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「そこに座ってないで早く空いてる所に座り給え。無駄な時間を過ごす気はないよ?庵海斗?」
ルードヴィッヒは冷めた声を庵に投げかける。
もとはと言えば、ルードヴィッヒのせいなのに責任転換もいいところだ。
けど、結局は何も言い返すことが出来ない夜神と庵は無言になってしまう。
庵は何とかして立ち上がると、夜神の真向かいにあるソファに座る。
庵が座るのを確認してルードヴィッヒは楽しげに口を開く。
「初めようか?」
牙を見せ、唇を歪ませ、何かを楽しむ声色をさせ、この、異常な雰囲気のお茶会を始める挨拶をした。
夜神は何も言えず、事の成り行きを見守るしかない立場に苛立ちを覚える。
けど、そこで口を挟み皇帝の気分を害したら待っているのは庵の「死」だ。
そこだけは避けたい夜神は、皇帝が腰に手を回そうと、じっと耐えるしかなかった。
「凪ちゃん?紅茶をどうぞ?砂糖とミルク入った甘い紅茶だよ?凪ちゃんは甘いモノは好きだもんね?」
目の前に用意されていた紅茶を、ソーサーごと持ち上げて皇帝は夜神に渡す。
いつの間にか「甘いもの好き」に仕立てられていることには些か不愉快だが、ここで無意味な争いは避けたい夜神は、黙って受け取ると一口だけ啜る。
「・・・・・・」
「緊張してるのかな?大丈夫だよ。何にもしないよ?今のところはね?・・・・・・・・さて、今回のお茶会は我々のご先祖様の事についてのお茶会なんだよ。凪ちゃんが眠っている間に、そこの庵海斗には帝國の成り立ち、アベルとカイン、そして、ルルワの事、扉の事を話した。凪ちゃんのご先祖様が「ブラッドゲート」を生み出して、自分達の世界に恐怖を産み付けた話をしたら、驚愕と言った表情をしていたよ?見せたかったなぁ~」
皇帝の言葉に、夜神は持っているカップを落としてしまった。
幸い、絨毯に落ちてしまったので夜神は汚れる事はなかった。
「ぁ・・・・・あ・・・・」
顔を真っ青にして、震えだす夜神にルードヴィッヒは愉悦の表情を向けながら、腰に回した手を引き寄せ己の体に密着させる。
夜神にとって、タブーになりつつある言葉をルードヴィッヒは敢えて選ぶ。そうして、夜神の反応を見て楽しんでいるのだ。
再び壊すと宣言したのだ。なら、そこに繋がりそうなことは徹底的にしていく。
無意識に震える手は自分の胸辺りの布を掴み、何とかして耐えようとしている。
その様子を見た庵は口を挟まずにはいられなかった。
「大丈夫です。凪さん。凪さんは何もしていない。全てはご先祖様・・・・・ルルワがした事です。落ち着いて・・・・・」
「綺麗事を言っているが、先祖の罪は子孫が償わないといけない。私はそうして呪を受けたのだ。凪ちゃんだけが、貴様だけが免れると思うな」
庵が慰めの言葉を言えば、それに被さるように非難の言葉を投げかける。
ルードヴィッヒと庵の静かな攻防戦を、夜神は見守るしかなかった。
けど、庵の慰めの言葉で少しだけだが、体の震えは治まる。
その様子に若干の苛立ちを覚えたルードヴィッヒだったが、このままでは埒が明かないと話の内容を切り替える。
「まぁ、いいよ。我々は帝國での出来事は共有していることになる。だが、扉の向こう側に行ったルルワとアベルについては庵海斗しか分からない。だから、包み隠さず話せ。何があったのか。代々家に伝わる書物を見たのだろう?なら、話せ」
ルードヴィッヒの鋭い眼光が、庵を射抜くように見つめる。
嘘偽りなど許さないと、雰囲気が物語る。
「はじめに言わせてもらう。文献は全部解読したが、昔のものだ。ページの欠落で内容や時系列が噛み合わないものもある。そして、質問されても俺は答えられない」
庵はルードヴィッヒの顔を見て話す。
ページが欠落しているのは本当だし、書いた本人ではないので、その内容に説明を求められても答えられない。
はじめから断りを入れとかないと、自分や夜神の身の安全を確保出来ない。
「あぁ、分かった。では、早速話せ」
皇帝は鼻で笑って、庵の訴えを受け入れた。
「・・・・・・処刑される前日にルルワが来て、二つの鍵をアベルに渡した。扉を鍵で開けたら、必ず鍵をかけて欲しいと願いを託して消えていったそうだ。アベルは何とかして逃げ出しルルワの言っていた扉を開いて、約束通り鍵をかけた」
庵の静かな、話の内容を思い出すようにゆっくりと話していくのを夜神は凝視する。
それはルードヴィッヒも同じだった。自分の知らない扉の向こう側の事。どうして王弟は生き延びたのか・・・・・ルルワはどうなったなか?夜神との関連性も全てを引っくるめて気になっていた。
「自分達の住人と違い、この世界の住人は脆く、短命でそして、自分達の食料である血を保有している。もし、仮に、自分達の世界の住人がこの世界に来たら脅威だと感じた。アベルを殺そうと躍起になっていたカインが、この世界にやって来たらとんでもない事になってしまう。だからアベルは、先にこの世界に来ているであろう、ルルワを見つける旅に出ながらある組織を作っていった」
「・・・・・まさか?」
そこで、夜神がぽっりと呟いてしまう。知っている組織のマークには薔薇が描かれている。
薔薇は帝國の象徴で国旗にも描かれている。
そして、ある軍の旗にも描かれている。旗の絵柄は世界共通で、その旗を有している組織は・・・・・
「私達の軍を造っていったの?」
「俄には信じがたいが、ご先祖様の話が本当なら創設者なる。そして、意思のある武器「高位クラス武器」を始祖の力で生み出した。そうしてアベルは各地に組織の拠点と武器を残しながらルルワを探す旅にでる」
この事が本当なら、とてつもない時間と労力を注いだのだろう。いつ来るか、或いは来ないかしれない「その日」の為にアベルは責任を感じ、自分達が逃げ込んだ世界の住人を守るために必死になったのだ。
「質問だが、アベルは一人だけ逃げたのか?或いは自分の側近達と一緒に逃げたのか?」
ルードヴィッヒは大人しく聞いていたが、ここで口を開く。
「何も書いてなかったので分からない。ただ、文献には「仲間達」と書いていた。その「仲間達」が側近なのか、人間なのかは分からない」
庵は思い出しながらルードヴィッヒの質問に答える。確かに「仲間達」の文言はあったが、その「仲間達」がどちらを指すのかは不明だ。読み進めても結局は分からなかった。
「そうか・・・・・話を進めてくれ」
ルードヴィッヒは夜神の腰に置いていた手に力を込めて自分の体に押し付ける。
「っぅ・・・・・」
夜神は若干顔を歪めたが、拒否反応は出さないように心掛けた。一々話の中断は避けたい。
「ルルワを見つけたのはそれから数年後だった。ある村だった。言い伝えでは平家の落人の村だと言われている村だ。そこには白い髪の巫女がいて、月を見ながら天変地異や稲作の収穫、飢饉を占うと言われていた。ルルワの特徴を持った人物を、確かめるためアベルはその村に行った」
源平合戦の落人
白い髪の巫女
月を見て吉凶を占う
そのどれも特徴ある言葉は夜神の集落でも言い伝えられていた。その巫女の血筋だけが持つ白い髪は夜神のご先祖様・・・・・巫女の正体に夜神は確信した。その巫女こそルルワだと。
「巫女はルルワ本人だったのね」
「・・・・・・そうです。ルルワでした。けど、始祖の力である扉、「ブラッドゲート」を生み出したので記憶も無く、寿命も人間と同じ、或いはそれ以下だったようです。アベルは絶望しました。自分を愛してくれて、命をかけて逃がしてくれた人は記憶も寿命も無くし、あろう事か人間の村の男と子をなしていたのですから」
だからだ。夜神を見ていると「逃がしたくない」「忘れさせたくない」「離さない」と、どす暗い感情が溢れ出す。
愛し合う行為をした時には、その気持ちが顕著に現れる。誰かに口説かれている時は嫉妬で可笑しくなりそうになる。
自分も皇帝と同じで、アベルの「呪」を受けている子孫なんだろう。
「けど、そこで恨み辛みを言っても全てが変わらない事ぐらい承知していたアベルは、一本の簪を贈ります・・・・・・凪さんが持っていた「月桜」です。そして、アベルはルルワの前から姿を消しました。二度とルルワ達の前には姿を現さなかったそうです」
「高位クラス武器」の「月桜」・・・・・・
この簪は仕込み簪で、ある一定条件でないと鞘が抜けない仕組みになっている。
夜神でさえ知らないその条件とは「カインかアベルの前だけ、又は、その血を有するもの」
条件を知らない夜神は何度か、吸血鬼の前で簪の鞘を抜こうとしたが、張り付いているのか、簪と鞘が一体になっているぐらいビクともしなかった。最後は諦めて「蒼月・紅月・黒揚羽」のどれかの力を借りていた。
「「月桜」は私の家に代々伝わる家宝として、大事に受け継がれていたの。私が軍の養護施設に行く時に持っていった。先生も「月桜」が「高位クラス武器」だと分かっていたけど、ただの簪だったから届けをしなくて私がずっと持っていた」
武器のようで武器にならない簪。軍もそこまで気に留めることなく、許可出していたのには驚くがかえってそれでよかった。
「「月桜」は不思議で吸血鬼の前では鞘は一度も抜けなかった。けど、初めて抜き身の簪になった事を覚えている。それは「スクランブル交差点襲撃事件」で二度目の皇帝に会った時・・・・・」
思い出したくもない。そこで、私は大切な人を失った・・・・・私を地獄から救ってくれた。不器用ながら一生懸命に幼い私を育て、剣を教えてくれた。
大切な恩人で恩師。そして、血は繋がらないが、それ以上の繋がりがあった父親。
夜神の沈黙が辺りを支配する。何かを耐えるように、胸元を掴んでいる手は震えている。
庵はその場にはいなかったが、七海中佐達の会話を聞いているだけに押し黙る。
「その、簪が剣になったのは私がいたからかな?だから、その簪で私の顔に傷を付けたのかな?」
ルードヴィッヒの冷めた声で二人は顔を上げて、ルードヴィッヒの顔を見る。
愉悦した金色の目
その、目を傷つけようと右目に縦に走った刀傷を撫でながらルードヴィッヒは笑った
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
青年のご先祖様は軍の創始者でした。なら庵は坊っちゃん?
大佐の集落の事、そして、「月桜」が、代々家に伝わる事の理由は解明されたと思います。
話にも「月桜」は代々家に受け継がれる簪と、出てきてましたが、どの場面だったか覚えてますか?伏線回収出来て一安心です。
まだまだ、三人の会話は続きます。引き続き楽しんで下さい
ルードヴィッヒは冷めた声を庵に投げかける。
もとはと言えば、ルードヴィッヒのせいなのに責任転換もいいところだ。
けど、結局は何も言い返すことが出来ない夜神と庵は無言になってしまう。
庵は何とかして立ち上がると、夜神の真向かいにあるソファに座る。
庵が座るのを確認してルードヴィッヒは楽しげに口を開く。
「初めようか?」
牙を見せ、唇を歪ませ、何かを楽しむ声色をさせ、この、異常な雰囲気のお茶会を始める挨拶をした。
夜神は何も言えず、事の成り行きを見守るしかない立場に苛立ちを覚える。
けど、そこで口を挟み皇帝の気分を害したら待っているのは庵の「死」だ。
そこだけは避けたい夜神は、皇帝が腰に手を回そうと、じっと耐えるしかなかった。
「凪ちゃん?紅茶をどうぞ?砂糖とミルク入った甘い紅茶だよ?凪ちゃんは甘いモノは好きだもんね?」
目の前に用意されていた紅茶を、ソーサーごと持ち上げて皇帝は夜神に渡す。
いつの間にか「甘いもの好き」に仕立てられていることには些か不愉快だが、ここで無意味な争いは避けたい夜神は、黙って受け取ると一口だけ啜る。
「・・・・・・」
「緊張してるのかな?大丈夫だよ。何にもしないよ?今のところはね?・・・・・・・・さて、今回のお茶会は我々のご先祖様の事についてのお茶会なんだよ。凪ちゃんが眠っている間に、そこの庵海斗には帝國の成り立ち、アベルとカイン、そして、ルルワの事、扉の事を話した。凪ちゃんのご先祖様が「ブラッドゲート」を生み出して、自分達の世界に恐怖を産み付けた話をしたら、驚愕と言った表情をしていたよ?見せたかったなぁ~」
皇帝の言葉に、夜神は持っているカップを落としてしまった。
幸い、絨毯に落ちてしまったので夜神は汚れる事はなかった。
「ぁ・・・・・あ・・・・」
顔を真っ青にして、震えだす夜神にルードヴィッヒは愉悦の表情を向けながら、腰に回した手を引き寄せ己の体に密着させる。
夜神にとって、タブーになりつつある言葉をルードヴィッヒは敢えて選ぶ。そうして、夜神の反応を見て楽しんでいるのだ。
再び壊すと宣言したのだ。なら、そこに繋がりそうなことは徹底的にしていく。
無意識に震える手は自分の胸辺りの布を掴み、何とかして耐えようとしている。
その様子を見た庵は口を挟まずにはいられなかった。
「大丈夫です。凪さん。凪さんは何もしていない。全てはご先祖様・・・・・ルルワがした事です。落ち着いて・・・・・」
「綺麗事を言っているが、先祖の罪は子孫が償わないといけない。私はそうして呪を受けたのだ。凪ちゃんだけが、貴様だけが免れると思うな」
庵が慰めの言葉を言えば、それに被さるように非難の言葉を投げかける。
ルードヴィッヒと庵の静かな攻防戦を、夜神は見守るしかなかった。
けど、庵の慰めの言葉で少しだけだが、体の震えは治まる。
その様子に若干の苛立ちを覚えたルードヴィッヒだったが、このままでは埒が明かないと話の内容を切り替える。
「まぁ、いいよ。我々は帝國での出来事は共有していることになる。だが、扉の向こう側に行ったルルワとアベルについては庵海斗しか分からない。だから、包み隠さず話せ。何があったのか。代々家に伝わる書物を見たのだろう?なら、話せ」
ルードヴィッヒの鋭い眼光が、庵を射抜くように見つめる。
嘘偽りなど許さないと、雰囲気が物語る。
「はじめに言わせてもらう。文献は全部解読したが、昔のものだ。ページの欠落で内容や時系列が噛み合わないものもある。そして、質問されても俺は答えられない」
庵はルードヴィッヒの顔を見て話す。
ページが欠落しているのは本当だし、書いた本人ではないので、その内容に説明を求められても答えられない。
はじめから断りを入れとかないと、自分や夜神の身の安全を確保出来ない。
「あぁ、分かった。では、早速話せ」
皇帝は鼻で笑って、庵の訴えを受け入れた。
「・・・・・・処刑される前日にルルワが来て、二つの鍵をアベルに渡した。扉を鍵で開けたら、必ず鍵をかけて欲しいと願いを託して消えていったそうだ。アベルは何とかして逃げ出しルルワの言っていた扉を開いて、約束通り鍵をかけた」
庵の静かな、話の内容を思い出すようにゆっくりと話していくのを夜神は凝視する。
それはルードヴィッヒも同じだった。自分の知らない扉の向こう側の事。どうして王弟は生き延びたのか・・・・・ルルワはどうなったなか?夜神との関連性も全てを引っくるめて気になっていた。
「自分達の住人と違い、この世界の住人は脆く、短命でそして、自分達の食料である血を保有している。もし、仮に、自分達の世界の住人がこの世界に来たら脅威だと感じた。アベルを殺そうと躍起になっていたカインが、この世界にやって来たらとんでもない事になってしまう。だからアベルは、先にこの世界に来ているであろう、ルルワを見つける旅に出ながらある組織を作っていった」
「・・・・・まさか?」
そこで、夜神がぽっりと呟いてしまう。知っている組織のマークには薔薇が描かれている。
薔薇は帝國の象徴で国旗にも描かれている。
そして、ある軍の旗にも描かれている。旗の絵柄は世界共通で、その旗を有している組織は・・・・・
「私達の軍を造っていったの?」
「俄には信じがたいが、ご先祖様の話が本当なら創設者なる。そして、意思のある武器「高位クラス武器」を始祖の力で生み出した。そうしてアベルは各地に組織の拠点と武器を残しながらルルワを探す旅にでる」
この事が本当なら、とてつもない時間と労力を注いだのだろう。いつ来るか、或いは来ないかしれない「その日」の為にアベルは責任を感じ、自分達が逃げ込んだ世界の住人を守るために必死になったのだ。
「質問だが、アベルは一人だけ逃げたのか?或いは自分の側近達と一緒に逃げたのか?」
ルードヴィッヒは大人しく聞いていたが、ここで口を開く。
「何も書いてなかったので分からない。ただ、文献には「仲間達」と書いていた。その「仲間達」が側近なのか、人間なのかは分からない」
庵は思い出しながらルードヴィッヒの質問に答える。確かに「仲間達」の文言はあったが、その「仲間達」がどちらを指すのかは不明だ。読み進めても結局は分からなかった。
「そうか・・・・・話を進めてくれ」
ルードヴィッヒは夜神の腰に置いていた手に力を込めて自分の体に押し付ける。
「っぅ・・・・・」
夜神は若干顔を歪めたが、拒否反応は出さないように心掛けた。一々話の中断は避けたい。
「ルルワを見つけたのはそれから数年後だった。ある村だった。言い伝えでは平家の落人の村だと言われている村だ。そこには白い髪の巫女がいて、月を見ながら天変地異や稲作の収穫、飢饉を占うと言われていた。ルルワの特徴を持った人物を、確かめるためアベルはその村に行った」
源平合戦の落人
白い髪の巫女
月を見て吉凶を占う
そのどれも特徴ある言葉は夜神の集落でも言い伝えられていた。その巫女の血筋だけが持つ白い髪は夜神のご先祖様・・・・・巫女の正体に夜神は確信した。その巫女こそルルワだと。
「巫女はルルワ本人だったのね」
「・・・・・・そうです。ルルワでした。けど、始祖の力である扉、「ブラッドゲート」を生み出したので記憶も無く、寿命も人間と同じ、或いはそれ以下だったようです。アベルは絶望しました。自分を愛してくれて、命をかけて逃がしてくれた人は記憶も寿命も無くし、あろう事か人間の村の男と子をなしていたのですから」
だからだ。夜神を見ていると「逃がしたくない」「忘れさせたくない」「離さない」と、どす暗い感情が溢れ出す。
愛し合う行為をした時には、その気持ちが顕著に現れる。誰かに口説かれている時は嫉妬で可笑しくなりそうになる。
自分も皇帝と同じで、アベルの「呪」を受けている子孫なんだろう。
「けど、そこで恨み辛みを言っても全てが変わらない事ぐらい承知していたアベルは、一本の簪を贈ります・・・・・・凪さんが持っていた「月桜」です。そして、アベルはルルワの前から姿を消しました。二度とルルワ達の前には姿を現さなかったそうです」
「高位クラス武器」の「月桜」・・・・・・
この簪は仕込み簪で、ある一定条件でないと鞘が抜けない仕組みになっている。
夜神でさえ知らないその条件とは「カインかアベルの前だけ、又は、その血を有するもの」
条件を知らない夜神は何度か、吸血鬼の前で簪の鞘を抜こうとしたが、張り付いているのか、簪と鞘が一体になっているぐらいビクともしなかった。最後は諦めて「蒼月・紅月・黒揚羽」のどれかの力を借りていた。
「「月桜」は私の家に代々伝わる家宝として、大事に受け継がれていたの。私が軍の養護施設に行く時に持っていった。先生も「月桜」が「高位クラス武器」だと分かっていたけど、ただの簪だったから届けをしなくて私がずっと持っていた」
武器のようで武器にならない簪。軍もそこまで気に留めることなく、許可出していたのには驚くがかえってそれでよかった。
「「月桜」は不思議で吸血鬼の前では鞘は一度も抜けなかった。けど、初めて抜き身の簪になった事を覚えている。それは「スクランブル交差点襲撃事件」で二度目の皇帝に会った時・・・・・」
思い出したくもない。そこで、私は大切な人を失った・・・・・私を地獄から救ってくれた。不器用ながら一生懸命に幼い私を育て、剣を教えてくれた。
大切な恩人で恩師。そして、血は繋がらないが、それ以上の繋がりがあった父親。
夜神の沈黙が辺りを支配する。何かを耐えるように、胸元を掴んでいる手は震えている。
庵はその場にはいなかったが、七海中佐達の会話を聞いているだけに押し黙る。
「その、簪が剣になったのは私がいたからかな?だから、その簪で私の顔に傷を付けたのかな?」
ルードヴィッヒの冷めた声で二人は顔を上げて、ルードヴィッヒの顔を見る。
愉悦した金色の目
その、目を傷つけようと右目に縦に走った刀傷を撫でながらルードヴィッヒは笑った
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青年のご先祖様は軍の創始者でした。なら庵は坊っちゃん?
大佐の集落の事、そして、「月桜」が、代々家に伝わる事の理由は解明されたと思います。
話にも「月桜」は代々家に受け継がれる簪と、出てきてましたが、どの場面だったか覚えてますか?伏線回収出来て一安心です。
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