ブラッドゲート〜月は鎖と荊に絡め取られる〜 《軍最強の女軍人は皇帝の偏愛と部下の愛に絡め縛られる》

和刀 蓮葵

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閑話 イタリア共同演習 14

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演習二日目は模擬武器を使用した訓練をしていく。

銃やナイフといった一般装備を使用する。軍で採用する、銃の型は世界で違うが、基本動作や「的を狙撃する」は共通だ。

ナイフも同じで、日本刀やサーベルなど、同じ剣でも扱いが異なるものと違い、ナイフは大体が世界共通で同じ扱い方をするので、この二種類は世界の何処の軍も模擬武器として、多く作られて一般装備にされている。

その二種類を使い、イタリア軍と演習訓練していく。

屋外でイタリア軍との混合チームを作り、動く的を使用して狙撃していく。
ここで、扱う「高位クラス武器」が銃の人間は、チームから重宝される。日頃から銃の練度を上げるため、訓練を欠かさないのは、皆が知っているからだ。

「高位クラス武器」がライフルの相澤は、チームのメンバーから熱い歓迎をもらう。
『良かった!相澤少佐がチームにいてくれて。期待してます!』
声をかけてきたイタリア軍人は、同じ階級の少佐だが、腕章のラインの色が違う。赤と金では差があるのだ。その為言葉遣いが違う。
勿論、腕章がある方が少ないので、腕章を付けていることが誉でもある。

『ありがとう。期待に添えるように頑張ります』
神経質な顔で挨拶をしていく。そしてメンバーを見ると、夜神大佐と学生の庵がいることに驚いた。
「夜神大佐、庵学生。同じチームだったんだね。宜しく頼む」
「相澤少佐と同じチームなら、勝ったも同然ですね。こちらこそ宜しくお願いします」
いつもの微笑みを相澤に向けて挨拶する。隣の庵学生も軽く一礼する
「相澤少佐、よろしくお願いします。色々と勉強させて下さい」

二人を見て、相澤は少しだけ表情を和らげていく
「こちらこそ期待してるよ。そろそろ移動しないといけないね」
「本当ですね。行きましょうか。庵君。相澤少佐」
「はい」
「あぁ」
短い返事をして、三人は集合場所に向かった。

『相澤少佐はそのまま遠くの的を狙い続けて下さい』
『了解した』
インカムから指示がくる。的は左右、上下に動いていき、止まることはない。そして的じたいが、クルクルと動いているものもある。難易度も上がるが、その分得点も高い。

そして、配置場所も様々だ。小高い丘や地面、近くや遠くといった場所にあるのだ。
その為、ライフルやハンドガンといった銃を、適した形で使用する。

相澤の「韋駄天いだてん」はライフル銃の「高位クラス武器」なのでその為、模擬武器も遠距離の的を中心に、狙撃するライフル銃を使用する。

丘や遠くの的を中心に次々と狙撃していく。
その近くでは夜神がハンドガンを使用して、近くの的を狙う。夜神も次々と的を狙い、確実に撃ち込んでいく。
剣術は間違いなくトップクラスの実力だが、銃の扱いも秀でているのだから、軍最強と言われるのも頷ける。

相澤は何故ここまで強さを求め、そしてその強さを手に入れた夜神が不思議で仕方がなかった。
持って生まれた才もあるかもしれない。子供の頃から身体能力は高かったが、嵐山大佐の死を切っ掛けに、なにかに取り憑かれたように、力をつけていった。そして軍最強の称号を手に入れたのだ。

『残り時間、後五分です。皆さんギリギリまで的を狙うように!』
インカムからの指示で、相澤は考えをやめて、狙撃する事だけに集中することにした。

銃が終わるとナイフの訓練が始まる。
こちらは屋内で行われ、殺傷能力がない模造ナイフで対人訓練する。

イタリア軍対日本軍の一対一で行われる。サバイバルゲームに等しいが、そこまでの熱量はない。

夜神はナイフを持って、イタリア軍の一人と対峙する。
イタリアと日本では男女共に体格差も異なる。ましてや女性と男性でも差はある。
夜神は少し小柄な体格のため、相手と対峙する姿をパッと見たら「大丈夫だろか?」と心配してしまうほどなのだ。
だが、皆が知っている。この勝負は夜神大佐の圧勝だと。相手は気の毒だと。

先に動いたのは、イタリア軍だった。ナイフを持った手が、夜神の足に狙いを定めて突きに来る。
その手をナイフを持ってない手で内側の手首をパァーンと弾いて、相手の首と肩にそれぞれナイルを滑るように斬りつけていく。
そして、相手のナイフの持った手首を更に外側からパァーンと弾いて、自分に背中を向けるようにさせると、ナイフを持った手を相手の脇から出して、首にまとわりつけて床に叩き込む。

その動きはまるで風に舞う、花びらのように優雅なのに、全く隙なく、そして容赦もなく相手に叩き込む。
『参りました』
相手は仰向けのまま降参する。

それを聞いた夜神は、仰向けのイタリア軍人に、手を差し伸べて起き上がる手助けをする。
『こちらこそ、相手にしてくださりありがとうございます』
いつもの微笑みで相手を見る。その相手も何故か、嬉しそうにしながら話しかける。
『夜神大佐に相手にしてもらい、うれしいです。大佐はつまらなかったと思いますが・・・・』
『そんな事ないですよ?イタリア軍の皆さんとこうして、訓練出来るのは演習の醍醐味ですからね』
当たり障りのない会話を嬉しんで、夜神は相手に一礼して庵のところにいく。

七海から、演習期間はなるべく一人にならない事。式部か庵、七海の近くにいることを厳命されている。
午前と午後で入れ代わりで訓練する為、七海と式部は今は外で狙撃訓練の最中だ。
その為、同じグループの庵の近くに行かなければいけない。

その庵も丁度終わったようで、対戦結果を聞こうと思い、給水所で水を貰いに行く。
その時、何か視線を感じて振り向くと、ベルナルディ中佐が笑いながらこちらに近づいてくる。

『夜神大佐、先程のナイフ格闘素晴らしかったですね。流れるような動きは流石です』
『ベルナルディ中佐・・・ありがとうございます。中佐はどうだったのですか?』
『何とか勝ちましたよ。けど流石日本軍です。レベルが桁違いだ』

穏やかに話しているが、何かを探るような目つきになる。
夜神もいつもの微笑みを浮かべるが、いつでも逃げれるように警戒をする。
『そんな、ご謙遜を』
『ハッハハ、本当の事ですよ?それにしても夜神大佐・・・・』

ガシャーン!ジャラ!ジャラ!

ベルナルディ中佐がポケットから、金属の何かをわざと落す。

━━━━それは鎖だった。

「っう!・・・・・あ・・」
落ちた音を聞いたときから、体が微かに震えていたが、落ちた現物をみて息を呑んだ。
「夜神大佐!ここにいたんですね!探したんですよ!」
夜神の腕が突然引っ張られる。相手は庵で、夜神の向こう側の、ベルナルディ中佐を睨む。

━━━━━あれ程、気をつけていたのに何故だ?!何処から情報が漏れた?

『ベルナルディ中佐、はなんですか?ナイフ格闘では必要ないものですよね?』
『護身用だよ。この鎖だけでも相手にダメージを与えられるからね。生きていくための術だよ?そう。を与えるね?』
そう言って、ゆっくりと屈んで鎖を拾い上げるとポケットにしまい込む。

『夜神大佐?顔色が悪いですが大丈夫ですか?』
ベルナルディ中佐は心配そうに、夜神の体調を聞く。
『ありがとうございます。久しぶりに対人格闘をしたせいか、軽いめまいをおこしてしまいました。ご心配お掛けしました』

夜神はいつもの微笑みを無理やり作り、ベルナルディ中佐を見る。
それを見たベルナルディ中佐も安心して笑顔になる。
『そうですか。それなら良かった。そろそろ時間なので失礼します』
軽く一礼して夜神達のもとから去っていく。

「夜神大佐、大丈夫ですか?すみません、七海少佐からあれ程言われていたのに・・・・」
「大丈夫だよ。庵君のせいではないよ。私が未熟なのがいけない。ごめんなさい。みんなが頑張ってくれているのに・・・・こんな失態をしてしまって」

歩きながら、互いに謝る。そしてあまり、ひと目のつかない所まで行くと、ゆっくりと座り、ため息をする。
「虎次郎に言わないといけないね・・・・ベルナルディ中佐は何処まで知っているのかな?」
「わかりません。けど、明日はこれ以上に何らかの行為があるかもしれません。気をつけないといけないですね」

苦虫を噛み潰したような顔を互いにつくる。いったい何処まで知っているのか。明日はどうなるのか。
考えないといけないことが、増えていく事に遣る瀬ない気持ちになっていった。
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