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番外編 寄り添うケーキ
「慶次様。気持ちが込もっていれば相手に伝わりますよ。次頑張りましょう。」
「そうよお兄ちゃん!前田さんの言う通り!先程はとんでもなかったけど……」
「Don't mind」
「ぐぬぬ……」
僕達は、まさとさんへの誕生日プレゼントである可愛い誕生日ケーキを試作中だ。僕、ともみ、ジョニー、シェフの前田で頑張っている。先程1つ目ができたのだが…。各々好きなように可愛くしようとしたため、上手くいかなかったのだ。
「解決策が浮かばないな…。」
「そういえば、前田さんは一時期パティシエだったのでしょう?可愛くする方法とかないの?」
「そうですね。クリームに色つけたり、チョコペンで文字書いたりとかですかね?」
うーん。確かに可愛いが、なんか無難すぎじゃないか?パティシエだったなら飴細工とかもっと難しいものを言うのかと思っていた。僕達でもできるものを提案してくれるのはありがたいが、果たしてまさとさんはそれで喜んでくれるのだろうか。それとも違う意図があるのだろうか。
僕の表情で疑っているのを察したのか、前田が語り出した。
「少しお話しますと、実は昔、商店街で小さいケーキ屋をやっておりました。」
~約20年前~
「うーん。こんなにサンタが余ってしまうとは……。」
僕は窮地に立たされていた。クリスマス用の人形やケーキが余ってしまったのだ。今まで培ってきたものを最大限に発揮した自信作だったため、結構落ち込んでいる。
今後クリスマスケーキの注文は入らないだろう。かと言ってこの量を僕一人で食べ切るのは無理がある。もう捨てるしかないのかと苦悶していると、カランコロンとドアが開く音がした。
「すみません。まだやってますか?」
入ってきたのは小学生辺りの男の子とそのお母さんだった。
「やってますよ。どうぞゆっくり見ていってください。」
閉店間際だが、まあしょうがない。全然お客が来ない店なんだ。来てくれるだけでもとてもありがたい。母親が どれがいい?と男の子に問いかけている。今日は男の子の特別な日らしい。
しかし男の子にはどのケーキもお気に召さなかったようだ。
「……なんか、どれもちがう。僕可愛いやつがいい。色んなの乗ってるやつ。こんなのじゃない。」
「もう、なんでそんな事言うのよ。これとかすごく可愛いじゃない。これじゃダメなの?」
「……。」
確かに、僕の作るケーキは大人用で品がある見た目だ。子供が喜ぶようなものでは無いかもしれない。なんだか可哀想だな。子供なんだから無難に可愛いやつがいいよな。
どうしよう……あっ、
「なら、今から作りましょうか?ちょうど飾りも余ってるんです。閉店間際ですし、好きなように飾り付けていいですよ!」
「え?!いいの?!じゃあサンタさんいる?!実はねー今日僕の誕生日なの!クリスマス近いからね!一緒にやるんだよ!」
「そうなんだ。なら気合入れなきゃね!今準備するから待っててね。」
普段なら絶対やらないことだ。だが飾りは余っているしケーキ自体も保存してある。大した手間でもない。僕は大きめの机にケーキと様々な飾りを用意し、一緒に作った。さっきまで不機嫌だったのが嘘のように、楽しそうに飾り付けている。そんな様子を見ている僕まで楽しい。
こんな感覚久しぶりだ。ケーキ作りは楽しいものだったんだな。なぜ忘れていたのだろう。それに、僕が作ったケーキより、男の子の作ったケーキの方が温かみがある。僕に足りなかったのは技術でも才能でもなく、愛情だったんだな。
「見てみて!全部乗せたの!いちごも沢山!」
「あの、本当に良かったんですか?こんなに沢山飾り付けちゃって…しかもお金いらないなんて…」
「大丈夫ですよ。お金よりも大事なことを思い出させて貰いましたから!すごく美味しそうだね!僕も食べたいところだけど、早くお家で食べたいよね。今包むから待っててね。」
そうして、親子はにこにこで帰っていった。それから僕は自分と向き合って、愛情たっぷりのケーキを作るようになった。お客さんに寄り添う優しいケーキ。それを意識するようになってから店はどんどん繁盛していき、商店街1番のケーキ屋さんになったのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「食べる人に寄り添うケーキ。考えにもなかったわ!だから最初は失敗しちゃったのね。」
確かに、可愛いに固執しすぎていたかもしれない。それに今まさとさんはあまり量が食べられない。最初に作ったものだと、甘いものだらけですぐ胃もたれしてしまうだろう。失念していた。
「まさとさんに寄り添うケーキ……。なら、その男の子のように人形を飾るのはどうだろう。甘さを控えれば、まさとさんも食べられるかもしれない。」
「それいいわ!お人形好きだったものね!絶対喜ぶわ!」
こうして、まさとさんの誕生日ケーキは決まった。まさか泣いて喜んでくれるとまでは想定してなかったが、嬉しい限りだ。これからはもっとまさとさんを喜ばせてあげられるよう人間性を磨かないとな。気づかせてくれた前田には感謝だ。後でお礼に1つ目のケーキを差し入れしよう。
「そうよお兄ちゃん!前田さんの言う通り!先程はとんでもなかったけど……」
「Don't mind」
「ぐぬぬ……」
僕達は、まさとさんへの誕生日プレゼントである可愛い誕生日ケーキを試作中だ。僕、ともみ、ジョニー、シェフの前田で頑張っている。先程1つ目ができたのだが…。各々好きなように可愛くしようとしたため、上手くいかなかったのだ。
「解決策が浮かばないな…。」
「そういえば、前田さんは一時期パティシエだったのでしょう?可愛くする方法とかないの?」
「そうですね。クリームに色つけたり、チョコペンで文字書いたりとかですかね?」
うーん。確かに可愛いが、なんか無難すぎじゃないか?パティシエだったなら飴細工とかもっと難しいものを言うのかと思っていた。僕達でもできるものを提案してくれるのはありがたいが、果たしてまさとさんはそれで喜んでくれるのだろうか。それとも違う意図があるのだろうか。
僕の表情で疑っているのを察したのか、前田が語り出した。
「少しお話しますと、実は昔、商店街で小さいケーキ屋をやっておりました。」
~約20年前~
「うーん。こんなにサンタが余ってしまうとは……。」
僕は窮地に立たされていた。クリスマス用の人形やケーキが余ってしまったのだ。今まで培ってきたものを最大限に発揮した自信作だったため、結構落ち込んでいる。
今後クリスマスケーキの注文は入らないだろう。かと言ってこの量を僕一人で食べ切るのは無理がある。もう捨てるしかないのかと苦悶していると、カランコロンとドアが開く音がした。
「すみません。まだやってますか?」
入ってきたのは小学生辺りの男の子とそのお母さんだった。
「やってますよ。どうぞゆっくり見ていってください。」
閉店間際だが、まあしょうがない。全然お客が来ない店なんだ。来てくれるだけでもとてもありがたい。母親が どれがいい?と男の子に問いかけている。今日は男の子の特別な日らしい。
しかし男の子にはどのケーキもお気に召さなかったようだ。
「……なんか、どれもちがう。僕可愛いやつがいい。色んなの乗ってるやつ。こんなのじゃない。」
「もう、なんでそんな事言うのよ。これとかすごく可愛いじゃない。これじゃダメなの?」
「……。」
確かに、僕の作るケーキは大人用で品がある見た目だ。子供が喜ぶようなものでは無いかもしれない。なんだか可哀想だな。子供なんだから無難に可愛いやつがいいよな。
どうしよう……あっ、
「なら、今から作りましょうか?ちょうど飾りも余ってるんです。閉店間際ですし、好きなように飾り付けていいですよ!」
「え?!いいの?!じゃあサンタさんいる?!実はねー今日僕の誕生日なの!クリスマス近いからね!一緒にやるんだよ!」
「そうなんだ。なら気合入れなきゃね!今準備するから待っててね。」
普段なら絶対やらないことだ。だが飾りは余っているしケーキ自体も保存してある。大した手間でもない。僕は大きめの机にケーキと様々な飾りを用意し、一緒に作った。さっきまで不機嫌だったのが嘘のように、楽しそうに飾り付けている。そんな様子を見ている僕まで楽しい。
こんな感覚久しぶりだ。ケーキ作りは楽しいものだったんだな。なぜ忘れていたのだろう。それに、僕が作ったケーキより、男の子の作ったケーキの方が温かみがある。僕に足りなかったのは技術でも才能でもなく、愛情だったんだな。
「見てみて!全部乗せたの!いちごも沢山!」
「あの、本当に良かったんですか?こんなに沢山飾り付けちゃって…しかもお金いらないなんて…」
「大丈夫ですよ。お金よりも大事なことを思い出させて貰いましたから!すごく美味しそうだね!僕も食べたいところだけど、早くお家で食べたいよね。今包むから待っててね。」
そうして、親子はにこにこで帰っていった。それから僕は自分と向き合って、愛情たっぷりのケーキを作るようになった。お客さんに寄り添う優しいケーキ。それを意識するようになってから店はどんどん繁盛していき、商店街1番のケーキ屋さんになったのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「食べる人に寄り添うケーキ。考えにもなかったわ!だから最初は失敗しちゃったのね。」
確かに、可愛いに固執しすぎていたかもしれない。それに今まさとさんはあまり量が食べられない。最初に作ったものだと、甘いものだらけですぐ胃もたれしてしまうだろう。失念していた。
「まさとさんに寄り添うケーキ……。なら、その男の子のように人形を飾るのはどうだろう。甘さを控えれば、まさとさんも食べられるかもしれない。」
「それいいわ!お人形好きだったものね!絶対喜ぶわ!」
こうして、まさとさんの誕生日ケーキは決まった。まさか泣いて喜んでくれるとまでは想定してなかったが、嬉しい限りだ。これからはもっとまさとさんを喜ばせてあげられるよう人間性を磨かないとな。気づかせてくれた前田には感謝だ。後でお礼に1つ目のケーキを差し入れしよう。
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