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思い出の場所・話(物語で出てきた場所・話)巡りツアー
皆さん、いくつ覚えてますか?
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「おはよう、庵君。今日は宜しくね」
軍に復帰して数ヶ月、世間は真冬になっていた。セーターやコート、マフラーが手放せない。
夜神もそれにならい防寒している。そして、今回よそ行きの洋服に身を包んだのには理由がある。
数ヶ月、軍の施設から出ることは許されなかった。それは、夜神が「人類の敵」「吸血鬼」と言われる存在になり、いくら軍に忠誠を誓おうが大半の者は半信半疑だった。
だから、夜神自身が己を証明しなくてはいけなかった。
━━━━━━人類の味方だと
━━━━━━吸血鬼だが、人に危害を与えない
━━━━━━吸血鬼を、帝國からやってくる人類に仇なす吸血鬼を、討伐する吸血鬼だというとを、ひたすらに証明しなければいけなかった
そして、まだ、疑う者もいるが、それでも夜神の存在意義を認められ、監視者は付くが外出の許可が出た。
許可が出た初めての休みの日、夜神は一番にしたかった事をする為に外出をする事にした。
勿論、監視を免れることはない。相手は誰か気になるところだったが、その、相手は自分の知っている人物なだけに安心してしまった。
夜神はライトグレーのステンカラーコートに、ロイヤルブルーのニットと白いロングチュールスカートと、相変わらず夜神の魅力を前面に押し出すコーディネートをしている。
「つかぬことお聞きしますが、今日のコーディネートは式部大尉と野村大尉のコーディネートでしょうか?」
夜神自身が選ぶことはまずない組み合われに、見惚れながらも挨拶のように聞いてしまう。
「そうだよ?総長も着て凄かったんだから・・・・色々、疲れたけど・・・・・」
何故か明後日の方向を見始めた夜神に、庵は心の中で合掌しつつも、GOODボタンを連打した。
総長━━━━━━第四室の有栖川室長と野村大尉と式部大尉の三人が集まって夜神大佐の部屋を襲撃(?)したのだろう。そして、嵐が過ぎ去った後は楽しい(のか?)部屋の片付けをしたに違いない。
容易に想像出来るだけに笑ってしまう。
「それは・・・・・ご苦労さまです」
「本当にそう思ってないでしょう?顔が笑っているよ・・・・・・けど、私じゃコーディネート出来ないから有り難いんだけどね?後が大変だけど・・・・・・」
ジト目で睨んでくるが、心の底から憎んでの睨みではないせいか、怖くも何ともない。
寧ろ、別の魅力を生み出しているのに本人は気付くことがあるのだろうか?
「すみません・・・・お詫びにジュース奢りますよ。そろそろ行かないと・・・・今日は予定が詰まってますからね」
庵の言葉に「そうだった」となり、夜神は歩き出す。
今日は待ちに待った外出日。外出許可がやっと下りたのだ。休みの度に外出は無理だと言われている。だから、こうして許可が出された時に、やらないといけないことをまとめてしないといけない。
そして、一番したかった事をする為に、少しだけ遠出するのだ。
「私個人の事なのにごめんね、庵君。でも、庵君も一緒ならきっと喜んでくれると思うから・・・・・」
行きたかった場所は母親の、私達一族が眠るお墓だ。墓を移したといえ、それでも少し遠い。だから少し早起きして移動するのだ。
「構いませんよ」
笑って返答してくれることに安心する。けど、庵君で良かったと思ってしまう。家族に自分の好きな人を紹介出来るのだ。
たとえ、傍にいなくてもそれでもだ。やはり、知ってもらいたい。
「先生の所にも行かないといけないし、蒼月達の手入れ道具もだし、後は「沖や」でお菓子買って・・・・・今日一日で全部しないとね!」
「凪さん・・・・「沖や」は室長の「行けたら」のはなしでしょう?無理に行かなくてもいいのでは?」
そうなのだ。長谷部室長から「お使い」なのか「お強請り」なのか分からないが、「沖や」の和菓子を夜神大佐は買うことになっている。あくまで「無理にとは・・・・」だが、本人はやる気に満ち溢れている。なら、邪魔はしないのが得策だろう。
「・・・・・はい、頑張りましょう。車、停めてあるのでこっちに付いてきて下さい」
軍の人間なら誰でも使えるフリー車を今日一日、使用許可をとってある。これで少しは時短して凪さんの行きたい場所を効率よく行けるだろう。
「ありがとう庵君。庵君の食べたい沖やのお菓子沢山買ってあげるね!」
今だに「沖や」トークから離れない夜神を笑って、庵は夜神の手を掴む。少し驚いた夜神だったが、いつもの微笑みを浮かべると優しく握り返す。そして、二人は庵の運転する車で目的の場所に向かった。
数多くの墓石の中から目的の場所を探す。「白月」と彫られた墓石は夜神の家族、一族が眠っている。
ここ数ヶ月、来ることが出来なくて草が伸びている。夜神達はまず掃除から始めた。
草取りや造花の入れ替え、墓石を磨くなど一通りの掃除をしてやっと線香を供える。
目を閉じて合掌する。長い時間をかけた。
一族の始まりでもあるルルワの事
ルルワと吸血鬼、帝國との関わり
ブラッド・ゲートの事
皇帝の事
そして、自分の事
━━━━━吸血鬼に変えられてしまった経緯を・・・
自分の身に起こった事を、帝國で見知った事を報告するように心の中で語った。
そして、最後に庵の事・・・・・
私の味方で最愛の人。彼がいてくれたから私は戻ってこれた事・・・・
しゃがみ込んでいた夜神の肩に軽く手が置かれる。勿論、相手は今、心の中で語った庵だ。じんわりと温かさが伝わる。まるで彼の人となりを表すように。
閉じていた目を開く。出掛ける時はいつも付けているブラウンのカラコンの瞳が現れる。
頭だけを動かして庵を見上げ目が合う。
少し心配そうな表情の庵、夜神は微笑む。心配かけないように、思い詰めないように、優しく微笑む。
「大丈夫だよ。色々と報告したいことが一杯あったから・・・・・それに、お母さんとお父さんに庵君を紹介したかったの。私の大好きな人だよって・・・・・私の事を見守ってくれる素敵な人だよって。だから心配しないでって・・・・・」
そのまま顔を墓石に戻し、もう一度、合掌すると立ち上がる。
何かが吹っ切れたような清々しい表情で庵を見つめる。頭一つ高い庵を見上げて微笑む。
「ここの目的は終わり。今度は先生の所に行かないと・・・・意外と先生も心配性な所があるからね・・・・・早く元気な所を見せないとね」
いたずらっ子のような笑みを浮かべる。かつてこんな場面の夜神なら歯を見せて笑っていた。けど、いつの間にか歯を見せる笑いはなくなり、口角を上げるだけの笑いになっている。
その、赤い唇の奥には人にはない、尖った牙が隠されている。それを隠すようになったのはいつからだろう?
夜神のいつの間にか変わってしまった笑みを見ながら庵も笑う。第一室の全員は何となくだが気付いている。夜神の笑顔が少しずつ変わっていったのが。
けど、それを本人に言うつもりは一切ない。変わっても夜神は夜神。だから、庵も受け止める。危なくないように両手を広げ確実に受け止めるように。
「心配性なのは初耳です。なら、早く行きましょう・・・・・また、来ますね!」
庵の言葉に目を見張る。そして、再び笑う。少しだけ憂いを帯びた雰囲気を漂わせて
きっと、何気ない一言だろう。庵君にとっては挨拶のような言葉なのかもしれない。
けど、「また、来ます」の言葉に、どれだけの嬉しさが詰まっているのか分かっているのだろうか?
「・・・・・うん。また、来るね・・・・・」
庵と同様の言葉を墓石に、そこに眠っている家族に伝えると、夜神達は掃除道具を手に取り来た道を引き返す。
次の目的地に行く為に。
それから夜神は庵の運転する車で、目的を次々とこなしていく。
先生の墓前の前で手を合わせ、先程と同様に自分の身に起こったことを伝える。
そして、再び蒼月達を手に戦いの場を駆け抜ける事を伝える。
そして、黒揚羽の前の使い手でもあり、先生の奥様でもあった人に、再び使い手になったことを
報告する。
二人━━━━━いや、三人。家族仲良くこれからも過ごして下さいと祈る。
先生が会うことは叶わなかった実子。吸血鬼に妊娠中の奥様を殺された。そして、この世に生まれることの出来なかった子供は女の子で名前は「凪」だ。男の子なら「優」と決めていたと先生は話していた。
出会う事の叶わなかった子供と同じ年齢、名前に何かを思い私を養子として迎え入れた。
最初は実子の代わり、穴埋めだったのかもしれない。それでも愛情を込めて育てられた。
褒める時は褒めてくれたし、怒る時は雷が落ちるぐらい怒られた。
不器用で褒められるのは剣術ぐらい。そして、いつの間にか自分の子供と同じくらい、大切な存在だと教えてくれた。私と出会えて嬉しかったと言っていた。
私にとっても立派な育ての親だと思っている。たとえ、血の繋がりはなくても、戸籍上は養子だとしても私から見たら立派な父親だ。胸を張って自慢出来る父親だ。
だから、そんな立派な父親も安心して欲しいと願う。色々と心配かけただろうし、これからも心配させてしまうかもしれない。
それでも、私は一人ではない。信頼出来る仲間や上司がいる。
そして、心から愛する人が近くで見守ってくれている。だから、安心して欲しい・・・・・
夜神が合掌している時、庵は墓石を見た。自分の命を助けてくれた恩人でもある夜神嵐山大佐。
父は助からなかったが、自分は何とか助かった。いつかお礼が言いたいと思っていた。最初来た時にお礼を述べたが改めて述べる。
そして、娘でもある夜神凪大佐に寄り添い、助けていきたいと誓いをたてる。
二人で嵐山大佐の墓前で手を合わせていると、強い風が一瞬吹く。その風が嵐山大佐の返事にも思えて二人は顔を見合わせてしまった。そして、同じタイミングで笑った。
「先生も安心したのかな?」
「きっとそうだと思います。良かったですね」
「流石、先生・・・・・」
先生はどんな時でも見守ってくれているんですね・・・・
やっぱり、先生は凄い・・・・・
夜神は改めて自分の先生でもあり、育ての親でもあった夜神嵐山の偉大さに感服した。
二人は並んで駐車場に向かい車に乗り込む。そして、目的の場所に向かう。
蒼月達の手入れ道具を買う。相変わらず店の店主とその息子に夜神は笑っていたが、庵は何故かイライラしてしまった。
長谷部室長の御使い?も無事にすませる。饅頭やどら焼き、羊羹といったものを購入する。
「沖や」の老夫婦はとても素敵な夫婦で、見ていて羨ましくもある。互いを尊重し、助け合っている。いつかこんな素敵な関係を築きたいものだと思ってしまう。
だから、こんな素敵な和菓子が生まれるのだろうと思うし、室長をはじめとした長年の熱烈なファンがいるのかもしれない。
「沖や」を出ると次の目的の場所に向かう。そして、その場所まで大人しく付いてきた夜神は目を見張る。かつてそこで庵にある物を買ってもらった場所だからだ。
「・・・・・・・庵君?」
夜神は庵を見上げて呟いた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ここでも総長こと、有栖川室長と愉快な仲間たちがいい仕事してくれます。
そして、このあたりで嵐山大佐と夜神大佐の何故に養子になったのかの経緯がでてきます。
そして、「沖や」・・・・・度々、話に出てきますがモデルはいません。私の妄想の店です。商店街とか住宅地にある店で、ご主人が朝から北海道産小豆を仕込み、手作りアンコを使っていた饅頭が看板。奥さんはいつもニコニコで看板娘。行列は出来ないけど引っ切り無しに人が来る・・・・・そんな店です(笑)
さて、青年と大佐はある店に行きましたがどんな店に行ったのでしょうね?
そして、やっと、待望の?R18話が次から書けそうです。やっぱり、二人の・・・・の話しは必須でしょう!!
皆さん、いくつ覚えてますか?
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「おはよう、庵君。今日は宜しくね」
軍に復帰して数ヶ月、世間は真冬になっていた。セーターやコート、マフラーが手放せない。
夜神もそれにならい防寒している。そして、今回よそ行きの洋服に身を包んだのには理由がある。
数ヶ月、軍の施設から出ることは許されなかった。それは、夜神が「人類の敵」「吸血鬼」と言われる存在になり、いくら軍に忠誠を誓おうが大半の者は半信半疑だった。
だから、夜神自身が己を証明しなくてはいけなかった。
━━━━━━人類の味方だと
━━━━━━吸血鬼だが、人に危害を与えない
━━━━━━吸血鬼を、帝國からやってくる人類に仇なす吸血鬼を、討伐する吸血鬼だというとを、ひたすらに証明しなければいけなかった
そして、まだ、疑う者もいるが、それでも夜神の存在意義を認められ、監視者は付くが外出の許可が出た。
許可が出た初めての休みの日、夜神は一番にしたかった事をする為に外出をする事にした。
勿論、監視を免れることはない。相手は誰か気になるところだったが、その、相手は自分の知っている人物なだけに安心してしまった。
夜神はライトグレーのステンカラーコートに、ロイヤルブルーのニットと白いロングチュールスカートと、相変わらず夜神の魅力を前面に押し出すコーディネートをしている。
「つかぬことお聞きしますが、今日のコーディネートは式部大尉と野村大尉のコーディネートでしょうか?」
夜神自身が選ぶことはまずない組み合われに、見惚れながらも挨拶のように聞いてしまう。
「そうだよ?総長も着て凄かったんだから・・・・色々、疲れたけど・・・・・」
何故か明後日の方向を見始めた夜神に、庵は心の中で合掌しつつも、GOODボタンを連打した。
総長━━━━━━第四室の有栖川室長と野村大尉と式部大尉の三人が集まって夜神大佐の部屋を襲撃(?)したのだろう。そして、嵐が過ぎ去った後は楽しい(のか?)部屋の片付けをしたに違いない。
容易に想像出来るだけに笑ってしまう。
「それは・・・・・ご苦労さまです」
「本当にそう思ってないでしょう?顔が笑っているよ・・・・・・けど、私じゃコーディネート出来ないから有り難いんだけどね?後が大変だけど・・・・・・」
ジト目で睨んでくるが、心の底から憎んでの睨みではないせいか、怖くも何ともない。
寧ろ、別の魅力を生み出しているのに本人は気付くことがあるのだろうか?
「すみません・・・・お詫びにジュース奢りますよ。そろそろ行かないと・・・・今日は予定が詰まってますからね」
庵の言葉に「そうだった」となり、夜神は歩き出す。
今日は待ちに待った外出日。外出許可がやっと下りたのだ。休みの度に外出は無理だと言われている。だから、こうして許可が出された時に、やらないといけないことをまとめてしないといけない。
そして、一番したかった事をする為に、少しだけ遠出するのだ。
「私個人の事なのにごめんね、庵君。でも、庵君も一緒ならきっと喜んでくれると思うから・・・・・」
行きたかった場所は母親の、私達一族が眠るお墓だ。墓を移したといえ、それでも少し遠い。だから少し早起きして移動するのだ。
「構いませんよ」
笑って返答してくれることに安心する。けど、庵君で良かったと思ってしまう。家族に自分の好きな人を紹介出来るのだ。
たとえ、傍にいなくてもそれでもだ。やはり、知ってもらいたい。
「先生の所にも行かないといけないし、蒼月達の手入れ道具もだし、後は「沖や」でお菓子買って・・・・・今日一日で全部しないとね!」
「凪さん・・・・「沖や」は室長の「行けたら」のはなしでしょう?無理に行かなくてもいいのでは?」
そうなのだ。長谷部室長から「お使い」なのか「お強請り」なのか分からないが、「沖や」の和菓子を夜神大佐は買うことになっている。あくまで「無理にとは・・・・」だが、本人はやる気に満ち溢れている。なら、邪魔はしないのが得策だろう。
「・・・・・はい、頑張りましょう。車、停めてあるのでこっちに付いてきて下さい」
軍の人間なら誰でも使えるフリー車を今日一日、使用許可をとってある。これで少しは時短して凪さんの行きたい場所を効率よく行けるだろう。
「ありがとう庵君。庵君の食べたい沖やのお菓子沢山買ってあげるね!」
今だに「沖や」トークから離れない夜神を笑って、庵は夜神の手を掴む。少し驚いた夜神だったが、いつもの微笑みを浮かべると優しく握り返す。そして、二人は庵の運転する車で目的の場所に向かった。
数多くの墓石の中から目的の場所を探す。「白月」と彫られた墓石は夜神の家族、一族が眠っている。
ここ数ヶ月、来ることが出来なくて草が伸びている。夜神達はまず掃除から始めた。
草取りや造花の入れ替え、墓石を磨くなど一通りの掃除をしてやっと線香を供える。
目を閉じて合掌する。長い時間をかけた。
一族の始まりでもあるルルワの事
ルルワと吸血鬼、帝國との関わり
ブラッド・ゲートの事
皇帝の事
そして、自分の事
━━━━━吸血鬼に変えられてしまった経緯を・・・
自分の身に起こった事を、帝國で見知った事を報告するように心の中で語った。
そして、最後に庵の事・・・・・
私の味方で最愛の人。彼がいてくれたから私は戻ってこれた事・・・・
しゃがみ込んでいた夜神の肩に軽く手が置かれる。勿論、相手は今、心の中で語った庵だ。じんわりと温かさが伝わる。まるで彼の人となりを表すように。
閉じていた目を開く。出掛ける時はいつも付けているブラウンのカラコンの瞳が現れる。
頭だけを動かして庵を見上げ目が合う。
少し心配そうな表情の庵、夜神は微笑む。心配かけないように、思い詰めないように、優しく微笑む。
「大丈夫だよ。色々と報告したいことが一杯あったから・・・・・それに、お母さんとお父さんに庵君を紹介したかったの。私の大好きな人だよって・・・・・私の事を見守ってくれる素敵な人だよって。だから心配しないでって・・・・・」
そのまま顔を墓石に戻し、もう一度、合掌すると立ち上がる。
何かが吹っ切れたような清々しい表情で庵を見つめる。頭一つ高い庵を見上げて微笑む。
「ここの目的は終わり。今度は先生の所に行かないと・・・・意外と先生も心配性な所があるからね・・・・・早く元気な所を見せないとね」
いたずらっ子のような笑みを浮かべる。かつてこんな場面の夜神なら歯を見せて笑っていた。けど、いつの間にか歯を見せる笑いはなくなり、口角を上げるだけの笑いになっている。
その、赤い唇の奥には人にはない、尖った牙が隠されている。それを隠すようになったのはいつからだろう?
夜神のいつの間にか変わってしまった笑みを見ながら庵も笑う。第一室の全員は何となくだが気付いている。夜神の笑顔が少しずつ変わっていったのが。
けど、それを本人に言うつもりは一切ない。変わっても夜神は夜神。だから、庵も受け止める。危なくないように両手を広げ確実に受け止めるように。
「心配性なのは初耳です。なら、早く行きましょう・・・・・また、来ますね!」
庵の言葉に目を見張る。そして、再び笑う。少しだけ憂いを帯びた雰囲気を漂わせて
きっと、何気ない一言だろう。庵君にとっては挨拶のような言葉なのかもしれない。
けど、「また、来ます」の言葉に、どれだけの嬉しさが詰まっているのか分かっているのだろうか?
「・・・・・うん。また、来るね・・・・・」
庵と同様の言葉を墓石に、そこに眠っている家族に伝えると、夜神達は掃除道具を手に取り来た道を引き返す。
次の目的地に行く為に。
それから夜神は庵の運転する車で、目的を次々とこなしていく。
先生の墓前の前で手を合わせ、先程と同様に自分の身に起こったことを伝える。
そして、再び蒼月達を手に戦いの場を駆け抜ける事を伝える。
そして、黒揚羽の前の使い手でもあり、先生の奥様でもあった人に、再び使い手になったことを
報告する。
二人━━━━━いや、三人。家族仲良くこれからも過ごして下さいと祈る。
先生が会うことは叶わなかった実子。吸血鬼に妊娠中の奥様を殺された。そして、この世に生まれることの出来なかった子供は女の子で名前は「凪」だ。男の子なら「優」と決めていたと先生は話していた。
出会う事の叶わなかった子供と同じ年齢、名前に何かを思い私を養子として迎え入れた。
最初は実子の代わり、穴埋めだったのかもしれない。それでも愛情を込めて育てられた。
褒める時は褒めてくれたし、怒る時は雷が落ちるぐらい怒られた。
不器用で褒められるのは剣術ぐらい。そして、いつの間にか自分の子供と同じくらい、大切な存在だと教えてくれた。私と出会えて嬉しかったと言っていた。
私にとっても立派な育ての親だと思っている。たとえ、血の繋がりはなくても、戸籍上は養子だとしても私から見たら立派な父親だ。胸を張って自慢出来る父親だ。
だから、そんな立派な父親も安心して欲しいと願う。色々と心配かけただろうし、これからも心配させてしまうかもしれない。
それでも、私は一人ではない。信頼出来る仲間や上司がいる。
そして、心から愛する人が近くで見守ってくれている。だから、安心して欲しい・・・・・
夜神が合掌している時、庵は墓石を見た。自分の命を助けてくれた恩人でもある夜神嵐山大佐。
父は助からなかったが、自分は何とか助かった。いつかお礼が言いたいと思っていた。最初来た時にお礼を述べたが改めて述べる。
そして、娘でもある夜神凪大佐に寄り添い、助けていきたいと誓いをたてる。
二人で嵐山大佐の墓前で手を合わせていると、強い風が一瞬吹く。その風が嵐山大佐の返事にも思えて二人は顔を見合わせてしまった。そして、同じタイミングで笑った。
「先生も安心したのかな?」
「きっとそうだと思います。良かったですね」
「流石、先生・・・・・」
先生はどんな時でも見守ってくれているんですね・・・・
やっぱり、先生は凄い・・・・・
夜神は改めて自分の先生でもあり、育ての親でもあった夜神嵐山の偉大さに感服した。
二人は並んで駐車場に向かい車に乗り込む。そして、目的の場所に向かう。
蒼月達の手入れ道具を買う。相変わらず店の店主とその息子に夜神は笑っていたが、庵は何故かイライラしてしまった。
長谷部室長の御使い?も無事にすませる。饅頭やどら焼き、羊羹といったものを購入する。
「沖や」の老夫婦はとても素敵な夫婦で、見ていて羨ましくもある。互いを尊重し、助け合っている。いつかこんな素敵な関係を築きたいものだと思ってしまう。
だから、こんな素敵な和菓子が生まれるのだろうと思うし、室長をはじめとした長年の熱烈なファンがいるのかもしれない。
「沖や」を出ると次の目的の場所に向かう。そして、その場所まで大人しく付いてきた夜神は目を見張る。かつてそこで庵にある物を買ってもらった場所だからだ。
「・・・・・・・庵君?」
夜神は庵を見上げて呟いた。
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ここでも総長こと、有栖川室長と愉快な仲間たちがいい仕事してくれます。
そして、このあたりで嵐山大佐と夜神大佐の何故に養子になったのかの経緯がでてきます。
そして、「沖や」・・・・・度々、話に出てきますがモデルはいません。私の妄想の店です。商店街とか住宅地にある店で、ご主人が朝から北海道産小豆を仕込み、手作りアンコを使っていた饅頭が看板。奥さんはいつもニコニコで看板娘。行列は出来ないけど引っ切り無しに人が来る・・・・・そんな店です(笑)
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