ブラッドゲート〜月は鎖と荊に絡め取られる〜 《軍最強の女軍人は皇帝の偏愛と部下の愛に絡め縛られる》

和刀 蓮葵

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「お待ちしておりました。陛下、本日の視察、我々一同誠心誠意ご案内させて頂きます。そちらの女性は同行者で宜しかったんですよね?ローレンツ宰相殿?」

この施設のトップ、団長は皇帝陛下の腕の中でぐったりして、何故か目隠し、拘束されている女性を不思議そうに見ながら宰相のローレンツに尋ねる。
突然の同行者の追加連絡に驚いたが、まさか人間のそれも皇帝の「スティグマ」を持っていることに更に驚いた。

「ええ、同行者で間違いないです。団長殿、本日は案内宜しくお願いしますね」
ローレンツは団長の疑問を重々承知しているが、これ以上アレコレ尋ねられる前に、こちらから切り上げる。
そうしないと色々とややこしいことになるのは承知しているからだ。
「では、初めに格納庫の案内をさせて頂きます」
「楽しみだね~凪ちゃん沢山見て良いからね」
「陛下、あまりその女性の名前は言わないほうがいいですよ」
「なんでだい?ローレンツいいじゃないか。凪ちゃんは凪ちゃんなんだから。それ以外の呼び名だと、凪ちゃんが嫌がるから言いたくないんだけどな」
「わかりましたから、少し静かにしていてください!」

団長は皇帝と宰相のやり取りを、気まずいながらも何とか気にかけずにして案内していく。背中は冷や汗で気持ち悪い。
ここで何かしらの失態をすれば、そく皇帝からの怒りをかってしまい咎をうけるのは分かっているからだ。
「足元にお気を付け下さい。段差が多いので」
安全に徹する事を最重要として案内する。つまずいてスティグマを持っている人間に何かしらの怪我があったら、責任をとらないといけないのはこちら側だからだ。

先頭になって格納庫に案内する。そして目的の場所に着くと皇帝は腕の中の女性を降ろして、その目隠しを外す。
その瞳を見たときに団長をはじめ、周りにいた幹部達は驚いた。その女性の瞳は白色だったのだ。
その色を持った人間を一人だけ知っている。人間の世界では我々の仲間を、何十人と殺め続けた「白目の魔女」と言われる日本軍の軍人だ。
だがしかし、髪の色が違うのに違和感を覚える。

「陛下、失礼を承知で尋ねても宜しいですか」
「団長殿、もしかして凪ちゃんの事を聞きたいのかい?多分凪ちゃんの瞳を見て「白目の魔女」を思い浮かんだと思うけど、間違いないよ。「白目の魔女」本人だよ」
「何故、ここに居るのですか!?」
「団長殿!!これ以上は貴方の御身が危険になります。心情は察します。ですが一旦引いてください。御身のためです」
ローレンツは団長と皇帝の間に入って、団長の視界から夜神を隠した。

団長の心情は痛いほど理解出来る。だがここで問題を起こすと、団長をはじめとするこの施設の数名を断罪しなければいけない。それは手間も時間もかかる。
「宰相殿!!・・・・・くっ、分かりました。その人間は髪が我々の知っている「白目の魔女」と異なります。なので他人とみなし案内させて頂きます。これで宜しいですか?」
奥歯をギリギリと噛み締めて、団長は精一杯の妥協案をローレンツに提案する。
ローレンツも複雑な気持ちになったが、団長が一歩引いてくれたので、こちらもその案を受け入れるしかない。
「ありがとうございます。団長殿。感謝します」
相手に対して、誠意を込めて礼をする。それをルードヴィッヒは笑顔で見ていた。勿論瞳だけは冷めた目で相手を見ている。

夜神はそのやり取りを複雑な気持ちで見ていた。
団長と言われているのだ。もしかしたら部下を失っているのかもしれない。それも目の前にいる軍の人間に。
ならば怒りをぶつけたいのに、皇帝がいるせいか手も足も出ないで、怒鳴り散らす事も出来ず、怒りを腹におさめることしか出来ないのだ。

だが、こちらも大人しくエサになるつもりはない。守るために力を使うのは当たり前のことだ。
夜神は俯いて自分に言い聞かせる。そうしないと何が正しいのか分からなくなるからだ。

「団長殿、視察に来ているのだから、色々と案内してくれるかい?楽しみにしていたのだよ。脆弱な人間に我々の力を見せつけて、絶望させるのを。どれ程の力をつけようと我々の足元にと及ばないこと、見せつける絶好の機会じゃないかい?」
ルードヴィッヒはニッコリして、後ろから夜神の顎を掴み、目の前のヘリや輸送機に顔を固定させる。
突然の行為に驚いた夜神はただ、されるがままで目の前のヘリを見るしかなかった。
「ゔっ!」
「凪ちゃん。これはほんの一部だよ。それもこの施設は小規模施設だ。大規模ならこれの数倍の規模だ。もちろん世界の、あちらこちらにあるのだから数は凄まじいよ。どうだい?」

これで小規模だと!?中規模に匹敵するほどの数ではないか!
大規模ならもっとおびただしい数があると言っているようなもの。
戦力の差を見せつけて、我々がどんなに足掻いても、その差を埋めることはないと言いたいのだろう。

夜神は動かせない顔で、瞳だけ動かして様々な所を確認する。ヘリの数や輸送機の数を。
その情報を持ち帰ることが出来るのかは分からないが、ただなにもしないよりは、気が紛れるからだ。
「団長殿。格納庫の第四と第五は視察から除外されているけど何があるのかい?」
「機密保持でお見せすることは出来ませんが、ミサイル関連だと思っていただければ」
「へ~それじゃ、見せられないね。凪ちゃん残念だったね。見てみたかった?」
「ゔっ・・・・・」
ずっと目の前の光景を見せるために、顎を固定していた指が、突然力を込めて仰がせる。その目線の先には、こちらを覗き込むようにして、笑った顔なのに金色の目だけが、冷めた様子で夜神を見ていた。

怖い・・・・・殺したいほど憎いのに、その目を見ると、足元から崩れ落ちるほど、力が入らなくなる。
何故か分からないが恐怖が芽生える。笑顔でいるはずなのに、その目だけが笑ってないことが、これほど怖いと感じるのはこの男だけかもしれない。

夜神は崩れ落ちそうにる足を何とかして踏みとどまらせて、ルードヴィッヒを睨みつける。そうでもしなければ本当に崩れ落ちそうになるからだ。
睨まれたルードヴィッヒは、薄い唇を僅かに歪めて、夜神を見下ろしたあと、何時もの顔に戻り団長に向かって話す。
「次の場所に案内してくれるかい?ここの凄さは十分分かったから」
「かしこまりました。では、次の場所に案内いたします」

団長は皇帝に促されて、次の場所に向かうため先頭にたって歩きだす。
その後を皇帝や側近、「白目の魔女」が歩く。不思議な光景に目眩がしてくるような感じがするのは気の所為ではないと思いたい団長と幹部達だった。
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