている机の後ろのカーテンをめくると、世界地図が出てくる。その地図を夜神は食い入るように見てしまった。
自分の世界地図と、この世界地図は違うのだ。知っている大陸もないし、形も違う。本当に違うのだ。
その大まかな形だけでも覚えたくて食い入るように見ていると突然、顎を掴まれてルードヴィッヒの方に顔を向ける。

「凪ちゃん、気になるのは分かるけど、そればかり見ているのはつまらないな~」
唇を歪めて、目線だけで凍えそうな程の表情を夜神に向ける。その目線で夜神は震えがきそうだった。
あまりの恐怖にルードヴィッヒから目線をそらすことが出来なかったが、ニッコリと笑って、また顎に力を込めて、地図の方に夜神の顔を向けさせる。
「ゔぅぅ・・・・・・」
「ねえ、あの赤い点々分かる?あれが中規模・大規模施設の場所のマークだよ。それに今日のような小規模施設が加わるとマークはおびただしい数になるんだよ?この施設を見て分かったと思うけど、凪ちゃんの世界はこの力に対抗出来る程の力はある?」
嬉しそうに耳元で話す皇帝の話を、何処か遠い存在のような感じで聞いていた。

夜神の知り得る情報と、この世界の軍事力を照らし合わせても差がありすぎるのだ。世界の軍事力を垣根なしで合わせても、どうなるのか想像もつかないぐらい圧倒的なのだ。
拘束されている手がドレスのスカート部分をシワになるほど握りしめて、小刻みに震えているのを夜神は気づかなかった。
だが、ルードヴィッヒだけはそれに気づいて更に追いつめていく。

「団長殿、もし私が命令をして、全勢力を持って人間の世界を蹂躙して、手中に治めるのにどれぐらいかかるだろうか?一ヶ月はかからないと思うけど?」
「何をおっしゃいます。我々が本気になればそうですね・・・・・二週間もあれば容易いでしょう。人間の軍は貴族階級を一番恐ています。貴族の皆様も参戦すれば更に早いと思いますよ!」
団長はルードヴィッヒの問いかけに対して、喜々として答えていった。
その答えに目の前の「白目の魔女」は顔色をどんどん悪くしていく。その様子に手を出すことができない鬱憤を晴らしていく。
「二週間か・・・・・うん、丁度良いかもしれないね。さて、凪ちゃん」
また、顔をルードヴィッヒに向けさせられる。
「ゔっ・・・」
顔色が悪い夜神を嬉しそうに見つめて口を開く。
「二週間、城に滞在してくれれば、ちゃんと凪ちゃんを返してあげる。その代わり滞在中、自死行為をすれば、そく、命令して蹂躙してあげるよ?自死は分かるよね!舌を噛んだり、出された食事を一回でも食べなかったら自死だからね」
ルードヴィッヒは子供のように喜んで夜神に提案をしていく。

その提案について行けず、夜神は目を見開いてルードヴィッヒを見ていることしか出来なかった。
「もちろん、脱走も禁止だよ。私は昼間は公務があるから、ずっと凪ちゃんと居れないから、話し相手として人間を四・五人用意してあげるね。けど脱走したら、まず一人、次に一時間ごとに一人と殺めてあげる。逃げれば逃げるほど、犠牲者は増えていくからね。それに耐えられるなら逃げていいよ?」

何を言っているのだろう・・・・
自死も脱走も許されない、もし、それらをしたら犠牲者が出てしまう。ただ、大人しく二週間滞在などありえない。
きっとなにかあるに決まっている。だが選択肢など無いに等しい。

ルードヴィッヒは答えを聞くために、夜神の猿轡を外す。予め「自死の禁止」を告げたのだ。愚かな行為はしないと分かっていての行動だ。
「凪ちゃんの答えを聞かせて?どうしたい?」
狂喜に満ち溢れた顔は、心の底から楽しんでいる。「はい」以外の答えはないとわかっているから、目の前の夜神が苦悶の表情でいるのが、楽しくてしょうがないと顔に書いてある。

「くっ・・・・・・分かった。二週間、自死も脱走もしないと誓うから、世界の蹂躙だけは辞めてください」
「うん、約束するよ。凪ちゃんがちゃんと守ってくれたらいいいだけだからね」
夜神の両頬を、手のひらで包み込んでルードヴィッヒは悔しそうに唇を噛む夜神を、嬉しそうに見つめて微笑んだ。
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