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刀を握る力を少し強めながら、相手の様子を見る。その時、突然、吸血鬼が口を開く
「おい、餌・・・・・騎士団の訓練場で皇帝陛下と剣で勝負していたなかったか?」
「人違いだ!」
鍔迫り合いの中、顔をまじまじと見られ投げかけられた言葉に動悸が激しくなる。
あの勝負の時にいた騎士達の一人が今、目の前にいる。
帝國にいた時の記憶は消したいが消せない。それは死ぬまで続くと理解している。けど、出来るなら思い出したくない。
鍔同士がぶつかる中を夜神は回避して、庵に討伐させるため反撃にでる。
相手の力を利用してこちらに押してこようとする一瞬に、両手から片手持ちに変えて、吸血鬼が両手で持っている腕の輪の中に、柄を滑らせるように逆さに入れ込む。
剣先を地面に、柄を天にして構えると刀の棟に手を置いて押し上げるように力を加える。
すると、吸血鬼の脇に蒼月の刃がめり込み、片腕を落とすギリギリの所まで斬り込み地面に膝をつかせる。
辺りには脇から流れた血飛沫が、地面の土を赤黒く染める。
「貴様━━━っ!!」「庵伍長!!!」
二人の叫びが重なる中を庵は駆け出す。
夜神大佐が作ったチャンスを逃すまいと懸命に見ていた。
いつでも合図が来たら走り出せるようにしていた。
そして、その合図がとうとう出された。
鍔迫り合いから一瞬で吸血鬼の脇に刀を潜り込ませて、斬り上げる。その動きについていけなかったが、気がついたら脇からの血を流して、地面に片膝をついていた。
刀を構えたまま走り出し、地面に膝をついている吸血鬼の前で止まる。
刀を立てて頭の右側に寄せる八相の構えから刀を振り下ろす
「はぁぁぁ━━━━っ!!」
だが、剣を持っていたもう片方の腕を上げて、庵の一撃をいなすと、後方に素早く移動して剣を構え直す。
「餌風情がぁぁぁっ!!騎士である私の腕を!!この代償は貴様らの命も持って償えぇぇぇ━━━!!!」
片手で剣を構えながら突進してくる吸血鬼の鬼気迫る迫力に一瞬怯んでしまったが、自分にも負けられないものがある。
「負けてたまるかぁぁぁ━━━っ!!」
剣と刀の刃を打ち付けながら互に攻撃したり、受け止めたりする。
いくら手負いとはいえ、身体能力は人間の倍ある吸血鬼と高位クラス武器の恩恵で身体能力が向上している庵でも、圧倒な「差」がある。
その「差」を埋めるのは生き残りたいと言う「生の執着」だろう。技術も技もいらない。心一つで決まるこの「執着」が明暗を分ける。
相手の剣を受け止めると、庵は相手の首元を掴むと地面に叩きつけるように膝をつかせる。
そうして、もう一度、しっかりと構えて白い柄を掴み刀を振り上げる。
「百花、香り立て!澌尽灰滅っ!!」
一段と花の匂いが強まり、花弁が舞う中を吸血鬼の首めがけて、太陽の光で反射して煌めく刀を振り下ろす。
幾ら、致命傷を負っていても逃げられてしまったら意味がない。折角ここまでお膳立てをしてくれた夜神大佐にも、自分のために様々な訓練に付き合ってくれた中佐達にも申し訳ない。
この一瞬、この一太刀に、全身全霊を込めて振り下ろす!!
「ぐぁぁ・・・・・」
見上げるようにしていた吸血鬼の首に、薔薇色の刀身がめり込み一文字で横に薙ぐ。
吸血鬼の首は胴体から離れ、宙を舞って血飛沫を撒き散らせ、地面に鈍い音をたてながら落ちていく。
「はぁーはぁーはぁ━━」
斬りつけたままの体勢で、荒い息を出して何とかして整えようとする。けど、思えば思うほど体が固まってしまい動けなくなる。
庵が駆けてくると同時に吸血鬼から離れた夜神は、庵の一挙手一投足を見ていた。
吸血鬼が反撃に出た時は、一瞬ドキッとした。庵と過去の自分を重ねて見てしまった。
そして、自分は今も残る傷を背中に受けた。
庵君には何事もなく、無事に討伐任務をして欲しい。その事だけだった。
そして、高位クラス武器を使いこなし、無事に討伐出来た瞬間に安堵した。
きっとそれは遠くから見ていた、虎次郎も同じ気持ちだったかもしれない。
視線は感じていたが、こちらの出方を様子見するだけで、特に何もなかった。万が一の事を考えて武器を構えているだけだった。
自分の刀を納刀する。今から行う行為には少し邪魔になる為だ。
夜神は動けないでいる庵の側まで来ると、白い柄を握り締めたままの手にそっと自分の手を添える。そうして、庵の顔を見ていつもと変わらない微笑みを向ける。
「庵君・・・・・もう大丈夫だよ?任務は無事に終わったよ、頑張ったね。澌尽灰滅も頑張ったね。二人とも本当に凄いよ」
柄から指を一つ一つ外していく。全てを外して片手で澌尽灰滅を持ち、もう片手は庵の肩を軽く叩く。
「もう、大丈夫だよ」
「・・・・・は、い・・・」
動けない自分の肩に、重みと温かみがくる。その重みと温かみが、固まってしまった自分の体を動かしてくれる。
返事をするのも詰まってしまい、まともに返事も出来なかった。
それでも、いつもと変わらない微笑みを向けてくる夜神大佐に心から安堵してしまう。
「怪我がなくて良かった。頑張ったね」
そう笑いながら澌尽灰滅を渡してくれる。慣れてきた重みを受け取るとぎこちないながらも何とか納刀する。
「大佐のおかげです」
「討伐は部隊で動くからね。とくに高位クラスは・・・・私達の隊はまだ二人だけど」
クスクスと笑いながら話してくる姿に、何故かおかしくなって庵もつられて笑い出す
「そうですね。まだ、自分だけですし・・・・」
二人で笑っていると、遠くから声が聞こえてくる
「お~~い!いつまで固まってるんだ?こんな所すぐに離脱するぞ!!」
七海中佐の呼び声が聞こえてくる。
「分かった~~今行く~~!!庵君!帰ろう。そして長谷部室長に報告しなきゃね?」
笑って手を差し伸べてくる夜神の手を掴むと、二人は七海中佐がいる所まで歩き出した。
「おい、餌・・・・・騎士団の訓練場で皇帝陛下と剣で勝負していたなかったか?」
「人違いだ!」
鍔迫り合いの中、顔をまじまじと見られ投げかけられた言葉に動悸が激しくなる。
あの勝負の時にいた騎士達の一人が今、目の前にいる。
帝國にいた時の記憶は消したいが消せない。それは死ぬまで続くと理解している。けど、出来るなら思い出したくない。
鍔同士がぶつかる中を夜神は回避して、庵に討伐させるため反撃にでる。
相手の力を利用してこちらに押してこようとする一瞬に、両手から片手持ちに変えて、吸血鬼が両手で持っている腕の輪の中に、柄を滑らせるように逆さに入れ込む。
剣先を地面に、柄を天にして構えると刀の棟に手を置いて押し上げるように力を加える。
すると、吸血鬼の脇に蒼月の刃がめり込み、片腕を落とすギリギリの所まで斬り込み地面に膝をつかせる。
辺りには脇から流れた血飛沫が、地面の土を赤黒く染める。
「貴様━━━っ!!」「庵伍長!!!」
二人の叫びが重なる中を庵は駆け出す。
夜神大佐が作ったチャンスを逃すまいと懸命に見ていた。
いつでも合図が来たら走り出せるようにしていた。
そして、その合図がとうとう出された。
鍔迫り合いから一瞬で吸血鬼の脇に刀を潜り込ませて、斬り上げる。その動きについていけなかったが、気がついたら脇からの血を流して、地面に片膝をついていた。
刀を構えたまま走り出し、地面に膝をついている吸血鬼の前で止まる。
刀を立てて頭の右側に寄せる八相の構えから刀を振り下ろす
「はぁぁぁ━━━━っ!!」
だが、剣を持っていたもう片方の腕を上げて、庵の一撃をいなすと、後方に素早く移動して剣を構え直す。
「餌風情がぁぁぁっ!!騎士である私の腕を!!この代償は貴様らの命も持って償えぇぇぇ━━━!!!」
片手で剣を構えながら突進してくる吸血鬼の鬼気迫る迫力に一瞬怯んでしまったが、自分にも負けられないものがある。
「負けてたまるかぁぁぁ━━━っ!!」
剣と刀の刃を打ち付けながら互に攻撃したり、受け止めたりする。
いくら手負いとはいえ、身体能力は人間の倍ある吸血鬼と高位クラス武器の恩恵で身体能力が向上している庵でも、圧倒な「差」がある。
その「差」を埋めるのは生き残りたいと言う「生の執着」だろう。技術も技もいらない。心一つで決まるこの「執着」が明暗を分ける。
相手の剣を受け止めると、庵は相手の首元を掴むと地面に叩きつけるように膝をつかせる。
そうして、もう一度、しっかりと構えて白い柄を掴み刀を振り上げる。
「百花、香り立て!澌尽灰滅っ!!」
一段と花の匂いが強まり、花弁が舞う中を吸血鬼の首めがけて、太陽の光で反射して煌めく刀を振り下ろす。
幾ら、致命傷を負っていても逃げられてしまったら意味がない。折角ここまでお膳立てをしてくれた夜神大佐にも、自分のために様々な訓練に付き合ってくれた中佐達にも申し訳ない。
この一瞬、この一太刀に、全身全霊を込めて振り下ろす!!
「ぐぁぁ・・・・・」
見上げるようにしていた吸血鬼の首に、薔薇色の刀身がめり込み一文字で横に薙ぐ。
吸血鬼の首は胴体から離れ、宙を舞って血飛沫を撒き散らせ、地面に鈍い音をたてながら落ちていく。
「はぁーはぁーはぁ━━」
斬りつけたままの体勢で、荒い息を出して何とかして整えようとする。けど、思えば思うほど体が固まってしまい動けなくなる。
庵が駆けてくると同時に吸血鬼から離れた夜神は、庵の一挙手一投足を見ていた。
吸血鬼が反撃に出た時は、一瞬ドキッとした。庵と過去の自分を重ねて見てしまった。
そして、自分は今も残る傷を背中に受けた。
庵君には何事もなく、無事に討伐任務をして欲しい。その事だけだった。
そして、高位クラス武器を使いこなし、無事に討伐出来た瞬間に安堵した。
きっとそれは遠くから見ていた、虎次郎も同じ気持ちだったかもしれない。
視線は感じていたが、こちらの出方を様子見するだけで、特に何もなかった。万が一の事を考えて武器を構えているだけだった。
自分の刀を納刀する。今から行う行為には少し邪魔になる為だ。
夜神は動けないでいる庵の側まで来ると、白い柄を握り締めたままの手にそっと自分の手を添える。そうして、庵の顔を見ていつもと変わらない微笑みを向ける。
「庵君・・・・・もう大丈夫だよ?任務は無事に終わったよ、頑張ったね。澌尽灰滅も頑張ったね。二人とも本当に凄いよ」
柄から指を一つ一つ外していく。全てを外して片手で澌尽灰滅を持ち、もう片手は庵の肩を軽く叩く。
「もう、大丈夫だよ」
「・・・・・は、い・・・」
動けない自分の肩に、重みと温かみがくる。その重みと温かみが、固まってしまった自分の体を動かしてくれる。
返事をするのも詰まってしまい、まともに返事も出来なかった。
それでも、いつもと変わらない微笑みを向けてくる夜神大佐に心から安堵してしまう。
「怪我がなくて良かった。頑張ったね」
そう笑いながら澌尽灰滅を渡してくれる。慣れてきた重みを受け取るとぎこちないながらも何とか納刀する。
「大佐のおかげです」
「討伐は部隊で動くからね。とくに高位クラスは・・・・私達の隊はまだ二人だけど」
クスクスと笑いながら話してくる姿に、何故かおかしくなって庵もつられて笑い出す
「そうですね。まだ、自分だけですし・・・・」
二人で笑っていると、遠くから声が聞こえてくる
「お~~い!いつまで固まってるんだ?こんな所すぐに離脱するぞ!!」
七海中佐の呼び声が聞こえてくる。
「分かった~~今行く~~!!庵君!帰ろう。そして長谷部室長に報告しなきゃね?」
笑って手を差し伸べてくる夜神の手を掴むと、二人は七海中佐がいる所まで歩き出した。
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