【R18】転生したら王子の性教育係に任命されました 〜婚期を逃した私が、年下殿下に快楽を教え教え込まれるまで〜

いろは杏⛄️

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別れの予兆と、狂おしい夜 前編

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 春の名残を感じさせる穏やかな風が、王宮の回廊をそよいでいた。
 けれど足取りは、どこか重たかった。花の香りさえ、今の彼女には遠く霞んでいる。

 

 王宮内に響く、祝宴の準備音。
 侍女たちの弾むような声。
 次代の王妃を迎える儀が、数日後に正式に執り行われる──その報せは、すでに全宮廷に知れ渡っていた。

 

「……そう、なのね」

 儀礼担当官からの通知を受け取ったその瞬間。
 私は凍てついた微笑みを浮かべ、まるで自分とは関係のないことのように頷いた。

 

 彼の名は、どこにも書かれていない。
 けれど、わかっていた。
 これは選定という名を借りた、既定の婚姻なのだと。

 

 エリアス――彼は、王となる運命を背負う者。
 そして私は、たまたま彼に選ばれた一人の教育係に過ぎない。
 身分も、血筋も、未来も違う。

 

「……わかっていたことじゃない。最初から」

 

 ひとりつぶやきながら、回廊の奥を見つめる。
 その先には、王子が日課として通る庭園への抜け道がある。

 

 だが、その姿を見ることはなかった。

 

 ──あれから、彼は公の場で私を見ようとしない。
 視線すら合わない。
 けれど、それが彼なりの優しさであることも、理解していた。

 

「距離を置くことで、忘れさせてくれようとしているのね……」

 

 なのにどうして、こんなにも痛むのだろう。
 彼の沈黙が、無関心ではなく苦悩の証だと気づいているのに──
 胸の奥に拭えぬしこりが残る。

 

 執務室に戻ると、机上には王宮から届いた辞令案が置かれていた。

 《クラウディア・レインハルト、王子教育任満了に伴い、退任の手続きに入ること》
 
 乾いた文字列は、いっそ残酷なほどに明確で。

 

 椅子に腰を下ろすと、両手で顔を覆った。
 涙は出なかった。ただ、指の隙間から吐息が洩れる。

 

(ねえ、どうして、あんなふうに抱いたの……?)

 

 身体を重ねたあの夜。
 彼の腕の中で、自分のすべてを捧げた。
 あのぬくもりは、愛ではなかったのか。
 それとも、彼の若さがくれた一夜の幻想だったのか。

 

 ──教師でいるべきだった。
 もっと早く、自分の役目を終えるべきだった。
 なのに私は、あの手を受け入れた。
 あの唇に、あの熱に、あの優しさに――心まで溺れてしまった。

 

「……それでも、忘れられないのよ」

 

 椅子に凭れ、そっと自らの胸元に手を当てた。
 彼に触れられた場所が、未だ熱を持って疼いている気がする。

 

 彼が私を選ぶことなどないと、最初からわかっていたのに。
 それでも、あの夜のぬくもりを、私は……。

 

 そのとき、執務室の扉が小さくノックされた。

 

「失礼いたします、クラウディア様。……こちら、王子殿下より」

 

 差し出されたのは、小さな封筒。
 紋章もなければ、署名もない。けれど、見間違えるはずもない――これは、彼の筆跡。

 

 胸が震え、手がわずかに震える。
 封を切り、中の便箋を取り出す。

 

『今夜、あの部屋で待っています。これが、最後のお願いです』

 

 思わず便箋を胸に抱き、深く目を閉じた。

 

 遠ざけようとしたはずの人が、今、自分を求めている。

 

 もう戻れないと知りながら、身体が熱を帯びていく。
 愛と後悔、快楽と理性の狭間で、心が揺れる。

 

 けれど。
 たった一夜だけでも、彼のすべてを受け止められるのなら――。

     * * *

 夜の王宮は、昼の喧騒とは打って変わって、静謐な闇に包まれていた。
 厚い天蓋のような夜気が、罪深きふたりを隠す帳となって降りてくる。

 

 私は、手紙に記されていたあの部屋の前に立っていた。
 教育を名目に、数ヶ月だけ割り当てられていた離れの小間──ふたりが初めて唇を交わし、心と心を重ねた場所。

 

 躊躇いが指先を鈍らせる。
 扉の前に立つだけで、鼓動がうるさく耳の奥を叩いた。

 

 けれど、逃げなかった。
 この夜がすべての終わりならば、せめて最後は、彼の腕の中で。

 

 ゆっくりと扉を押すと、灯された蝋燭の柔らかな光の奥に、彼がいた。

 

「……来てくれたんですね」

 ベッドの縁に腰かけていたエリアスが、ゆっくりと立ち上がる。
 白い寝衣を纏った彼の姿は、少年の面影を残しながらも、どこか男の翳りを纏っていた。

 

「来ないつもりだったのよ」

 声を震わせまいと、喉を絞るようにして言葉を絞り出す。

「でも……会わずに終わるのは、きっと、もっと後悔すると思ったから」

 

 エリアスはそっと近づき、私の手を取った。
 その手の温もりだけで、胸が痛くなる。

 

「これで、終わりです。だから、せめて……あなたのすべてを、もう一度、抱きたい」

 

 言葉の隅々に、決意と痛みが滲んでいた。
 彼もまた、わかっている。
 これは、引き返せない夜だと。

 

 抱きしめられた瞬間、私の意識は、彼の香りと体温に溺れていった。

 

「お願い……優しくしないで。優しくされると、忘れられなくなるの……」

「……できません。優しくしか、できないんです、あなたには」

 

 くちづけは、静かに、けれど深く落ちていく。
 上唇をなぞられ、下唇を噛まれ、舌を絡められるたびに、
 心が解けていくのを止められなかった。

 

 着ていた薄衣が、音もなく滑り落ちる。
 肩を伝って落ちていくその感触が、妙に艶めかしく、背筋をぞわりと撫でていく。

 

「……何も、言わないで」

「わかりました。言葉よりも、身体で、伝えます」

 

 ベッドに押し倒され、シーツの感触が背にひやりと触れる。
 エリアスの指が、首筋から鎖骨、そして胸元へと、愛おしげに這ってくる。

 

「あっ……や、あ……んっ……っ……」

 

 胸の尖りが指先で優しく転がされ、やがて吸い上げられる。
 舌が乳首の周囲をくるくると円を描き、時折キスのように甘く啜られる。

 そのたびに、腰が勝手に浮いてしまう。

 

「……いや、もう、だめ、そこ、そんな……!」

 

 声が震える。
 脚の奥が、疼いて、濡れて、どうしようもないほどに熱を持っている。
 わかっているのに、理性では止められない。

 

 脚を開かされる羞恥に震えながらも、彼の指が蜜壺に触れた瞬間、身体が小さく跳ねた。

 

「や……っ、そんなに……」

「クラウディア、濡れてます……こんなに」

 

 その声に、全身が火照る。
 恥ずかしくて、嬉しくて、狂いそうだった。

 

 指がゆっくりと中へ沈んでくる。
 膣内が、彼を迎えるようにぎゅっと収縮して、熱が一気に身体を支配していった。

 

「ひぁ……ん、だめ、だめぇ……!」

「気持ちよくなって……ください。もう、あなたを泣かせたくないんです」

 

 焦らすように、何度も擦り上げられる内壁。
 愛撫のたびに、快感が波のように押し寄せ、私は彼の名前を、何度も、何度も叫んでいた。

 

「エリアス……お願い、もう……早く……」

 

 彼が導き出した絶頂の余韻が引かぬうちに、ゆっくりと、自身の昂りをそこへあてがってくる。

 

「あたしの、全部……あなたのものにして」

 

 彼が貫いた瞬間、痛みと悦びが混ざり合い、涙が自然に溢れた。

 

「ごめんなさい……あなたを……愛してしまった」

 

 その言葉に、エリアスの動きが止まる。
 けれど、すぐに深く沈みこみ、囁いた。

 

「僕も……あなたを、愛してしまいました」

 

 身体の奥で響く熱。
 心の奥で響く言葉。

 

 今夜限りの、二人だけの儀式が、ゆっくりと幕を上げた。
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