【R18】転生したら王子の性教育係に任命されました 〜婚期を逃した私が、年下殿下に快楽を教え教え込まれるまで〜

いろは杏⛄️

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別れの予兆と、狂おしい夜 後編

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 彼のすべてを受け入れた瞬間、全身が、細胞のひとつひとつまで、彼で満たされていくような感覚に包まれた。



「ふ、あ……んっ……ぅ、あ……っ……」

 

 何度目かの挿入。
 けれど今夜は、どこか違っていた。
 彼の動きが、焦がれるように、そして惜しむように、ひとつひとつ刻まれている。

 

「クラウディア……痛くないですか……?」

「……だめ、そんな顔、しないで……やさしく、しないで……」

 

 涙が滲む。
 優しさは凶器になる。
 わかっているのに、それを拒めない。

 

 エリアスは、彼なりのやさしさで、彼女の内奥を何度も何度も撫で上げる。
 膣壁がきゅっと収縮し、彼を締めつけるたびに、私の中で何かが壊れていく。

 

「……もっと、強く、して……あなたの全部、わたしに、残して……っ」

 

 願いとも、懇願ともつかない囁きに、エリアスの動きがわずかに荒くなる。

 

 打ちつけられるたびに、ベッドが軋む音が部屋に響き、喉から、途切れ途切れの嬌声が零れ落ちる。

 

「ひっ、んっ、あああ……っ、あ……」

 

 目の奥が熱い。
 もう、快感だけでは追いつけない。
 心の深部が、引き裂かれるように痛い。

 

 彼が果てるたびに、その熱が体の奥深くに残ってしまうと、わかっているのに。

 

 それでも。

 

 ──それでも、最後まで彼を中に留めておきたい。

 

「お願い……エリアス……忘れさせて……この夜だけは、ぜんぶ、あなたに壊されたいの……っ」

 

 その言葉に、エリアスは眉を歪め、クラウディアの髪を掻き抱くようにしながら、ただ静かに、彼女の名を呼んだ。

 

「クラウディア……クラウディア……愛してる……」

 

 快感の波が、身体を上へ上へと運ぶ。
 深く貫かれるたび、心がもう、どこにも行き場をなくしていく。

 

「っ、や、だめ、もう、やだ……これ以上、忘れられない……っ」

 

 果ての瞬間、目からは、熱い涙が一筋、こぼれ落ちた。

 

 その涙に気づいたエリアスが、動きを止める。
 目を見開き、そっと、私の頬に触れた。

 

「……ごめんなさい。僕……」

「違うの……違うのよ、あなたが優しいから……つらくなるの……」

 

 熱い涙を流しながら、彼の頬に手を伸ばす。
 触れた指先が、震えていた。

 

「……選べないわよね。わたしを。あなたは王子だもの……」

 

 静寂が、部屋に降りる。

 

 エリアスは、そっと私を腕に引き寄せると、耳元で囁いた。

 

「あなたを選べないのが、僕の一番の不幸です」

 

 その言葉は、夜の闇よりも深く、甘く、けれどどうしようもないほど、悲しかった。

 

 二人の肌は重なったまま。
 けれど心は、もうどこか別の場所にあるようで──

 

 そのまま、涙の中でふたりは眠りに落ちていく。
 まるで、夢の終わりを予感していたかのように。

     * * *

 朝日が、部屋の厚いカーテンの隙間から、細く射し込んでいた。
 金糸を引いたような光が、寝台にしっとりと広がり、
 白いシーツにふたりの影を落としていた。

 

 ──のはずだった。

 

 目を覚ました時、そこにエリアスの姿はなかった。

 

 横たわる白いシーツの上には、彼の熱だけが、まだ微かに残っていた。
 その痕跡は、まるで「夢ではなかった」と告げる最後の証のようで、
 同時に、どうしようもなく残酷な現実でもあった。

 

「……あぁ……っ」

 

 咄嗟に伸ばした手が空を切る。
 何度触れても、そこに彼はいない。
 抱き締めたかった。髪を撫でたかった。もう一度、名を呼びたかった。

 

 けれど、それらすべては最後の夜に置いていかれてしまった。

 

 彼の温もりが、まだ内奥に残っている。
 快楽と愛情の余韻が、子宮の奥で疼いているのに。

 

「こんな朝が、来るなら……」

 

 呟きは涙に濡れ、声にならなかった。

 

 白い寝衣の下、胸元に爪を立てる。
 どこかに、彼を刻んでいたかった。
 目には見えずとも、どこかに「これは私のもの」と示せる何かが欲しかった。

 

 ふと、枕元に置かれた紙片に気づく。

 ──それは、彼の筆跡だった。

 

『ありがとう、クラウディア。あなたの愛が、僕の支えでした。これから先、僕がどんな道を選ぼうとも……この夜を、生涯忘れません』

 

 文字は整っているのに、ところどころ滲んでいるのは、涙だろうか。
 彼が泣いたのか、それとも──

 

「ずるいわよ、あなた……」

 

 彼の言葉は優しくて、
 彼の触れた場所はすべてが心地よくて、
 だからこそ、いま胸が裂けそうになる。

 

 ──これで、すべて終わったのだ。

 

 私は、ゆっくりと身を起こし、床に落ちていた寝衣を拾い上げる。
 脚にぬるりと流れる感触があった。
 昨夜、彼が内奥に注ぎ込んだ証が、まだ身体に留まっている。

 

「……まだ、あなたがいるみたい」

 

 そう思えたことが、嬉しくて、悲しかった。

 

 ふらりと立ち上がり、カーテンを開ける。
 差し込む朝日はまぶしく、冷えた肌に優しい。

 

 庭園では、王妃選定の式典の準備が進んでいた。
 誰も彼もが、未来を見つめて動いている。

 

 ──なのに私は、この夜に取り残されたままだ。

 

 私は、ゆっくりと目を閉じる。
 愛した男は、もういない。
 けれど、愛した記憶だけが、痛いほど鮮明に焼きついている。

 

「もう……泣かないって、決めたのに……」

 

 流れ落ちる涙を、拭おうともしなかった。
 それは、今だけ許される喪失の儀式のようなものだったから。

 

 そして静かに部屋を後にする。
 再び教育係という肩書に戻ることはない。
 けれど、あの夜の彼を、ずっと胸の奥で愛し続けるだろう。

 

 ──ふたりの関係は、たった一夜で終わった。
  けれどそれは、何よりも深く、永く、熱を持った愛だった。
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