ブラッドゲート〜月は鎖と荊に絡め取られる〜 《軍最強の女軍人は皇帝の偏愛と部下の愛に絡め縛られる》

和刀 蓮葵

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閑話 イタリア共同演習 16

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「その時」はすぐに来た。辺りを強い風が駆け抜けていく。それが合図だったのか、風が駆け抜けていった瞬間、二人は動いた。

刀を立てて頭の右側に寄せた、八相の構えで動く夜神と、イタリアレイピアの低い構えで、迎え討つベルナルディ中佐。

レイピアの切っ先は喉を捉え、素早く突いてくる。それを刀で弾いて、そのまま胴体に斬りかかる。
だが、ベルナルディ中佐は後に素早く移動していったので、服をかすめる程度だった。
そしてもう一度、鋭い突きをしてくる。それを胴体を薙ごうとした状態から、素早く上に上げて防御する。

鍔迫り合いになってしまった時に、ベルナルディ中佐は夜神にだけ聞こえる声で喋る
『夜神大佐は皇帝に何度抱かれたんですか?』
「っう!どうして・・・・・・ぐぅぅ・・・」
思い出したくもない出来事を言われて一瞬、力が弱まる。そのすきを逃すはずもなく、ベルナルディ中佐は蹴りを夜神の腹に入れる。

蹴りを腹に喰らい、片膝を地面に付いてしまう。ベルナルディ中佐は攻撃を受けないように、後に後退して出方を見守る。
『どこで何を聞いたのか知りませんが、女性に対して失礼ですよ。ベルナルディ中佐』
『不躾な質問でしたね。ですが「勝つ」為にはこれも致し方ないと・・・・・私も嫌ですよ。出来れば先程の「質問」はノーコメントで対応して下さい!』

低く構えて、刃を垂直にしながら夜神と会話する。夜神も腹を抱えながら、立ちあがり、もう一度八相の構えをする。
『もちろん、質問はノーコメントです。忌々しい!』
『そうしてもらえると助かります。・・・・・なる程、虎らしい作戦だ。我々は一旦退却します。まだまだ余力は残して置きたいので。それでは!』

周りの気配を察知して、ベルナルディ中佐は残っている隊員に退却命令をだす。そうしてレイピアを納めると、夜神に背中を向けて走り出す。

夜神もそれ以上は深追いすることもなく見ていると、周りから日本軍の増援が来る。
「夜神!!すまん。遅くなった。あらら~派手にやられたなぁー珍しい。相手はカルロか?」
虎次郎の発言にギロリと睨むが、言葉が出てこないので軽く頷く。

それを見ていた七海は、無精ひげを撫でながら、何かを考えているのか「う~ん」と悩んでいたが、夜神を見てニカッと笑い、親指を立ててサムズアップする。
「とりあえず、これ以上攻撃されないよう頑張れ!!」
「・・・・・はい」

何かの作戦指示かと思っていたら、まさかの精神論。
確かにこれ以上のダメージを喰らえば、持ち点が減ってしまう。それは大変まずい事は重々承知している。
己の未熟さから出たものだが、少し納得いかない。

「とりあえず、合流したから行動するぞ!この後の動きは理解してるよな?」
「分かっている。一緒に行動して、イタリア軍を見つけ次第、完膚なきまで叩きのめす!」
「叩きのめさんでいい。気絶だけでいいからな。物騒な言い方するな。びっくりする」

笑いながら夜神に、背中を向けると、槍を構えていく。
「では、行きますか」
「了解!」
二人は他の隊員を引き連れて、走っていった。


ベルナルディ中佐は焦っていた。情報を参考に色々と夜神大佐に仕掛けていった。
鎖に異常に反応したし、考えたくないが、吸血鬼の帝國の皇帝に、何度も体を遊ばれた事を示唆したら、こちらも反応した。

けど、どちらも反応はするが、いつの間に普段の夜神に戻っいる。こちらが畳み掛ける隙を与えない。
歯痒い思いだけが募る。本当ならペイント弾や蹴り以外にも、攻撃を仕掛けて持ち点を減らす予定だったが、狂ってしまった。

『流石は軍最強。手強い相手ですよ・・・・・けど、勝者になるのは私だ!!』
ベルナルディ中佐はグッと拳を作り、走っていく。

すると、突然銃声が聞こえる。
『何事だ!!』
『分かりません!何処からか狙撃されてます!』
『何!?もしや相澤少佐か?』
ベルナルディ中佐は狙撃手の相澤少佐を思い出す。

日本軍でもトップクラスの腕前を持つ狙撃手で、猛禽類の様に狙った獲物は逃さない事から「ファルコン」と異名で呼ばれることもある。

その狙撃手がいく手を阻むように、次々と銃弾を降らせていく。何処から狙われているのか検討がつかない中をベルナルディ中佐は辺りを見て、銃弾の撃ち込まれる角度を見て考える。

だが、その考える暇さえ与えないように次の攻撃が来る。
『ベルナルディ中佐!覚悟して下さい!!』
『君は・・・・・夜神大佐の学生か?』
突然の攻撃だったが、躱せる余裕はある攻撃は、ベルナルディ中佐にとっては容易いものであった。

その攻撃をしてきた相手は、夜神大佐が教育係をしている学生で「庵君」と呼ばれていたこと思い出す。
『学生相手に舐められたものだ。それとも志願したのかな?うん?』

━━━余裕

その言葉が当てはまるほどの言葉と態度に、庵をはじめとする学生達は憤りを覚えた。

庵達学生は、相澤少佐率いる援護射撃班のバックアップでこの場を通るイタリア軍の部隊を対処するように七海少佐に言われている。
まさかその相手が、ベルナルディ中佐率いる部隊だとは露程もつゆほども思わなかったが・・・・

『確かに学生と中佐では、実力不足です。ですが俺は貴方だけには負けたくない!』
『・・・・・初日の挨拶で夜神大佐にチークキスした時に、射殺さんとした視線を向けてたね?君にとって夜神大佐は何なんだい?』

帝國に拉致されたと聞いた時はショックだった。そしてどんなに力をつけても、吸血鬼に勝てないのかと思ってしまった。

それからしばらくして、帰って来たと聞いた時は、嬉しかった。また、夜神大佐に会うことが出来る。

あの不思議な瞳で見られただけで、心が踊りだす。
私と話をしていると、どんどん不機嫌になっていくが、そんな態度も可愛らしいものだ。
きっとそれは、私にだけ見せる態度だと思うと、周りから捻くれていると言われようが、それは特別な感情などと思ってしまう。自分でも重症だと自覚している。

たが、見てしまったのだ。あの夜神大佐が、この庵学生にだけ見せる表情や態度が、周りの人間に対応する「夜神大佐」ではなく「夜神凪」と、一人の女性になっていたのだ。

それは「嫉妬」や「妬み」といった感情が、この学生に対して思い浮かぶ言葉だと思う。

刀を抜いて、こちらに向かってくる庵を、鍔迫り合いで対応する。この方が互いに会話する事が出来るからだ。
『大佐は俺にとって「守らなきゃいけない女性」です。だから中佐からも守らないといけない』
『なる程、分かったよ。けど、君の実力は「守る」には程遠い。「守られている」と自覚はしているかい?』

一度、互いに後方に飛んで、剣を構えるともう一度、刀と剣が交差する。
『自覚はしている。その為に少しでも同じ土俵に立とうと、努力している。後期のテストで結果を出さないといけない。もちろんこの演習も含まれている。だから、ベルナルディ中佐に勝たないといけない!!』

庵はベルナルディ中佐の目を見て言い切る。
ベルナルディ中佐もその宣言に、目を見開いたが、すぐに目を細めて笑みを浮かべる。
『ならば、見せてみろ!庵学生!!』
『望むところだ!!』

互いに叫んで、一旦距離を置く。次の一撃で決着をつけるために、庵は正眼の構えで、ベルナルディ中佐はイタリアレイピアの低く、剣は水平にして構える。
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